(映像は大田区議会ホームページより:19分)
7期の介護保険事業計画を、高齢者の安心と尊厳の介護サービスにすることについて
【金子議員】
私は、介護保険の第7期事業計画について、要介護認定を身体・生活状況に応じて実施することについて質問します。
第6期は、大きく変わった点で、要支援1・2の介護サービスが新総合事業に移行したことと、特養ホームの入所資格が要介護3以上になったことです。第7期は、みなし措置で続けられた新総合事業がいよいよ区の事業として始まることになります。区の事業で行われる介護は、資格を持つヘルパーでなくてもよいことになり、区の施設などを使ったデイサービスが主に行われることになります。そうすると、居宅サービスが大幅に縮小されてしまい、要支援者の在宅生活が困難になります。推定で7000人から8000人が介護保険から外されることになりますが、制度で外された高齢者も年々加齢が進むわけで、単純に卒業させるとはなりません。在宅での介護がますます困難になり、区は、「必要な人には専門性を有したサービスを提供し、その他の多様なサービスも充実して選択でき、サービスの幅が広がります」としていますが、老人いこいの家で行われる体操事業は一般介護予防事業であって、通所サービスではないので、明らかに自立支援から後退することになります。いこいの家に行けない人は、そのサービスも受けられません。シニアステーションで行われる事業は有料であったり、人数制限のサービスもあります。
●みなし措置で行われたサービスを今までどおり保険給付と同様に保障することが重要です。給付抑制と自己負担増で必要な介護サービスが削られることはあってはならないことで、財政的インセンティブ、「我が事・丸ごと」地域共生社会の名で、自治体による強引な介護サービス取り上げや、福祉に対する公的責任が大幅に後退しないよう、従来の要支援1・2のサービスを保障することを求めます。お答えください。
【福祉部長】
まず、要支援1・2のサービスについてのご質問ですが、地域支援事業におきましては、要介護状態となることを予防すること、要介護状態となった場合も、可能な限り地域において自立した生活を営むことができるよう支援することが目的とされています。区の新総合事業においても、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で引き続き日常生活を営むことができるよう、地域包括支援センターの最適なケアマネジメントにより、利用者の状況に応じて、専門的なサービスを含め、多様なサービスを提供してまいります。
【金子議員】
次に、要介護1・2の特養入所資格についてです。特養ホームの待機者は全国で52万人を超え、行き先を探しているのが現実であり、医療・介護確保法で病床削減の結果、介護保険制度は病床削減の受け皿にはならないこと、特養に入所している要介護1・2の高齢者の6割は、その理由が介護者不在、介護困難、住居問題であることが、その当時の厚生労働委員会で明らかになっています。要介護3以上に入所が制限されると、特養の入所を待っている全国50万人の3人に1人は待機者にさえなれません。大田区の待機者は、以前は1500人前後で推移していたのが、現在は1200人台とカウントされています。
特養ホームへの入所資格は、要介護1・2でも区は申し込みを受け付けるとして、「みんなの介護保険」には確かに要介護1から5の人が申し込みができると書かれていますが、その下に原則3から5の人が対象になることを小さい字で書いてあります。国の制度改変を反映させて、書かないわけにはいかなかったということではないでしょうか。特例入所に入っていなければ、要介護1・2では申し込みができないと思う人も多いのではないでしょうか。実際、要介護2では申し込みができないと言われた家族もいます。全国施設長会議アンケートによれば、要介護1・2の申し込みは「以前よりも減った」56%、「受け付けていない」19%という結果です。
●厚生労働省は、この3月に認知症、知的障がい、精神障がいや家族による虐待などが疑われる人は、特例入所を申し込んだときの施設の対応について定めた通知を各自治体に出しました。しかし、要介護3以上とした後、特例入所を国民の声に押されて認めるというのも矛盾した対応です。何より、特養の入所対象をもとの要介護1に戻すよう、区として意見を上げるべきです。
【福祉部長】
次に、特別養護老人ホームの入所対象者に関するご質問でございます。平成27年4月の介護保険法改正により、特別養護老人ホームの新規入所者は原則として要介護3以上の方が対象となりました。中重度の要介護者の生活を支援する施設としての機能を重視したものです。ただし、要介護1の方でも、本人や介護者の状況等、やむを得ない事由がある場合は特例的に入所の対象になります。一方、区は、従前から必要度の高い方から優先的に入所できる仕組みを設けております。そのため、要介護1・2の方を含めて、申し込みをされた全ての方に対し、入所の必要性の評価を実施いたします。評価に当たっては、本人・介護者の心身の状態や住まいの状況等を十分勘案することで、要介護度のみではなく、他の個別の事情等を適切に反映できる仕組みとしております。なお、特別養護老人ホームの新規入所者における要介護1・2の方が占める割合を比較すると、法改正以前の平成26年度と法改正後の28年度では同程度の割合となっております。したがって、議員お考えの内容を区として国に働きかけることは考えてございません。
【金子議員】
この間、在宅の場合の居宅サービス時間が短くなったことや、処遇改善のための国庫支出がされ、次年度には利用料の中に組み込まれたこと、介護報酬が引き下げられたために介護ヘルパーの離職がとまらない状況になっています。大田区は、介護ヘルパーの処遇改善を求めた党区議団の予算要望について、「3万7000円の加算の算定が可能になっている」と回答していますが、本年5月25日、参議院厚生労働委員会で、日本共産党の倉林議員が、介護保険の利用料を3割負担にする介護保険法等の改悪案の審議の際に、政府が処遇改善加算で介護職員の賃金を月4万3000円増やしたと説明していることについて、「実際の基本給は約1万3000円しか増えていない」と指摘し、厚労省の老健局長は「ご指摘のとおり」と認めています。特に、訪問介護に当たる介護ヘルパーの場合は、事業者に登録をして個人事業主として働くことになります。介護離職や介護難民を出さないためにも、介護職員の処遇改善は重要課題です。
●身分保障がない登録の介護ヘルパーの処遇は、高齢化社会を支える貴重な人材であり、改善する必要があります。施設職員の処遇改善も重要です。大田区としても、保育士と同様に、家賃助成や手当など、本人の口座に直接振り込むなど処遇改善の手だてをとることを求めます。お答えください。
【福祉部長】
次に、訪問介護員等の処遇改善についてのご質問ですが、介護職員の処遇改善の主な要件につきましては、職位、職責、職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること、資質向上のための研修をすることなど、事業所としての体制・組織を確立することで加算が受けられる制度になっております。介護職員の処遇改善は全国的に重要な課題であり、国が介護報酬など介護保険制度における制度全体の設計の中で対応すべきものと考えております。区としましては、介護職員の労働環境の整備こそが重要と考えており、今後とも事業所管理者等を対象とした研修の場を通じて支援してまいります。
【金子議員】
●保険者である大田区は、この第6期計画の実施状況から第7期の課題は見えてきたのではないでしょうか。今まで述べてきましたように、高齢者と家族に安心と尊厳の介護を保障する上で、第7期の介護保険事業計画の重点課題は、1 特養の抜本的増設、2 低所得高齢者の住宅問題の解決、3 地域での暮らしを支える多様な介護基盤の充実、4 要介護高齢者を支える介護職員の処遇改善を行うことです。お答えください。
【福祉部長】
続きまして、第7期の介護保険事業計画についてのご質問ですが、策定に当たりましては、昨年度実施した高齢者等実態調査の結果や地域ケア会議における議論のほか、計画策定上のガイドラインである国の基本指針を踏まえ、おおた未来プラン10年(後期)との整合性を図りながら進めてまいります。第6期は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、地域包括ケアシステムの構築を進める出発点としましたが、第7期の策定に当たりましては、今般、厚生労働省から策定に向けた基本指針が示され、「自立支援、介護予防・重度化防止の推進」、「医療・介護の連携の推進」などの基本的事項に即した方策を検討し、地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進を図っていく必要があるとされております。区として、第6期計画における介護予防・日常生活支援総合事業、認知症施策の推進や介護サービス基盤の整備といった取り組みをさらに充実し、大田区における地域包括ケア体制の構築を進めてまいります。具体的な方策につきましては、外部有識者による高齢者福祉計画・介護保険事業計画推進会議の中での議論を深めながら、計画に盛り込んでまいります。
身体・生活状況に応じた要介護認定の実施について
【金子議員】
次に、要介護認定についてお聞きします。
要介護認定については、要介護高齢者の生活実態から支援内容の必要時間で割り出すという側面があります。その要介護認定が生活の実態から離れ過ぎているというケースが見られます。アパート2階にひとり暮らしの60代男性は、脳梗塞後遺症で右上下肢麻痺あり、右ききであるため生活に大変不自由していますが、要介護2と判定されています。玄関は1階にあり、外出するには階段を上り下りしなければならない。しかも、階段が急であるために危険な状況です。男性は、「今、介護度2で、限度額いっぱいにサービスを入れているが、現状ではそれでも足りない。介護度を上げてもらうか、何とかしてほしい」と要望しています。認知症が軽度に扱われることも問題になっています。高齢者本人と家族を支援するために行われる要介護認定が、生活実態に即しているのかは重要です。
●区分変更申請が、介護度が上がって見直しをされるのは当然のことですが、より軽度に出てしまって生活困難の事例については、ひとり暮らしの場合など特に大変です。身体・生活実態に見合った要介護認定を行うよう求めます。お答えください。
【福祉部長】
次に、要介護認定についてのご質問ですが、要介護認定は、介護サービスを必要とする方のいわゆる「介護の手間(量)」を判定するものでございます。適正に要介護認定を行うことは、介護サービスを過不足なく提供することになり、要介護状態の高齢者等の自立支援を実現することになります。区としましては、日ごろから、区の認定審査会の審査判定が一律の基準に基づき、心身の状況等に即したばらつきのない公平な結果となるよう、認定審査会委員や認定調査員への研修とともに、模擬審査を実施するなど、認定の適正化に努めているところでございます。具体的には、例えば、認定調査員に対する研修の中で、調査書における認知症の中核症状、周辺症状や日常生活自立度の調査方法について、毎回丁寧に解説し、認知機能の低下に関する見落としがないように指導しております。こうした取り組みが介護保険制度の持続可能性を高め、高齢者の尊厳を守ることにつながるものと認識しております。
東京都に特養ホームの建設用地費補助を求め、増設を促進することについて
【金子議員】
最後に、特養ホーム建設についてお聞きします。
今年度は矢口三丁目に30床の特養ホームが6月1日に開所し、千鳥二丁目に84床の整備計画が進んでいます。党区議団が気象庁宿舎跡地があると提案してきましたが、この場所にも特養建設計画が進んでいるのはうれしいことです。区は、待機者数に見合った具体的な数の増設計画にすることを求めた党区議団の要望について、「利用状況をもとに必要数の把握に努め、民間事業者による計画的な整備を進めます」と回答しています。計画的な整備は民間事業者が行うものではなく、区が責任を持って数値目標を持つことで実現するものではないでしょうか。
区が行った高齢者の調査では、1 住み慣れた家で居宅介護サービスを受けたい、2 特養ホーム増設を希望する、3 在宅生活を続けるために、バランスよく居宅サービスも特養もという要望が出されています。今月は大田区内のあちこちでお祭りが行われていますが、祭りばやしの聞こえる住み慣れた身近なところに特養をつくってほしいと要望が寄せられています。
●東京都の民間事業者の土地取得への補助金がなくなりました。区立でも、また民間事業者が建設する場合も、東京都に対して用地費補助を要請すべきです。民間事業者を支援するだけでなく、区としても国有地や都有地の活用も含めて、借地でももちろんのこと、特養を建設すべきです。お答えください。
【福祉部長】
最後に、特別養護老人ホームの整備についてのご質問ですが、区では、平成12年に介護保険制度がスタートしてからは社会福祉法人による事業展開を積極的に支援してまいりました。介護保険事業計画に基づき、昨年開設した3施設、今年開設した1施設とも、区の整備支援を受けた社会福祉法人が、国有地の活用も含め、独自の事業ノウハウを発揮しながら整備を進めたものでございます。今後も、特別養護老人ホームの整備については、事業計画に基づき、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、社会福祉法人による効果的・効率的な整備を進めてまいります。なお、東京都に対する要望につきましては、特別区長会として、特別養護老人ホーム等の用地確保に対する補助制度について既に要望しているところでございます。
以 上