(映像は大田区議会ホームページより:62分)
- 日本政府に、核兵器禁止条約に署名・批准するよう区長が意見をあげることについて
- コロナ対策を最優先とする新年度予算にすることについて
- 国民健康保険料の値下げと、均等割の減免の実現について
- 小中学校の少人数学級の推進と、コロナ対策について
- 高齢者も現役世代も安心できる自治体福祉の確立について
【清水議員】
日本共産党区議団を代表して質問をいたします。
まず初めに、2月13日、最大震度6強の福島県沖地震が発生いたしました。10年前の3.11の余震とのことですが、家屋等の一部損壊1600棟以上で、コロナ禍の中での避難生活と復旧活動で苦労されている皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。国は、この復興に苦労されている皆様に、全ての方々のなりわい、生活の復興のために、一刻も早い支援を求めます。
また、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森 喜朗前会長による女性蔑視発言に厳しく抗議します。辞任で終わりではなく、このような発言が許されない社会となり、性別に関係なく誰もが自分らしく生きられるジェンダー平等社会の確立に、日本共産党は全力を尽くします。
日本政府に、核兵器禁止条約に署名・批准するよう区長が意見をあげることについて
【清水議員】
質問に入ります。1月22日、核兵器禁止条約が発効されました。人類史上初めて、国際法で核兵器が違法となりました。この条約は、核兵器の開発、取得、貯蔵、使用、威嚇の全ての局面を禁止するものです。区内に住むある被爆者の方は、「私は核兵器をなくしてほしいと運動を続けてきました。こんなにうれしいことはありません。いろいろと思い出します。見知らぬ大勢の方々が署名してくれました。一緒に運動し、志半ばで亡くなった仲間の顔も浮かんできます。日本政府の条約批准を求めて、これからも運動していきたい」と語っておられました。発効日翌日の多くの新聞紙上では、条約の重要な意義を強調するとともに、条約に背を向ける日本政府の姿勢を厳しく批判しています。
菅首相は、禁止条約より核抑止力の維持・強化と言っていますが、米国の核の傘に依存する硬直した姿勢を改めるべきです。そして、このような姿勢も違法となります。加盟して保有国に核廃絶を迫ることこそ、被爆国の責務です。日本政府に核兵器禁止条約への署名批准を求める意見書決議をしている自治体は、2020年12月28日現在、都道府県区市町村合計1788のうち519自治体で29%です。世論調査では、参加すべきと答えた人は72%でした。第4回定例議会で、我が党代表質問に区長は、「引き続き、基礎自治体として平和関連の各種事業を着実に進めてまいります」と答弁しました。しかし、世界は大きく変わりました。
●伺います。核兵器のない世界を目指すとした平和都市宣言にふさわしい区長として、唯一の被爆国である日本政府に核兵器禁止条約を署名批准するよう意見を上げることを求めます。お答えください。
【松原区長】
菅首相は1月20日の参議院本会議においても、昨年11月の参議院での答弁に引き続き、我が国の立場に照らし核兵器禁止条約に署名する考えはないとして、署名についての考えを明らかにしています。また、核兵器のない世界を実現するためには、核兵器を保有する国を巻き込んで核軍縮を進めることが不可欠であり、立場の異なる国々の橋渡しに努める決意であるとして、条約発効後も日本政府としての考えに変わりがないことを示されました。区といたしましても、これまで繰り返し申し上げているとおり、区民の皆様とともに平和の尊さについて考え、次の世代に語り継ぎ、平和な世界を築いていくという趣旨に沿って、平和都市実現のため、引き続き基礎自治体として平和関連の各種事業を着実に進めてまいります。
コロナ対策を最優先とする新年度予算にすることについて
【清水議員】
次に、新年度予算はコロナ対策を最優先とする、今やるべきことは何かについて伺います。
日本共産党大田区議団は、区民アンケートを実施しております。1月下旬から約25万世帯に配布が始まり、連日返信されてきており、現在約4600通となっております。ご協力をいただいた区民の皆様に、お礼を申し上げます。
現在集計中ですが、アンケート項目の「暮らしについて」では、悪くなったと答えた方が多く、理由のほとんどが新型コロナウイルス感染拡大と消費税増税です。「大田区政へのご意見」の欄では、給付金の再支給を求める記述が目立ちます。中には品川区の例を示して、なぜ大田区でできないのかと書かれた方も大勢いらっしゃいました。特に若い20代30代からの要望が強いのが特徴です。また、新型コロナ感染症対策については、医療・保健所体制の強化、PCR検査の拡充、保障と一体の休業補償、科学的根拠に基づく正確な情報提供をと続き、強い関心がうかがえます。新空港線についての項目では、蒲田のまちの活性化に期待するが、今のタイミングではないのではないか、コロナ対策が先ではないか等の意見が大変多く見られます。
区は、新年度予算編成に当たって全庁一丸となって全事務事業を見直し、コロナ感染症対策を喫緊の課題に掲げて区民の命、安全を守る取組の予算としていました。しかし、大田区の新型コロナウイルス感染陽性者数の状況は、2月23日現在5998人となっており、収束の見込みはまだまだ見えません。感染防止対策が必要です。さらに、我が党のアンケートでも、区が行った中小企業の緊急調査でも、コロナ感染症の影響が区内のあらゆるところに出ている中で、どこにどのように予算をつけるのかが今問われております。
大田区新年度予算一般会計総額2937億7761万1000円で、前年度比2.2%増です。歳出で区民の要望が実った予算には、コロナ患者を受け入れる医療機関に1人10万円、PCR検査センター、新型コロナワクチン接種事業、水防活動拠点整備、建物被害認定調査モバイルシステム、住宅リフォームの助成拡充、認知症検診事業、医療連携型グループホーム支援、電子図書館事業、給付型奨学金創設、産後ケアの充実、不登校特例校分教室、保育サービスの充実等があり、評価します。
しかし、蒲田駅前広場の再整備34億8533万6000円、鉄道・都市づくり関連事業7億5767万円、ハネダグローバルウイングズのまちづくり8億6837万円、新空港線整備主体1億8000万円などの大型開発、また、公共施設の複合化計画として、新蒲田13億円、大森西二丁目3億1703万円、入新井地区3億4052万円、田園調布地区4億9871万円、蒲田西地区35億9391万円などの予算が組まれ、総額は100億円を超えております。蒲田駅東口初期整備には賛成しておりますが、コロナ禍の新年度に、土地開発公社から旧三和ビル跡地購入等の32億1553万6000円の予算の計上が今必要でしょうか。また、公共施設の小中学校改修は単独で行うことを求めてきましたが、区は引き続き小中学校の改修を複合化、大型化としています。工期は長期化し、費用も増大します。コロナ禍において、新年度はこのような大型開発や公共施設の複合化は一旦凍結、見直しを求めます。
中でも、新空港線についてです。今定例議会に提案された第8次補正予算で、10億円を新空港線整備資金積立基金に積み立て80億円にしようとし、新年度予算では、また第3セクター設立準備のために1億8000万円を計上しています。昨年9月3日の東京都の協議の場で、1、乗り換えの利便性の向上、2、沿線開発の動向、3、事業費の縮減、これらの検討を踏まえて需要予測や収支採算性などを精査して、都区負担の考え方を整理して2回目以降を開催するとなりましたが、都と区の間には大きな隔たりがあり、合意の見通しはあるのでしょうか。また、新年度の組織改正では、コロナ禍において職員体制が大変厳しく全庁を挙げて対策に奮闘されているときに、鉄道・都市づくり部を新設し、新空港線・沿線整備担当課長を新設するとしています。
コロナ禍で社会は大きく変わりました。オリンピック今年の夏開催に反対の世論は80.1%、全世界がコロナ感染拡大で、当面はインバウンドの客も見込めません。そのような中、JR羽田空港アクセス線は事業認可され、具体化が進んでおり、ニュース報道で話題になっています。これらの情勢から、新空港線は乗降客数、黒字転換年等、大きく変わるはずです。
さらに、まちづくり推進部が発表している「コロナ禍を踏まえたまちづくりの取組み」についての新空港線整備を契機に蒲田のまちづくり事業は、コロナ対策を早期に実施した場合の第2段階、国土強靱化への取組の強化となっており、区の財政状況、コロナの収束時期などから複合的に展開し、適切かつ効果的に実施となっています。今は第2段階とは到底言えません。区長は、本会議第1日目、16日の施政方針演説で、新空港線については何も語りませんでした。区民に説得も説明もできていない中での新空港線計画は撤回を求めます。区財政は厳しいと予想している中、新空港線計画のための積立金70億円、さらに第8次補正で10億円を増やすことはやめ、コロナ対策に回すことを求めます。
●伺います。新年度予算の第3セクター設置のための1億8000万円、新空港線計画の予算はコロナ対策に回すことを求めます。お答えください。
【松原区長】
令和3年度予算は、「新たな日常の実現」に向けた変革を進める予算と位置づけ、4つの重点課題を掲げるとともに、区の発展の礎となるまちづくりを着実に推進する観点から、鉄道・都市づくり関連事業は非常に重要であります。特に新空港線につきましては、事業を進める上でその財源の確保も必要不可欠であります。現在、コロナ禍で打撃を受けた区民生活及び区内経済の早期の復興に全力を注いでいるところです。その一方で、持続的に区を発展させるため、国土強靱化に取り組むことも非常に大切なことです。さらに、ポストコロナ社会を見据え、都市政策にも取り組む必要があります。その一翼を担うのが新空港線であります。加えて、新空港線は単なる鉄道整備だけではなく、まちづくりと連携して行う事業であることから、地域の活性化に大きく寄与するものです。以上のことから、新空港線の予算を他の事業に回すことは考えておりません。
【清水議員】
次に、感染症対策で最も苛酷な業務となっており、厳しい状況が続いている保健所について伺います。現場の職員の皆様には、心より感謝をしております。しかし、職員は兼務発令で地域保健課からの応援や、事務職が事務やトレーサーの補助に当たっています。交代勤務を敷き、まさに綱渡りのような体制です。さらにワクチン接種の大事業が始まります。新年度の組織改定ではワクチン担当係長が新設され、さらに保健師、看護師、助産師は会計年度職員として募集されようとしております。73万区民に安全にワクチンが接種できるよう、
十分な体制が求められます。新年度の予算のコロナ対策は全額国費のワクチン接種が中心で、PCR検査については無症状の方への社会的な検査等の積極的な予算が組まれていません。ワクチン頼みで感染防止対策がおろそかになってはいけません。
東京都は1月22日以降、保健所の逼迫と医療崩壊を防ぐためとして、濃厚接触者の追跡は行わなくてもよいという方針を出しました。大田区保健所はそれを受け、子どもは重症化しない、保育園等でクラスターは発生していないと保育園は陽性者が出ても休園とせず、小中学校においても濃厚接触者疑いの検査をしない方向になりました。自治体によっては保健所は引き続き濃厚接触者の追跡をし、感染拡大を食い止める活動を続けている区もあります。大田区保健所が行っている検査数は減少しています。2月14日では47件、陽性者は9人、19.1%となっておりました。しかし、クラスター発生は件数も規模も拡大しています。
NHKで放映されましたが、和歌山県では国の言いなりにならず保健所の統廃合をほとんど行わなかったため、昨春、日本で最初の病院クラスターが発生した際、PCRを県独自の判断で大規模に実施し、早期に収束させました。墨田区では検査センターを持っていたため、検査技師がPCR検査は得意ですと大規模な社会的検査が可能となりました。墨田区保健所長は、「検査、検査、検査、少しでも検査を緩めてはいけない」と発言しています。世田谷区は区独自の財源を確保して、PCRの社会的検査の大規模実施やプール方式を先んじて実現し、それが大きな動きにつながっています。
日本共産党は、一貫して4つの保健所を1か所に統合したことに反対してきました。区長は、「数は減ったけれども機能強化してきた」と答弁していますが、それは当たらないことが、現在のパンデミックの収束に至らない大田区の実態が示しているのではないでしょうか。
●伺います。保健所体制の拡充をすること、専門家の正規職員の増員をすること、お答えください。
【松原区長】
区は新型コロナ感染症の感染拡大に対し、これまで保健所内の保健師のみならず、福祉部の保健師を兼務配置し、人員体制を強化するなど対応しております。また、電話相談窓口の業務の一部を外部委託し、さらに緊急対応として、全事務務事業の見直しによる経営資源の再配分を行い、感染症対策課をはじめ、優先度の高い施策を実施する所属へ人員を再配置しました。加えて、年末年始における感染急拡大を受けて、各部局の職員による応援体制を取り、一段と体制を強化するとともに、専門資格を持つ会計年度任用職員の配置を予定しております。保健師の増員につきましては、適切な確保に努めており、引き続き区民の安全・安心のために、全庁一丸となって全力で取り組んでまいります。
【清水議員】
ノーベル生理学・医学賞受賞者の一人、東京工業大学名誉教授の大隅良典さんは、コロナの最大の特徴は、無症状の感染者がどんどん感染を広げてしまうこと、早く見つけ出さなくては感染拡大を止められないと、PCR検査の拡大が遅まきながらももっともっと増やすことを主張されています。区内の高齢者施設、保育園・学童、学校、医療機関へのPCR検査拡充は喫緊の課題です。
まず、高齢者施設です。区内の特養糀谷25人、特養多摩川で67人のクラスターが発生しています。入所者の家族などの面会は許されていません。なぜ感染が広がっているのか。無症状の陽性者が職員の中にいた可能性が考えられます。感染防止に血のにじむような努力を続けている全職員を支えることが、今何より必要です。高齢者は重症化しやすいため、高齢者施設の利用者、職員には定期的なPCR検査をすべきとの東邦医大、舘田教授のアドバイスを受け止めるべきです。国も東京都も予算を出すとしています。しかし、検査をして陽性者が出たら現場の体制が取れないことを心配して無症状者が検査を受けない事態が心配されています。世田谷区では広く社会的検査を広げ、昨年12月18日時点で介護施設3619人中53人が陽性でした。あわせて区は、検査した結果、施設が人手不足になる場合に備えて、介護施設が協力して職員を派遣し合う覚書を交わすことを積極的に調整しています。
●伺います。高齢者施設の感染防止と命を守り、区内の医療崩壊を食い止めるため、区長が先頭に立ち、高齢者施設全利用者、全職員へのPCR検査を実施すること、さらに陽性者が出たら事業が運営できないことを危惧してちゅうちょする事業者が出ないよう、世田谷区のようなバックアップ体制を取ることです。東京都には、週一、二回の定期的な検査ができるよう費用の要望をすることを求めます。お答えください。
【松原区長】
コロナ禍の厳しい状況において、介護従事者の感染リスクに対応すべく、東京都では特別養護老人ホーム等の施設に対し、検査資材の配布をするなど、広域的かつ面的な支援が講じられております。区も、東京都との共同による感染拡大防止対策推進事業を通じ、PCR検査について必要な対策を取っています。事業者へのバックアップ体制につきましては、利用者の生活を守る上で必要の場合は区として応援体制を取りますが、現在まで区に対し、介護従事者の応援要請等はなく、対応が必要な状況には至っておりません。各事業者が適切な対策を講じながら事業を継続しているものと捉えています。東京都への要望につきましては、高齢者施設における新型コロナウイルス感染症対策強化事業により、反復的なPCR検査の実施が可能となっており、必要な措置が取られているものと考えています。このことについては、区としても各施設に周知しております。
【清水議員】
次に、保育園等についてです。乳幼児には発達や心身に影響があるため、マスクを着けさせていない施設がほとんどです。保育士は、食事の介助やおむつ替え、抱きしめたり、抱っこしたり、遊んだりと、保育で密は避けられません。おもちゃ、椅子、テーブル、トイレなどなどの消毒を欠かさず、業務量が激増した保育士は常に感染の不安にもさらされています。「安心して保育がしたい、そのためにPCR検査を定期的に受けさせてほしい」、保護者は「持病がある家族もいる、子どもが保育園でコロナに感染したらと思うと不安」という声があります。
●伺います。陽性者が出ても、子どもは重症化しないと、濃厚接触者としない、また、職員も症状がなければ検査をしないという大田区の対応を見直し、保育園、学童全ての職員のPCR検査を定期的に公費で行うことを求めます。お答えください。
【松原区長】
PCR検査は完全なものではなく、陽性であっても陰性と判定されることもあることを念頭に、検査の範囲を決定し、得られる結果に基づき対応することが重要です。区はこれまで、陽性者が発生した施設へ全例調査を行い、保育園等においては濃厚接触とは認められない場合もPCR検査を実施してまいりました。年末年始からの患者数の急増のため、暫定的に濃厚接触者以外の検査は実施しておりませんでしたが、今後は感染者数の状況により対応方針を変更する考えです。今後も感染を広げないため、引き続き適切に対応してまいります。
【清水議員】
次に、区内の医療機関の現状についてです。区長が動画で話されているとおり、厳しい状況が約1年続いています。昼夜を分かたず命がけの医療を続けてくれている区内全ての医療従事者の皆様に、心から感謝します。区内医療機関でもクラスターが発生しています。大森日赤病院は患者43人、職員71人、松井病院は患者13人、職員7人、また、公社荏原病院はコロナ患者専用病棟になっております。その結果、それぞれの病院は外来、入院、救急の受入れの中止や制限が行われております。区内では救急車を呼んでも受け入れる病院探しに時間がかかり、救急車がなかなか動けない事態が起きています。ある方は、救急車が来ても受入先が決まらず、2時間以上かかり、やっと処置だけは千代田区で、その後、入院は台東区の病院となりました。1分1秒を争う心臓や脳血管の病気では、まさに命に関わります。
医師、看護師等は以前からの人手不足がさらに悪化し、笑顔は消え、友人や家族との会食を控え、1年にわたるストレスは計り知れません。また、経営が厳しく、減収補塡のために借金をせざるを得ない事態で、賃金もボーナスも上げることができず、結果、離職が増え、さらに人手不足の悪循環となっていると聞いています。今後、ワクチン接種の際も多大な苦労を区内医療機関にお願いすることになります。コロナ患者受入れ1床10万円の予算は評価いたしております。
●そこで伺います。区内の全ての医療機関へ定期的なPCR検査の費用の支援、そして、全ての医療従事者に慰労金の支給をすること、そして、区独自でも減収分の補塡で医療崩壊を防ぐことを求めます。お答えください。
【松原区長】
まずは日々献身的に患者への対応をしていただいている医療従事者の皆様に、心から感謝を申し上げます。区は、患者発生のあった医療機関についてPCR検査を幅広く実施することを方針としてまいりました。今後、新型コロナワクチンの接種が開始され効果も見込まれます。よって、現時点では定期的なPCR検査を実施する考えはありません。
病院の経営が厳しい状況や医療従事者の労をねぎらう目的から、国や東京都は必要な支援を講じてきました。区は、陽性患者の入院を受け入れている病院への支援、加えてコロナ患者の病床を確保する支援を行っており、慰労金支給や病院への補塡をする考えはありません。区は、引き続き区民の健康と安心を守るために全力で取り組んでまいります。
【清水議員】
次に、区内中小企業への緊急支援について伺います。新年度予算、産業経済費60億3046万9000円で、前年度より3億9847万円の増となっていますが、ほとんどは中小企業融資が昨年度より約9億円増です。区の産業振興は、ハネダピオ、イノベーションシティ中心です。区長は16日の挨拶で、「本区の強みは、我が国の産業を支えてきた高度なものづくり産業の集積地、蒲田、大森、都内有数の商業・繁華街で、地域に根づく力強い産業力」と発言されました。しかし、区内の中小企業のコロナ禍においての厳しい実態は、大田区が行った影響調査、この調査はオンラインのみで行われ、対象が限定されていて問題も多いと言われていますが、その調査でさえも、「先が見えない」30%、「現在よりさらに今後悪化するだろう」23.9%でした。ある町工場の社長は「塗炭の苦しみ」と語っています。この実態、区長はどこまで感じているでしょうか。そして、どんな商売も苦しいのに支援が全くない八百屋、魚屋、肉屋、酒屋、洋服店などなどは閉店が後を絶ちません。コロナ危機から区内中小・零細業者を救うために、今こそ公助の直接支援が必要です。それらが地域経済を守ることにつながります。区長は、「大変厳しい環境に直面しているが、必ず新型コロナウイルス感染症を克服し、元気な経済が戻ってくると確信しております」と挨拶されました。ならば、その実現に必要なことがあります。
●伺います。国に持続化給付金、家賃支援金の再度の支給を求めることです。コロナの影響を受けて減収となった全ての事業者へ、区独自の直接支援を行うことです。お答えください。
【松原区長】
国内で初めて感染者が確認されてから1年余りが経過し、この間経済活動に大きな制限がかけられ、区内事業者の皆様に非常に大きな影響が生じてきております。中小事業者に対する支援策といたしましては、国においては持続化給付金や家賃支援給付金などが、また東京都においては感染拡大防止協力金や飲食店・宿泊施設等への感染症対策支援といった直接的な支援が実施されてまいりました。区といたしましては、国や東京都などが行う支援と同じ目線ではなく、地域における新たな経済循環の創出や感染拡大防止の効果をより一層高める支援等を行ってまいりました。現在、新規感染者数は減少傾向にありますが、まだまだ予断を許しません。引き続き、国や東京都の動向を注視するとともに、区内産業支援に全力で取り組んでまいります。
【清水議員】
●23区内でも最も大きな支援を行っているとしている融資について伺います。融資の返済開始が近づいてきています。しかし、コロナ感染第3波の中、緊急事態宣言も延長され、先行きも見えず、収入も上がっていない事業者が多い中、据置期間を1年間延長すべきです。お答えください。
【松原区長】
新型コロナウイルス対策特別資金については、あっせん金額が770億円を超えるなど多くの区内事業者の皆様にご利用いただいております。昨年4月の大幅拡充に伴い、元金据置期間も6か月以内から12か月以内に延長したことで、少しでも事業環境の維持、回復にお役立ていただいているのではないかと考えております。一方で、返済期間を108か月以内としている中で、据置期間のさらなる延長を行うと、実際の返済期間が短くなることから、1回当たりの返済金額が増加し、かえって事業者の負担が増えてしまうことも考慮しなければなりません。融資あっせんは、最終的には金融機関と利用者の間で返済に係る条件等をご調整いただく必要がございます。これらを総合的に勘案し、区といたしましては据置期間のさらなる延長を行うことは考えておりません。
【清水議員】
次に、コロナ禍における生活保護について伺います。コロナ感染により生活が厳しくなった区民への支援は、昨年3月25日から本年2月4日時点で、区社協福祉資金、緊急小口資金、総合支援資金、生活支援費5303件、JOBOTA生活困窮自立支援事業471件、住居確保給付金949件となっています。現在これらの支援が打ち切られたら、生活の支えは生活保護になる方が多くなると思います。2020年6月時点で区の生活保護受給世帯は微減でしたが、今後は増加することは確実ですし、増えなければ命に関わる事態になりかねません。「生活保護は権利である」と安倍前首相は国会で答弁されました。健康福祉委員会で我が党が要望しましたが、大田区の生活保護のホームページでは、「権利である」と掲載されました。小田原市のパンフレットのように、申請相談のパンフレットも、安心して生活保護の申請ができるような様式に変更することを求めます。
新年度予算では、生活保護費の扶助費が4億9047万3000円の増となり、1.3倍の生活扶助の件数増予測となっています。しかし、大田区人事計画には、生活保護担当職員の増員が見当たりません。現状でも、ケースワーカーが約100人担当という激務が強いられ、メンタルヘルスが問題となっています。職員の心身を守り、生活保護が必要な区民への支援ができる大田区とすべきです。
●伺います。生活保護の受給が必要な人の増加に見合った職員増を行うこと、生活保護が権利であると安心して申請ができる広報をさらに強めることです。お答えください。
【松原区長】
社会福祉法において生活保護法の適用を受ける被保護世帯数により、ケースワーカーなどの現業員の人数が標準として定められております。この標準の人数を踏まえ定数算定したうえで、各生活福祉課に職員を配置しております。また、生活保護制度の周知に関しましては、必要な場合はためらわず相談に来ていただくよう区のホームページにおいてご案内しているほか、生活再建・就労サポートセンターJOBOTAでは、経済的な問題、就労などについての問題など相談対応をしており、相談内容に応じて、区の生活福祉課に対応を引き継いでおります。今後も、社会情勢や被保護世帯数の動向を的確に把握し、適正な職員配置に努めるとともに、必要な方が生活保護を受けられるよう周知を進めてまいります。
【清水議員】
生活保護が必要なのにちゅうちょする方に、親族に生活保護を受けることを知られたくないという方がいます。日本共産党小池 晃参議院議員の質問で、「扶養照会は義務ではない」と厚労大臣が答弁しました。2020年9月11日厚労省の事務連絡でも、相談段階における扶養義務者の状況の確認について、扶養義務者と相談してからでないと申請を受け付けないなど、扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行うといった対応は不適切であるので改めてご留意願いたいとなっています。
●伺います。国会の厚労大臣の答弁のごとく、大田区においても生活保護の申請の際、親族への扶養照会は見直し、担当職員はじめ庁内職員に確認することを求めます。お答えください。
【松原区長】
生活保護法では、扶養義務者による扶養は保護の前提条件とはされておりません。福祉事務所では、国の通知に基づき扶養照会を行っておりますが、その際には、DV関係者をはじめ、社会福祉施設入所者や、長年、音信不通の方等には扶養照会を行わないようにしております。また、生活相談の段階で職員から親族への扶養照会が保護の要件であるかのような説明は行っておりません。今後も国の動向を注視し、適切に対応してまいります。
国民健康保険料の値下げと、均等割の減免の実現について
【清水議員】
次に、国民健康保険について質問します。日本共産党区議団は2月9日、区長に緊急申入れを行いました。長期化するコロナ禍及び再度の緊急事態制限の下、区民生活は疲弊しています。昨年12月、都の国保運営協議会は、国の仮係数による来年度国保料率算定結果を報告し、来年度は今年度と比べて4335円値上げとの試算を示しました。国は保険者努力支援制度にペナルティ措置を導入し、繰入れ解消のための各自治体の健全化計画公表や、保険料収納率引上げの具体化等、値上げと徴収強化を迫っています。東京都も、来年度国保運営方針改定案で、保険者努力支援制度を活用しながら、医療費適正化や収納率向上を推進とし、保険料徴収指導員の派遣等で各自治体の繰入金解消を求めています。
これ以上の保険料の値上げと徴収強化は、コロナで困窮する加入者の生活苦を増大させます。本来、国の責務として負担格差を是正し、皆保険制度を守る必要があります。そして、それを促す地方からの要請と独自対策が求められています。この間、立川市、瑞穂町、武蔵村山市の国保運協は保険料の据置き答申を出しました。さらに、小金井市、日野市では、来年度保険税の値上げの諮問を見送っています。江戸川区では値上げ幅を圧縮しました。大田区も、コロナ禍において、あらゆる努力で高過ぎる保険料を何とか改善するという姿勢に立ち、区民の命と健康を守る立場に立つことです。新年度国保会計を見ますと、延滞金の予算を1343万円見込んでいます。昨年度は109万円でした。払いたくても払えない区民がさらに増える見込みで、12から13倍の延滞金を見越していることになります。何と冷たい対応でしょうか。
20日に大田区国保運営協議会が開かれました。所得割率で0.11ポイントの引上げですが、基礎分、支援金分の均等割額は800円引下げとなり、5万2800円が5万2000円となりました。コロナ感染拡大の影響を踏まえた結果ですが、人頭税と言われている子ども一人ひとりにまでかかる保険料の均等割減免について、我が党は一貫して求めてきました。今回の800円の値下げは、高い保険料に苦しむ多くの人々の声が反映したもので、一定の評価をしますが、単身の低所得者が若干下がるものの年収300万円以上は値上げの傾向です。さらに、介護分が大幅に上がったために、40歳から64歳のほとんどの世帯が値上げとなっております。
●ここで伺います。来年度保険料については、困窮する加入者の実態を考慮し、値上げではなく引き下げること、または据置きを求めます。お答えください。
【松原区長】
まず来年度の保険料についてですが、現在、特別区では共通基準に基づき均等割の割合を低く抑え、所得の低い方の負担に配慮したものとしております。また、独自の激変緩和を実施し、被保険者の負担抑制を図っております。来年度の保険料算定に当たりましては、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う特殊な社会情勢に鑑み、区財政の状況や長期的な財政規律の確保も視野に入れ、今年度同様の激変緩和を維持した保険料案を、2月20日の大田区国民健康保険運営協議会に諮問し、原案を適当と認める答申をいただきました。保険料の負担軽減の在り方につきましては、制度の趣旨を踏まえ、都内保険料水準の統一を将来的な方向性としている23区の中で、引き続き対応してまいります。
【清水議員】
均等割については、全国知事会、23区区長会の要望はじめ、世論が大きく国を動かし、国が2022年度から未就学児については均等割を減免すると決めました。大きく評価できます。
●そこで伺います。子どもの均等割減免は2021年度から前倒しを求めます。財源は国や都に求めること、さらに2020年度からの区負担分4分の1を国に求めるとともに、対象年齢や軽減割合の拡大を求めます。お答えください。
【松原区長】
均等割保険料は国民健康保険制度から等しく利益を受けることに対する応益分として被保険者にご負担をいただいております。子どもの均等割保険料の軽減につきましては、これまでも特別区長会として国へ要望してまいりました。国は、今国会において、子どもの均等割保険料の軽減措置を含む健康保険法等の一部を改正する法律案を提出しております。財源は国2分の1、都道府県4分の1、区市町村4分の1の負担割合の案が示されております。均等割保険料の在り方につきましては、国の制度の中で検討すべきものと考えております。区としては、今後も国の動向を注視し、状況に応じて特別区長会を通じて国へ要望してまいります。
【清水議員】
コロナ禍において、昨年度より30%減収となった加入者は、国保保険料の減免申請ができます。大田区申請数は3302件と国保運営協議会で報告がありました。しかし、申請は大変面倒で、オンラインが苦手である人や、そもそも減免ができることを知らないという区民も多いと思います。広く周知し、申請の相談には、区民に寄り添った対応を求めます。しかし、申請の締切りは2月26日、終了直前です。新宿区は締切りを3月31日、板橋区は3月25日としています。大田区でも延期することを強く求めます。
●さらに伺います。国保減免の対象から漏れているフリーランス等雑所得の確定申告をしている方について、国に対象者として要請すること、あわせて区独自の対応を検討することを求めます。お答えください。
【松原区長】
新型コロナウイルス関連の保険料減免は、昨年4月7日に閣議決定された緊急経済対策の一つとして設けられたものでございます。今年3月31日までの納期限を迎える保険料で、勤務形態にかかわらず、事業収入の減少などが対象となっております。対象の拡大については、今後の状況に応じて特別区長会を通して国へ要望してまいります。なお、区では保険料減免について様々な広報媒体を通じて周知に努め、国の財政支援の中で減免を行っております。区独自の保険料減免につきましては、他の被保険者との公平性の観点から困難と考えております。区では、様々な事情により納付が困難である場合は、徴収の猶予などの相談や関係機関のご案内を行っており、引き続き丁寧に対応してまいります。
小中学校の少人数学級の推進と、コロナ対策について
【清水議員】
次に、教育について伺います。教育費予算316億4858万円のうち、国が進めるGIGAスクール構想の実現のため、教科用システム運用費28億6757万4000円、ICT教育推進専門員の新規配置765万2000円は、教育費の約1割弱を使う事業です。児童・生徒1人1台のタブレット配付については、現場の教員からの要望ではなく上からの指示、研修などは未定、こなしきれないなどの声が上がっております。家庭学習の位置づけも強めていますが、環境が十分な家庭ばかりではなく、仕事などで一緒に見守ることができない親もおり、教育格差が広がるのではないかと危惧されております。
今年度は新型コロナ感染のために休校から始まり、いつもなら12か月かけて教育課程を進めるのに、10か月でと、どの学年も急ぎ足で、様々な我慢を続けてきた子どもたちに今何が必要なのかを考えれば、やはり少人数学級の実現ではないでしょうか。
第3回定例議会で我が党の代表質問で、一斉休校の後の10人から20人程度の分散登校の経験は、少人数で学習する教育のよさが子どもからも教師からも上がり、心身のケアが必要な子どもに少人数教育が一番いいのではと質問しましたが、小黒教育長の答弁は、「分散登校は、あくまで感染症対策の一環として3密を避けるため」と答え、「区独自に講師を配置し、算数、数学、英語について習熟度別少人数指導を展開し、きめ細やかな指導ができるようにしております」と答えました。
学校は学力を上げるためだけではありません。子どもたちが昼間、安全に安心して生活するための居場所で、感染予防などの公衆衛生や生活に必要な知識や情報を提供する福祉的な機能を持ちます。少人数学級化は、それらの充実につながります。我が党が提案しましたが、現在小学校1・2年、中学校1年は35人学級ですので、小学校3年生を35人学級にするには、今年度の児童数から試算しますと59校で14クラス増になります。中学2年では28校で11クラス増で、全校で増えるわけではありません。教室は少人数指導で使用したり、倉庫などに転用している教室の見直しができるのではないでしょうか。教員については、他自治体のように、少人数指導のための加配教員を活用することもできます。
区が少人数学級に踏み出さない理由として、小黒教育長は、「公立の学級編制は、学級編制及び教職員定数の標準に関する法律を基に、東京都教育委員会が定める学級編制基準に基づいて実施している。国や東京都の動向を注視する」と答弁しました。しかし、その教育長が言っている法律は、第3回定例議会の後の12月、文部科学相と財務相の折衝で、全学年の学級編制を法改正で35人にすることが決まりました。
少人数学級を求める全国市長会、全国都市教育長協議会、日本PTA全国協議会、全国連合校長会、教職員組合などなど幅広い声が財務省を包囲し、孤立させることで、40年ぶりの法改正をこじ開けたのです。現場の教員の誰もが少人数学級を求めているのは周知の事実です。保護者も、地域も、子どもたちが毎日楽しく学校に通えて、落ちついて生活できる学校を求めています。2月15日国会で日本共産党畑野君枝議員の質問に、菅首相が国会で、首相として初めて、「中学校にも少人数学級を検討する」と答弁もしています。第3回定例議会時と状況は大きく変わりました。
●そこで伺います。新年度は小学校3年生、中学2年生の35人学級を区独自で行うことを求めます。お答えください。
【小黒教育長】
現在国においては、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の改正の準備が進められております。改正案におきましては、令和7年3月31日までの間における学級編制の標準について、第2学年から第6学年まで段階的に35人とすることを旨として、毎年度、政令で定める学年及び文部科学大臣が定める特別の事情がある小学校にあっては40人とするとの経過措置規定が設けられております。こうした点を踏まえますと、国においても、学級編制の標準の引下げは段階的な導入が現実的と判断されたものと認識しております。したがいまして、35人学級を早急に推進することは困難であると考えております。
【清水議員】
国は、小学校2年生から小学校6年生の学級編制標準を、5年かけて1学年ごと引き上げると言っています。新型コロナ対策で教職員の長時間労働は深刻化し、離職が増え、教員志望が減るという悪循環を止めるためにも、35人学級を5年間でなく一刻も早く行い、さらに中学校まで広げ、20人程度学級編制を目指すべきと国に意見を上げることを求めておきます。
コロナ禍において、教員の実態は感染防止に神経をすり減らし、毎日の消毒等で業務量は増え、長時間労働が続いています。いつもと違う学習や、楽しみにしていた様々な行事の中止など、大きなストレスを抱えている子どもたちに寄り添って奮闘してくれています。大田区保健所が、小中学校においても、1月7日以前は濃厚接触者の疑いと児童・生徒、教職員にPCR検査をしていたのを見直したことで、教員も、児童も、家庭も不安が広がっています。自費でPCR検査をしている教員もいるそうです。陽性の児童の濃厚接触者が陽性となるクラスターも発生しました。
●教員、児童・生徒のコロナ感染拡大防止策として伺います。小中学校教職員への定期的なPCR検査を行うことを求めます。世田谷区などの他区で実施をしております。保健所に見解を求めるのではなく、大田区教育委員会としてお答えください。
【小黒教育長】
学校において、2月15日現在、児童・生徒、教職員合わせて156名の陽性者が発生しており、このうち教職員は28名となっております。学校では陽性者が出た場合には、保健所の指導の下、感染防止に万全を期しており、現在まで集団発生は確認しておりません。また、国の感染症対策本部による「新型コロナウイルス感染症対策の基本的な対処方針」では、感染が拡大している地域においては、医療・介護従事者など関係者に対する幅広いPCR検査の実施に向けて取組を進めるとしております。このことから、現時点におきましては、教育委員会といたしましては、感染が疑われる者に対しPCR検査を実施する現在の対応を継続してまいります。今後、国や都の動向を注視し、保健所の指導の下で感染防止対策に万全を期してまいります。
高齢者も現役世代も安心できる自治体福祉の確立について
【清水議員】
次に、高齢者も現役世代も安心できる自治体福祉の確立について質問します。貧困と格差が広がり、高齢者と家族が抱える問題が複雑化する中、この間、厚労省も困難を抱えた高齢者を積極的に老人福祉法に基づく措置制度で救済するよう自治体に呼びかけています。また、親の介護のために離職せざるを得ない多くの現役世代が出ていることも大きな社会問題です。区は、おおた高齢者施策推進プランを作成中ですが、高齢者が地域のつながりにより互いに助け合い、地域住民をはじめ多様な主体が互いにつながり助け合うまちづくりと、共助を強調しています。また、機能強化、介護予防・生活支援では、これまで支えられていた人が支える側に回っていく循環を推進しますと、現状維持だけでも大変な高齢者に、自らが努力して共助をせよと言っています。大変現実的ではない自助を促しています。自助と共助を優先にしたおおた高齢者推進プランを見直し、高齢者が安心して住み続けられるために、区が何が必要かについて伺います。
公助の役割として、地域包括支援センターがあります。しかし、現状は、この地域包括支援センターの業務はひとり暮らし高齢者支援をはじめ、総合事業、認知症の支援の拡充、シニアステーションの運営など膨大な業務となっています。職員の負担増は免れず、区民のサービス低下にもつながりかねません。現在22か所で、今後、西蒲田地区で1か所増とのことですが、16万人を超える大田区の高齢者人口からも、1か所当たり3000から6000名程度の国の指標から見ても不足です。
●伺います。自助と共助で高齢者福祉の推進を図るのではなくて、高齢者を支える公助としての役割と責任から、地域包括支援センターの設置を少なくとも28か所に増設することを求めます。お答えください。
【松原区長】
区が設置する地域包括支援センターは、高齢者の方々の総合相談支援の窓口であるとともに、地域の多様な関係者と連携・協働を行い、生活課題の解決に取り組んでおります。区は、地域包括支援センターを地域包括ケアシステムのさらなる推進を図るための中核的機関と位置づけ、機能強化、整備を進めております。整備については、おおた高齢者施策推進プランに基づき、18特別出張所の日常生活圏ごとに、高齢者人口などの地域特性を踏まえた配置を進めており、令和2年4月には馬込地区に新たに地域包括支援センターを整備し、現在区内の22か所に設置しております。令和3年度においては、蒲田西地区に新たに1か所の整備を検討しております。区は、今後も計画に基づき適時適切に整備を進めてまいります。
【清水議員】
介護保険第7期事業では、大田区でも要支援1・2を総合事業として通所訪問サービスを介護保険から外し、様々な問題が出ています。党区議団が行った介護事業者へのアンケートでは、「大田区は、特に卒業というやり方で介護保険外しがひどい」、「ヘルパーの仕事が減った」などの実態がありました。また利用者からも、「デイサービスの回数が減らされたのは納得いかない」、「状態がよくなっていないのに卒業と言われた」などの声が寄せられました。
昨年10月22日、厚生労働省老健局が、総合事業対象者の要介護への拡大を、法律改正ではなく省令改定しました。そして、保険者の判断に委ねるとしております。自治体が本人の同意を強引に取付け、サービスの後退や打ち切りをのませる事例が起こる可能性が心配されています。ますます介護サービスが打ち切られようとしています。さらに菅内閣は、75歳以上に年収200万円以上の人の医療費窓口負担を2倍化することを閣議決定し、高齢者をさらに苦しめようとしています。
介護保険料はこの20年間で、基準月額3070円から6000円へと約2倍になりました。責任は国庫負担を減らしてきた国にありますが、大田区にもできることがあるはずです。17段階所得の上限は、大田区は2500万円ですが、世田谷区では3500万円となっています。大田区の課税標準額3000万円から5億円以下の方が1709人、5億円超えの方は9人おられます。応能負担を広げ、低所得者の保険料の引下げ、所得の多い人の段階を増やすことです。2月19日区長が追加提出した第8期介護保険事業の保険料の条例改正では、基準額は値上げせず、所得段階第4段階を値下げし、14段階以降の保険料の値上げで応能負担を強めたことは、我が党が一貫して要望したことで評価できます。
●伺います。さらに低所得者への保険料の引下げを行うために、第7期で積み立てられた介護保険給付費準備基金約50億円の全額を使うことです。また、17段階の所得2500万円で上限となっている保険料の所得区分をさらに広げることを求めます。お答えください。
【松原区長】
本日、区議会宛てに介護保険条例の一部を改正する条例について提案をさせていただきました。今回の改正では、改正介護保険法施行令が4月1日付けで施行されることが決定したことに伴い、区といたしましても、その内容に準拠した所要の改正を行い、また、計画期間が令和3年から令和5年までとなることに伴う改正、保険料に係る改正などを提案し、区議会においてご審議をいただくことになっております。今回の介護保険条例の改正案を取りまとめに当たりましては、厚生労働省が設置している社会保障審議会の議論の動向や基礎自治体に求める姿、また介護報酬の改定幅など、国の動向を見極め、持続可能な介護保険制度となるべく提案をさせていただきました。保険者である区といたしましては、介護保険制度に対する運営責任があり、今後も関係法令を遵守し、適切に対応してまいります。
【清水議員】
現在介護を巡って問われている目前の大問題は、コロナ危機への対応です。要介護の高齢者への感染予防は、ただでさえ過重だった介護事業者の労働を一層苛酷にし、離職が後を絶たず、人手不足で介護事業の運営を厳しくしております。
●そこで伺います。コロナ禍で倒産廃業が増加している介護事業者への減収分の補塡を区独自で行うことを求めます。お答えください。
【松原区長】
新型コロナウイルス感染症の感染者が国内で確認され1年が経過しましたが、いまだ収束が見通せず、介護事業者を取り巻く経営環境が大きく変化いたしました。この間、区は、国、東京都とともに連携しながら事業者の経営の安定化などに努め、事業の減少などにより必要な介護サービスを受けられない方が生じないよう努めてきたところです。その結果、大田区に対し、経営難を理由に廃業を届け出た事業者はこの1年間顕著な増加は見られず、各種施策の成果が出ている結果と考えております。区内の介護事業者の経営状態には引き続き注視し、国、東京都と緊密に連携を図り、事業者を支えてまいります。このため、現時点では介護事業者の減収に関する大田区独自の支援については考えておりません。
【清水議員】
コロナ禍で苦しむ住民の課題を解決するのは、住民に最も身近な自治体の現場しかありません。大田区長もその立場に立つことを強く求めて、質問を終わります。
以 上