第1回定例会一般質問(速報)―福井議員(2月24日)



(映像は大田区議会ホームページより:18分)

社会保障としての国民健康保険制度について

【福井議員】
日本共産党大田区議団の福井亮二です。社会保障としての国民健康保険制度について質問いたします。
国民健康保険法の第1条では「社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。」とあります。この社会保障としての観点から質問いたします。東京都は、昨年11月29日に都国保運営協議会で、2022年度の国保について、各市区町村が国保料を定める基礎となる東京都への納付金の総額を国の仮係数に基づき、2022年度は4429億円、今年度比253億円の増と試算しました。そしてその結果、2022年度の国保料は各自治体独自が法定外繰入れを行わない場合、国保加入者1人当たり17万2155円となり、今年度15万7351円と比べて、1万4804円の大幅値上げになるとの試算を明らかにしました。このことを受けて特別区長会は、厚生労働大臣、小池都知事に緊急要望を昨年12月22日に行いました。その中で、経済的な課題を抱える者が多い被保険者の負担として保険料に転嫁することは避けるべきですとし、国や都に対して必要な財政措置を取ることを求めました。
2月19日に大田区国民健康保険運営協議会が開かれ、答申が決定されました。中身を見てみると、均等割額が5万2000円から5万5300円に、1人当たり平均の保険料が12万4989円から13万1813円となり、何と6824円も上がっています。介護分が1386円下がりますので、1人当たり5438円の値上げとなります。特に均等割額は収入に関係ないために、低所得者ほど負担が重くなります。特別区長会が負担を保険料に転嫁することは避けるべきと言っているにもかかわらず、大田区国民健康保険運営協議会では、区長が値上げの諮問し、答申が出されました。特別区長会の要望とは異なるものです。
厚労省は、一般会計からの繰入れをどうするかということにつきましては、それぞれの自治体でご判断いただくと述べています。区の判断で一般会計繰入れによる国保料の負担抑制や自治体独自の保険料減免を維持、拡充することは可能です。国民健康保険制度は相互扶助ではなく社会保障制度です。国や自治体の責任で保障するものです。高過ぎる保険料のために未納・滞納世帯が1月31日現在で、加入世帯9万2644世帯中2万4541世帯が未納、滞納となっています。協会けんぽなどと比べると国保料は高く、収入の1割になります。例えば年収540万円の会社員の健康保険の保険料は、被扶養者の人数に関わらず31万4010円。一方、年収540万円相当の事業所得273万円の自営業者の国民健康保険の保険料は、4人家族であれば51万円。保険料は1.6倍高くなっています。そのため、4世帯に1世帯が未納・滞納世帯となっています。このような状況の中で値上げをすれば、ますます未納・滞納世帯が出るのは明らかです。
●特別区長会で、負担を保険料に転嫁をすることは避けるべきと申し入れているわけですから、新年度の国保料は値上げをせず、引下げをすることです。お答えください。

【区民部長】
初めに、新年度の保険料についてのご質問ですが、国民健康保険は、年々被保険者数が減少する一方、医療の高度化や前期高齢者の割合が増え、1人当たりの医療費が増加する状況にあります。こうした中、特別区では、特別区共通基準に基づき、所得割と均等割の賦課割合を58対42と、均等割の割合を低く抑え、所得の低い方の負担に配慮したものにしております。また、独自の激変緩和を実施し、急激な保険料上昇とならないよう、被保険者の負担抑制を図っております。新年度の保険料算定に当たりましては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う特殊な社会状況に鑑み、区財政の状況や長期的な財政規律の確保も視野に入れ、特に影響が大きい基礎分に負担抑制を講じる案を、特別区長会として了承し、同案を今年2月19日の大田区国民健康保険運営協議会に諮問し、原案を適当と認める答申をいただきました。一方、保険料抑制のために一般会計から国民健康保険特別会計に法定外の繰入れを行うことにつきましては、給付と負担の関係が不明確になるほか、国民健康保険以外の医療保険制度に加入している方へ二重に負担を強いるなどの課題を含んでおります。特別区ではこれまでも、特別区区長会として国に対して、保険者へのさらなる財政支援と被保険者の保険料負担軽減策を要望してまいりました。保険料の負担軽減の在り方につきましては、制度の趣旨を踏まえ、都内保険料水準の統一を将来的な方向性としている23区の中で、引き続き対応してまいります。

【福井議員】
昨年、全日本民主医療機関連合会が公表した、2020年経済的事由による手遅れ死亡事例調査概要報告によれば、2020年の1年間で40名の方が経済的事由により亡くなっています。負債と滞納状況を調べてみると、滞納している税や公共料金等で一番多かったのは保険料であることが明らかとなりました。事例を少し紹介しますと、嘔吐を繰り返していたがお金がないために病院に行かず、市販の胃薬で様子を見ていたが、改善しないでいたために受診したところ、進行がん末期と診断された。糖尿病でインスリン治療をしていたが、コロナ禍の中で仕事がなくなり受診を控えた。国保料滞納のため受診が遅れ、がんの発見が遅れてしまったなどです。コロナ禍を背景とした死亡事例から見えてくるのは、非正規雇用など、経済的不安定層にコロナ禍が一層困窮に追い打ちをかけていること。困窮が医療へのアクセスを阻害し、重症化や手遅れを招いている実態があります。そして、滞納者への保険証取り上げ短期証や資格証明書の切り替えで医療を諦めさせていることが指摘をされています。資格証明書とは、保険証が取り上げられて、代わりに交付されるもので、国民健康保険の被保険者であることの資格を証明するものであり、医療費は全額自己負担となります。保険料が払えない滞納者が窓口で10割全額払えるでしょうか。今回の調査で、経済的な理由で死亡事例の約半数は、短期証や資格証明書などの健康保険証の制約があることが分かりました。大田区では、短期証約2300世帯、資格証明書は約220世帯となっています。保険証取り上げは命に直結します。
●そこで質問します。保険証の取り上げは行わないこと。短期証、資格証明書の発行はやめることを求めます。お答えください。

【区民部長】
次に、短期証、資格証明書についてのご質問ですが、国民健康保険は、被保険者が相互に支え合って成り立っている制度であり、納付いただいた保険料は、被保険者の医療費に充てられている大切な財源となっております。短期証、資格証明書は、保険料を納めていただいている被保険者との負担の公平を図る観点から設けられているものです。このため、保険料を滞納し、納付勧奨を重ねても納付をいただけない場合は、6か月間有効の短期証の交付対象となり、さらに高額及び長期の滞納が続いている場合は、資格証明書の交付対象となります。短期証などの交付は、保険料を滞納された世帯と定期的に納付計画の見直しを行う機会となっており、交付に当たりましては、区の要綱等に基づき、被保険者の特別な事情を十分に確認し、納付が困難な場合は、交付を猶予しております。また、今年度も昨年度と同様に、新型コロナウイルス感染拡大による経済的な影響を考慮し、新たな資格証明書は交付数を大幅に少なくするなど、柔軟に対応しております。今後も被保険者に寄り添い、個別具体的な実情を十分に確認した上で、適切に対応してまいります。

【福井議員】
広域化になってから、大田区では国保料を滞納した場合、延滞金も併せて徴収するようになりました。そして、延滞金の徴収をやめることを以前の決算特別委員会で求めたところ、延滞金は条例上徴収することになっております。それは、納期限までに適正に保険料を納めていただいている多くの被保険者との公平性を考えて設けられているものでございますとの答弁でした。実際に国保料の延滞金を徴収しているのは、昨年度の時点で23区中9区が延滞金を取っています。公平性が担保されていないとの理由ですが、23区中14区が延滞金を取っておりません。この14区には公平性の観点がないのでしょうか。延滞金を徴収していない区の中で台東区があります。徴収しない理由を以下のとおり述べています。条例22条1項では徴収されるものとされている。しかしながら、滞納者は失業者や低所得者による生活困窮者であることが多く、延滞金加算の実施は滞納被保険者の負担増となり、保険料本体の納付をさらに困難にすることが考えられるため、本区では同条第2項によって、全ての延滞金賦課対象者につき、一括して延滞金減免の運用をしているとありました。大半の未納・滞納世帯は、払わないのではなく払えないのです。払えない未納・滞納者に対して、国保料に加え延滞金の徴収は現実的でしょうか。高過ぎる保険料に延滞金が加わり、支払いを求めることにより基準生活費を下回り、暮らしが成り立たなくなるのは本末転倒です。
●大田区国民健康保険条例の第22条の2、延滞金の減免について、やむを得ない理由があると認める場合には、前条の規定により延滞金額を減免することができる条項があります。大田区でも延滞金の減免制度はあるのです。この条項を活用するべきです。延滞金は徴収せず、徴収の猶予や換価の猶予などを滞納者に伝え、寄り添った対応をすることを求めます。お答えください。

【区民部長】
次に、延滞金についてのご質問ですが、国民健康保険料の延滞金は、国民健康保険条例第22条で、納期限後に保険料を納付する場合は延滞金額を加算して納付しなければならないと規定しております。この取扱いにつきましては、再三東京都からも条例に則って事務処理をするよう指導を受けてきたところであり、区では、国保制度改革が行われた平成30年度にシステム改修等の準備が整ったことから、延滞金を加算することにいたしました。延滞金は、納期限までに適正に保険料を納めていただいている多くの被保険者との公平性を考え設けられるものであり、納期限までに保険料を納めていただくよう促す意義も有しております。区では、保険料が納付が困難な被保険者につきましては、その方の生活状況に応じて納付相談をお受けしており、災害など、やむを得ない理由がある場合は延滞金の減免を行っております。また、徴収の猶予や換価の猶予の制度をご案内し、申請により猶予が認められる場合は、猶予期間中の延滞金の一部を免除しております。今後も、被保険者お一人お一人の事情に応じて、丁寧にご説明し、適正に対応してまいります。

【福井議員】
世論と運動でようやく、自公政権は今年の4月から、未就学児に係る均等割保険料について、5割を公費により軽減することになっています。その一方で、高齢者の窓口負担を今年10月1日から2倍に引き上げました。世論と運動で1割に戻すことを求めていきます。国は未就学児の均等割軽減の理由として子育て世代の経済的負担軽減の観点と説明しています。しかし答申では、均等割額が3300円増となっています。負担軽減と言いながら、均等割額そのものを上げている。そして、子育て世代と言いながら、未就学児にとどまっています。ここに問題があると思います。そもそも、世帯員の数に応じてかかる均等割、国保料を高くする大きな要因となっています。特に、子どもの数が多いほど負担が引き上がる均等割には、まるで人頭税、子育て支援に逆行しているという批判が起こり、多くの団体、関係者が見直しを要望しています。この均等割は国保にしかありません。子どもの均等割をなくすことを国会で求めていきます。
●今回、未就学児の均等割額軽減の拡充を行い、残りの5割を大田区が負担をして、未就学児の均等割の負担をなくすべきです。金額にして僅か6150万円です。今回、国保会計補正予算第2次で、繰越金が10億5600万円ありますので、実現は十分可能と考えます。大田区としてせめて、未就学児の均等割の助成を行って、未就学児の均等割負担をなくすことを求めます。お答えください。

【区民部長】
次に、未就学児の均等割保険料についてのご質問ですが、均等割保険料は、国民健康保険制度から等しく利益を受けることに対する応益分として全ての被保険者にご負担をいただいております。子どもに係る均等割保険料の軽減措置につきましては、これまでも特別区長会として国へ要望してまいりました。先の国会で成立した健康保険法等一部改正法で、国保の未就学児の均等割保険料の軽減措置が導入されることになり、令和4年度分の保険料から5割軽減することが定められました。軽減額を5割としたことについて、国は、国民健康保険では、制度による恩恵を受けている方に一定の応益分のご負担をお願いする仕組みとなっていることに基づくと説明しております。未就学児の均等割保険料の軽減は、国の少子化対策の観点から、子育て世代の経済的負担を軽減することが目的とされており、軽減額の拡大につきましては、国の制度の中で検討すべきものと考えております。国に対しては既に全国市長会として子育て世帯の負担軽減を図るため、対象年齢や軽減割合を拡大するなど、制度を拡充することを要望しており、区としては引き続き国の動向を注視してまいります。

以  上

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