(映像は大田区議会ホームページより:21分)
【杉山議員】
日本共産党大田区議団杉山こういちです。新人です。初めての一般質問です。よろしくお願いします。
区民の切実な願いである高齢者が安心して受けられる75歳以上の医療について
【杉山議員】
私はまず、公約で掲げた区民の切実な願いである高齢者が安心して受けられる75歳以上の医療について区民目線で質問します。
大田区で後期高齢者医療保険制度に加入されている方は、75歳以上の生活保護受給者を除く約8万人の方が加入しています。
今回の後期高齢者医療保険料の軽減特例の見直しで、約8万人の加入者の中で軽減特例対象者は3万100人、加入者の約4割が影響を受けます。2021年度には7割軽減になります。そもそも軽減特例は、高齢者差別に怒る国民の批判を交わすため、制度導入時、当時の自民党、公明党政権は、低所得者の保険料を軽減する仕組み、特例軽減を導入しました。ところが、安倍政権は骨太の方針2015でこの特例軽減の打ち切りを表明し、軽減特例の見直しを行いました。その結果、年金収入が減る中で均等割額が4330円から1万2990円、3倍に負担が増えることになります。
今年第1回定例会の我が党の質問に対して区民部長の答弁は、「2021年度から、それぞれ本則の7割減に戻すことになりました」と答弁しています。
また、「区では、国に対して、全国市長会を通じて、後期高齢者医療保険料について、被保険者の負担感に十分配慮し、保険料負担を抑制する処置を継続するよう要望しております」と答弁がなされました。国に軽減措置の継続や恒久化を求めることは評価できる点です。
しかし、現状は軽減特例の見直しが行われ、区民の負担が増しています。
●国が要望に応えるまでは、地方自治体として国の防波堤となり、区民の苦難の軽減のため、大田区として区独自で軽減特例を補うことを求めます。お答えください。
【区民部長】
まず、均等割保険料の軽減特例についてのご質問ですが、国の軽減特例は令和元年度から見直しが行われ、所得の低い方に対する介護保険料の軽減拡充や年金生活者支援給付金の支給とあわせて実施されるものです。9割軽減の方については1年後の令和2年度から本則の7割軽減に、年金生活者支援給付金の支給対象とならない8.5割軽減の対象となっている方については、2年後の令和3年度から本則7割軽減に戻すなど、時間をかけて見直すことを行い、対象となる被保険者の方へ配慮をしたものとなってございます。この軽減特例の見直しについては、国の社会保障の充実・税の一体改革の中で位置づけられたものであり、国の審議会等での議論が重ねられた結果、医療保険制度の持続可能性を確保するために行われるものであると認識しております。
一方、東京都後期高齢者広域連合では、制度発足以来、特別対策や所得割の独自軽減という他の広域連合では実施していない独自の保険料軽減対策を、区市町村の合意のもとで一般財源を投入して行っております。このため大田区では、保険料の軽減対策として、令和元年度予算で約4億円強を計上してございます。区がさらに独自に保険料を軽減することは、現状以上の一般財源を必要とすることから、負担と給付の公平性、また、高齢者と現役世代の両方が安心できる制度にする趣旨からも困難であると認識しております。
【杉山議員】
次に、75歳以上の医療費の窓口負担について伺います。
後期高齢者医療制度は国民を年齢で区切り、高齢者を別枠の医療保険に囲い込んで、負担増と差別を押しつける悪法です。2008年の制度導入後、既に5回にわたる保険料値上げが強行されました。
財務相の諮問機関である財政制度等審議会は4月23日の分科会で社会保障改革を論議し、改めて小さなリスクは自助で解決しろという少額受診者への負担増加や、要介護1、2の人の生活援助の保険給付外し、効率的な提供と称した病床削減、負担の公平化を口実にした75歳以上の後期高齢者の窓口負担を原則2割にアップ、介護保険の利用者負担を2割へ段階的に引き上げるなどの改革案を示しました。社会保障改悪を安倍政権は参議院選挙後に狙っています。
財界選出の委員からは、優先順位として後期高齢者の負担引き上げを早く実施すべきだ、お年寄りにもう少し頑張ってもらえないか、負担増は社会貢献の意味もあるとの発言が続出。高齢者をさらなる生活苦に落とそうとするものです。
年金収入が低い方は、後期高齢者医療保険料も2年ごとの見直しで毎回引き上げられ、負担が重くのしかかっています。その中で医療費の窓口負担がさらに増すことは、生活をどん底に落とす結果をもたらし、金の切れ目が命の切れ目、医療窓口でお金に困って、受けたくても医療にかかれず命を落とすことも、これでは国民皆保険の趣旨からも逸脱します。
誰でもお金の心配なく医療が受けられる制度は過去にありました。日本では70歳以上の高齢者の医療費が全額無料だった時代があります。1972年に老人福祉法の改正が行われ、70歳以上の老人保健費の公費負担が定められました。1983年に老人保健法が施行されるまで、10年間は70歳以上の人の医療費が無償化でした。現在でも、東京都西多摩郡の日の出町では、高齢者医療助成制度により、75歳以上の方の医療費の窓口負担を無料にしています。医療費の窓口負担を無料化したことで医療費の総額が下がり、早期発見にも寄与しています。半額助成は年間で36億円となります。
●75歳以上の高齢者を差別と負担増で苦しめる後期高齢者医療制度を廃止することを国に求めること、また、区独自で医療費の窓口負担を無料にすること、まずは当面は外来医療費の半額を区が助成することです。お答えください。
【区民部長】
次に、後期高齢者医療制度及び窓口での医療負担についてのご質問でございます。
後期高齢者医療制度は、高齢者の医療費が増大する中、現役世代と高齢者世代の負担を明確にし、公平でわかりやすい制度とするため、75歳以上の高齢者を対象に心身の特性や生活実態を踏まえ創設されたものでございます。国民皆保険制度を将来にわたり持続可能なものとするためには重要な制度であり、区として制度廃止の意見を上げる考えはございません。後期高齢者制度の自己負担は他の保険制度に比べ低く抑えられております。高齢者に関しましては、1人当たりの医療費が毎年上昇している状況にあり、被保険者数、医療の高度化も加え医療費総額も増えている現状にございます。
東京都後期高齢者医療広域連合が策定した第2期広域計画によりますと、少子高齢化により生産年齢世代が減少し、団塊の世代が75歳以上に到達する令和7年度には、1人の後期高齢者を4.6人の生産年齢世代が支えると推計されております。また、後期高齢者医療費は約2.1兆円になると推計され、制度発足時の平成20年度と比べ2.25倍となり、総医療費の36.7%を占めると見込まれております。後期高齢者医療制度の財源構成は大部分が公費や現役世代からの支援金で賄われていることから、高齢者からも、外来医療費の窓口負担について応分の負担を求めざるを得ないところでございます。医療費が増大していく中で持続可能な医療制度を維持するためには、高齢者のみならず、公費、現役世代に過重な負担にならないような慎重な検討が必要であり、国の責任において万全の策を講ずるべきものでございます。したがいまして、区独自に医療費の自己負担分の軽減策に取り組むことは困難であると考えております。
【杉山議員】
高齢者が安心して暮らせる大田区にすることで、若い世代の方が老後に希望が持てる。そのことが働く意欲をかき立て、経済的にも大田区を豊かにすることにつながるのではないでしょうか。
空の安全を守るために航空労働者のくらしと権利を守ることについて
【杉山議員】
次に、空の安全を守るため、航空労働者の暮らしと権利を守ることについてです。
私は、18歳から45年間、羽田空港で整備士として働いてきました。私が実体験した目で質問をさせていただきます。
世界的に航空の旅客需要は、2030年には現在の2倍に膨れ上がり、地球上を飛行する航空機の数も2倍になると予測されています。航空機の増加とともにパイロットは2倍の98万人、整備士も2倍の116万人が必要と見込まれています。空港で直接運航にかかわるどの職場でも同様に2倍の人員が必要となります。日本でも同様です。
日本では、政府の訪日4000万人の目標、2020オリパラに向けて、羽田、成田の発着拡大に、航空各社は発着枠の獲得に熾烈な競争を展開しています。
羽田空港では、2010年の年間30万回の発着枠を2020年には49万回に増やすわけですから、1.6倍の作業量が増えるわけです。
その運航を支える体制、管制官、パイロット、整備士、CA(客室乗務員)、貨物や手荷物の搭降載、空港でのカウンター業務などを担うグランドハンドリングの職場など、どの職場も人員が整っていないのが実情です。
人は増えずに作業量だけが増えているのですから、長時間勤務、そして過密労働になっています。整備の現場では、私が入社した当時は飛行間点検を2名で点検していましたが、それが1名になり、そしてゼロ名に、国内線での始発便と最終便の到着に整備士をつけて点検しています。航空機の安全を担保していますが、それ以外は、何か不具合の発生したときに機側(機体側)に呼び出されています。始発便以外の出発点検をパイロットとグランドハンドリングの人間が整備士になりかわり点検をして運航させています。
整備士は国際線増便のための機体点検に充てられています。あわせて、機体が止まる夜間での修理、定例点検整備作業が中心になっているのです。この作業に合わせるために、早朝と夜に人を充てています。夜勤では拘束時間が14時間と長く、仮眠もなく、肉体的疲労が極限状態になり、この勤務を長く続けると過労死のリスクが高くなります。2008年6月には、私の先輩のスカイマーク航空の猪又整備士(当時53歳)が出勤途上にくも膜下出血で倒れ、亡くなられる事態も起きています。パイロット、CAなども宿泊先のホテルで倒れる方や過労死も起きています。
貨物や手荷物の搭降載、空港でのカウンター業務など多岐にわたっているグランドハンドリングの職場では、航空会社のグループ会社といっても下請であり、新規社員を募集し800人を集めても、3か月ももたないで半数がやめていきます。その職場のパートナー会社、二次下請では契約やアルバイトが中心です。非正規の方は住民票が大田区ではなく、地方の実家になっているのが現状です。出勤してこないのでアパートに安否を確認しに行くともぬけの殻、夜逃げです。正規社員でも初任給は20万円、非正規では17万円、家賃、光熱費、食費を差し引けば残りません。夏場に大学生のアルバイトを雇っても3日で来なくなるような、低賃金できつい職場なのです。
会社側も夜逃げをする人の管理を負う回避のためか、住民票の移動させていない状況でもあります。これでは、本来大田区に入るべき税金が入ってきません。
国際交流都市の表玄関の羽田空港で働く人たちがブラックな働き方をしているこの現状をただすこと、航空の現場で働いている人の暮らしや権利を守ることが、航空の安全を守り、大田区の発展にも寄与するのではないでしょうか。
1日8時間働けばまともに暮らせる社会、大幅な賃上げと非正規をなくして正社員として雇用する。このことで大田区の税収も上がるのではないですか。
●区長は、大田区を国際都市を標榜するとしています。空港で働く労働者の労働条件の改善なくして空の安全を守ることはできません。空港を抱える大田区として、空の安全を守るため、羽田空港を利用している航空会社とグループ会社に対して、働く人の労働条件の改善を求めるべきです。お答えください。
【産業経済部長】
私からは、航空業界において働く方々の労働環境に関するご質問についてお答えをさせていただきます。
区といたしましては、航空業界に限らず、区内の産業に携わる全ての事業者及び働く方々にとって、働き方改革関連法施行を契機に、多様で柔軟な働き方を選択できる社会の実現が重要と考えております。この実現により成長と好循環が構築され、働く人一人ひとりがよりよい将来への展望を持つことにより、魅力ある職場づくりへとつながり、ひいては航空におけるより一層の安全運航にも資するものと期待しております。また、交通政策を所管する国土交通省におきましては、安全確保等についての対策や啓発活動等が十分に行われているものと考えております。今後も区といたしましては、国や事業者の対策等を引き続き注視しつつ、働き方改革関連法等の普及啓発に努めてまいります。
【杉山議員】
2020年から羽田空港機能強化計画による増便と新飛行経路計画については、区民に丁寧な説明を求めるというのがこの間一貫した区の立場でした。先日、区庁舎1階にブースを設け、羽田増便で新飛行ルートの説明をオープンハウス型で行っていましたが、係の人は委託された人で、資料を渡すだけで説明もしてくれませんでした。B滑走路からの離陸は羽田地域に、A、C滑走路への都心上空からの着陸は城南島、京浜島、平和島等に多大な影響を及ぼします。騒音もさることながら、落下物は先ほど述べたような限界状況となっている労働環境ですから、国交省がいくら航空会社に落下物をなくすように指導しても、減少していないのが現状です。
●このような状況の中で労働環境が悪化し、安全が保てない、そして区民にも理解を得られていない羽田空港の機能強化計画は中止するよう国に要望することを求めます。お答えください。
【空港まちづくり本部長】
私からは、羽田空港の機能強化に関するご質問にお答えさせていただきます。まず、議員が参加された本庁舎1階での説明は情報発信拠点でございまして、説明員による説明の場ではございません。オープンハウス型説明会というのは、パネル展示と国土交通省職員との対話という形式のものでございます。
また、議員お話の安全をめぐる労働環境につきましては、国土交通省において法令等に基づき、本邦航空会社の航空の安全確保のための仕組みがあり、乗員や整備士等有資格者などの必要な人材や現場の確認等の対策が行われるものと考えております。機能強化につきましては、国家の航空政策として実施するものであり、技術的検討を踏まえ、国の責任において判断するものと理解してございます。同時に区としては、区民生活への影響を念頭に、落下物対策を含む安全対策等の具体的な対応を求めてまいりました。その結果、国は、国内外の航空事業者に落下物防止対策を義務づけるなど、安全対策に取り組んでおります。今後も、区がこれまで要望してきたことに対する国の対応に注視し、安全対策はもとより騒音対策などについても確実に取り組むよう、国に対して強く求めてまいります。
以 上