区議団ニュース2021年5・6月号(No.289)――コロナから命とくらしを守る区政へ/PCR検査の拡充・直接支援を提案


PDFファイル大田区議団ニュース2021年5・6月号(No.289)

党区議団の予算組み替え提案 わずか1%(約32億円)の見直しで実現できます

新型コロナを抑え込み、区民の命とくらしを守ることが最優先課題です。しかし、新年度予算は新型コロナ対策はワクチン頼みであり、積極的な検査戦略や医療機関への支援も、中小企業などへの事業者への支援も、国の枠組みの範囲内で区独自の支援がほとんどありません。一方、蒲田駅前再開発には32億円、新空港線は推進しています。今こそ大型開発を見直し区民の命とくらしを守るため本予算に対し党区議団は編成替えの提案を行いました。
以下が主な内容です。

福祉

  • 高齢者の医療費助成(外来分半額助成)
  • 特別養護老人ホームの増設
  • 精神障害者2級手当の創設(月4500円)
  • 高齢者インフルエンザ接種費用助成

子育て

  • 保育料無償化(0~2歳児)
  • 子どものインフルエンザ接種費用助成

教育

  • 小中学校の給食費無償化

営業

  • 仕事確保支援員採用
  • 工場家賃助成(月5万円)
  • ものづくり経営革新緊急助成(計画策定支援5万円・計画実施50万円)
  • 中小事業者の後継者支援(1人200万円)

環境

  • 公園トイレの洋式化

大型開発の見直し

  • 蒲田駅前再開発の延期
  • 新空港線整備主体の設立の中止
  • 新空港線積立基金の廃止
  • 新空港線整備促進事業の中止

不要不急事業の見直し

  • 区議会議員の海外親善訪問(セーラム・大連市・欧州)
  • 同和事業の見直し
不用不急の大型開発など見直しを行い約34億円の削減。高齢者医療費助成などの13事業の創設・拡充で66億円の増額を行い、予算増減では31億円の予算増となりました(左図参照)。 わずか1%の予算を見直すだけでこれらの事業は実現できます。ないのはお金ではなく区民を思う心がないのです。 残念ながら提案は否決されてしまいましたが、党区議団はこれからも区民のいのち・くらし・営業を守る提案を行っていきます。

党区議団の予算組み替え案〈単位:千円〉

組替項目修正増減額
セーラム市親善訪問の中止▲ 5,335
大連市親善訪問の中止▲ 2,131
区政施策調査(海外)の中止▲ 11,999
人権推進事業のうち同和生活相談の業務委託経費等の減額▲ 12,881
精神障害者2級手当136,000
特別養護老人ホーム建設費整備助成(3か所増)ショートスティ1,122,000
高齢者医療費助成(外来分半額助成)1,547,000
認可保育園0~2歳児の保育料無償化110,000
高齢者インフルエンザ費用助成654,149
こどものインフルエンザ費用助成197,560
仕事確保職員(10名)70,000
工場家賃支援300,000
ものづくり経営革新緊急助成275,000
中小事業者の後継者支援400,000
区画街路7号線用地購入▲ 3,215,000
公園トイレの洋式化135,000
新空港線整備資金積立基金積立金の廃止▲ 2,610
新空港線の整備主体の設立廃止▲ 180,000
新空港線の整備促進事業の廃止▲ 11,646
学校給食費無償化(小学校)1,199,203
学校給食費無償化(中学校)484,159
合計3,188,469

代表質問 清水菊美区議

(映像は大田区議会ホームページより:62分)

日本政府に、核兵器禁止条約に署名・批准するよう区長が意見をあげること

1月22日に「核兵器禁止条約」が発効され、人類史上初めて国際法で核兵器が違法となりました。「核兵器の無い世界を目指す」と宣言した平和宣言をしている区の区長として国に意見をあげることを求めましたが、区長は「菅総理が署名する考えはないと聞いている」とし、これまで通りの答弁でした。

コロナ対策を最優先とする新年度予算にすること

 新型コロナ感染で区民が苦しんでいる状況から、医療・保健所体制の強化、PCR検査の拡充、保障と一体の休業補償、減収で苦しむ医療・介護・中小企業・飲食店等々への直接支援を求めました。
また、3年間で580億円の減収を見込まれているため事務事業の見直しをするとしているのに、新空港線(蒲蒲線)計画は強引に進め積立金は80億円になり、鉄道・都市づくり部を新設しています。新空港線計画の予
算はコロナ対策に回すことを求めましたが、区長は「ポストコロナ社会を見据え新空港線は地域の活性化に寄与するもので、予算を他に回すことは考えていない」と答弁しました。

国民健康保険の値下げと均等割の減免の実現について

区長の答弁には、保険料は特別区共通であることを理由に、高い保険料に苦しむ区民への支援策はありませんでした。

小中学校の少人数学級の推進と、教育現場のコロナ対策について

党区議団は一貫して少人数学級をもとめてきましたが、できない理由を「法律を基にしている」と、教育長は答弁してきました。
しかし、文科省は法改正し、35人数学級を進めることに大きく動いています。コロナ感染拡大で不安とストレスにさらされている子どもたちのために、まずは新年度から小3年、中2年の35人学級をもとめましたが、教育長は「困難である」と答えました。

高齢者も現役世代も安心できる自治体福祉の確立について

介護保険料の負担の減少と、コロナ禍で奮闘している介護事業者への減収分の補てんをもとめましたが、区長の答弁は「考えておりません」。
コロナ禍で苦しむ区民の課題解決には、最も身近な自治体の現場しかなく、区長はその立場に立つことを強く求めました。

一般質問 黒沼良光区議

(映像は大田区議会ホームページより:23分)

デジタル化にいて

 松原区長は、感染拡大防止をデジタル化で解決できるかのように述べています。これは日本の財界と菅政権が述べている「コロナ禍をもデジタル化で乗り切れる」いう言い方と同じで、本当は社会保障を削減し、財界の巨大な利益を上げようとする菅政権の狙いに応えるものです。大田区の今年度の予算編成の重点課題の1つに「新たな日常を意識したデジタル化の一層の推進」とあるのはそのことを示しています。マイナンバーを基軸にあらゆる個人情報が統合され、私たち国民は行動を監視されます。このように、資本主義的に使用されると技術革新の成果が財界に所有され、悪用され、正反対に人間に悪影響を及ぼすことになります。 新型コロナウイルス感染拡大の危機を克服した先には人々が支えあう社会、連帯を大切にする社会をつくることだと考えます。

「行政のデジタル化」の問題点は

高齢者や障がい者など、利用できない困難な環境や条件にある人は置いてきぼりになります。大田区のデジタル化は、手続きの便利さだけを強調するのではなく、「住民が主人公」の立場で区職員と区民との対応と相談は対面原則にすることです。コンビニやスマホ原則では全体の奉仕者の役割も果たせず福祉の増進もありません。技術の進歩は、働く人の負担を軽減しながら人間社会を発展させる条件を築いていく積極的な意味を持っています。デジタル化で残業をなくし、労働時間を一気に短縮することにより区民サービスをより良いものにする方向こそ求められます。

総括質疑 あらお大介区議

(映像は大田区議会ホームページより:60分)

福祉、防災予算を削減

区は今後3年にわたり、約580億円の財源不足が見込まれるとし、全事務事業を対象に事業の廃止・縮小を行いました。廃止・縮小された事業には区民の生活や福祉増進、防災に関する事業が含まれる一方、蒲田駅東口土地購入や、新空港線関連事業などまちづくり関連に多額の予算を計上し、コロナ禍の下でも大規模開発優先の予算であるとし、厳しく問いただしました。

コロナ感染症対策

ワクチン頼みではなく、広く区民にワクチンが行きわたるまではPCR検査の手を緩めずに、拡充することを求めました。
業者支援では「新型コロナウイルス対策特別資金」の返済据え置き期間が切れることを受け、据置期間の再延長と借換融資制度の創設など、独自施策の実施を求めました。

生活保護について

誰でも申請しやすくするためにホームページの充実と申請の壁となっている扶養照会の取り扱いについて対応を改めるよう強く求めました。

介護について

地域支援事業は自治体の介護予防に対しての姿勢が表れる事業であり、保険者としての裁量を発揮するために、安上がりサービスに頼るのではなく、保険サービスと同等のサービスを維持するよう求めました。

款別質疑――予算特別委員会において各区議の質問

大竹辰治区議
大竹辰治区議

本庁舎夜間窓口の充実

本庁舎の戸籍住民夜間窓口(17時~19時)は毎日開設していましたが、新年度から事務事業見直しで、印鑑登録や納税証明など業務内容を増やしたものの、月曜と木曜の週2日の開設となります。
区民サービスの向上と言っていますが、サービス低下です。こんな日数の削減の変更を行わず、職員を配置し業務内容を拡充し夜間窓口の充実を求めました。

危険ながけ等の整備推進を

近年の地球温暖化による異常気象、集中豪雨、台風の被害、さらに地震の被害が日本列島を襲っているなか、区内に約6500カ所ある危険ながけ等の整備のために、調査と指導を行い、職員の増員と「がけの整備工事助成事業」の助成金助成率や限度額の増額等の助成制度の拡充で、改修推進し区民の生命・財産を守るべきです。

すがや郁恵区議
すがや郁恵区議

保育園のコロナ感染対策支援の充実

保育士は感染防止のためのマスク着用、園舎や玩具の消毒、遊び・食事・午睡中の「3密」を避ける対応等新たな業務が増えています。また、プール・遠足・運動会など子どもたちの大事な体験の保障にも努力されており、緊張感と仕事量の増大にさらされています。
最低基準の見直しで増員、保育士、子どものPCR検査の実施、保育士への慰労金支給を求めました。

児童生徒の視力の低下を招かないような対策を取ること

タブレット使用が始まる中、視力低下が問題になっており対策が必要です。また、就学援助にメガネ購入を加えることを求めます。 学校トイレの個室に生理用品を置き必要な児童生徒が使えるようにすること、「生理の貧困」の社会問題は大きな衝撃です。生理用品が買えない実態を調査し、豊島区のように防災備蓄の生理用品を無償配布するよう求めました。

佐藤 伸区議
佐藤 伸区議

介護保険の保険料の応能負担の改善と減免ついて

4月からの保険料改定に伴って、この間、大田区では改定のたびに保険料を値上げし続けてきましたが、今回は保険料を基準月額で据え置きました。しかし、他区では保険料の引下げた区もあることから更なる引下げと、高額所得者には負担を求め、低額所得者には軽減する応能負担の強化を提案しました。

90歳以上の高齢者に保険料の減免する制度の創設

かつて実施されていた100歳以上の高齢者を対象にした保険料の免除制度を紹介し、90歳以上の高齢者に保険料の減免を求めました。

小中学校の給食時に児童・生徒が着用する白衣の改善

区内の学校で30年から40年も前に製造された古い白衣が使用されていて、新型コロナがまん延している中で、より衛生面での配慮が必要であり、基準をつくり定期的な入れ替えをするよう求めました。

福井りょうじ区議
福井りょうじ区議

新型コロナウイルス感染症対策について

現在、大田区では入院が必要ではない感染者に対して、ホテル療養または自宅療養を指示しています。この場合、食料支援や傷病手当などがあります。
大田区では濃厚接触者に対し接触があった日から14日間は自宅待機を要請しています。この間の支援は何もありません。

濃厚接触者への支援

大田区は「支援するつもりはありません」との答弁でした。
要請するのなら補償を一体にすべきです。国や区は区民にお願いするだけです。これでは感染拡大はとまりません。補償・検査、そして医療機関への支援が必要です。

杉山こういち区議
杉山こういち区議

給付型奨学金の新設

新設した給付型奨学金はクラウドファンディング・寄付型では安定的な給付型奨学金にはなりません。
福祉事業積立基金を使い、安定的に奨学金が給付できるようにすべきです。

高齢者の補聴器購入助成は都の助成も活用せよ

高齢者補聴器購入助成は1回限りの2万円補助です。
区は都の助成を活用しておらず、都からも半分の助成が出るのですから、その助成も活用して補助額を増やすべきです。
また、国に保険適用を検討せよと大田区から発信することを提案しました。

磁気ループの設置を求めます

区の公共施設の改修や公共施設の更新が進められています。新しい施設には、聴覚障害者が利用しやすい環境にするため、磁気ループの設置を求めました。

強引に進める新空港線計画は中止し、80億円の基金はコロナ対策に

新空港線整備案 (大田区ホームページより)
新空港線整備案 (大田区ホームページより)

区はコロナ禍の下でも新空港線計画を推進するため新年度予算で約2億円を計上、2年連続で年度末の補正予算で新空港線整備資金積立金に10億円積み増しし総額80億円となりました。
区は昨年9月から東京都と「協議の場」を設けて協議を進めているとしていますが、関係者との信頼関係を損なう恐れがあるということで内容は明らかとなっていません。
区は計画について議会や区民へ「適時適切に説明しております」と答弁していますが、党区議団が2017年に情報開示請求で入手した「新空港線整備調査業務委託 業務報告書」は大部分が黒塗り、いわゆる「のり弁」状態で開示されていました。区民や区議会にまともに説明できない計画をそのまま進めるべきではありません。事業の見通しがなく区民に説明できない計画は中止し、80億円の積立金はコロナ対策に回すべきです。

黒塗りの調査書一部抜粋

中小企業支援が急務 羽田跡地第1ゾーン区政活用スペースは未だ埋まらず

羽田イノベーションシティ構想(羽田みらい開発株式会社より)
羽田イノベーションシティ構想(羽田みらい開発株式会社より)

羽田空港跡地の産業施設の借用に大田区は4億2942万円支払っていますが、1社しか契約が成立しておらず、2カ月分の608万円しか入金されていません。当初予定とは程遠い状況です。これでは見通しが立ちません。この支払額を区内中小企業向けに活用すれば大きな仕事ができます。
菅政権は日本の生産性が低いのは中小企業が多すぎるからだと、小規模事業者推進事業は減額で中小企業の淘汰に踏み出す構えです。しかし、生産性が低いのは、製造業の海外移転と海外生産のみの拡大が日本経済に大きなダメージを与えてきたのが「産業空洞化の進行」です。この大田区版が「羽田イノベーションシティ構想」です。
本来の区の中小企業施策は、技術の水準は高いが単機能生産しか持ち得ていないにもかかわらず、「仲間回し」と呼ばれる連携生産の歴史を大事にして、大田区全体が一つの工場を形成している、これを「公共財」と位置づけ、「母工場都市機能」として進めることです。
これからの取り組みの提案は、
①後継者育成
②自然エネルギー再生分野
③障がい者など福祉の分野
④農業分野や災害分野
これらで、中小企業を守り発展させ、雇用を改善し、国内需要にこたえられる大田区の発展をめざすことが可能になります。

ワクチン接種とともに 感染防止対策を強め、補償とセットで

接種券の送付について

65歳以上への接種券(クーポン券)は、5月20日までに届き、21日から予約受付開始。25日から順次接種開始予定。

高齢者に次ぐ優先接種対象者は

・基礎疾患のある16歳~59歳の方(申し出期間は4月26日~6月25日行われますが、接種券送付は7月下旬予定です)。
・60~64歳の方
・高齢者施設等の従事者
*16~60歳未満の方の予定は現在未定です。

接種会場について

区が設置する集団会場9カ所と、病院、クリニックや診療所が接種会場となります。高齢者からはかかりつけ医に接種してほしいの要望が多くでています。
ファイザー社以外のワクチンの供給が現在未定です。

PCR検査

新年度予算には区独自の無症状の陽性者を見つけ出す社会的検査や、医療、介護、保育、学校、飲食店等で働く人たちへの検査の予算がありません。
無症状の陽性者を一刻も早くみつけ安全に隔離することが感染防止にどうしても必要です。

減収に苦しむすべての事業者への支援

長引くコロナ感染拡大によって区内の景気は落ち込んでいます。
大田区独自の直接支援が必要です。

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