第1回定例会一般質問(速報)―黒沼議員(2月21日)



(映像は大田区議会ホームページより:22分)

【黒沼議員】
日本共産党大田区議団、黒沼良光です。質問通告に従って順次質問します。

区内中小企業・小規模企業の3つの特質と発展のための4つの方向の提案について

【黒沼議員】
まず、安倍内閣と財界の戦略であり、2018年度版「経済白書」の副題になっている「今、Society5.0の経済へ」と羽田空港跡地第1ゾーンの関係と、「経済白書」の説明書きにある「AI、ロボット、ビッグデータなど近年急速に進展している第四次産業革命のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れること」と羽田みらい未来開発株式会社の関係についてお聞きします。
実は今年の松原区長の庁内報での新年の挨拶の内容の半分程度が、私が読み取った限りでは、まさにSociety5.0の内容です。
こう言っています。ダボス会議でのデジタル専制政治を取り上げていますが、一部のエリート層とAIが世の中を統治するというものです。つまり一部の人が中心になってAIを動かし、AI自身が独自の判断を行いながら社会を動かすというものです。これを追跡していきますと、安倍政権と経済同友会などの財界のSociety5.0、超スマート社会にたどり着きます。区長は、AIの分析データの所有が人類を凌駕する理論であると強調し、昨年の第4回定例会議の挨拶でのSociety5.0、いわゆる超スマート社会の到来を可能な限り施策推進に活かしていきたいとの発言ともあわせると、こうした変化する世界の中で、区民の皆さんが日々健康で穏やかに過ごされることが私どもの願いですと、大田区民とデジタル専制政治、Society5.0とのかかわりで、健康で穏やかに過ごされることが私どもの願いですと強調しています。
そして、鹿島を代表とする9社グループ、羽田みらい開発株式会社と結んだ事業契約は、先端産業分野、つまり航空・宇宙産業、ロボット産業、健康医療産業、その他、今後の成長が見込まれる産業分野であり、このことが大田区の産業分野への波及効果を増大させますという内容です。まさにSociety5.0の内容です。安倍内閣と財形の戦略です。Society5.0とは、AIとIoTとビッグデータという三種の神器を活用して、これまで人間のやっていた仕事を、ビッグデータの解析をAIに解析させて現実空間にフィードバックさせることで、人口減少、高齢化、エネルギー・環境制約などあらゆる問題を解決できるというのです。しかし、ビッグデータという情報は、民間の特定の発信者、受信者の支配するデータです。公的機関のコントロールがきかないシステムなんです。
それは、大企業の利益のために働くことになるだけで、人口減少・高齢化、エネルギー・環境制約など様々な社会問題を解決できるわけがありません。AIが人間にかわって社会を変革しているわけではありません。空港跡地が、このようなAI、ロボット、先端医療などのために使われようとしています。第1ゾーンでのトヨタ関連で行う無人自動車の開発や、ロボット開発、川崎殿町地域と結ぶ先端医療産業などは、まさにその具体化です。
これらにかかわれる区内中小企業は果たしてどれくらいあるのか。区は、これまで何度聞いても一切明らかにしてきませんでした。昨日の区長答弁にもありませんでした。なぜ明らかにできなかったのか。それは、このような内容で区内中小業を救うことは不可能だからです。羽田空港跡地第1ゾーンをこのような実験台に、大企業のもうけに活用させるわけにはいきません。
●そこでお聞きします。今でも大田区は区内中小企業の活性化のためと言いますが、どのような根拠を持っているのでしょうか、お聞きします。

【まちづくり本部長】
羽田空港跡地第1ゾーン第1期事業に関しましては、平成22年10月に、羽田空港移転問題協議会、いわゆる三者協で策定いたしました羽田空港跡地まちづくり推進計画や、平成27年7月に区が策定した羽田空港跡地第1ゾーン整備方針などの累次の計画に基づきつつ、新産業創造・発信拠点を整備していくものです。これらの先行計画を踏まえ、整備・運営事業者である羽田みらい開発株式会社は、羽田空港に隣接することや金属加工を中心に高度な技術を誇るものづくり中小企業が集積する立地も活かし、地域経済の活性化や我が国の経済成長につながる取り組みとして、先端産業事業、文化産業事業、共通事業の三つの取り組み方針を定めました。
特に先端産業事業では、先端モビリティ分野、ロボティクス分野、健康医療分野を中心とした取り組みを進めていくとしています。これらの分野は、私たちが直面する様々な社会的課題の解決につながること、関連する技術分野が多岐にわたることなどから、高度な加工技術やものづくりのネットワークを持つ区内中小企業への高い波及効果が見込まれ、区内中小企業の様々なチャレンジに資するものと考えております。なお、跡地の整備を進めるに当たっては、羽田空港や跡地第2ゾーン、区市街地などの周辺地域との回遊性も念頭に置き、それぞれのよさを活かした機能連携を図ることで、跡地の魅力向上と区内における雇用や受発注機会の拡大など、相乗的な波及効果も見込まれるものと考えております。
平成30年度の「経済財政白書」を拝見しますと、我が国においても、IoTやAI、ロボットなどの新技術を用いて、生産面、サービス供給面の効率改善や、顧客への細かな対応を図る動きが広がりつつあるとされております。区としましては、このような社会状況の変化をしっかり捉え、各種の新技術などの特徴や利点、さらには課題などにも目配りをするため、引き続き「経済財政白書」はもとより、国の経済産業支援政策などの動向についても適時適切に把握していくことが重要であると考えております。その上で、新産業創造・発信拠点が、区内ものづくり中小企業を中心とした産業の存在感を高め、その集積の強化にも寄与するよう努めてまいります。

【黒沼議員】
このようなSociety5.0、超スマート社会の流れに乗るような大田区の産業政策ではなく、一昨年の第3回定例会で申し上げたことですが、改めて区内企業の発展は三つの特徴を活かした母工場都市機能を発揮し、四つの分野で発展させることこそ未来ある方向だと、「日本共産党の宝、中小企業・小規模企業ビジョン」を日本共産党大田区議団は作成しました。特徴は以下のとおりです。
一つは、汎用型の技能・熟練の形成・伝承です。量産部品加工以外の中小企業では、様々な業種の多様な製品や部品の加工にかかわるため、使用している機械類の能力を最大限に活用し尽くす必要が生じるため、技能の幅は大企業よりも広く、またフレキシブルであり、高品質・短納期での多品種少量・一品生産を支える技能の蓄積があります。
二つは、マザーマシンの法則への対応が可能ということです。いわゆる機械をつくる機械のことですが、試作品をつくる必要条件と言えます。現場での工夫・改良、それに基づくプロセス、イノベーションの能力です。中小企業の現場では、いかに早く効率的にロスを少なくして安価に生産するのかにかかわる技術革新が行われ蓄積されています。この仕事は、海外移転による仕事減少の中でも必要とされています。
三つは、大企業の企業内に閉じ込められた私有材としての技能・熟練ではなく、多様で高度な専門特化した生産・加工技術を誰もが注文し活用できる、あたかも公共財としての地域的集積としての役割です。このことこそが、母工場都市機能を発揮でき得る大田区の宝物です。大企業とは異なる重要な部分を占めており、どんなにグローバル化、生産の海外移転をしても、その役割は必要だし、それはME化の高度化で代替えできるものではないのです。だからこそ、その技術を区として把握し、フルセット型と言われた機械金属加工、幅広い機械金属加工の加工機能連関の集積は日本一です。
こうした中で、地域中核企業の成長と小規模企業ネットワークを軸にした独自市場の開拓による自立型工業集積地への挑戦が、今、多様な形態をとりながら進み始めています。これら大田区の集積の力を区全体の大きな異業種集積工場として捉え、母工場都市機能を兼ね備えた大田区をつくり上げ、小規模企業振興基本法に基づき、受注難にあえいでいる小規模企業に的を絞った自立的製品への支援策などを強化する方向にこそ大田区は進むべきです。来年度予算で新たに受発注支援事業の立ち上げと、5年ぶりの3人以下も含む実態調査である産業等実態調査と、大田区産業振興構想策定がこのような歴史と価値を受け継ぎ発展させることに寄与できるよう期待するものです。
小規模企業振興基本法が制定されている今日、日本共産党大田区議団は、小規模企業に的を絞った支援策の整備を求められていると位置づけています。受注難にあえいでいる小規模企業での製品・技術開発は、仕事の実質的な創出につながる試みであるとともに、従来のネットワーク力のさらなる質的向上が実現し、受注範囲の拡大が可能になると考えます。今、新製品開発支援事業がさらに使い勝手がよくなる改良を求めるとともに、より多様で、より充実した自立型支援政策を求めます。
日本共産党大田区議団は、改めて三つの特徴を活かした母工場都市機能としての大田区の四つの産業政策の充実を提案します。
第1の方向は、自立型工業集積への展望です。下町ボブスレーの開発に始まり、スポーツ車いす開発・実用化などは、軽くて弾力性を保った素材加工技術と表面処理技術など、最先端のハイテク技術と高度な技能、熟練を結集した新分野開拓への挑戦は、部品加工業の集積から最終製品を生み出すことにつながります。オーダーメード式に対応できる技術の実績を活かして自立型工業集積への展望を切り開く方向です。
第2の方向は、医療機器分野へのさらなる進出です。メカニックな機能を有する機械と、使用者が手にして一定の効用を生み出す道具の2種類があります。医療分野では、残念ながら多くを輸入に依存するというアンバランスな状態が大田区には生まれています。高度の医療機器を開発するには、大田区のような少量生産で一品一品にわざを込める職人集団の連携が不可欠になります。最先端ではなくても、ものづくり最前線に必要な技術力が現在でも町工場には蓄えられています。
先週訪ねた南蒲田の町工場、81歳のOさんを訪ねました。資本金72億円、従業者1400人の防衛、航空などの精密電子機器メーカーの区内大手企業から注文を受けて仕事をしています。この30年間、すご腕の人です。このような難加工をこなす人はほとんどいなくなり、注文先からやめないでと言われている状況です。ベンチレースをみずから修理しながら、製品ごとにバリ取りの工具もつくり出し、0.2ミリの穴あけをしています。しかし、その単価は25年間変わらず、1個50円という安さです。技術もすばらしいものでものでした。その能力を活かし、新市場を開拓するため、医工連携支援センターを設置し、医療現場のニーズと機械産業の技術ニーズを結びつける場を多いに拡張することを求めます。
第3の方向は、自然再生エネルギー関連の進出です。自然再生エネルギー分野は無限の可能性があります。原発にかかわって仕事をしてきた優秀な中小企業、小規模企業がたくさん大田区にはあります。そうした企業が自然再生エネルギー分野で技術を発揮することは確実です。原発をやめ、自然再生エネルギーに転換したドイツで証明されています。ドイツでは、原発をやめても、廃炉にするのに少なくとも60年間も仕事はなくならないとともに、自然再生エネルギーの仕事で600万人の雇用拡大になっています。
第4の方向は、新たなマーケットとして農業分野への進出です。野菜や果樹の栽培は機械が遅れています。これもドイツなどの輸入に頼っているのが実情です。大田区では、秋田銀行と「大根の持ち上げ機」1機60万円で納入の1件、北洋銀行と「木の苗植え付け用ドリル」1本19万円で5本納入済みの1件、山陰合同銀行と「ミニ植物工場」発展8社が集まる異業種交流会で1機100万円で納入などの実績がありますが、これを抜本的に発展させることです。
以上、こうした新しい挑戦領域を、大田区工業の階層構造に応じた形で、基盤技術を形成する小規模企業中心型の挑戦タイプと製品開発型企業層がイニシアチブを発揮し、最先端分野に挑戦するタイプ、従来型の製造技術を基本に一定の改良、応用を付加して農林漁業や地域社会で求められている製品を提供する自律的なネットワークに大別し、支援する仕組みをつくり、母工場都市機能としての機能を果たしていくことが、待ち工場、ウェイティング工場から、一歩進んだ仕事づくりへとステップアップする可能性が開けてくると確信します。
●お聞きします。先端技術、ベンチャー企業だけに頼るのではなく、国も持続的支援を小規模企業振興法に盛り込んだわけですから、大田区もこの3点を十分酌んでの産業経済政策にすべきです。お答えください。

【産業経済部長】
1点目は、先端産業やベンチャー企業だけに頼るのではなく、大田区の三つの特徴を活かした母工場都市機能を発揮した産業振興施策を進めるべきとのご質問でございますが、区は、製造過程に必要不可欠な加工分野が整い、都心部ならではの利便性を活かした全国でも類を見ないものづくり集積を有しております。各企業が有する高い基盤技術や、仲間回しに代表される企業間ネットワークは、大企業の生産活動をも支え、我が国のものづくり競争の源泉となっております。こうした区内のものづくり集積の強みを、今後も維持・発展させることが区の産業振興施策として重要であると考えております。
現在、区では、新製品や研究開発に取り組む企業等への支援、小中学生のものづくり教育から次世代経営者の育成に至る切れ目ないものづくり人材の育成、技術の継承や技術者育成に向けた「大田の工匠技術・技能継承」の表彰、受発注商談会などによる取引拡大支援など、様々な取り組みを継続的に行っております。引き続き、高付加価値を生み出す製品開発や新たな産業分野への参入を支援する施策を力強く推進し、ものづくり産業集積の強みを維持・発展させてまいります。

【黒沼議員】
小規模企業振興法は、従業員20人、商業サービスは5人以下の小規模企業が地域経済の担い手として、また雇用の担い手として大きな役割を発揮していることに着目し、事業の持続的な発展を支援する施策を、国・地方公共団体などが連携して講じるよう求める法律です。中小企業基本法との関係では、1999年の改定で大企業と中小企業の格差是正を放棄し、支援策を中堅企業や急成長型の中小企業に特化させた結果、小規模企業施策が後退し、小規模企業は423万社から2012年の334万社へと激減しました。大田区も例外ではありません。雇用の場も減少し、地域経済も落ち込みました。小規模企業に再び光を当てざるを得なくなったという政権側の矛盾でもあります。
2013年の小規模企業振興法の改正で、目標に小規模企業の意義の重要性が追加され、小規模企業振興法第1条に、中小企業基本法の基本理念にのっとりとされ、位置づけられたのです。
その特徴は三つです。一つは、成長発展のみならず、技術やノウハウの向上、安定的な雇用の維持などを含む事業の持続的発展が重要と位置づけていることです。二つは、単に個別に支援するにとどまらず、商業集積や産業集積に果たす役割を評価し、面として支援する支援する必要性を位置づけています。まさに、大田区にうってつけの内容です。三つは、従業員5人以下の小規模企業に着目し、この規模の振興が必要だとし、より個々の状況に寄り添った支援を求めています。
大田区は、産業のまちづくり条例があると言いましたが、これらの実情に適合していません。第1に、産業者として大企業との役割と、中小企業小規模企業の役割が明確にされていないことです。工業、商業とも空洞化が進行し、倒産、廃業、夜逃げ、失業などの要因に下請いじめ、海外移転などで利益を上げている大企業の身勝手な振る舞いがありますが、大企業に対して社会的責任と役割を求め、中小企業・小規模企業に光を当て、区民の暮らしと営業を守るための実効性ある条例にすることです。
第2に、産業のまちづくり条例には、生活環境と調和する産業のまちづくりを推進し、もって区民生活の向上に寄与すると、ここでも中小企業・小規模企業は視野から外されています。明確に中小企業と地域経済の健全な発展と区民福祉の向上に寄与すると明確にすべきです。
●そこでお聞きします。今回、条例提案も予定していますが、実態に合わない産業のまちづくり条例を変えて、国の小規模企業振興法を国がつくったように、また東京都が中小企業・小規模企業振興条例をつくりましたが、大田区でもつくることを求めます。お答えください。

【産業経済部長】
次に、国が小規模企業振興法をつくり、東京都が中小企業・小規模振興条例をつくったように、区も新たな条例を制定すべきとのご質問でございますが、区が平成7年に制定をした大田区産業のまちづくり条例は、企業規模にかかわらず、製造業、建設業、小売業、サービス業など区内の産業経済活動に係る全ての産業者が、区民及び区と一体となって産業のまちづくりを推進することを目指しております。また、同条例が定める基本方針及び基本施策は、小規模企業振興基本法及び東京都が制定した東京都中小企業・小規模企業振興条例に掲げる基本方針の内容も網羅しており、区の実態に沿ったものであると考えております。したがいまして、現状では、大田区産業のまちづくり条例にかえて新たな条例を制定する考えはございません。

【黒沼議員】
そのために提案します。1、仕事確保のための職員をせめて10名増員、2、東糀谷工場アパートのような経営支援としての1か月5万円の工場家賃支援、3、以前有効な役割を果たした、ものづくり経営革新支援事業(最高1社55万円)の復活、4、中小企業後継者支援(1人200万円)、5、次世代人材確保事業(1人12万円)の充実。以上、これらを実現していくためには、産業経済予算を適切に増額することが求められます。
以上要望して、全ての質問を終わります。

以  上

カテゴリー: 議会の動き・政策・発言集 パーマリンク

コメントは停止中です。