第1回定例会一般質問(速報)―杉山議員(2月25日)



(映像は大田区議会ホームページより:24分)

区内中小企業の支援につながる羽田空港周辺地域の開発について

【杉山議員】
日本共産党大田区議団の杉山こういちです。
質問通告に従い、まず、最初に、区内中小企業の支援につながる羽田空港周辺地域の開発について質問します。
「新春のつどい」の区長の挨拶では、羽田空港跡地整備事業では、国内外のヒト・モノ・情報の集積と交流により、新たなビジネスやイノベーションを創造する。「新産業・発信拠点」を形成しております。と述べています。
インダストリアルパーク羽田は、高付加価値型企業入居施設と位置付けられ、「いわゆる成長支援という考え方ではなく、操業の受け皿、あるいは区内のその他の企業に対して、仕事を出す、こういった機能を期待しているところでございます。そういった企業は、企業としては一定の規模感、あるいは一定の成長段階、既に成長している成熟した企業というところを想定してございます」と、所管・地域産業委員会で所管課長は答弁されています。
使用料は区の歳出に見合う歳入を確保することを基本的な考え方としながら、類似施設の賃借料も考慮して設定するとし、1区画、約1000㎡を4区画中3区画を貸し出します。入居する企業のメリットとしては、「例えば周辺に非常に技術のある工業集積」「交通、物流の面」などをあげています。
入居企業が、「どういった形で操業をして、今後どういったビジネスプランをもっていくかを、しっかりヒアリング等を行いながら、調査をし、考えて行く中で、区内の適切な中小企業等にしっかりマッチングをする機会等を提供するなどして、波及効果を少しでも大きくしていきたい」としていますが、
●区民の税金を投入して行うインダストリアルパーク羽田・「高付加価値型企業の入居施設」の事業整備が区内中小企業に仕事を出す等の波及効果をしっかり担保する保障が必要です。事業費用に見合った経済効果と区内産業への波及効果をどのように示し・進めていくのか、その検証方法も含めお答えください。

【産業経済部長】
募集要項に、「区内の高度なものづくり技術集積との連携が促進され、立地企業の成長に寄与するとともに、区内全体のものづくり企業の維持・発展にも結び付くもの」と記載し、さらに入居予定者を選定する際にも、地域貢献性を審査基準として定め、審査を行いました。このような過程を経て入居する企業は、区内企業との連携や地域への貢献などについて、十分にご理解をいただいているものと考えております。また、入居予定の企業には、区内ものづくり産業と親和性のある、企業も含まれているため、産業集積の維持・発展に資する立地施策ともなっております。次に、経済効果と波及効果を検証方法も含め、どのように示し進めていくのか、とのご質問ですが、経済効果については、まさに企業立地により雇用の創出や消費拡大が期待されるところですが、既存区内企業との取引機会等についても、大田区産業振興協会が持つマッチング機能などを活用しながら生み出すことにより、波及効果が地域産業にもたらされるよう、取り組みを進めてまいります。

【杉山議員】
羽田空港跡地第1ゾーン整備事業は羽田イノベーション・シティーと命名されました。
第1期事業地に5.9ヘクタールを活用し、総床面積13万1千平米に「産業創造・発信拠点」の形成しています。自動運転のテストコースを設け研究開発に取り組むトヨタ、先端医科学研究センターを運営する東邦大学、 イベントホール運営のZepp(ゼップ)ホールネットワーク、大規模会議やコンベンションホール運営のコングレ、飲食事業を展開するインフォマート、などが誘致されると聞いています。
この跡地開発に国家戦略特区を使い、世界で一番ビジネスをしやすい環境をつくることを目的にしているからです。地域や分野を限定することで、大胆な規制、制度の緩和や、税制面の優遇を行う規制改革制度です。
第1ゾーンの区施策活用スペース「羽田研究開発ラボ」の17ブースに入居予定者募集要項では、昨年の9月17日から11月11日まで応募を行い、審査結果は12月13日頃に書面にて入居者に通知とあります。
昨年、区内中小企業全てに対して、ものづくり産業等実態調査を行っていますが、5年前の調査に基づき、現状の調査分析を行い、課題について明らかにして、今年度から2年かけて「仮称、大田区産業振興構想の策定を取り組んで行くとのことですが」これはでは入居希望には間に合いません。
羽田研究開発ラボの募集内容の目的に、本ラボが大田区内企業と連携することで、ICT、AI、新エネルギー、環境、医療、福祉、航空・宇宙、ロボティクス、自動運転など、様々なわが国の産業シーズを活かした新産業創造に寄与することを期待します。と記載されていますが、床面積の大きさを条件とすると大企業が入り、そこから区内中小企業に仕事が回るのは多くても1割程度しか考えられません。残りの9割は見捨てられます。羽田空港の跡地大型開発に、区財政をつぎ込み、区民の暮らしや福祉の充実を中小企業の発展を望む切実な願いに応えられていません。地方自治体として、中小零細企業が活用でき、物作りの大田の町が再生するように、それに応えられるよう取り組むことです。
●約3000社と言われている区内中小企業・業者とのマッチングを進め、区内中小企業の仕事づくりを目的としていることを契約に入れ、毎年、実績検証の体制をつくることです。お答えください。

【産業経済部長】
まず、当スペースは、大企業が入るだろうとのお話ですが、入居予定者募集要項において、対象区画の面積を約100平方メートルから約200平方メートルと幅を持たせ、また、複数の法人による応募も可能とし、企業の規模を問わず応募しやすくしたところ、区内外の中小企業に分類される規模の企業などから応募をいただきました。このため、当スペース内に新たな中小企業の入居が見込まれており、産業集積を強みの一つとしている区内製造業への波及効果が生まれるものと捉えています。また、入居企業と区内企業とのマッチングを契約書に規定し、実績検証の体制整備をすべきとのご意見ですが、入居審査項目の一つに区内製造業との取引実績や今後の構想などを指標として明示しております。入居希望者からは、この指標を確認いただいた上で、申請書類を提出していただいております。区では、この申請書類をもとに審査させていただいているため、区内企業との連携や地域貢献などの必要性は十分認識されているものと考えております。区は、大田区産業振興協会等と連携しながら、入居企業に対して、既存区内企業との取引機会等の創出を行い、波及効果を区内にもたらすとともに、当スペースで多様な人・モノ・情報等の出会いを生み出すことにより、区内企業が新産業創造に寄与することをめざして、取り組みを進めてまいります。

区民の命と暮しを脅かす羽田空港機能強化・増便中止について

【杉山議員】
次に区民の命と暮しを脅かす羽田空港の機能強化・増便中止について質問します。
2020年3月29日より新飛行経路の運航を開始し、羽田空港において国際線を年間約3万9000回増便する計画ですが、どうして羽田空港の増便が必要なのか、地方創成、一極集中を解消すると言いながら、羽田に集中する増便は必要がないのではないか、地方空港を活用することが、地方再生につながります。
航空会社からの要望、自社の使用勝手の良い時間帯、羽田空港の南風時・北風時の時間帯の増便は、そこから、来ています。
航空行政は国土交通大臣が許認可権を有しています。国際線の便を航空会社が申請し認める。安全が最優先としていますが、米国航空会社及び本邦航空会社の申請を鵜呑みにしている計画となっています。
安全より経済優先になっているのはないですか。
羽田空港機能強化による増便の新ルート案は、南風時年平均4割の離着陸は午後3時から7時の実質3時間について、1時間当たり80回を90回に増やす計画で、様々な問題点が指摘されて、住民の不安も広がっています。
この間、基本とする運航方式であった海から入って海に出るが変更になり、都心上空を低飛行することになり、騒音、落下物、環境悪化等指摘されています。
国土交通省は1月30日から3月11日の間で北風運用時、南風運用時、それぞれ7日間程度「実機飛行による確認」を実施します。と発表し、区は、「この『実機飛行による確認』に際しましては、国に対して区民への騒音影響が把握できるよう、確実な騒音測定が可能な体制の構築と、測定した騒音値の公表などとともに、運用開始後も、引き続き、それらの対応をしっかり図るよう求めてまいります。また、区としても騒音値について注視するとともに、騒音測定結果を踏まえ、必要に応じた対策を講じるよう国に要請してまいります。」としています。
実際に、1月30日から2月12日で行われた、「実機飛行確認」では、2月3日に滑走路からの側方距離1キロメートルの距離にある、羽田小学校(側方1km)に於いてB滑走路西向離陸により大型機から85dB、中型機77dB、小型機78dBの最高値も実測しています。これは、国土交通省が高度500feetで滑走路からの側方距離1kmの穴守稲荷駅(側方1km)で大型機76dB、小型機72dBの予測値を上回り、机上の計算は崩れています。実際に区民からは、この爆音が毎日続くとノイローゼになってしまうなどの苦情も寄せられています。
●今回の実機飛行確認による騒音は予想以上です。区民の生活を脅かすとの認識に立つべきです。騒音削減のために、せっかく沖合移転したのに後戻りになってしまいます。国に、この騒音に対して対策を求めるべきです。この対策が出来るまで増便の実施延期を求めるべきです。対策が出来ないのであれば増便中止しかありません。国に増便中止を求めるべきです。お答え下さい。

【空港まちづくり本部長】
私も、B滑走路からの西向き離陸の実機飛行確認を視察してまいりましたが、大型か小型かなど使用機材により、騒音状況や上昇性能、旋回の位置等が大きく違うことを感じております。区としては、国が行った騒音測定の結果について、現在国に対し、検証・分析を実施するよう求めております。その上で、必要に応じた対策を講じるよう国に要請してまいります。新飛行経路の運用は、国の航空政策ではありますが、運用開始後も引き続き、騒音などの環境対策や落下物を含む安全対策の確実な取り組みと、最新技術、知見などの反映など、さらなる対策の強化と徹底を国に要請してまいります。

【杉山議員】
国土交通省が追加対策で騒音を少しでも軽減するとして、飛行機の着陸時の降下角を現行の3度から3.5度に引き上げると打ち出しました。これに対して、航空評論家で元JAL機長は、世界の大空港では、降下角は3度です。パイロットにとっては、降下角は0.1度変わるだけで外の景色、高さは全く違って見えます。かつて世界一着陸が難しいと言われた香港啓徳空港(現在は閉鎖)でも、降下角は3.1度でした。降下角3.5度は、世界のほぼ全てのパイロットが経験したことのない急角度になる大問題ですと語っています。
今回の「実機飛行確認」では2月2日の南風運用時に、エアカナダの001便は、降下角度を3.5度に設定したRNAV進入方式での新飛行経路での進入が出来ない旨を報告し、その後、成田空港に目的地を変更しています。この時点で、カナダの航空当局から、降下角度3.5度の承認が得られてなかったことが判明しています。また、米国のデルタ航空が「通常よりも急角度」と見合わせの理由を挙げています。3月29日の都心ルートの正式運用までには社内の事前準備を終えたいとしています。デルタ航空は、これまでの飛行確認では、都心ルートの運用時間外に着陸するなどして、欠航や目的地変更などの影響は出ていませんが、このことは、国土交通省の対応が、外国の航空当局と航空会社に「実機飛行確認」に対応出来る状況を作り出せていないことが、証明されたのではないでしょうか。国土交通省は他の外国航空会社に対しても、準備状況の確認を進めているというが、体制がとれていない中での「実機飛行確認」は安全のリスクを大幅に高めるもので、危険極まりない行為ではないでしょうかす。
●国土交通省が騒音対策として降下角度を3度から3.5度に引き上げましたが、「実機飛行確認」では騒音の対策にならなかったことが明らかになりました。危険極まりない降下角度3.5度は即、中止を国に申し入れるべきではないでしょうか、お答えください。

【空港まちづくり本部長】
3.5度での着陸は、サンディエゴ国際空港やローマ空港、国内では、稚内、広島空港などにおいて採用されております。国は、3.5度の降下角度について、安全基準に則ったものであるとしており、今回の導入に際しては、航空会社との間でシミュレーションによる確認が行われており、その結果を踏まえたものであるとしています。区としましては、航空の安全は何より重要と考えており、引き続き国に対し、安全確保の徹底を求めてまいります。

【杉山議員】
そして、南風運用時のB滑走路西向離陸は、川崎の石油化学コンビナート上空を低空飛行で行う無謀な飛行ルートです。離陸直後に石油化学コンビナート地域の上空を通るようなルートを持つ空港など世界に他にはありません。
「発着回数」「乗降客数」「貨物取扱」で上位の世界の主要41空港について調査したところ、付近にコンビナートがある空港は羽田空港の他にはシンガポールのチャンギ国際空港しかなく、そのチャンギ空港も最寄りのペンゲラン石油コンビナートまで東に約14キロメートル離れています。南北に走る滑走路の先は、いずれも川と海の上で、石油化学コンビナート上空を飛ぶものではありません。
2011年の東日本大震災の時に、千葉県のコスモ石油のタンクが炎上し燃え尽きるまで消化できなかった事例から、お隣の川崎市ではコンビナートの被害想定を作成しており、大規模災害の場合は多摩川を越えて南六郷、本羽田、羽田、羽田旭、萩中、東糀谷あたりまで被害が及ぶとされています。航空機事故の場合はさらに拡大するので、新たな大規模被害の想定をしなければならないとしていますが、大田区では対岸の火事では済まされません。もし、一端事故が起これば、炎上し有毒ガスが発生されることも想定されます。想定外はでは済まされません。区民の命と財産を守るのは、地方自治の使命です。
●私たちは羽田空港機能強化・増便の中止を求めていますが、厚木基地のある神奈川県大和市では、航空機事故に対応した防災対策と防災マニアルがあり市民の生活と安全を守っています。大田区としては航空機事故に対応した具体的な防災対策が無いのは問題です。
現在でも南風時の運用で、B滑走路に着陸を試みて、何らかの不具合でゴーアランドが発生し、川崎のコンビナート上空を通過する事例も発生しています。区としてコンビナート火災や有毒ガスの発生などに対応した防災対策は必要です。大田区に於いて早急に航空機事故に対応した防災対策とコンビナート火災に対対応した防災対策をたてることです。お答えください。

【危機管理室長】
航空機事故の発生は、その被害が広域に及ぶことが想定されます。東京国際空港では、航空法や空港保安管理規程等に基づき、空港及びその周辺の航空機事故などに備えた「東京国際空港緊急計画」が策定されております。この計画は、区や国、東京都、関係機関が連携し、緊急事態の際には、迅速かつ適切に対応することを目的としています。区は、空港やその周辺で航空機事故が発生した際に、災害対策本部を速やかに設置して、区民の安全を確保し、事故情報の収集や区内の医療機関などとの連絡調整、国の現地合同対策本部へ職員を派遣し対応にあたります。また、国が主催する航空機の大規模事故を想定した航空機事故対処総合訓練へ定期的に参加するなど、事故発生時に適切な対応がとれるように努めております。区としてはこの計画に基づき、区の役割を果たしてまいります。

【杉山議員】
羽田空港で働く人たちの声を聞くと、どの職場でも人員不足で、長時間過密労働で疲弊しています。管制官やパイロット、整備士、グランドハンドリング、空港内外全ての機材・施設の準備とそれを使えるように訓練された作業員・担当者の準備が整っているのでしょうか、整っているとは思えません。むしろ、無理やり合わせているといっても過言ではありません。
昨年の6月15日の午後には、神戸発羽田行のスカイマーク機がRW34L(ランウェイ・34レフト)に着陸体制に入っているところに、他滑走路に着陸し、国際線ターミナルに向けタキシング(走行)していたバンクーバー発・羽田行のANA機が、スカイマーク機が着陸予定の滑走路を横切りました。着陸の際に別の飛行機が滑走路を横切る管制上の重大インシデントが起こりました。こうしたヒューマンエラーも起こりうるのです。もし事故が起きてから「あのとき認めなければよかった」といっても遅いのです。区民の財産・生命と安全を守るためにも、羽田空港機能強化・増便及び新飛行ルートの撤回を政府に強く求めるよう要望し質問を終わります。

以  上

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