第1回定例会一般質問(速報)―佐藤議員(2月24日)



(映像は大田区議会ホームページより:17分)

地域経済の根幹としての区内中小企業支援の充実について

【佐藤議員】
地域経済の根幹としての区内中小企業支援の充実を求める質問をいたします。
2014年に大田区が行ったものづくり産業等実態調査では、区内のものづくり企業、事業所の現状が浮き彫りになりました。区内製造業の事業所は、従業員規模で3人以下が51.1%、4人から9人が27.8%で、9人以下が全体の約8割を占め、小規模零細の町工場が大田区工業の主力となっていることが改めて明らかになりました。また、区内の工場数は、1983年の9177事業所をピークに減少し、2014年の時点で3481事業所まで大きく落ち込み、その後も区内ものづくり企業・町工場の廃業・倒産に歯止めがかかっていません。
大田区産業経済部と産業振興協会が東京商工リサーチに依頼し、3か月ごとの区内の景況を調べている「大田区中小企業の景況」、最新の2016年7月から9月期では、製造業で「業況は△26と多少持ち直した。売上額は多少改善し、収益は前期並の減少が続いた。販売価格は前期並の下降傾向が続き、原材料価格は前期並の上昇傾向が続いた」などとして、業況は7段階評価中の下から2番目のF評価で、来期、2016年10月から12月期の見通しもF評価で、依然として厳しい業況が続いています。コメント欄には、「マイナス金利がうたわれ、不動産や他の業種は良いのか分かりませんが、製造業にあっては一向に変化がない。金融政策だけではダメです」、「電機、電子、製造業においてアベノミクスの実感はありません」などと苦境の状況が並んでいます。
私は、10代から20歳代にかけて仕事でよく歩いた大森東や大森南、糀谷の地域を最近よく回るのですが、かつて町工場が軒を連ねていた地域からものづくり企業がなくなり、住宅などに変わり、まちが様変わりしていることを改めて実感し、大田区工業・ものづくりの集積崩壊に危機感を強く持ちました。
景況に記載されている経営上の問題点では、「売り上げの停滞・減少」が60%の断トツの1位で、2008年4月から6月期以来、8年以上にわたって経営上の1位を占め続けています。また、重点経営施策も2015年1月から3月期以来、「販路を広げる」が1位を占め続けるなど、この分野での改善こそが区内のものづくりの集積にとって求められる課題であることが明らかです。
私は、大田区のものづくり集積を守り、発展させるための提案をしたいと思います。区内のものづくり集積が激減する中で、大田区工業の主力となっている小規模零細の町工場の仕事確保が急務の課題です。この点については、昨年2016年の第1回定例会予算特別委員会において私が質問・提案したものづくり連携コーディネーターによる市場開拓を拡充し、体制強化を図ることです。
●私は、昨年度まで2名だった市場開拓員を10名に大幅に増員し、訪問目標を1人月間10社から50社以上に目標を大きく引き上げるよう求めました。結果、ものづくり連携コーディネーターは8名まで増員されたようですが、今年度の訪問件数や発注件数、受注金額をお答えください。

【産業経済部長】
まず、ものづくり連携コーディネーターの今年度の訪問件数や受注件数、金額のご質問についてでございます。公益財団法人大田区産業振興協会では、平成28年度は相談員の名称を「ものづくり連携コーディネーター」と変更した上で、8名の体制とし、受発注機会を増やすことに努めております。今年度の受注件数、金額については、年度の途中でございますため、まとまった成果をお示しすることはできませんが、発注開拓の目標件数を月間10社から15社としております。現在、それ以上の実績を重ねているところでございます。なお、地域力推進部から提案のございました区設掲示板の区内受注についても、ものづくり連携コーディネーターが区内ものづくり企業へとつないでいるところでございます。

【佐藤議員】
大田区産業経済部産業振興課と大田区産業振興協会が発行している「大田区工業ガイド」では、「大田区は高度な加工技術を有する中小企業が集積する日本有数の『ものづくりのまち』です。多種多様な加工技術の集積の強みを活かし、戦後の高度経済成長期から日本の産業全体の屋台骨となり、先端的な技術開発を支えてきました」と、大田区の工業を高く評価しています。また、大田区の工場の強みとして、「大田区内の工場がそれぞれに専門分野を持ち、その分野に特化して、高度な加工技術を体得してきました。その結果、様々な加工技術を有する工場が集積し、『仲間まわし』と呼ばれる連携体制が構築されました。また、コンパクトな経営規模の工場が高度な加工技術を有することで、『多品種』『少ロット生産』『短納期対応』を可能としている点が大きな特長と言えます」と述べられています。区内のものづくりの能力、ものづくりの集積は、大企業などの企業内に閉じ込められているわけでもなく、広く社会に開かれて、必要とする多くの企業や個人が活用することができる能力です。かつて大田区みずからが「あたかも公共財のような機能」と表現し、日本の公共財から世界の産業を支える公共財への飛躍を目指すとしていた位置づけを再確認し、産業集積を守ることが今こそ大事ではないでしょうか。この多種多様な高度な技術を活かしながら販路を拡大する施策の推進を求めます。
●今年度の到達点に立って、ものづくり連携コーディネーターをさらに増員し、大田区内での活動強化に加え、日本全国のものづくり集積地域への訪問を拡大し、区内のものづくり企業への仕事確保事業の拡大・強化をするよう求めます。お答えください。

【産業経済部長】
次に、ものづくり連携コーディネーターをさらに増員して、全国からの仕事の確保をしていくべきとのご質問でございますが、平成29年度の増員については計画いたしておりません。大田区産業振興協会との共催で実施をいたしております「加工技術展示商談会」や「おおた工業フェア」、「おおた研究・開発フェア」をはじめ、全国から企業を集めて年2回開催いたしております「ものづくり受発注商談会in大田」など、取引の拡大に寄与する様々な事業を通じまして区内ものづくり企業への仕事の確保に努めているところでございます。
区内のものづくり集積地域からの受注確保については、大田区産業振興協会が行います北海道、秋田、山陰地域の金融機関との連携事業の中から、ものづくり連携コーディネーターを介した受注確保に努めております。また、「中小企業都市連絡協議会」や「産業のまちネットワーク推進協議会」、「医工連携自治体協議会」など、全国のものづくり集積都市などとの連携を通じまして企業間マッチングを促進してまいります。

【佐藤議員】
次に、工場アパート、中小業者賃貸住宅についてです。大田区産業経済部事業概要「View2016-産業支援施策ガイドブック-」には、「工場の操業環境改善による工業集積の維持発展を図るとともに、産業と生活環境との調和など、産業のまちづくりの実現を目指すため、工場アパートを設置・管理しています」とし、産業集積を維持・発展させるためにも、区内工業の主力9人以下の町工場の仕事起こし・確保のためにも、中堅企業を育成する工場アパートは重要です。
●ものづくりの集積に大きな役割が期待される工場アパートの増設を積極的に計画して進めることを求めます。その際、本羽田二丁目工場アパートのような貸し工場と住宅の住工合築型や、空いている貸し工場を区が借り上げてものづくり企業に貸し出すなど、柔軟な対応で産業集積を維持・発展させる施策の展開を大胆に行うよう求めます。また、東糀谷六丁目工場アパート「OTAテクノCORE」の例に倣い、入居者への家賃補助を他の工場アパートなどでも行うよう求めます。お答えください。

【産業経済部長】
次に、工場アパートの設置強化など3点についてのご質問でございますが、近年、産業構造の変化に伴い、ベンチャー企業の入居希望が増えてございます。多様化する企業に柔軟に対応するためには、民間活力を活用していくことが重要であると考えております。区は、これまでも民間企業などによる工場アパートの基盤施設整備を支援する「ものづくり工場基盤施設整備支援事業」を実施してきました。本事業を活用し、東糀谷六丁目工場アパートを平成24年に開設してきたところでございます。また、ものづくり応援宅建業者の皆様にもご協力をいただき、貸し工場・工業用地をお探しの方へ情報提供を行います「貸工場・工業用地マッチング事業」を実施しております。今後も、登録物件を増やし、多くの情報が集まるよう宅建業者に働きかけてまいります。さらに、区内企業の持続的操業支援を行うための「企業立地促進サポート事業」に今年度から不動産情報収集業務を加えました。これらの事業をあわせることによりまして、新規の立地や区内企業の事業拡張に伴う移転需要に応えられるものと期待しております。したがいまして、貸し工場を区が借り上げる考えはございません。
なお、家賃補助などの固定費補助は全ての事業者にかかわることでもございますので、継続的に企業体力を維持・発展することにつながらないという考えから、実施する考えはございません。

【佐藤議員】
この間、延長の措置がとられてきた本羽田二丁目工場アパートの入居期限を今年3月で迎えることになります。また、本羽田二丁目第2工場アパート「テクノWING」も入居期限を3年後に迎えるなど、他の工場アパートも順次入居期限を迎えます。これまで大田区は、区内の工業集積を守る立場から工場アパートを設置してきました。
●工場アパートから退去する企業には、引き続き大田区内にとどまって操業し続けられるよう特段の取り組みが必要になります。既存の貸工場・工業用地マッチング事業やものづくり工場立地助成にとどまらない丁寧な対応をすることが求められます。例えば、ある程度の基準を設け、区内企業・業者への仕事を受発注し、工業集積に貢献している企業には退去期限の延長も行うなど対応を求めます。お答えください。

【産業経済部長】
それから、工場アパートを退去する企業に対する対応に関するご質問ですが、区では、これまで工場アパートといたしまして4か所、計138ユニットを設置してまいりました。これらの工場アパートは満室状況が続いておりまして、入居者公募に際しましては複数の企業から申し込みをいただいている状況でございます。工場アパートの使用期間でございますが、平成9年に開設いたしました本羽田二丁目工場アパートと平成12年に開設いたしました本羽田二丁目第2工場アパートは、当初12年だったところ、計20年まで使用できるよう条例を改正いただいた経過がございます。区といたしましては、工場アパートへの入居需要の高さや区民の財産を公平に利用していただく観点から、これ以上の使用期間の延長は困難であると考えております。
今年度末に工場アパートの使用期限を迎える企業におかれましては、引き続き区内で操業を継続していただくため、定期的に訪問し、不動産情報とともに、各企業の経営支援に関する情報もあわせて提供してまいりました。不動産情報は、それぞれの企業のご要望を直接伺い、それにできるだけ沿った不動産物件について広く情報収集して提供しております。経営支援に関する情報については、助成金制度について、区の助成制度だけでなく、国の革新的ものづくり・商業・サービス開発支援補助金の制度などもご案内しております。また、弁護士や弁理士などの専門家によるビジネス相談を行う大田区産業振興協会のビジネスサポート制度を紹介するほか、経営改善に活かしていただくため、中小企業診断士による経営診断も実施いたしました。区といたしましては、今後も引き続き、使用期限を迎える企業の方はもとより、大田区に集積しチャンスをつかもうとするものづくり企業の皆様にとって操業しやすい環境づくりに取り組んでまいります。以上でございます。

以  上

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