第3回定例会代表質問(速報)―黒沼議員(9月10日)



(映像は大田区議会ホームページより:58分)

【黒沼議員】
日本共産党大田区議団を代表して質問します。

自治体の在り方が問われた決算について

【黒沼議員】
まず、2019年度決算です。
今決算は、一般会計の歳入総額は2806億7690万円、歳出総額は2760億912万円、歳入歳出差引額は46億6778万円となり、歳入歳出差引額から繰越金を引いた実質収支は36億5433万円となりました。不用額は117億8394億円、財政繰入額は18億2716万円となりました。区の納税義務者が対前年比約8800人増や、1人当たり所得、対前年比約9万6000円増などを反映し、特別区税は7年連続で伸びています。
党区議団は、2019年度予算については、問題点を指摘し、転換を求めてまいりました。問題の第1は、国の悪政から、区民の暮らし、営業を守る予算になっていないことです。地方自治法では、第1条の2に、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」とあります。日本共産党区議団は、不要不急の大規模開発をやめ、1000億円を超える基金を活用して、区民の暮らし、営業を支える区政に思い切って転換することを求め、議会のたびに編成替え動議を提案し、その充実を求めてまいりました。しかし、決算はそうなりませんでした。
2019年度は10月から消費税10%の増税が区民に襲いかかり、9月、10月には台風15号、19号が直撃し、年度末の2月、3月にはコロナ禍が起き、区民に大きな混乱が生じた年度でした。このような年度だからこそ、区民の暮らし、応援の施策は求められていました。しかし、区民への相次ぐ値上げで負担増を押しつけてきたことです。
国民保険料の値上げ、新空港線では、年度末に異例の10億円の積立てをする一方で、100億円を超える多額の不用額を出しています。この10億円で、熱中症対策として、高齢者の夏季電気代補助や、いきいき入浴券拡充、高校生までの医療費助成など、優先して実施できたはずです。さらに、区民の生活実態をよく把握せずに、これまでほとんどやってこなかった国保延滞金の前年比約10倍増など、一方的な徴収強化が行われています。区民いじめの決算と言えます。
さらに、区民への相次ぐ値上げで負担増を押しつけている公共施設使用料値上げの根拠に、受益者負担を理由にしています。施設使用料の実質値上げです。問題なのは、使用料に人件費や建設費を含ませていることです。地方自治法では、公の施設は税金で建設をして管理します。その中には既に建設費や管理費、人件費が含まれています。つまり、税金で賄うのが基本的な考え方です。
●お聞きします。公共施設は租税で建設し、租税で管理します。使用料は受益者負担ではなく、管理者負担です。受益者負担を理由にした二重負担です。使用料で管理するのではありません。租税で管理するのです。区が使用料も管理費として扱うことは、地方自治法違反の疑いがあります。お答えください。

【松原区長】
まず、施設使用料についてのご質問でございますが、公共施設の建設、運営には多くの経費が必要となるため、サービスの提供に要するコストに対し、負担の公平性を確保する観点から、施設を利用される方に一定の施設使用料をご負担いただいております。これは、地方自治法第225条において、公の施設の利用につき、使用料を徴収することができるとの規定に基づくものでございます。今後も社会経済状況の変化も踏まえ、利用者に使いやすい施設となるため、サービスの向上に努めるとともに、施設使用料の適正化に継続的に取り組んでまいります。

【黒沼議員】
次に、待機児の問題です。
党区議団は、予算案では2019年度中に待機児ゼロにはできないと考え、認可保育園の増設を含む編成替えを求める動議を提出しました。残念ながら否決をされましたが、しかし、今年4月には待機児ゼロにはなりませんでした。我が党の提案に正当性があったことは明らかです。
●お聞きします。子育てでは今年度末までの待機児解消です。3か年実施計画では、昨年度末で待機児ゼロの計画になっていました。現時点で待機児ゼロの見通しがついていなければ、区民への約束を守るため、区立認可保育園の増設を今年度中に進めるべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、保育園の待機児童対策についてのご質問ですが、区は、昨年度697名の保育サービス定員を拡充し、待機児童数は、令和2年4月には35名となりました。また、3歳から5歳までの幼児については、既に平成30年度から待機児童はゼロとなっております。現在、待機児童の多い重点地域を軸に保育施設の整備を進めております。また、定期利用保育など、既存保育施設の有効活用も含め、様々な手法を活用して待機児童の解消に向けて取り組んでおります。なお、これまでの方針どおり、区立認可保育園の増設は予定しておりません。

【黒沼議員】
次の問題は、大田区が不要不急の大規模開発を推進していることです。
その中でも新空港線整備については、年度途中に「新空港線に関する都区の協議は大詰めを迎えており、協議が調い次第、速やかに事業着手する必要がある」との理由で、今決算年度10億円もの基金を前倒し、積立てました。今回の一般会計第6次の補正予算案では、何と新空港線の整備主体の設立のための予算が減額補正されています。これは、大田区自らが新空港線を「大詰めを迎えている」と言っていたにもかかわらず、今年度は諦めたことになります。2019年度決算の中には、当初予算額にはなく、流用増額して取り組んだ事業、新空港線整備促進事業委託550万円があります。これこそ無駄遣いの典型です。新型コロナ禍で乗降客などの試算も根拠を失っています。オリパラ延期に伴い、人件費や材料費も変動が起きています。
●お聞きします。新型コロナ禍の中で、乗降客、インバウンド数など、根拠となる基礎データを全てやり直して区民に示すべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、新空港線に関するご質問でございますが、感染症との闘いに注力する一方で、安全で安心な生活の礎となる国土の強靱化を図り、新しい生活様式に対応した都市政策に取り組むことも重要でございます。新しい生活様式が浸透していく中では、人が安全・安心に移動できる手段の確保がこれまで以上に必要不可欠なものになっていきます。新空港線の整備は、区内外への移動利便性が向上するだけでなく、災害時の代替ルートの役割も担えることから、これらの趣旨に沿ったものであります。現在は、東京都知事から提案があった「協議の場」を去る9月3日に開催したところであり、今後、最新の状況を加味したうえで、費用負担割合等の協議を行ってまいります。引き続き、新空港線の早期整備を目指し、全力で取り組んでまいります。

【黒沼議員】
羽田空港跡地については、鹿島建設をはじめ、出資企業9社による羽田みらい開発株式会社に1平米600円で50年間の借地契約を行い、総額540億円をかけて今年7月オープンしましたが、大田区の当初の目的が達成されたとは到底言えません。まさに国家戦略特区の世界で一番ビジネスしやすい環境をつくるという目的のみが達成されたことになるではありませんか。羽田みらい開発株式会社が莫大な利益を得ることに区が手を貸すことになります。
●お聞きします。大田区にとって、羽田空港跡地第1ゾーン整備事業は、公金を投入して一部の大手民間企業だけを潤すものとなっており、区内中小企業者への支援のスキームはもう破綻したのではないでしょうか。お答えください。

【松原区長】
次に、羽田空港跡地第1ゾーン整備事業(第一期事業)の事業スキームについてのご質問でございますが、本事業は、先端産業から文化産業、そして共通事業に至るまで専門的な知識やノウハウが必要となることから、公民連携事業として事業を推進しております。公民連携事業は、「質の高い行政サービスの提供」、「地域課題の解決」、「地域の活性化」を実現し、区民、民間事業者、区のそれぞれにメリットがあることが特徴です。本事業は、大田区公民連携基本指針に掲げる「新たな可能性へのチャレンジ」や「相乗効果の創出」などの理念を具現化するもので、より効率的、効果的に地域課題の解決に取り組むリーディングケースと捉えております。
区といたしましては、民間事業者の提案内容の履行についてしっかりとモニタリングすることで、事業の目的である地域経済の活性化などを実現すべく、羽田みらい開発株式会社と連携し、互いの強みを活かしつつ、引き続き事業を推進してまいります。

【黒沼議員】
次の問題は、「官から民へ」の合い言葉で業務委託、指定管理を行い、非正規職員の配置や臨時職員を活用していることです。
この方針は、市場原理を特徴とする新自由主義の考え方から来ています。政策は、規制緩和、民間委託、指定管理、福祉削減、緊縮財政、職員削減、この間、目指してきた、いわゆる小さな政府です。規制緩和で大企業を優遇すれば経済は活性化し、全体の暮らし向きがよくなるという考え方は、コロナ禍、激甚災害の中で、その脆弱性が明らかになりました。
台風15、19号の災害の対応で避難所が大混乱となりました。効率だけ見ると平常時は対応ができても、災害時は人手不足で対応ができません。災害やコロナウイルス対策は、対応マニュアルの見直し、そして何といっても人手不足の解消です。やはり効率だけの視点ではなく、教訓を活かして災害に備える予備を含めての人員配置を求めておきます。

コロナ禍と災害から区民の命と安全を守る新年度予算について

【黒沼議員】
次に、新年度予算について伺います。
7月に両副区長名で、「令和3年度予算編成、組織・職員定数の基本方針について(通知)」が出されました。通知では、「経済財政運営と改革の基本方針2020」、いわゆる骨太方針を経済財政運営の基本としています。骨太方針は、デジタル化やスマート社会の促進です。社会保障削減路線も着実に進めるとしています。骨太方針を作成する経済財政諮問会議は、政府と財界代表が一体となって経済財政政策の基本を毎年決めて、次年度の政府予算案に反映をする仕組みです。国民の苦難に寄り添う施策はできません。コロナ危機からは学ばない態度です。
松原区長は、臨時議会で「2020骨太方針で決められた行政のデジタル化、スマート化の方針は、区が進めているICTのさらなる活用の方向性と同様であると考えております」と挨拶しています。デジタル化、スマート化とは何でしょうか。
先の国会で急に成立したスーパーシティ法、いわゆる改正国家戦略特区法は、今月9月から施行されています。スーパーシティは、最先端の技術を使った都市づくりを首相官邸主導の特例的な規制緩和で行われます。AIやビッグデータなどの先端技術を利用して、遠隔医療、遠隔教育、自動運転、キャッシュレス決済、ドローンによる配達、顔認証を使った交通機関の利用などのサービスを一括して住民に提供するというものです。AIやロボティクスの導入で自治体職員を削減するような計画では、結局のところ、職員、人に代わる役割をAIやロボティクスが災害の現場で果たすことはできません。政府は便利さを売り込みますが、住民は、住所、年齢、マイナンバー、顔写真、健康状態、預貯金口座をはじめ、個人情報を実施主体に提供する必要があります。実施主体は大企業です。本人が知らないうちに、個人情報はIT大企業に活用されるおそれが出てきます。住民一人ひとりについて、行動や買物の履歴、思想・信条、交友関係などの記録となり、監視することも可能となります。
●お聞きします。こうした危ういスーパーシティ法は、一層の格差拡大や監視社会への懸念を指摘しています。IT大企業の横暴を許しかねないのでやめるべきです。お答えください。

【松原区長】
スーパーシティ法に関するご質問でございますが、国が掲げるスーパーシティ構想は、個人情報保護を遵守したうえで、様々なデータを分野横断的に活用することで、住民福祉や生活全般の利便性向上を図るものです。最先端の情報技術を医療や介護、教育分野等に活用し、住民生活における様々な課題の解決が可能となります。この取組は、新型コロナとの共存を前提とした「新たな日常」の実現にも資するものと考えております。区は、引き続き国の動向に注視し、誰一人取り残さない包摂的な地域づくりの実現に向けた取組を進めてまいります。

【黒沼議員】
次に、通知にうたわれている「財政運営の基本的な考え方」では、「重要な成長戦略となる社会資本の整備など、多くの財政需要を抱えている。一方、新型コロナウイルス感染症により、区内製造業や小売業、建設業などの業況の悪化傾向が強まるとの予想もあり、区財政への今後の影響にも十分留意する必要がある。以上のことから、令和2年度からの3か年で、現段階でおおむね580億円の財源不足が見込まれており、区財政は厳しい状況を迎える。こうした認識を共有し、より効果的、効率的な行財政運営の実現に向け、全庁を挙げて取り組む」と述べています。ここには区民の苦しい状況が分析されておらず、必要な施策を講じる姿勢がありません。580億円の財政不足が見込まれる心配は、ただ手をこまねいているだけではなく、区民の収入が増える施策を講じ、区財政を豊かにすることによって解決に向かうという考えが必要です。新自由主義の悪循環から抜け出すことが求められます。
通知には、「今年度は、新型コロナ感染症に関して5次にわたる補正予算など必要な対策を講じてきたものの」と記されていますが、日本共産党区議団が第2次から第5次の補正予算に不足分を補う形で編成替え動議を出させていただきました。不十分な対策との認識からです。
その中で、例えば医師会の努力が大きなものがあると思いますが、実現したのがPCR検査センターを1か所から3か所に増設できたことですが、他区では相当な努力が行われています。江戸川区では、4月早々に職員にアイデアを求め、1000件を超える提案を基に60件の支援策を独自にスタート、例えば検査機器の購入、感染防止対策車の購入、パルスオキシメーターの貸出しを行いました。北区は、PCR検査センターへの送迎支援を行いました。文京区は、区立保育園で集団感染が発生し、医師会の協力の下、区役所駐車場にPCR検査のための陰圧テントを設置しました。練馬区は、介護施設の新規入所者のPCR検査1人4万円を上限に助成しました。世田谷区は、1日600件のPCR検査目標に、千代田区と世田谷区は、介護施設職員全員を対象に、おおむね3か月ごとに唾液による検査実施をしています。豊島区は、障がい者施設に独自に10万円、あるいは20万円など、葛飾区は、学校給食の中止に当たり、給食納入業者に対し、生鮮食品のほかにストップしていた食材費も補償しています。江戸川区は、学校給食食材納入業者が本庁舎前などでコマツナ臨時販売、品川区は、全住民に1人3万円、荒川区は、省エネタイプエアコン購入助成3万円などなどです。
松原区長は、第2回定例会の挨拶で、「新型コロナウイルス感染症との共存を前提に、区政始まって以来のこの最大の難局を乗り越えるため、全事務事業の聖域なき見直しを行い、これにより捻出した経営資源を適正に配分し、効果的、効率的に行政を行ってまいります」と述べています。
●お聞きします。通知で「必要な対策を講じてきたものの」という中に、インフルエンザ予防接種の高齢者無料化、子ども一部助成や東京都8月営業時間短縮に関わる感染拡大防止協力金への上乗せ助成などは確かにありますが、他区の独自施策と比べて非常に劣ると言わざるを得ません。ほぼ他区に引けを取らない財政力がありながら、なぜできないのでしょうか。お答えください。

【松原区長】
次に、区独自の施策に関するご質問でございますが、区は、これまで6回にわたり補正予算を編成するとともに、予備費の活用により、感染拡大防止や区民生活支援、区内経済対策、子どもたちの学びの保障などに関する施策を実施しております。区独自の施策といたしましては、「新型コロナウイルス対策特別資金」を新たに設け、現時点で700億円に迫る融資あっせんにより、区内中小企業・小規模事業者の皆様を支援しております。さらに、介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所等にサービス継続緊急支援金の支給を行っております。また、PCR検査所を設置したほか、区立小中学校への非接触型自動水栓の導入を現在進めているところです。本定例会でも、新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う世帯収入の減少により、進学、修学に不安を感じている学生を支援するため、大学等臨時給付型奨学金の実施など、区独自の施策を盛り込んだ補正予算案を提出させていただいております。引き続き、感染状況や社会経済状況などを注視し、区民の皆様が安全に安心してお過ごしいただくために、区民目線に立った必要な施策を実施してまいります。

【黒沼議員】
安倍内閣が進めてきた大企業の利益のため、社会人を犠牲にし、効率だけを求め、人間が生きていくうえで欠かせない医療、介護、教育、障がい福祉、保育等の社会保障などのケア労働を台なしにしてきた新自由主義体制の脆弱さをコロナ危機が浮き彫りにしたのですから、これからの大田区政は、公的サービスを守り、社会保障削減路線をやめて、ケア労働を大事にする方向に転換すべきです。
新自由主義の下、区が進めてきた施策は次の通りです。公共施設使用料の3年ごとの値上げをする「官から民へ」の名で公的責任を放棄し、営利企業に利潤追求の機会を与える指定管理者制度を進める、公的資産を民間に開放、活用、提供し、民間に利益をもたらす公民連携を進めるなど、区民の財産を株式会社の利益に提供してきました。また、大手企業が不振の回復策として採算性の低い部門を選択的に切り離し、利益の出る部門に経営資源を集中する「選択と集中」の名で区民に必要な施策を削減してきました。公務員削減はその典型例です。
「令和3年度予算編成、組織・職員定数の基本方針について(通知)」で強調している「最適な人員配置」の項目では、「大田区職員定数基本計画」に基づき、公務員削減を引き続き踏襲する予算編成を求めていますが、平成29年度決定なんです。コロナと大型台風などの教訓を学ぼうとしていません。
●お聞きします。新年度予算編成に当たっては、コロナ危機以前の新自由主義に基づいた「大田区職員定数基本計画」を踏襲するのではなく、変更し、コロナ禍を踏まえた基本計画と通知を書き換えるべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、令和3年度の予算編成等に関するご質問ですが、令和3年度の予算編成につきましては、「新型コロナウイルス感染症や自然災害などの危機から区民の暮らしと経済活動を守り、『新たな日常』の実現に向けた変革を進める予算」と位置づけ、財政の健全性維持や行政サービスのさらなる向上を図ることを基本としております。
昨年度の台風による被害や新型コロナウイルス感染症による区民生活、区内経済への影響は大変大きなものであり、「令和3年度予算編成、組織・職員定数の基本方針」では、これらを踏まえたうえで四つの重点課題を掲げ、厳しい財政見通しの中にあっても、区民福祉の向上に向けた取組を絶え間なく進めていくことができる予算を編成し、その執行を支える組織体制を整備することを全職員に対し指示をしております。
現行の「大田区職員定数基本計画」においても、限られた行政資源を有効活用し、最少の経費で最大の効果を上げることを目指しており、この間、区を挙げて前例のないコロナ禍という危機に対応できるよう、職員の適正配置に努めてまいりました。引き続き、安全・安心な区民生活や区内経済を支えるため、着実かつ的確な行財政運営に努めてまいります。

【黒沼議員】
通知は、「予算編成の基本方針」として取り組むべき重点課題を4点に絞っています。まず第1の「新型コロナウイルス感染拡大防止対策や激甚化する自然災害に備え、区民の生命・安全を守る取組み」です。激甚化する自然災害について、風害も水害も災害の時代に入ったと見なければなりません。気候変動と大きく関わっているからです。災害の時代には、その一人ひとりの人格権を尊重する施策に改めて、防災の基本を憲法に則り、被災者である住民の視点に立った対策にすべきです。そのためには、区がこれまで取ってきた自助、共助、公助という考え方を改めることです。人間は一人では生きていけません。ありがとうございます。他の人によるケアなしには尊厳を持って生きられません。ところが、大田区は、自助と言って、まず自己責任を求め、次に周りの人に頼り、それでも駄目なら行政にということで、憲法に基づく社会保障とはまるで逆です。避難所への避難も自宅避難、友人・知人宅避難でも、いずれも被災者最優先の原則で抜本的改善を図ることです。その際、ジェンダー平等の原則も貫くことが大切です。しかも、ハード面のみならず、ソフト面が大切です。そのための人員配置を惜しまないことが重要です。
●お聞きします。明らかに人員増が必要です。新自由主義的手法を見直し、災害対策でも「大田区職員定数基本計画」を見直すべきで、本来の自治体基本責務の原則の立場に立つことです。お答えください。

【松原区長】
次に、災害対策の体制強化に関するご質問でございますが、区は、地域防災機能の充実に向け、マイ・タイムラインの普及など、自助、共助を支援しながら、防災対策のさらなる強化に向けた取組を進めております。また、昨年の台風19号においては、いち早く災害対策本部を立ち上げ、区民の皆様の安全と安心を守るための対応を行ったところです。災害対策本部体制の解除後には、「台風19号による浸水被害等緊急対策本部」を設置し、被災者への支援や風水害対応の検証に向けた執行体制を構築してまいりました。引き続き、「大田区職員定数基本計画」に基づく適正な管理の下、様々な災害に備え、区民の皆様の安全確保に全力を尽くしてまいります。

【黒沼議員】
次に、保健所体制の改善について伺います。
新型コロナ禍では、PCR検査を受けられない事態が起こる中、保健所の体制の脆弱さが明るみに出されました。感染専門以外の保健師の応援も得ましたが、感染症対策の保健師は10名だけで、土日も出勤し、平均残業時間は、3月65時間、4月82日間、5月29時間、7月56時間と、すさまじい残業時間です。厚労省の通達には、「2か月ないし6か月に月80時間以上連続残業は、過労死に至る危険」と規定しています。感染症対策専門の保健所職員は、PCRの検査の電話相談から始まり、入院のあっせん、検体搬送、感染者の行動履歴調査と濃厚接触者の特定、検査のための病院探しや患者の搬送の手配などです。さらに、接触者には2週間、健康観察として朝夕の体温を確認するため、毎日一人ひとりに電話をかけるなど、連日過酷な業務に従事しています。至急改善が求められます。
大田区の保健所の歴史は、1946年、発疹チフスの蔓延、痘瘡の蔓延など、急性伝染病の流行対策で始まり、その後、結核予防を中心に、区は、蒲田、大森、雪谷、糀谷の4保健所体制で力を入れたそうです。大田区政五十年史には、「小学校6年生を対象に結核予防ポスターの作品募集を行い、1等には300円の賞金を支払った。当時の大人の理髪料は10円、1946年の国家公務員上級職の初任給が540円であったことを考えると、結核予防に対し区がいかに力を入れたかをうかがい知ることができる」と記されています。当時、公衆衛生は住民の生活圏で仕事をしてこそ各家庭の衛生状況が分かり、適切な感染対応ができるとの立場で住民密着型の公衆衛生業務でした。
東京都衛生年報1974年版によれば、大田区は、1保健所約9人、4保健所で35人から36人の保健師さんが全員感染症対応をしていたのです。田園調布地域には田園調布の公衆衛生の特徴、糀谷地域には糀谷地域の公衆衛生の特徴があるわけですから、やっぱり生活圏で住民密着型の活動で適切な把握ができると4保健所だったのです。よく理解できます。ところが、1990年の保健所法を改悪し地域保健法とし、経済的な利益を生まない公衆衛生に係る費用を無駄なお金とみなす新自由主義で、二次医療圏で広域化し、統廃合を進め、1997年、大田区は、1保健所、4保健福祉センターに組織改正してしまい、生活圏、住民密着を失ったのです。日本医師会会長も毎日新聞5月27日付けで指摘しているように、米国から輸入した新自由主義の政策体系に基づくものと改善を求めています。しかし、区は、機能強化なんだと強弁して、政府のやり方に従ってきました。公衆衛生は、国民の生存権を守る制度の一つとして、憲法25条に明記されています。
●お聞きします。新年度予算では、今回の教訓から二次医療の広域化の立場ではなく、生活圏、区民密着型の考えに戻って、感染専門員を過労死寸前の残業をしなくて接触者追跡できる人員増をすべきです。ここでも保健所体制充実の立場で「大田区職員定数基本計画」を見直すべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、保健所の体制強化に関するご質問ですが、区は、感染症対策課を設置して感染症対策を一元的に行い、保健予防施策をこれまで以上に推進する体制を整備するなど、健康危機管理機能を強化してまいりました。また、今般の新型コロナウイルス感染症対策に対しましては、保健所内の保健師のみならず、福祉部の保健師を兼務配置するなど、人員体制を強化して対応しているところです。保健師は、今回の非常事態への対応だけでなく、乳幼児から高齢者までのあらゆる世代の区民の健康づくりや疾病予防などに取り組み、大変重要な役割を担っております。引き続き、「大田区職員定数基本計画」に基づく適正な管理の下、感染症拡大防止に努めるとともに、国民の皆様の生命、安全を守る施策に全力で取り組んでまいります。

戦後最悪の景気後退の中で区内中小企業を守る施策について

【黒沼議員】
次に、戦後最悪の景気後退の中で、中小企業の果たす役割について伺います。
区の予算編成の第2の重点課題は、「区民の暮らしや区内の経済活動を支える取組み」です。内閣府が8日に発表した今年4月から6月期の国内総生産、GDP改定値は、前期に比べて7.9%減、年率換算で28.1%減と、リーマンショック直後を超える戦後最悪の落ち込みが記録されるなど、大きな衝撃が広がっています。安倍政権による国民負担増によって経済の土台が壊されていたところに新型コロナが襲いかかり、経済被害が広がりました。打撃を受けるのは中小企業、個人事業主です。
東京商工リサーチによると、コロナ禍による経営破綻企業は、14日までで413件に上ります。帝国データバンクの7月調査では、マイナスの影響を受けるとした企業数は82.7%に達しています。大企業も利益は減ったものの、内部留保は増えています。また、コロナ禍の初動期でもある1月から3月の「大田区中小企業の景況」にも色濃く表れています。「感染しないために流れを止めているが、人が動かなくなるというのはこういうものかと改めて認識させられたほどの売上げ減」(製造業)、「かなり苦しい。とにかくもらえるものは全てもらい何とか持ちこたえるつもりで動くしかない」(小売業)などの声が載っていますが、全体としては、新型コロナ禍の影響で最大は売上げ・客足減で69%、資金繰り悪化が41%、従業員の感染防止対策でコスト増が29%など、深刻な実態が見えてきます。
政府は、これまでも中小企業攻撃を重ねてきました。1999年に中小企業基本法を改悪し、大企業と中小企業の格差是正を放棄したんです。支援策を中堅企業や急成長型の中小企業に特化させました。中小企業の保護ではなく、強者を育てるとして、小規模零細業者を切り捨てる大改悪でした。経済のグローバル化の中で、国内の下請中小企業は過剰ということを基本認識として中小企業政策が進められてきました。しかし、その後、小規模事業者が激減し、地域経済の底が抜けたような状況が生まれ、再び小規模企業に光を当てざるを得なくなりました。強者だけを育てるということが矛盾として現れ、小規模企業の持続的発展を支援する施策を講じざるを得なくなり、小規模企業振興基本法をつくったのです。その特徴は3点あります。
一つは第3条で、「技術やノウハウの向上」、安定的な雇用の維持等を含む「事業の持続的発展」が重要、二つ目は第6条で、産業集積に果たす役割を評価し、「面」として支援する必要性、三つ目は、同じく6条で、従業員5人以下の「小企業者」の振興が必要の3点を活かして、自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定する。そのために、9条で、地方公共団体、中小企業に関する団体その他の関係者は、適切な役割分担を担うとともに、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならないというものです。
●そこでお聞きします。大田区は昨年度、「ものづくり産業等実態調査」を行い、区内のものづくり関連事業所の実態は、従業者規模3人以下がほぼ5割、9人以下は7割強を占めていると、その実態をしっかり把握しました。しかし、政府の基準である従業員規模4人以上の製造事業者の調査、分析である経済センサスを採用してしまいました。もったいないどころか、誤った方法ではないでしょうか。区内企業のすばらしさは3人以下の小規模製造業者が大田区の産業の集積として試作品と製造品の両方をこなせる母工場都市機能を発揮しています。大田区のものづくり産業と高度な技術の集積の主力である3人以下の小規模事業者を小規模企業振興基本法の立場に立って見直すべきです。3人以下の企業は企業ではないという政府と同じ立場からの転換を求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、「経済センサス」の取扱いと3人以下の企業に関するご質問ですが、区が実施した「ものづくり産業等実態調査」では、区内製造業事業所数の根拠として、「経済センサス」による数値を採用しております。これは、「経済センサス」が全国全ての事業所を調査対象としており、区内経済の実態をより正確に把握できることによるものです。なお、お話しの「4人以上」を対象とする調査につきましては、「経済センサス」ではなく、「工業統計」で行われております。区が実施した「ものづくり産業等実態調査」では、3人以下の企業も産業政策を展開していくうえで大変重要な位置づけにあると考えており、今回も調査の対象といたしました。また、中小企業庁に対して3人以下の企業に対する国の見解を確認したところ、中小企業基本法における中小企業者の定義の中には、当然3人以下の企業も含まれていること、中小企業庁のホームページで中小企業の定義を記載していること、中小企業庁では小規模企業向けの様々な支援策を展開していること、政府として従業員数3人以下の中小企業も当然に支援すべき対象と認識していることとの回答がございました。区は、引き続き、様々な企業によって構成される大田区の産業集積の維持発展につながる取組を進めてまいります。

【黒沼議員】
大田区の景況で示されていますが、倒産、廃業は止まっていないことが示すように、小規模企業振興基本法に則り、手を打つべきでした。
お聞きします。この間、大田区は、小規模企業振興基本法については、大田区として新たに施策を追加する内容はないとの立場を取り、法の具体化にまともに取り組んできませんでした。小規模企業振興基本法では、地方公共団体は、自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」としています。
●大田区ものづくり産業と高度な技術を守り、発展させるためにも、区内小規模企業や小規模事業者でつくる任意団体を組み入れた産業連携検討会を設置し、小規模企業振興基本法に則った産業政策の策定を求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、産業連携検討会の設置と産業政策の策定に関するご質問ですが、区は、平成7年に「大田区産業のまちづくり条例」を制定し、これまで区内産業の振興に取り組んでまいりました。その後、地域産業を取り巻く環境が大きく変化してきたことを受け、区は昨年度から「(仮称)大田区産業振興構想」の策定に着手しました。その中で、区は、小規模企業振興基本法の基本原則に則り、中小企業や小規模事業者の方々から様々なご意見をお聞きしてきたところです。
こうした中、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、構想の策定作業は一旦休止とし、大きな影響を受けた区内産業に対する経済対策を様々な角度から集中的に展開するとともに、緊急実態調査を断続的に実施しております。現在、策定中の(仮称)緊急計画に重点対策の一つとして経済対策を盛り込むなどに取り組んでおります。なお、感染症の動向などを見極めたうえで、産業振興構想の策定を再開する際にも、小規模企業振興基本法における地方自治体の責務を踏まえ、取り組んでまいります。

【黒沼議員】
次に、防災の面から、区内中小企業、小規模企業の役割を活かすことが重要です。昨今の大型台風の来襲など、自然災害の大本となっている気候変動対策として、中小企業支援での防災まちづくりを提案します。大田区の技術を活かした再生可能エネルギーの推進を防災の面でも進められます。それは、大規模停電への備えにもなります。
●気候変動に対する取組では、火力発電に代わる自然再生可能エネルギーの推進が大変効果的です。大田区にはその技術と歴史があります。防災対策、気候変動対策として大々的に取り組み、区内産業の再生を図ることは重要です。お答えください。

【松原区長】
次に、中小企業支援と再生可能エネルギーの推進、地球規模の気候変動への対応に関するご質問ですが、地球環境への負荷の低減は全世界の課題です。2015年9月の国連サミットでは、持続可能な開発目標として17の目標を掲げました。その一つに気候変動への対応があります。これは、我が国においても積極的に取り組むべき課題であります。
現在、研究開発型の企業では、環境負荷の低減に向けた研究開発、技術革新を重ねており、区内にはこうした先端技術を支える役割を担っている企業がいくつもあります。本年7月にオープンした羽田イノベーションシティは、新たな産業を創造し、社会に発信する拠点であり、現在、先端産業分野の企業誘致を進めているところです。大田区の持つこれまでの区内企業の力、時代の先端を行く新たな力、こうした力が羽田イノベーションシティから、そして大田区から生まれてくることが環境問題を含む様々な社会的課題を解決する未来を築いていくものと考えております。こうした未来に向け、区といたしましても積極的に取り組んでまいります。

【黒沼議員】
大田区が力を入れてきたのは、グローバル企業に便宜を図る国家戦略特区としての羽田空港跡地第1ゾーン整備事業です。企業が世界で一番活躍しやすい国づくりの一つとして、当初は(仮称)羽田グローバルアライアンスセンターとしていました。目的は、跡地を活用した産業交流拠点の形成です。ものづくり日本の再構築を羽田からとして、世界から企業、人材を集める共通インフラと位置づけ、1、国内各地を結びつけるハブ機能、2、国際的な精密加工、研究開発ニーズにタッチ・アンド・ゴーで即応という二つの目的を持ち、成果として、1、海外からの精密加工や試作品製造等の相談、依頼に国内各地のネットワークを活用して対応、2、日本の技術のブランド化、3、加工品や試作品の安全性、寿命等の性能計測、評価、4、潜在的な技術シーズを掘り起こし、事業化ニーズとマッチングするとしていました。その後も区は、先端技術の研究開発、国内外の技術交流、高度技術の発展につなげるとして宣伝してきたため、区内企業は期待してきました。「大田区ものづくり産業の国際展開の基盤になる」、「世界から多くの人々がやってくる魅力ある施設になるのだから、大田区のものづくりの実力を広くアピールできる」、「世界から大田区に新製品の試作品やサンプルを作ってほしいと注文が来る」などです。しかし、グローバル企業とは多国籍化した大企業であって、国内生産、国内需要のための企業ではありませんので、長期的には中小企業の存在基盤が崩れていくことにつながります。それなのに区内企業や区内産業界に期待を持たせてきたのです。大田工連も機関紙に期待の記事を載せてきました。
先月、日本共産党大田区議団は、現地を視察してきました。デンソーが電気自動車を開発し、その部品発注を少し区内にしてくれるのかもしれないなど、淡い期待もあるそうですが、ユニット数17のうち、最初8社が応募したそうですが、この間、撤退したのが4社、あとの4社もあくまで契約予定です。正式に決まったのはゼロなんです。賃料は、9月からは1企業も取れていません。国外からの応募もゼロです。17ブースありますから、残り11ブースはめどが立っていないことになります。ところが、大田区施策活用スペース4000平米は、月単価1平米6000円の賃料は、既に事業者である羽田みらい開発株式会社への支払いが始まっています。しかも、驚いたことに、契約予約の4社も年内始業の見通しはないとのことです。このことは、大田区には使用料が入らず、大田区だけ1か月に2400万円の賃料として羽田みらい開発株式会社に区民の税金が支払われます。
●そこでお聞きします。これでは大田工連はもとより、この羽田空港跡地開発に期待する多くの区内中小・小規模企業を裏切ることになるのではないでしょうか。今のままでは破綻します。方向転換し、区内中小企業に役に立つよう広く意見を求め、再検討すべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、羽田イノベーションシティにおける区施策活用スペースに関するご質問ですが、本区には、国内はもとより、世界で活躍している研究開発型企業などが集積しており、今後も多くの分野で本区の中小企業が有する高い基盤技術などが求められると考えております。区内産業が持続的に発展していくためには、先端産業分野の企業や研究機関等と区内企業を新たな方法で結びつけていくことが重要であり、区施策活用スペースでは、新たな出会いと交流の機会を創出するためのスペースを用意しております。テナント区画につきましては、区内企業をはじめ、区外の中小企業からも複数の応募をいただき、入居が決定している企業からは、区内企業との交流機会へ期待を寄せる声も多くいただいております。アフターコロナを見据え、先端産業分野の研究開発を行う企業が多く集うこの地において、区内中小企業の技術等を求める機会は今後確実に増えるものと考えております。

未来を担う子どもたちの教育環境の充実について

【黒沼議員】
次に、教育について伺います。
新型コロナウイルス感染防止のためといって、科学的根拠を持たない突然の全国一斉休校が行われ、大田区では約3か月にわたって行われ、子どもたちの学びの保障と豊かな成長が奪われました。文部科学省が5月に「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル~『学校の新しい生活様式』~」を発表しました。その中で、三つの密ゼロを目指すとして「身体的距離の確保」を推奨していますが、現行の40人学級では事実上不可能です。そのために登校をためらい、「コロナが怖い」と不登校になっていると心配するお母さんの声を先日伺いました。登校した子どもたちは静かにしなければならず、給食時も全員真っすぐ黒板を見て食事し、担任は廊下で給食ということで交流ができなくなっています。今後も2波、3波が来ることを考えると、「身体的距離の確保」が可能な恒常的な環境整備を急がなければならないことになります。
文科省は、児童・生徒の席の距離を縦190センチ、斜め135センチ取る方法を実践するため、学校再開当時は1クラス20人以下となるように分散登校が行われました。そのための困難と苦労はありましたが、少人数で学習する教育のよさを大いに評価する声が子どもからも教師からも上がっています。「一人ひとりに言葉をかけやすく、勉強もじっくり見られる」、「生徒の様子がよく見え、生徒も見られているという意識から集中力が高まっている」など、よさを再認識されました。「心身のケアが必要な子どもに少人数教育は一番いい」という声も上がっています。少人数がいいというところがはっきり見えて、共有できたことです。みんなが経験したということは大きなものがあります。
●そこでお聞きします。教育委員会はこのような声を聞いておられるでしょうか。これまで少人数学級をデメリットと主張した最大の理由は、集団の中での切磋琢磨論でした。しかし、感染症対策のためには、ゆとりと行き届きこそが必要であり、感染防止から見ても切磋琢磨は合理性がなく、非合理とさえ言えます。この点で、教育委員会は、分散登校から見えてきた少人数学級のよさをどう受け止めているのか、お答えください。

【小黒教育長】
少人数学級のよさについてのご質問ですが、3月から5月の臨時休業の後、6月の第1週は学級を三つに分けて、第2週、第3週は学級を二つに分けて分散登校を実施いたしました。これらの分散登校は、あくまでも感染症対策の一環として3密を避けるために行い、日常の教育活動と異なったものでございます。お話しの少人数学級については、区独自に講師を配置し、算数・数学、英語について習熟度別少人数指導を展開し、きめ細かな指導ができるようにしております。引き続き、従来から行っている習熟度別少人数指導を行い、一人ひとりの児童・生徒にきめ細かな効果的な学習指導を行ってまいります。

【黒沼議員】
次に、来年度からまず、小学校3年生と中学2年生の35人学級を求めて質問します。
この教訓を活かして20人学級に進むことは、文科省でも国会で答弁するようになってきました。しかし、新年度から一気に20人学級にするには、教師、教室の確保から難しいと思いますが、現在の小学校1・2年、中学校1年は35人学級です。今年度の児童・生徒数から試算しますと、小学校3年生は40人学級で、区内59校で151クラスです。35人学級では165クラスになります。わずか14クラス増です。中学校でも現行制度の40人学級で、中学校2年は28校で108クラス、35人学級は119クラス、11クラス増と圧倒的学校で教室を増やす必要はありません。しかも増えても、小学校では3年生以上に算数のみ、中学校では全学年数学、英語で講師も加配して、習熟度別少人数授業をやっています。つまり、クラスはあるのです。
●そこでお聞きします。政府と東京都に対して、来年度から少なくとも小学校3年と中学校2年で35人学級を実施するよう要望することを求めます。
未来を担う子どもたち、若者の教育にこそ税金を使おうではありませんか。子どもたちにすばらしいプレゼントをしようではありませんか。そのうえで20人学級実現のための検討を至急始めることを求めます。お答えください。

【小黒教育長】
次に、学級編制の少人数化に関するご質問です。区における公立の学級編制は、学級編制及び教職員定数の標準に関する法律を基に、東京都教育委員会が定める学級編制基準に基づいて実施しております。これに加えまして、先ほど述べました習熟度別の学習指導や講師の配置などがなされております。臨時休業後、東京都と連携して加配教員の弾力的な活用やと都費講師の追加配置を行うなどして、きめ細かい教育活動を実施しております。一方、お話しの少人数学級化を早急に進めることは、教員や教室の確保など、人材面や施設面の環境整備の観点から難しいと考えております。引き続き、少人数学級に関する国や東京都の動向を注視してまいります。

以  上

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