第4回定例会代表質問(速報)―佐藤議員(11月28日)



(映像は大田区議会ホームページより:29分)

安心・安全の災害避難所の環境改善と備蓄品の充実について

【佐藤議員】
質問通告に従って質問をします。
今年も台風15号・19号はじめ8月の九州北部豪雨、2月に北海道胆振地方・6月に山形県沖・1月に熊本県熊本地方で震度6の地震が発生するなど自然災害が多発しました。日本は災害大国と言われています。日本周辺には太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北アメリカプレートがひしめき合うことから世界で発生するM6以上の地震の約20%が日本周辺で発生します。今わかっているだけでも約2000の活断層が存在し、世界中の活火山の7%(110)が狭い国土に分布しています。プレートの圧力の強まりによって内陸直下型地震が全国のどこでも発生することや火山の噴火が予想されます。加えて、気候変動のもとで、従来の経験をはるかに超えるような豪雨・強風・高潮などを伴う巨大台風などが多発し、それが地震災害と複合することも予想されます。
これらの自然災害は発生そのものを防止することはできませんが、被害を最小限にくい止めるために、災害発生前の事前対策と発生時の緊急対応が重要になっていますが、災害後も命や健康が損なわれないよう対策の強化が求められています。
まず、避難想定に見合った避難所の整備についてです。大田区地域防災計画では、東京都防災会議が2012年に公表した「首都直下地震等による東京の被害想定」の東京湾北部を震源とする東京湾北部地震・M7.3を想定地震として計画がつくられています。想定では冬の夕方18時の発生により、想定震度は区内で震度6弱が5.5%、震度6強が93.1%、震度7が1.4%の地域で起きるとしています。ゆれや液状化や地震火災によって、区内での避難者364,824人(避難所生活者237,135人、疎開者127,688人)を想定しています。その他に166,426人が徒歩帰宅困難者となることが想定されています。
その他にもペットを連れての同行避難と避難所でのペット受入れ体制の整備や、要支援者が避難する福祉避難所の整備など災害避難所の整備には課題がまだまだあります。
●区内で最大364,824人+166,426(徒歩帰宅困難者)となる避難者に対応した避難所の整備が緊急に求められます。現在、学校を中心とする91か所の避難所に受入れ人数は目安で約14万5千人としており、想定される避難者数の半分にも満たないなど、抜本的な計画の拡充が求められます。都立学校や私立高校などの避難場所としての活用を、東京都や国とも連携を強めると同時に民間とも災害協定を結ぶなどして想定避難者に十分に対応した避難所を計画的に整備するよう求めます。お答えください。

【危機管理室長】
避難所の整備に関するご質問ですが、区は、震災時に学校防災活動拠点となる区立の小中学校91ヵ所をはじめ、補完避難所などの2次避難所を含めると、約18万人5千人の避難者を受け入れる計画となっております。これまでも区は補完避難所として都立高校、私立学校、民間施設等と協定締結を進めており、少しでも多くの避難者の受け入れに努めております。しかしながら、近年はマンションなどの耐火・耐震構造の住宅が増えており、震災後も自宅での生活を継続することができる家庭も多くあると想定しています。震災後、自宅に住み続けるために、ローリングストックなどによる備蓄や家具転倒防止器具などの普及啓発しております。引き続き、協定による避難所の確保や家庭内備蓄の充実の啓発などに取り組んでまいります。

【佐藤議員】
次に、避難所の環境改善の問題です。避難者数に見合った避難所を整備しても、避難所の環境改善を進めなければ、せっかく災害を生き延びても「避難所生活で肉体的・精神的疲労」等で命を落とす災害関連死から区民の命を守ることはできません。
避難所の環境改善にはスフィア基準に基づいた整備・備蓄品の見直し・拡充が必要ではないでしょうか。スフィア基準とは、国際人道法や人権法、難民法の規定に含まれる尊厳のある生活への権利、人道援助を受ける権利、保護と安全への権利を実現するために、人道援助を行うNGOのグループと国際赤十字・赤新月(せきしんげつ)運動によって1997年に開始された「スフィア・プロジェクト」が定めた、生命を守るための最低限の基準です。そこには権利保護の原則のほか、給水、衛生、衛生促進に関する最低基準、食料の確保と栄養に関する最低基準、シェルター、居留地等に関する最低基準、保健活動に関する最低基準などが盛り込まれています。また、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のアセスメント項目・基準も避難所の環境改善の指針になるものです。例えばアメリカCDCの基準では、水道・お湯が使える。一人当たり3.3㎡以上のスペースが確保されている(大田区では二人で3.3㎡)。電気が使える。室内が寒くない。避難所で食事を作る。配膳する。食事が冷たくない。十分な簡易ベッド等がある。子どもの遊び場があるなど55項目を掲げています。
●大田区での災害避難所の環境整備を進めるのに、このスフィア基準やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のアセスメント項目を目標・指針に据えた災害避難所の環境改善を行うよう求めます。お答えください。

【危機管理室長】
避難所の環境に関するご質問ですが、スフィア基準は、避難所の環境などについて定めた基準とされ、内閣府の「避難所運営ガイドライン」において、参考にすべき国際基準とされています。また、アメリカ疾病予防管理センターは、健康に関する情報を提供する連邦政府機関であり、食事、トイレなどの指標をもとに避難所の環境を調査する避難所環境アセスメントを作成しております。いずれも、避難した人の生活の質を保つことを目的として作成されています。区では、これまでも、自動ラップ式トイレやプライバシーを保つための間仕切りの導入など避難所の環境改善に取り組んでおります。今後も、区内の小中学校などの公共施設をはじめ、高齢者や障害のある人が安心して避難できるよう、避難所の環境改善に努めてまいります。

【佐藤議員】
現在、災害が起きると大田区も含め各地の災害避難所では、多数の人が雑魚寝状態で生活を余儀なくされたり、自動車での車中泊で過ごす人がいるなど劣悪な状態です。
それは、大田区での避難所の避難者受入スペースは東京都の避難所管理運営の指針に従い、3.3㎡あたり2名とするなど、3.5㎡あたり1名の避難所スペースが必要と訴えるスフィア基準や、3.3㎡あたり1名のスペースの確保を掲げるアメリカCDCの水準の半分しかないなど劣悪な避難所環境が温床となっています。
長時間同じ姿勢でいたり、動かないといわゆるエコノミークラス症候群・専門的には静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)を発症するおそれがあります。血栓が血管を流れて心臓や肺動脈に流れ閉塞し、死に至ることがあります。避難所での雑魚寝は血栓症を引き起こすだけでなく、床の冷えが体に直接伝わる、床から舞い上がるほこりや細菌を吸い込む、高齢者や体力が落ちている人にとって起居が困難となる、プライバシーが保てないなど、さまざまな弊害をもたらすことから雑魚寝や車中泊は絶対に止めるべきです。
関連死の多発 内閣府は今年(2019年)4月に「災害関連死」を定義し、自治体に通知しています。それによると、「当該災害による負傷の悪化又は避難生活等における身
体的負担による疾病により死亡」や「身体的負担による疾病を苦に精神的に追い込まれて自殺した場合」などを「災害関連死」としています。東日本大震災では、死者・行方不明者は1万8434人ですが、災害関連死(今年3月31日現在)は3,723人です。
2016年に発生した熊本地震では地震による直接死は55人ですが、 災害関連死は218人にも上っています(今年4月26日現在)
医師や専門家等でつくる避難所・避難生活学会は、避難所の環境改善に「トイレ・キッチン・ベッド」の略である・TKBの改善を提言しています。避難所生活が原因の災害関連死が相次いだことを受けて、TKBの改善が必要と感じたといいます。提言では、「快適で十分な数のトイレ」「温かい食事」「簡易ベッド」の提供が必要だとしています。裏を返せば、今の避難所では、「不便で不潔なトイレ」「冷たい食事」「床での雑魚寝」が課題になっています。
●「不便で不潔なトイレ」「床での雑魚寝」の改善が必要です。避難者数20人に1個以上の割合でのトイレの確保をするよう求めます。その際、子ども用のトイレと洋式トイレを一定数含め確保するよう備蓄品の拡充を求めます。避難所での雑魚寝状態解消のため雑魚寝よりも暖かく、血栓症の予防などにもなる段ボールベッドの導入を提案します。また、避難者のプライバシー保護のために間仕切り(テント等)も併せて整備計画つくり進めるよう求めます。お答えください。

【危機管理室長】
避難所の環境についてのご質問ですが、トイレの備蓄は、避難者の健康にも大きな影響を与えるため、その拡充に努めているところです。避難所に備蓄しているトイレと学校の壊れていないトイレの便座を活用することにより、全体で30台以上になると想定しております。備蓄数の目安となる避難者が1500人であることを考慮すると、平成28年4月に内閣府が提示している「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」における避難者約50人あたり1台は、概ね満たしております。避難所生活が長期化することによる負担を軽減し、健康被害を防ぐため段ボールベット、間仕切り、畳などを避難所において活用する計画です。区では、これらの生活環境改善のための備品は、発災後に必要な数量を協定先に要請することとしており、簡易間仕切りシステムの優先供給協定や畳の無償提供を受ける協定を締結しています。引き続き、避難所の備蓄品の拡充と、避難者の生活環境改善に取り組んでまいります。

【佐藤議員】
●避難所での食事改善の問題は重要な課題です。災害発生から早い時期に温かい食事が摂れる環境整備、備蓄食料の改善、東京都や国との連携強化を求めます。お答えください。

【危機管理室長】
避難所における食事の提供についてのご質問ですが、慣れない避難所の生活において、温かい食事を摂ることにより、避難者のストレスや不安感を軽減できます。小中学校等での避難所では、食糧品の備蓄は避難者の3日分の食糧を備蓄しております。発災直後は、手間をかけずに食べることのできるクラッカーやレトルト食品を提供します。2日目以降については、備蓄している食糧のほか、東京都からの食糧が供給されます。また、災害時に優先供給協定先の、大田区食品衛生協会や大田区商店街連合会等から食料品を提供していただく計画となっております。東京都や国と連携し、避難者に少しでも早い時期に温かい食事を提供できる体制づくりに引き続き取り組んでまいります。

子どもの貧困対策の強化でどの子にも明るい未来が見とおせる大田区について

【佐藤議員】
次に、子どもの貧困対策の強化について質問します。
子どもの貧困対策推進法にもとづき政府が決定する「対策大綱」の見直しの議論がすすんでいます。今年8月、内閣府の有識者会議が、新たな大綱に盛り込む施策の在り方を示す文書をまとめました。通常国会では、子どもの貧困対策推進法の改正も行われました。家庭の経済的困難が子どもの現在と未来を閉ざしている現状を打開することは、待ったなしの課題です。5年ぶりに改定される新大綱を実効性のある中身にすることをはじめ、政府が子どもの貧困解消に向けて真剣に取り組むことが必要となっています。子どもの貧困対策推進法施行から5年が経つ中で、子どもの貧困率(平均的な所得の半分に届かない世帯にいる18歳未満の割合)は13・9%で、7人に1人が貧困にある深刻な実態が続いています。子どもだけでもきちんと食事をさせたいが、それができない。病気になっても受診を我慢する…。憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」ができない世帯が少なくない現実を、これ以上放置することはできません。
重大なのは、安倍政権のもとで生活保護費の削減と制度改悪を次々と強行し、生活困窮世帯に追い打ちをかけていることです。昨年10月から行われている生活保護費の段階的削減で生活扶助基準の引き下げだけでなく、一人親世帯を対象にした母子加算の減額も行っています。更に10月の消費税率10%への引き上げは、「もう削る出費がない」と悲痛な声を上げる困窮世帯に過酷な仕打ちとなっています。消費増税と“引き換え”に実施した「教育無償化」も貧困世帯の実態や願いとかみ合っていません。今こそ、住民の命を守り福祉の増進を図る自治体としての大田区の役割の発揮が急務です。
●子どもの貧困対策を推進するために、現状の福祉部・子ども生活応援担当課から格上げをし、東京都足立区のように専任の部課長をはじめとする職員の体制を確立し強化をするよう求めます。お答えください。

【企画経営部長】
子どもの貧困対策を推進するための体制強化に関するご質問ですが、子どもの貧困対策につきましては、行政機関だけでなく、地域で活動する多様な分野の関係者が横断的に連携・協力することが必要であります。こうした認識のもと、区におきましても福祉部に子ども生活応援担当課長を設置し、子どもの貧困対策に関する施策の調整及び推進等を分掌させております。その上で、おおた子どもの生活応援プランに掲げる施策の展開に必要な職員数につきましても、適時適切に定数措置を実施してきているところでございます。こうした執行体制の充実のもと、引き続き、福祉部をはじめとした関係部局が緊密な連携を図りつつ、それぞれの専門分野における知見や強みを生かして、おおた子どもの生活応援プランに掲げる施策の展開を強力に推進してまいります。

【佐藤議員】
大田区が2016年に行った「子どもの生活実態調査」では、子どもが経済的に厳しい状況に置かれていることを、消費や外出・体験などの機会が限られている家庭として「生活困難層」と定義しました。
調査では、子どもの「生活習慣の乱れを反映すると考えられる朝食の欠食状況については、子どもの健康状況も影響を及ぼす要因のひとつであると考えられる」などとして、「子どもの朝ごはんの摂取状況」の調査をしましたが、「平日に朝ごはんをいつも食べる」と答えたのは非生活困難層で94%に対して、困窮層では84%でした。つまりこの困窮層にある家庭の子ども・16%の割合の子どもが平日に朝食を毎日摂れない状況にあることが示されています。
アメリカでは高等学校以下の学校が参加できる学校給食制度等を活用して、昼食だけでなく朝食の提供が8万7千校以上で実施されています。また、イギリスでも学校のなかでの朝食サービスを行う「朝食クラブ」が小学校46%、中学校で62%で実施されています。
国内においても広島県では、昨年・2018年度から、朝ごはん推進モデル事業を始めました。「県内の全ての子どもたちが朝食を食べることができる環境を整備し、子どもの能力と可能性を高める基礎となる生活習慣を身に付けてもらうため、モデル事業に取り組み、事業に要する経費や運営方法,成果などを検証する」として、小学校等で無料の朝食を提供する取り組みです。担任教諭へのヒアリング調査等では「明らかに子どもたちに良い変化が見え始めている」として、「朝食を提供する日は遅刻が減少傾向」「朝食を食べた日は授業に集中して積極的な姿勢が見える」「朝食提供日は元気があると感じる」等の声が出されています。
●大田区でも子どもの貧困対策にもなり、子どもたちが授業に集中するなど学校での積極的な姿勢に変化させる効果もある学校での朝食の提供を始めるよう提案します。その際、形式は学校給食方式やNPO団体の協力を得るなど様々な方式が考えれます。朝食は生活習慣の定着のために欠かせない大事なものです。ぜひ検討し、早急に始めるよう求めます。お答えください。

【福祉支援担当部長】
子どもの貧困対策として実施する朝食提供に関するご質問ですが、「おおた子どもの生活応援プラン」の施策を検討する際、朝食欠食が子どもの健康状態や学習理解に影響を与えるという調査・分析から、区としても課題と捉えております。子どもが朝食を、毎日きちんと家庭で摂ることは、心と体の健康面からも大切なことであり、生活習慣の基盤となる大事なことです。区は、「おおた子どもの生活応援プラン」において「生活・健康」を柱のひとつに掲げ、食育の推進をはじめとする事業を、複数の部局で進めております。これからも、区は、教育委員会と連携し、朝食をとることをはじめとする基本的な生活習慣の大切さを、子どもだけではなく保護者に対してしっかりと伝え、働きかけてまいります。

【佐藤議員】
おおた子どもの生活応援プランでは「経験・学力」「生活・健康」「居場所・包摂」の三つの柱を建て学力の保障や進学支援、子どもの居場所づくりなどの施策を展開しています。「生活・健康」の柱では①子どもの健康や生活を支える支援の推進、②保護者の生活・子育ての支援、③貧困の連鎖を断ち切るための就労支援の三つの施策分野に分け具体的な支援施策を行っています。この中でひとり親家庭に対する生活・子育て支援や就労支援の施策の推進が言われていますがまだまだ不十分です。
●ひとり親家庭への支援の強化大きく打ち出すことを求めます。また、同時に3人以上の子どもがいる多子世帯への支援の強化、特に経済的支援強化を計画のひとつの柱として、位置付けることをプランの更新の時期なども捉えて行うよう求めます。お答えください。

【福祉支援担当部長】
ひとり親家庭、多子世帯への支援の強化に関するご質問ですが、「おおた子どもの生活応援プラン」では、ひとり親家庭に対する施策を経済的支援、就労支援、孤立防止のための支援に体系化し、各部局において施策を展開しております。経済的支援につきましては、多子世帯に限らず、所得などの要件に応じて必要な支援を適切に実施しております。中でも、区は高校生等を対象とする奨学金について、国や東京都の制度の充実に伴い、これらを補うかたちで制度の変更を検討しております。引き続き、関係部局との連携のもと、すべての子どもの未来を応援する取組みを進めるため、本プランの進行管理を行う推進会議を活用し、時代の変化に合わせた支援のあり方について議論を深めてまいります。

以  上

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