(映像は大田区議会ホームページより:22分)
【あらお議員】
日本共産党大田区議団のあらお大介です。
安心できる介護保険サービスの充実について
【あらお議員】
はじめに「介護予防・日常生活支援総合事業」についてお尋ねします。
大田区は「新総合事業」を2016年4月から実施するとしています。区内の事業者に実施したアンケートでは、上限金額程度でサービスを受けた場合、約75%が指定を受けると回答しています。「新総合事業」は要支援者の訪問介護・通所介護を保険給付から切り離して市区町村が独自に実施している地域支援事業に移行させるもので、具体的には地域支援事業の「介護予防事業」に要支援者の訪問・通所介護の代替サービスを加えたものになります。厚生労働省が示した「ガイドライン」では要支援者の多くは食事・排泄などの日常生活動作は「自立」しているとし、掃除、買い物などの生活行為に困難があるのは動機づけや周囲の働きかけの問題であるとし、要支援者の自立意欲の向上を図るべきと呼びかけています。具体的には「掃除であれば、掃除機から箒やモップに変える、買い物であれば、籠付歩行車を活用する」といった例が挙げられていますが、高齢者が要支援状態に至る原因は病気やけが等様々で、単純に意欲が向上すれば要支援状態から脱却できるとするのはあまりにも非科学的な考え方です。この新総合事業の目的は介護給付費の抑制にあることは明らかです。介護サービスを受けることは権利でありそれを阻害することは認めるわけにはいきません。
●今年の第1回定例会で共産党区議団の質問に対し、区は介護予防・日常生活支援総合事業について「市区町村が中心となって、地域の実情に応じて、地域の支えあいの体制を推進し、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することにより、要支援者に対する効果的かつ効率的な支援を可能とすることを目指すものとし…引き続き高齢者がこれまで以上に自分にふさわしいサービスを選択できる仕組みとなるよう検討を進め」ると答弁していますが、ここでいう「多様なサービス」とはボランティア等を活用してお金をかけず安上がりなサービスを含むものです。「これまで以上に自分にふさわしいサービス」とは現行のサービスではふさわしくないということでしょうか?「新総合事業」は自治体の裁量でサービス内容が決められることになっていますが、国の意向に添った介護給付費の抑制で安上がりなサービスの導入により、ケアの質が低下して要支援者が要介護者になるリスクが増大するのではないでしょうか?要支援者の方々の多くが望む現行の介護予防サービスを継続するべきと考えますが、大田区の見解を伺います。
【福祉部長】
新しい介護予防・日常生活支援総合事業についてのお尋ねですが、区としては、平成28年4月から介護予防・日常生活支援総合事業を実施することとし、本年3月の第1回定例区議会に大田区介護保険条例の改正案を上程し、可決いただいたところです。この新総合事業の実施にあたっては、現行の介護予防サービスの利用者が、適切なサービスを引続き安心して受けられるよう、円滑な移行を行っていくことが重要であると認識しております。現在、厚生労働省が示した指針」に基づき、新総合事業に取り組んで関係機関と調整を進めるなど、実施準備に取り組んでいるところです。区としては、高齢者の方々が、住み慣れた地域で自立した日常生活を継続できるよう、介護予防事業を含めた新総合事業の実施に向け、適切に対応してまいります。
【あらお議員】
次に大田区の地域包括ケア体制についてお尋ねします。
65歳以上の人口は現在3000万人を超えて、国民の約4人に1人の割合に上っています。2042年の約3900万人でピークを迎えて、その後も75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されることから、厚生労働省は団塊世代が75歳以上となる2025年を目途に地域包括ケアシステムを構築することを推進しています。大田区でも「おおた高齢者施策推進プラン」の中で地域包括ケア体制を構築することになっています。基本理念にもなっている、住み慣れた地域で安心して暮らしたいということは、多くの高齢者の方々の願いであります。しかし、少子高齢化が今後ますます進展する中で、介護が必要になる高齢者が増加し需要もそれに合わせて増えることが予測される中、今の大田区が高齢者の方々にとって安心して生活し、暮らせる街になっているのか疑問に思います。私自身、議員になってから高齢者の方々やそのご家族から病気のこと、介護のことなどについていくつか相談を受けました。ある一人暮らしの70代の女性は、「頼れる親類がいないので、介護が必要になった時のことを考えると不安です」と訴え、また要介護度4の母親を在宅介護している男性は、「母は訪問介護、デイサービス、ショートステイ等のサービスを利用しているが、4年前に転倒してからほとんど寝たきり状態になり、それ以外にも様々な病気抱えているので家での生活が正直厳しくなっている。自分自身の仕事やこれからの生活のことを考えたら、特養に入居できればいいんだけど…」と在宅介護への限界を訴えられました。大田区が実施した高齢者等の実態調査では、今後希望する暮らし方では「自宅で、主に介護サービスなどを利用したい」と回答した人がどの調査でも最も多くなっています。また、安心して暮らすための条件として、「24時間必要に応じてヘルパーや看護師が来てくれる」との回答が多くなっています。そのためにも「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の整備支援は欠かすことができません。しかし、現在大田区にはこれに対応している事業所は1か所しかありません。地域包括ケア体制を構築していくうえでも定期巡回・随時対応型訪問介護看護の整備は急務です。在宅介護をしているご家族の方からお話を聞いていますと、「夜間の対応が大変だ」という声が多く聞かれます。区内での特別養護老人ホームの入居待機者は1500人にものぼります。特養ホームに入居を希望する人が希望通りに入居でき、在宅での生活を希望する人はヘルパーさんを利用して自宅で生活を送ることができる…これが地域包括ケアシステムの理想的な形だとおもいます。
●そのためにもまず、特別養護老人ホームの待機者に見合う施設の建設を求めます。
【福祉部長】
次に特別養護老人ホームを増設すべきとのお尋ねですが、特別養護老人ホームでは、在宅生活が困難になった高齢者に対し、お一人おひとりの状況に応じ、必要な介護サービスの提供をしており、その整備を促進していくことは重要な課題と認識しております。区では、おおた高齢者施策推進プランに基づき、特別養護老人ホームについて合計195床の、平成28年度中の開設に向け、取り組みを進めているところです。さらに矢口3丁目においても30床の整備計画に着手するなど、計画の達成に向け、積極的な取り組みを推進しているところです。また、区としては、これら特別養護老人ホームの整備を促進するため、従前より都に上乗せする形で独自の補助事業を実施し、加えて、現計画中の整備においては、区の補助金の増額を行い、さらなる整備の促進を図ったところです。一方、現計画の策定にあたり実施した調査では、高齢者の46.5%が在宅生活の継続を希望していることから、地域包括ケア体制を構築し、継続した在宅生活を支援していくことも重要であると考えております。今後とも、在宅サービスと施設サービスとのバランスを十分勘案し、介護基盤の整備を進めてまいります。
【あらお議員】
●しかし、現実には特養待機者がなかなか解消しない、在宅介護でも家族介護に頼らざるを得ない現状で、地域包括ケア体制の構築には程遠い状態です。広島県尾道市では「尾道方式」と呼ばれる地域包括ケア方式を構築していることで知られていますが、医療と福祉の連携によって退院前にケアカンファレンスを開いて在宅での生活を支援するという内容です。大田区が自治体の責務である「住民の福祉の向上」を果たすためにも、事業所運営費補助の新設など全力で取り組むことを強く求めます。お答えください。
【福祉部長】
次に事業所運営費補助の新設など地域包括ケアシステムの構築に全力で取り組むことのお尋ねですが、区としては、今年3月に策定した「おおた高齢者施策推進プランに基づき、「高齢者が住み慣れた地域で、安心してくらせるまちをつくります」を基本理念として、基本目標を3件掲げ、現在、55の事業の実施に鋭意取り組んでいるところです。特に地域包括ケアシステムを構築していくことは本計画の重要な柱のひとつとなっており、新たな取組みも含め、積極的に推進することとしております。本計画による介護事者の運営支援としましては平成27年度から、新たに「大田区介護職員初任者研修受講費助成事業」を実施しているところです。一方、議員お話の事業所運営費補助については、国が介護報酬など介護保険制度における制度全体の設計の中で対応すべきものと認識しており、区として独自に対応することは考えておりません。
【あらお議員】
次に介護職員の人材確保と処遇改善についてお尋ねします。
現在、介護事業所の人材の確保が非常に困難になっています。介護福祉士を育成する大学・短大・専門学校などの養成課程の数がわずか5年で約2割減少しています。学生が介護職を敬遠するその理由として、給与水準が低いことや過酷な労働実態などが明らかになったことが挙げられます。また介護職員の離職率が2013年度16.6%と全産業平均の14.8%と比較しても高い水準であることなどから、介護職員の人材確保は事業者だけではなく、社会全体で取り組むべき問題であります。
2015年度の介護保険制度改正で介護報酬が2.27%引き下げられました。各事業所が厳しい経営を強いられている中での報酬引き下げは大きな痛手となっています。東京都は国の「介護プロフェッショナルキャリア段位制度」の導入を各事業所に促す目的で「東京都介護職員キャリアパス導入促進事業」を今年度からスタートさせました。これは東京都が介護職員の育成・定着を図るために、キャリアパスの導入に取り組む介護事業者を支援するといったものですが、1事業所あたり段位取得者1人に年50万円、最高4人まで年200万円をレベル認定者を初めて輩出した年度から起算して3年間補助する内容となっています。私はこの事業が補助期間や対象が限定的であるために十分な効果を発揮するとは考えていません。段位の取得自体に時間が取られる上に、1事業所当たり4人に限られることで職員間の賃金格差にもつながり、職員全体の給与水準が上がるものとは思えないからです。今求められているのは介護職員の給与改善補助の大幅な拡充であります。施設長を除く介護職員の平均月給は21万2972円で、全産業の平均月給29万6000円と比較しても8万円ほど低くなっています。私自身現場で17年間仕事をしてきました。この間介護現場の実態が過酷であるということを肌身に感じてきました。最初に勤務した老人保健施設ではシフトは2交代制で夜勤は月5~6回ほど、そのほか通常の日勤、早番遅番の勤務も加わり、給与は月平均手取りで14~15万円でした。1フロア50人の利用者に食事、入浴、排泄、更衣などの介助をし、1日休んだだけでは疲れが取れないこともたびたびありました。個々のプロ意識や現場の努力を積み重ねても状況が改善されない施設や事業所が多くあります。
●そこで介護職員の抜本的処遇改善策として、大田区が国に対して介護報酬の引き上げや東京都への抜本的支援を求めることと、区が実施している保育人材確保事業(いわゆる家賃補助等)の介護職員への拡大等を提案します。家賃補助を実施すれば介護人材が確保しやすくなり、ひいては介護の充実につながると考えられます。お答えください。
【福祉部長】
次に介護職員の人材確保と処遇改善についてのお尋ねですが、平成27年度介護報酬の改定については、賃金・物価の状況や介護事業者の経営状況などを踏まえ、全体でマイナス2.27%の改定率となったところです。一方、介護職員の賃金については、これまでの処遇改善加算に新たに月額1万2千円程度を上乗せし、合計2万7千円程度の引き上げとなっております。今回の改定における国の基本的な考え方は、中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化を図っていくこと、また、介護人材確保対策の推進など基本的な視点を実現するものとしております。議員お話の介護保険制度に関する国への申し入れにつきましては、これまでも特別区区長会などを通じ、実施してきたところです。また、宿舎借り上げ助成制度の実施については、今後の国や都の動向を慎重に注していく必要があることから、その動向を踏まえ適切に判断してまいります。
新空港線(蒲蒲線)の今後について
【あらお議員】
次に新空港線(蒲蒲線)についてお尋ねします。
現在計画が進められている新空港線(蒲蒲線)ですが、3月6日に東京都都市整備局が発表した「東京都の広域交通ネットワーク計画に関する中間まとめ」の中で「整備効果が高いと見込まれる路線」5路線に入らなかったことは周知のことでありますが、これによってこの路線計画の実現見通しがさらに厳しさを増している状況になっているのではないでしょうか。整備主体が未定であることや財源確保が難しいことなどがその理由といわれています。日本共産党大田区議団は3月25日に松原区長に対し新空港線(蒲蒲線)の整備計画の中止を求める要請書を提出しました。区は年間5億円を毎年この事業に積み立てて、これまでに計20億円も積み上げられています。東急多摩川線沿線の住民の方からも「止まらない駅が増えてかえって不便になる。これで地域の活性化にどうつながるのか。それに自分たちの税金が大量に使われるのは納得がいかない」と怒りや不満の声が挙がっています。
●2000年に運輸政策審議会でA2路線になり、2002年から区が本格的に調査を行って13年になるのに、関係者合意が図られない新空港線(蒲蒲線)計画は破たん寸前です。計画を中止するべきです。お答えください。
【交通企画担当部長】
新空港線整備に関する事についてですが、3月6日に東京都が公表した「交通政策審議会」答申に向けた検討の中間まとめ」において、新空港線は、「整備効果が見込まれる路線」と位置づけられ、「新空港線など空港アクセスについては、関係機関の検討状況や羽田空港の機能強化に向けた取り組み等を踏まえて、引き続き検討を行う」と記載されております。また、「整備効果が高いと見込まれる路線」とされた5路線についても、それぞれ事業主体や事業費、事業計画、事業スキームなどの検討の深度化が必要であるとも記載されており、課題への対応が求められているのは、どの路線も共通であると認識しております。新空港線については、現在も、国、東京都、関係鉄道事業者と整備に向けて、個別具体的な課題について協議を行っているところです。区としましては、整備促進に向けて、引き続き、これまでの取り組みを積極的に進めてまいります。
【あらお議員】
次に東急多摩川線下丸子駅の改修についてお尋ねします。
現在下丸子駅は平日朝7時~8時の通勤ラッシュの時間に大変混雑をします。乗降客がホームに溢れて改札の外の踏切周辺にも人があふれ、中には遮断機が下りた状態にもかかわらず、それをくぐって踏切を渡る人もいます。また人だけでなく自動車も通ることから、駅周辺の混雑に拍車をかけていて、いつ重大な事故が発生してもおかしくない状況です。今年1月の交通問題対策特別委員会の中で共産党区議団の下丸子駅に関する質問に対し、区は新空港線を停車させることにより駅の改修と駅前再開発を含め検討すると答弁しています。しかし、下丸子駅の改修は先に述べたように待ったなしの状態であります。今年4月に私とかち佳代子都議と当時の和田正子区議、下丸子住民の方の4名で東急電鉄の担当者に下丸子駅と周辺地域の改善について申し入れをしました。その中で、東急側としても、現在の下丸子駅の現状について改善が必要だという共通の認識を確認しました。
●大田区としても、下丸子駅の改善は新空港線(蒲蒲線)の整備と併せて行うといっていますが、事故が起こってからでは遅いです。駅を利用する多くの区民の皆様の安全を守る上でも利便性の向上だけでなく、安全確保の対策をしっかりと取らなければいけません。早期に取り組むことを求めます。お答えください。
【交通企画担当部長】
次に下丸子駅の改良についてですが、区としましても、下丸子駅周辺の現在の状況については、十分認識しております。これまでにも、区道である下丸子駅前の下丸子1号踏切に関しては、平成21年度に拡幅工事を実施し完了しております。また、都道であるガス橋通りの下丸子2号踏切に関しては、東京都の方でカラー舗装化などの応急的な対応を実施しております。しかしながら、駅舎や道路の形状変更など抜本的な改良については、新空港線整備と併せて行う必要があると考えております。このため、引き続き、新空港線の整備促進に向け、関係者との協議を継続し、その実現化を図ってまいります。
以 上