(映像は大田区議会ホームページより:27分)
高齢者の願いに応えて西糀谷老人いこいの家存続について
【藤原議員】
糀谷駅前に巨大タワービルが2棟、また駅前広場が間もなく完成しますが、同じくタワービル内に(仮称)糀谷駅前高齢者施設も4月にオープン、それにあわせて、西糀谷四丁目にある「老人いこいの家」は3月で廃止することが、今定例会に「大田区老人いこいの家条例の一部を改正する条例」が出されております。西糀谷老人いこいの家閉館については、2016年8月の健康福祉委員会で初めて報告があり、地元町会役員、高砂長寿会会員、老人いこいの家利用者などに、老人いこいの家閉館と駅前高齢者施設について説明と見学があり、区担当職員と管理運営する有隣協会の皆さんが、駅前高齢者施設は「皆さんにこれまでと同じように施設を利用していただきたい」と説明がありました。
私は、説明会にも、現地見学にも参加し、老人いこいの家の利用者が心配されていた「毎日自由に利用できるのか」について、説明会の話とはあまりにも違うので、利用されている方々と同じ思いで、これまで行政の説明との違いに腹が立ちました。これまでの説明では、西糀谷老人いこいの家を閉館しても、一つは東糀谷老人いこいの家などを利用してもらう、それも無理な高齢者には近くの(仮称)駅前高齢者施設の利用をしてもらうと言ってました。西糀谷老人いこいの家の利用者も、駅前で便利だし内容が同じだったらと少しは望みを持っていましたが、完全に裏切られたと多くの利用者が語っております。
利用者の皆さんから多かったのは、一つは閉館発表してからたった7か月で廃止するという期間の短さ。また、これまでは日中ならばいつでも自由に行って、「こんにちは、元気ですね、風邪引いてない」と、気軽に話しができ、お茶を飲み、弁当を食べ、笑顔で交流できたものが、駅前高齢者施設ではそれができなくなるということです。その他にも、カラオケも認知症予防・防止や健康維持に役立ち、今までどおり毎日歌えなくなるし、真夏の「熱中症対策」の立ち寄り場所もなくなります。これまでは、お風呂も夏冬などは大変人気がありました。説明では駅前高齢者施設にはシャワー室があると説明されていましたが、現地見学でこれが「シャワー室」かと驚きました。トイレの中にシャワーが1個あるだけです。なぜトイレの中にあるのと聞いたら「高齢者はそそうをする、お漏らしして汚れた場合に洗うシャワー」だと言うのです。
●大田区の発展に尽くされてきた高齢者に対して、思いやりや優しさも感じられない冷たい姿勢があらわれているのではないでしょうか。駅前高齢者施設にシャワー室をなぜ設けないのか、囲碁・将棋の部屋もなく、「老人いこい家」のように条例に縛られないので、駅前高齢者施設は老人いこいの家の代替施設にはならないではありませんか。当初の説明と違うのはなぜですか、答弁を求めます。
【福祉部長】
(仮称)糀谷駅前高齢者支援施設についてのご質問ですが、大田区高齢者福祉計画・第6期介護保険事業計画「おおた高齢者施策推進プラン」では、老人いこいの家の新しい取り組みや(仮称)糀谷駅前高齢者支援施設の設置などを計画し、高齢者が住み慣れた地域で安心してくらし続けられる「地域包括ケア体制」構築のために施策を進めております。また、昨年3月に策定された「大田区公共施設適正配置方針」では、施設の多機能化や集約化を図り、費用対効果も考慮した施設の有効利用が求められております。
このような状況の中、(仮称)糀谷駅前高齢者支援施設は、名称を「シニアステーション糀谷」と命名し、駅前である立地のよさと、耐火耐震性にすぐれた施設の特性等を最大限に活かし、現在、老人いこいの家を利用された方はもちろん、初めて利用する方にも自由に来所していただき、親しんでいただけるよう事業の内容を工夫しております。
施設のシャワー設備につきましては、高齢者に優しく、利用者の汗を流すことを想定したつくりとしております。囲碁・将棋やゲームの実施につきましては、タイムシェアや建物全体の有効活用などの工夫をしながらご要望に応えてまいります。また、開所日は年末年始を除き359日開館し、開所時間は老人いこいの家より3時間拡充し11時間となり、高齢者への交流施設としての幅広い対応を進めてまいります。当初からこのような説明を丁寧に行い、老人いこいの家で担っている機能にも対応する計画を進めてまいりました。
糀谷駅前のシニアステーション糀谷は、高齢者の元気維持、介護予防から最適な介護サービスへの切れ目のない支援を目的に、地域包括支援センター糀谷、東糀谷老人いこいの家と連携して地域包括ケアの体制の構築を目指してまいります。
【藤原議員】
大田区が2015年3月にまとめられた「大田区公共施設白書」で、今後の公共施設のあり方、取り組みが述べられておりますが、この白書の中には、老人いこいの家の設置目的は、老人福祉法の趣旨を踏まえて設置され、大田区老人いこいの家条例では、第2条「老人及び老人クラブに対し、教養の向上、レクリエーション等の場を提供することによって、老人の福祉の増進を図るため、いこいの家を別表第1のとおり設置する」とあります。
老人いこいの家の利用サービスも、2015年当時の調査で年間約30万人が利用し、西糀谷老人いこいの家は現在ある区内老人いこいの家の中では一番広い施設です。2階には区民利用の集会室があり、施設使用料収入でも62万7000円と区内で一番収入があり、多くの方が利用されていることがわかります。サービスも好評で、管理運営は大田区直営で、職員も親切丁寧と評判です。閉館理由に老朽化していること、木造密集地域で建て替えができないことなどが理由に挙げられていますが、老朽化といっても区内には築42年以上のいこいの家もあります。西糀谷老人いこいの家は修繕するなら、あと10年、20年は十分使用可能です。建て替えができない理由に、道路に面していない、児童公園があるからと言っていますが、現在出入りしている公園北側を利用すれば建て替えは十分可能だと思います。
●高齢者の切実な願いは「閉館」しないでほしいということです。当面は現状維持で西糀谷老人いこいの家をそのまま使用し、老朽化や耐震が心配ならば施設の長寿命化について検討することです。建て替えが不可能ならば、区の責任で新たに老人いこいの家を近隣に設置することです。答弁を求めます。
【福祉部長】
続きまして、西糀谷老人いこいの家の建て替えについてのご質問ですが、西糀谷老人いこいの家は、経年劣化により建物の老朽化が激しく、ここ数年間の間でも漏水補修工事、給湯設備改修工事、空調設備改修工事など多数発生しており、もし施設を存続するとなれば、さらに地中ガス管交換工事、屋上防水工事、外壁修繕工事、浴室改修工事など、建物の軀体にもかかわる大規模な修繕が急務となってまいります。また、敷地が接道していないため建て替えも困難な状況にあります。
さらに、この地域が木造住宅密集地域であるため、東京都の不燃化推進特定整理特区に指定されていることや、(仮称)糀谷駅前高齢者支援施設の開設事業、「大田区公共施設適正配置方針」の考え方を踏まえて、区では西糀谷老人いこいの家を閉館することといたしました。
シニアステーション糀谷は、高齢者が集う機能はもちろんのこと、介護予防、健康増進、多世代・地域間交流をはじめ、新たな取り組みとしてプレシニア世代の社会参加を促進するなど多様な事業運営を行います。シニアステーション糀谷は施設を最大限活用して新たな高齢者の地域交流の拠点としての機能を果たしてまいります。
【藤原議員】
老人いこいの家は高齢者が楽しむ施設として必要です。同時に、地域の皆さん、区民の皆さんも、生涯学習の場、書道、着付け、俳句やフォークダンス、得手を活かした手芸など多くの高齢者と住民が使用しています。有料であっても老人いこいの家は人気もあり利用されているのです。区民施設は区民にも、特に高齢者には「元気で活躍できる場所、とじこもりをなくす場所、絆を活かした様々な取り組みを行う場所」となっております。大田区には文化センターがあるとの声も聞かれますが、文化センターの集会室だけでは足りません。それを補っているのが老人いこいの家の集会室です。
●2月11日東京新聞で、松原区長は新年度予算案説明の中で、区長は「日本一、高齢者が元気でくらせるまちにしたい」と述べられたと報道がありましたが、元気で暮らせるまちにするなら老人いこいの家を廃止する必要はなく、区民や高齢者が利用している施設は廃止でなく、足りない区民施設は増やすべきです。答弁を求めます。
【福祉部長】
最後に、老人いこいの家を廃止ではなく増やすべきとのご質問ですが、この半世紀の間に高齢者を取り巻く環境は大きく変化しており、また今後さらなる高齢化が進み、2025年に向けて高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせる地域包括ケア体制の構築が急務となっております。このため、高齢者の居場所を確保することはもちろん、介護予防、社会参加、多世代交流、就労・ボランティア等の活動促進などの施策を、総合的かつ継続的に区民とともにつくり上げる必要があります。
区としては、糀谷駅前のシニアステーション糀谷において、開所日や開所時間を拡充し、今まで以上に多くの方が利用、参加、活動する地域交流の施設を目指してまいります。また、地域包括支援センターと連携をとり、高齢に伴う様々な悩みや相談をしっかりと受け止める体制を整備し、高齢者の安心を支えてまいります。
このため今定例会では、大田区老人いこいの家の条例の一部を改正する条例のほか、29年度予算案として多様な事業を提案させていただきました。さらに、糀谷地区をモデル地区とする「元気シニア・プロジェクト」については取り組みを進め、地域の方とともに課題解決を図ってまいります。
区といたしましては、老人いこいの家をはじめ、個々の施設については大田区公共施設適正配置方針の考え方を踏まえ、区民ニーズなども勘案し検討するものと考えております。
羽田空港跡地は、原点に立ち区民と地域が主役の計画について
【藤原議員】
羽田空港跡地問題についてお聞きします。
松原区長の第1回定例会所信表明でも取り上げられている羽田空港跡地における成長戦略拠点の形成で、予算案では9258万円がありますが、「羽田空港跡地第1ゾーン整備事業」、世界と地域をつなぐ「新産業創造・発信拠点」を形成しますと予算概要にもありますが、区長就任以来、毎年のように空港跡地利用についての資料が出され、当初は大規模コンベンション施設とか、最近は国家戦略特区で日本一にとか、今、大田区は羽田空港と跡地活用を東京オリンピックと抱き合わせて起爆剤にと今回の跡地活用の具体化に着手し、これらの目指す方向は「世界で一番企業活動しやすい、もうけを生む跡地に」との政府と大企業の考えに沿ったもので、区内産業、中小企業の発展、活性化にはつながらないものと思います。区内中小企業、町工場が音を立てて倒産、廃業しており、その対策、対案が出されておらず、新年度の産業経済費予算案を見れば一目瞭然です。
産業交流施設拠点事業への公募で、すぐれたノウハウとアイデアを有する企業を募集し、5月末までに事業者を決定すると決められましたが、大田区にはすぐれた企業も、先端加工技術企業もありますが、羽田空港跡地に区内企業が何社公募で集まるのですか。第2ゾーンの例を見れば、民間事業者の選定でも総合順位1位は住友不動産・東京国際空港プロジェクトチームであるように、資金力ある大手企業が選定されているのです。大田区の第1ゾーンへの企業誘致でも地元業者が少なく、国内外のベンチャー企業、大企業とつながりが強い企業が選定されるのではないでしょうか。結果として、大田区のものづくり町工場への仕事発注はほとんど回ってこないのではないでしようか。
●新年度予算案で、産業経済費は37億3000万円余で、構成比で1.4%とは昨年よりも5666円の減額です。少なくても産業経済費は100億円を超す予算に増額すべきです。羽田空港跡地第1ゾーン整備事業予算9258万円、羽田空港対策積立基金172億円を取り崩し、区内産業経済費に振り向け、工場全数調査で求められている施策に直ちに活用し、中小企業全面支援、仕事起こし緊急対策等にこれらの区民の税金を使うべきです。答弁を求めます。
【企画経営部長】
平成29年度予算では、「地域の資源と強みを活かし、国際都市おおたの成長を牽引する取り組み」を重点課題の一つとしてございます。この取り組みの一つである羽田空港跡地成長戦略拠点の形成は、羽田空港跡地を世界と地域をつなぐゲートウェイとして、国内外に日本のものづくり技術などを発信する「新産業創造・発信拠点」の形成を目指すものでございます。平成29年度は、2020年のまちづくり概成に向けまして、羽田空港跡地のまちづくりの具体的な姿が見えてくる重要な局面を迎えることから、産業支援に関するソフト面とハード整備の両面から優先的に予算を配分しているところでございます。
具体的には、ハード整備の面では、羽田空港跡地の事業予定者決定を踏まえた拠点形成、基盤施設の整備などの取り組みを進めてまいります。また、ソフト面では、多様な主体が参画して製品開発などに取り組む「協創プロジェクト」を推進するため区内産業の開発提案力向上につながるプログラムの実施や、区内企業と有望な技術系ベンチャー企業との連携創出など、産業交流施設の整備を見据えた区内産業の振興につなげてまいります。このように、区内産業・中小企業対策につきましては、これまでの取り組みを強化していくとともに、新産業創造・発信拠点を形成することで、将来を見据えた産業の振興に取り組んでまいります。
なお、産業経済費が平成28年度当初予算比で減額となった主な理由につきましては、大田区産業プラザの地下駐車場改修工事の完了に伴いまして、産業施設費が1億9815万7000円の減となったことによるものでございます。区内産業・中小企業対策の経費を計上した産業振興費は1億5514万2000円の増としており、大田区の産業支援に関する予算の充実を図っているところでございます。
また、羽田空港対策積立基金は、将来の区内産業の振興や、水辺や緑を活かした憩いの空間とにぎわいの創出など、空港跡地のまちづくりなどのために有効に活用してまいります。私からは以上でございます。
【藤原議員】
日本共産党大田区議団は、空港跡地取得と区民利用について、本会議場、区長へ要望等でも繰り返し提案してまいりました。1992年に発表された大田区羽田空港移転跡地利用基本計画は、跡地は東京都が土地を購入し、大田区が利用するとした計画案がありました。跡地として生まれてくる計画の根本には、沖合移転によって生まれる「羽田空港跡地約200ヘクタールの土地は公共用地である」という考えに立っていました。1945年9月21日に進駐軍によって、住み続けてこられた羽田空港内3町会住民約3000人が48時以内に強制退去させられた歴史ある「空港跡地」だからです。大田区はこのような理由から、当時の跡地基本目標案は、200ヘクタールを活用して大規模森林公園、親水公園やスポーツ広場、宇宙博物館、美術館などの跡地活用計画が提案されていました。
しかし、2000年8月に当時の運輸省から空港跡地は77ヘクタールに、2002年には53ヘクタールへと4分の1に縮小され、縮小された中で三つのブロックに跡地利用として提案され、大田区の跡地は200ヘクタールから、たったの16.5ヘクタールしか活用できなくなりました。
日本共産党大田区議団は、当時も今日も、沖合移転完了した後、国、都、大田区・品川区の三者協議に基づき、200ヘクタールを都民、区民に無償で提供することを一貫して求めております。
●空港に対面している羽田地域、東糀谷、大森東・南、大森本町や大田区民の願いを優先して跡地利用計画案を決めるべきです。跡地が生まれた原点に立ち、地域住民をはじめ、区民を主役にした跡地計画にすべきです。当面は区民が憩える広場に整地することを提案するものです。答弁を求めます。
【空港まちづくり本部長】
羽田空港跡地の土地利用につきましては、羽田空港移転問題協議会でこれまで検討されたことが基本となっております。平成19年度にはゾーニングと機能配置を示した「羽田空港跡地利用基本計画」を策定、さらに、平成22年度の「羽田空港跡地まちづくり推進計画」では、「産業・文化交流機能」の導入と「多目的広場」などの施設整備を柱とする土地利用を確認いたしました。東京都と国と所要の協議・調整を行い、平成27年7月には「羽田空港跡地第1ゾーン整備方針」を策定、「新産業創造・発信拠点」の形成を目指すとしてまいりました。計画等の策定を進めるに当たりまして、その都度パブリックコメントを実施し、区民の声を計画等に反映していきました。「羽田空港跡地利用基本計画」では42件、「羽田空港跡地利用OTA基本プラン」では276件……。【時間切れのため答弁はここまで】
【藤原議員】
羽田空港跡地には、羽田の歴史、航空機事故や騒音、排ガスなど環境悪化で痛みに耐えてこられた地元住民や大田区民の思いを活かした取り組みと、二度と航空機事故のない安全・安心の羽田空港にするために、2020年からの羽田空港機能強化の増便には、きっぱり区長が中止・撤回を表明することを強く要望して質問を終わります。
以 上