(映像は大田区議会ホームページより:16分)
2014年大田区商店街調査に社会的機能が欠けていることについて
【黒沼議員】
大田区の商業政策について伺います。
大田区は2014年商店街調査を行いました。どう活かされているでしょうか。
東京都の2010年の調査でも、後継者不足62.8%、核となる店が無い48.7%、商店街の業種不足32.8%、経営力が弱い27.1%です。ここから大都会での商店街が存続するには経済的機能と社会的機能が必要で①魅力ある個店②必要とされる店の種類③そして活動できる組織の3点が必要です。しかも商店街だけが繁栄することはなく地域社会や地場産業、大田区では街工場が活発でこそ繫栄します。そして大型店や通販に負けないで商店が生き残るにはマーケティングの原点、「誰に、何を、どのように販売するか」をしっかり据えることです。行政はこうした支援をすることです。川崎、品川、大崎など同じような都市間競争の時代は終わらせ、都市機能の分担政策で、地域の個性を生かす方向に舵を切ることです。それには地元商業者のキーパーソン育成が欠かせません。そして意欲があって経営力を向上させようとする個店の支援です。それは地域社会の商業機能を維持できることにつながります。大田区の商業は地域密着型に徹底すべきです。駅前再開発型ではありません。大田区の調査では大田区が示した方向性にほとんどが「特に関心が無い」との回答です。各商店の本当に求めている事業は別なのではないでしょうか。消費者の消費予定調査サンプルが駅周辺に偏り、区内全体が見えません。商店街活動が盛んな地域ほど生鮮三品を商店街で買う傾向があると調査しているのに全体ではどの地域も14%以上の購買力が東京中心へ吸引されているデータで供給者側のマーケティングが不十分と言わざるを得ません。世帯構成の変化の中で、地域社会の人々に対する「物を売る」という「経済的測面」のみならず、「地域コミュニティ」を位置付けた「社会的な側面の役割」を調査すべきだったのではないでしょうか。具体的に例を挙げれば、御用聞き、配達、送迎、などの買い物支援の調査、商店街が横の百貨店として「生鮮三品市場」などの役割を果たせるか。商店街、店舗のバリアフリー化は必要かの調査、「量り売り」「卵1個、2個、魚一切れ」でも売る店の可能性の調査、環境にやさしいまちづくりに向けた不用品リサイクル等の調査について等のそれぞれ支援策の調査を行うべきでした。
具体的に個店支援が大切だと思われるのは宅配支援制度です。高齢化支援として宅配サービスを始めようとしても個店用制度はなく商店街支援しか無いという欠陥があります。商店街は個店の集合体です。各個店の発展なしに商店街の発展はあり得ません。誰かが頑張り、周囲の個店はそれを見ながら刺激を受け、個性的なお店が増えていくのでありその支援こそ必要です。
新潟市の経験は教訓的です。新潟市は地域商業全体の活性化を目的に「地域商店魅力アップ応援事業」の名称で、集客向上や売上増加のための補助制度です。改装工事とともに備品購入に対して100万円を上限です。2015年6月から スタートしたそうですが1年間で135件、6,336万円の利用があったそうです。当初は商店会加入者のみが対象でしたが、団体加入の要件を外したそうです。そしたら利用者が増加したとのことです。市の利用者へのアンケートによれば、45%が来客数増加、45%が「補助があったからこそグレードアップに踏み切った」と答えたそうです。
●そこでお聞きします。これからの商店街は個店支援を位置付けて、地域の住民に対して何をどういう風に販売し、住民に価値を提供していくのかということを行政は考えることが重要ではないでしょうか。お答え下さい。
【産業経済部長】
私からは商業に関する2つの御質問にお答えいたします。まず、商店街の個店支援に関するご質問ですが、議員お話の商店街調査では、商店街が地域の賑わいつながりの場として機能するように、連携・支援していくとしており、商店街は地域コミュニティの重要な核の1つであると位置づけでございます。その上で各個店においてどのような商売をされるか一義的には各経営者のご判断になると考えてございます。そうした中、産業振興課では、商店街戦略的PR事業、コロナ対策支援事業、産業振興協会では繁盛店創出事業、取引相談、おおた商い観光展など個店を対象にした施策も展開をしてございます。各事業の実施に当たりましては、専門家による経営指導、広報、販売促進、販路拡大といった支援策を各個店にも寄り添い提案するなどしており、この考えは、コロナ禍においても同様でございます。今般のコロナ禍を機に商店街および個店を取り巻く環境は、大きく変わってきてございます。引き続き適宜適切な支援策を講じ区内商店街および個店の持続発展に取り組んでまいります。
大田区の商店街振興は商店街支援を基礎にすることについて
【黒沼議員】
大田区の唯一と言っていい「個店支援」は繁盛店創出事業です。ところで、その実績は2016年21件、予算執行率90.95%、2017年22件、執行率89.26%、2018年29件、執行率86.27%、2019年21件、執行率69.6%、2020年20件と減ってきています。少ない予算にもかかわらず不用額を出していることです。同じような施策で高崎市支援策は「まちなか商店リニューアル助成事業」と言いますが特徴は「住宅リフォーム助成」の経済的効果が抜群という実績を学んで、ならば次は商業にもというのが発端とのことです。大田区の繁盛店支援のような大規模でなくても支援し、改装とともに備品類も対象にしました。新潟市と同じ考えです。高崎市の人口は37万余なのに予算5千万円です。大田区の2021年度1,800万円の3倍です。助成額も工事は20万円以上に2分の1、備品は10万円以上に2分の1、いずれも限度額100万円です。
●そこで提案です。繁盛店創出事業が大きく発展し大田区の商業が発展するためには大田区の個人資産の形成に資する事業には支援しないという考えではなく、地域経済の活性化の発展と結びつけて、企業診断士を必要としない「備品購入」まで含んで支援を拡充すべきではないでしょうか、お聞かせ下さい。
【産業経済部長】
次に、繁盛店創出事業の助成対象に関するご質問でございます。当事業では商店経営に知見のある専門家による提案に基づき、店舗改修などを行う場合に一部費用を助成するものでございます。当事業の趣旨は支援店舗の集客力向上のみならず、周辺の商店や商店街への波及効果をもたらし、地域の活性化につなげていくことであり、それに資すると認められる部品はすでに助成対象としてございます。一方で原状回復を目的とした備品購入や厨房機器などの基本的な設備、店舗外に持ち出し可能なパソコンなどの備品は、事業趣旨に鑑み対象外としてございます。本事業の活用事例は、産業振興協会のホームページで紹介してございまして、地域の賑わい創出に寄与するものと考えてございます。なお、繁盛店創出事業の一環として実施した新型コロナウイルス感染症防止対策特別助成ではアクリルパネルやサーキュレーターなどの備品のほか、感染防止対策実施のPR経費も助成対象としており、多くの店舗でご活用いただいてございます。
雑色駅周辺の再開発計画を中止を求めることについて
【黒沼議員】
次に雑色駅周辺の再開発計画はやめて、商店街の個店を基礎に、社会的役割を位置付けた経営的機能を発揮しる方式に切り替えるべきと提案します。
大田区は雑色駅周辺開発の記事を4月1日更新し、「地元発意のまちづくり案を作成し事業化区域など合意形成を目指しています」と記されています。驚いたことに区域は3.3haです。京急蒲田が1ha、糀谷が1.3haですから3倍の区域で京急線からバス通りまで含まれています。これまでの失敗を教訓とせず、性懲りもなく計画を進めようとしています。しかも商店街通りを拡張する計画ですからお店が削り取られるではありませんか。ひどい話です。最近、商店街の関係者からは京急高架化による側道の出現で人の流れが変わり、人通りが少なくなったとの深刻な声が聞こえてきます。駅前再開発計画は、先に申し上げた商店街の社会的役割と個店を基礎にした経済的役割を壊します。京急蒲田駅前、糀谷駅前再開発で実証されているように、蒲田でも糀谷でも地権者、借地権者、借家人の内6割が立ち退かされたことにより、京急蒲田西口駅前再開発ビルに約320戸、糀谷駅前再開発ビルに約300戸の高層再開発ビルが出現しているにもかかわらず、以前の賑わいも人の気配も戻って来ず、「公共の福祉」の名で実現するはずだった区民・住民の賑わいの要望は実現できませんでした。では駅前再開発とは何だったのか。京急蒲田西口再開発には野村不動産と住友商事、糀谷には三井不動産と旭化成不動産が関わりました。「保留床」の買い取り価格が、開発企業には従前資産価格と事業費の合計から補助金を差し引いて引き渡されるのでこの価格が市場価格よりかなり低いので、再分譲するときは市場価格にしてしますから、多額な利益を上げることができるのです。濡れ手に泡です。保留床再分譲の処分金は、京急蒲田西口で約40%の79億円、糀谷では55%の99億円です。利益率は平均25%と想定すると西口再開発では20億円、糀谷再開発では25億円がデベロッパーの利益になります。多額の公費が投入されますから権利床所有者も利益を得ますが、土地から床に返還されますので次第に価値が下がっていきます。これを見抜けずに行政がいうことだからと安心させられる人を見てきました。権利床で再開発に入居したGさんは、最初、2万円台だった管理費の時は働いていたのに、退職して年金生活に入った今、2倍になって困っています。「再開発」は、いかにも民主的運営の体裁をとりながら、実は多額の補助金は補助金権利床所有者にではなく、大手デベロッパーの「利潤保障制度」と言っても過言ではありません。真の街づくりにはなりません。
●そこでお聞きします。先に申し上げたように、今、商店街に求められているのは、住民に対して何をどういう風に販売し、住民に価値を提供していくのかを実現するために、経営機能と社会的機能を組み合わせた施策を強力に進めることであり、公的資金で多くの関係者を立ち退かせながら、デベロッパーに巨大な利益を与える駅前再開発を進めることではありません。計画は中止し、真に住民の要求に基づく商店街を中心にした元気な街づくりを進めるべきです、お答え下さい。
【鉄道・都市づくり部長】
私からは雑色駅周辺の再開発計画についてのご質問にお答えいたします。市街地再開発事業は都市が抱える機能性や居住性、安全性などのさまざまな課題を解決し、安全で安心で魅力あるまちづくりを実現させるための有効な方策の1つでございます。その一方で一般的に市街地再開発事業は区などの行政がその推進の是非についてを主導するのではなくて、地域の皆様の発意と合意の元に検討がなされ、推進がなされるものというふうに考えます。当該市街地再開発事業におきましても、建物の老朽化や道路基盤整備状況、地元商店街の関係等を踏まえまして、これまで検討が進められてきたものでございます。区としては引き続き商店街の発展など地域経済の活性化にも留意し、地権者の皆様のご意向・ご要望等とを尊重しながら、地域の特性を踏まえたまちづくりの実現に向けて必要な支援を行ってまいります。
以 上