第3回定例会一般質問(速報)―黒沼議員



(映像は大田区議会ホームページより:38分)

【黒沼議員】
日本共産党大田区議団、黒沼良光です。質問通告に従って順次質問します。

住宅政策の充実について

【黒沼議員】
まず、大田区の住宅政策について質問します。
住まいは人権です。住まいは全ての区民にとって生活の基盤です。所得の多い少ないにかかわらず、誰もが必要不可欠とするのが住まいです。ヨーロッパではこうした福祉的観点で住宅政策が実施されてきていますが、大田区の住宅マスタープランの内容は、区民に真に必要な住宅政策とは言いがたいものです。しかも、公営住宅法の位置付けが全く無視されています。公営住宅法は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足る住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、または転貸することにより国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的として制定された法律です。
大田区住宅マスタープラン作成の同年に変更された住生活基本法に基づく国民の住生活の安定の確保及び向上の促進に関する基本的な計画には、住宅困窮者が多様化する中で、住生活の分野において、憲法第25条の趣旨が具体化されるよう、公平かつ的確な住宅セーフティーネットの確保を図っていくことが求められていると記され、住宅は人生の大半を過ごす欠くことのできない生活の基盤であり、家族と暮らし、人を育て、憩い、安らぐことのできるかけがえのない空間であるとともに、人々の社会生活や地域のコミュニティ活動を支える拠点でもあります。住宅は都市やまちなみの重要な構成要素であり、安全、環境、福祉、文化といった地域の生活環境に大きな影響を及ぼすという意味で社会的性格を有するものであると、住宅の大事な中身と位置付けが明らかにされています。これはよく考えられた文章だと思います。続けて、住生活基本計画は、住宅は個人の私的生活の場であるだけでなく、豊かな地域社会を形成する上で重要な要素であり、個人がいきいきと躍動し、活力、魅力があふれる社会の礎として位置付けることができるとも述べています。
ところが、大田区は、住宅は私的財産であり公的な支援や補助の対象ではないとの立場で、社会的性格を有するという点が欠けています。それは住宅募集状況にあらわれています。区民の求めているのは公営住宅法に示されている低所得者への低廉な安価な公営住宅です。過去5年間の区営住宅の申し込みは、2011年申込者1294人、倍率38.1倍、2012年申込者1345人、倍率49.8倍、2013年申込者1037人、倍率41.5倍、2014年申込者607人、倍率20.2倍、2015年申込者1345人、倍率64.0倍となっています。シルバーピアも、2011年世帯申込者220名、倍率73.3倍、単身申込者513名、倍率51.3倍、2015年世帯申込者169名、倍率14.1倍、単身申込者420名、倍率35.0倍と、区営住宅同様、圧倒的に不足しています。
2001年に改定された大田区住宅マスタープランには、かろうじて、公的住宅の供給目標を決めていましたが、区営住宅120戸、シルバーピア380戸という極めて少ない目標でした。応募率に示されるように区民の実情に見合った計画がないことが問題です。その結果、改定された2011年、大田区住宅マスタープランでは、充足しているということで5年間供給実績はゼロです。5年前の改定時に建設計画を持たなかったからです。
●そこで質問します。申し込み状況に見合った計画をつくるべきです。公営住宅法第3条には、地方公共団体には常に区域内の住宅事情に留意し、低額所得者の住宅不足を緩和するために必要があると認めたときは、公営住宅の供給を行わなければならないとあります。区はこの立場に立ち、必要な公営住宅の建設をすべきです。お答えください。

【まちづくり推進部長】
私からは、住宅施策に関する4点と都市計画道路に関するご質問にお答えいたします。
まず1点目ですが、区営住宅の建設に関するご質問ですが、平成25年に国が行いました住宅・土地統計調査のデータから、区内には状態のよい活用可能な賃貸用の空き家がおおよそ3万9000戸あり、また、民営借家総数約13万9000戸のうち、比較的低額な家賃6万円以下の住宅が約2万3000戸あると把握しております。区としては、既存住宅の流通と空き家の利活用を促進することを基本に、住宅確保要配慮者への円滑な入居確保に向けた支援の取り組みを充実させていきたいと考えており、新たに区営住宅を建設する予定はございません。

【黒沼議員】
住生活の安定の確保にとって最大の課題は、住居費負担です。2016年の大田区高齢者の住まいの確保に関する基本方針には、高齢者の所得の状況、支出できる月額費用、家賃の負担額、月額利用料金など、詳細に記されています。しかし、大田区住宅マスタープランにはこれを保障する家賃の項目がありません。収入が少ない年金者や低賃金の若者は、払える住居費の低家賃住宅を求めています。私は、国交省が住宅宅地分科会に提出した資料と、総務省の消費実態調査を調べて見ました。30歳未満の勤労者単身者世帯の1か月当たりの平均消費支出に占める住居費の割合は、1969年の5%から2009年には男性20%、女性31.1%と、いずれも大幅に負担が増えています。公営住宅入居者の収入は世帯で月10万4000円以下が約80%などです。これらはマスタープランの3万6000戸が流通過程にあり、充足していると言いますが、入居できる家賃を示さないで流通過程にあると言っても絵に描いた餅です。
●そこでお聞きします。大田区住宅マスタープランには、家賃、所得の状況の記載がありませんが、高齢者住まいの基本方針に記されていると同様、住居費についても位置付けて盛り込むべきです。10年ごとに改定されるプランは今年5年目で折り返し点です。後半に向けてよい機会です。お答えください。

【まちづくり推進部長】
次に、住宅マスタープランについてのご質問ですが、現在の大田区住宅マスタープランは、公営住宅法、住宅セーフティーネット法の趣旨を踏まえながら、「安心して住み続けられるしくみの整備」を目標に掲げ、高齢者やひとり親世帯、子育て世帯等の住宅確保要配慮者への各施策の展開を図る内容となっております。
本住宅マスタープランは、国の住生活基本計画や東京都住宅マスタープラン、区の関連計画などとの整合性を図りながら、不動産関連団などからの聞き取り調査、有識者検討委員会による検討を重ねながら、平成23年3月に策定したものでございます。本年度は策定から5年目を迎えており、マスタープラン策定後につくられた「大田区高齢者の住まいの確保に関する基本方針」など区の関連計画等との整合性を図りながら、中間の見直しについて検討を行ってまいります。

【黒沼議員】
マスタープランには、大田区は住宅戸数の伸びが世帯数の伸びを上回っており、2008年時点で空き家も4万4000戸あり、そのうち8割以上の3万6000戸は流通の過程にあると考えられるとしています。こうしたときに、政府の住宅宅地分科会で民間の空き家・空き室を活用した準公営住宅構想が示されています。国土交通省は、耐震性などの基準を満たす空き家の民間アパートや戸建て住宅を準公営住宅に指定、子育て世帯などに貸すことを認める、家賃も助成検討するとして、2017年の通常国会に関連法案提出を目指すと日経新聞に報じられました。
●そこでお聞きします。3万6000戸の流通過程にある住宅を有効活用するため、民間宅地の住宅の空き家を活用した家賃補助による準公営住宅構想はあるでしょうか、お答えください。

【まちづくり推進部長】
次に、民間住宅の空き家を活用した家賃補助についてのご質問ですが、国土交通省が本年3月に改定した住生活基本計画に基づき、国は現在「社会資本整備審議会住宅宅地分科会の新たな住宅セーフティーネット検討小委員会」において、住宅確保要配慮者の増加に対応するため、空き家の活用を促進するとともに、民間賃貸住宅を活用した新たな仕組みの構築も含めた住宅セーフティーネット機能の強化について方向性を検討しております。現在中間取りまとめの段階ですが、区としてもこの国の動向を注視しているところでございます。なお、民間賃貸住宅への家賃補助を行う考えは現在ございません。

【黒沼議員】
●同じく、家賃助成で伺います。結婚、出産を希望する若年世帯、子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現について、区民住宅で実施されている家賃助成を民間住宅に広げて支援制度を拡充するよう求めます。区の実施している助成制度は、区民住宅の新婚世帯への助成で49世帯のみです。低廉な公営住宅の設置はもちろんですが、民間にも拡大して住宅費助成制度の拡充を求めます。お答えください。

【まちづくり推進部長】
次に、若者への住宅費助成制度に関するご質問ですが、区民住宅の家賃減額制度は、新婚世帯、子育て世帯などに対して最長4年間家賃減額を行うものであり、稼働率が比較的低い区民住宅の空き家対策・入居促進策として、平成24年12月から導入したものでございます。国においては、現在、新たな住宅セーフティーネットの強化を目的に、子育て世帯等の住宅確保要配慮者への支援策が検討されており、区としてもこの国の動向を注視してまいります。
また、区は、子育て世帯等への支援策として、各種手当の給付、医療費の助成、相談窓口の充実、出産育児支援など多様な施策を行っております。なお、先ほども申し上げましたが、民間賃貸住宅への助成制度を設ける考えは現在ございません。

【黒沼議員】
次に、シルバーピアについて伺います。
住宅マスタープランでは、シルバーピアについて、借り上げに応募する民間オーナーが少ないことが挙げられると整備面で語られています。しかし、シルバーピア制度は、貸し主にとって家賃の確実性、見守りの好条件、20年契約で実に計画的に資産運用を考えられる制度です。オーナーがあっても条件が整わず、応募の条件を改善すればできると思います。物件があっても条件が整わず申し込めないという声を耳にします。年に1回だけでは、その機会を逃すと1年以上待たなくてはならないという声です。相当資産に余裕がある人でないと申し込めないのです。提出書類が煩雑でついに断念という声や、書類作成の知識もなく不動産に売買したほうがいいという声も聞かれます。要望があるが残念ながら実らないのです。
●お聞きします。オーナーの要望にいつでも応じられる区の体制と書類準備を簡潔にできる専門家などの援助体制を求めます。お答えください。

【中原福祉部長】
私からは、区営シルバーピア、いわゆる借上型シルバーピアの整備についてお答えいたします。
この事業は、国や東京都の補助制度を活用し整備しています。補助金を申請するためには、設計期間と建設期間をそれぞれ1年程度かけるなど、安全で確実な整備を行えるよう余裕を持ったスケジュールが求められています。また、補助協議の書類として、設備基準との適合性を確認できる図面や建設費を算出する根拠書類など、詳細な資料が必要となります。現状では、区による柔軟な受け付けや提出書類の簡素化は困難でございます。私からは以上です。

【黒沼議員】
次に、マンション関連で伺います。2015年9月に東京都住宅政策審議会が、東京におけるマンション施策の新たな展開についてと題する答申を出しました。東京都では歴史上初めてです。マンションで何が問題になっているかというと、①住居者の高齢化、②マンションの30%以上空き家のスラム化、③マンションそのものの高齢化などの問題が顕在化しています。特に老朽マンションに対しては、建て替えか改修が迫られている状況から調査したものです。
政府・国交省は建て替え促進の立場に立っていますが、多数派は改修です。建て替え困難の理由は費用の問題です。都の答申は大まかに実情を反映されていると言えます。しかし、答申は基本的な考え方として、①自助努力で取り組むことが基本、②市場機能の活用などと大きな問題点を指摘しなければなりません。
●お聞きします。改修によるマンション再生に対するさらなる拡充を求めます。一気に行わずに、安く工事を進めていくなど工夫が必要です。専門家のアドバイザーも必要です。大田区は耐震改修でピロティなど部分的改修にも補助金を出すなど進めていますが、改修のための大幅な補助金の増額と制度の拡張が必要です。お答えください。

【都市開発担当部長】
私からは、老朽マンションの改修に関するご質問にお答えをいたします。
老朽マンションの耐震化を図ることは、まちの安全性を高める上で重要な課題と考えており、昭和56年以前の旧耐震基準の建物に改修費用の一部を助成しております。平成26年度には、管理組合等の要望を受け、規模が大きな分譲マンションの助成上限額を、1000万円から3倍の3000万円に増額をいたしました。一方、分譲マンションには、区分所有者の皆様の人数が多い上に、それぞれの皆様が個々に事情を抱えており、合意形成をいかに図るかが大きな課題となっております。
こうした実態に応えるため、今年度から現地調査を踏まえ、そのマンションの老朽度合いに合わせまして改修内容を提案するなどの相談を行えるよう、分譲マンションアドバイザー派遣制度を充実いたしました。引き続きまして、助成と分譲マンションアドバイザー制度の二つの制度を積極的に啓発し、マンションの耐震化を図り、倒れないまちづくりを進めてまいります。以上でございます。

【黒沼議員】
ここで指摘しなければならないことがあります。大田区は高級マンション建設に多額の税金を投入してきたことです。京急蒲田西口駅前再開発ビルに約320戸、糀谷駅前再開発ビルに約300戸、庶民には手の届かない高額マンション建設に血道を上げてきました。公営住宅法に基づく低廉な住宅の供給には熱心に取り組まなかったのに、巨大デベロッパーにとてつもない利益を与える事業には巨大な税金を注ぎ込んできたと言えます。京急蒲田西口駅前再開発に注ぎ込みながら、地域経済活性化には効果が発揮できたかは疑問です。
それに比べ、公共住宅供給政策は、大田区の地域経済活性化においても大型開発の駅前再開発よりもはるかに効果があります。京急蒲田西口駅前再開発には約245億円、糀谷駅前再開発には約199億円、京急東口駅前開発には建設費だけで17億円、立ち退きを求めた東京ガスの保証金を入れると50億円をはるかに超えるなど、巨額な税金が注ぎ込まれました。建設は大手ゼネコンが引き受け、下請業者の車のナンバーが群馬や大宮ナンバーなどで、品川ナンバーがほとんどなかったことから、どれだけ区民税の税収増につながったでしょうか。
それとは対照的に、区営住宅や特養、区立保育園建設は、ほぼ100%区内業者に発注できます。しかも、住宅は38種類ほどの業者がかかわるとされます。建設業、土木屋さん、塗装屋さん、空調屋さん、畳屋さんからガラス屋さん、造園業に至るまで仕事が生まれ、従業員さんに給料が支払われ、それをもとに近所の商店街に買い物に行きます。税金も区に支払われる確率が大きくなるでしょう。国民税や国保料の収納率の向上には力を入れていますが、本来力を入れるべきは、仕事ができ、収入を増やせて、区民が豊かになって税金をおさめられるという好循環に努力すべきです。

補助39号線(都市計画道路)の廃止と公用地(西糀谷1丁目)の有効利用について

【黒沼議員】
次に、補助39号線の廃止を求めて質問します。
補助39号線の起点は、東蒲田二丁目のキネマ通りの途中の丁字路です。予定は20メートル幅になるので両側が拡幅される予定です。パール幼稚園の敷地を削り取り、東蒲中学校の体育館の西側敷地を削り取り、呑川の対岸にある気象庁宿舎跡地の真ん中を突っ切って、そのまま南側にある安泰寺の墓地を削り取り、西糀谷の住宅地を押し潰すようにして突き進み、環八を横切り、南蒲田や萩中の住宅地をがりがり削り取るように南進し、蒲田女子校の西側の敷地を削り、本羽田一丁目交差点で補助41号線と交差し、そのまま多摩川の堤防にぶつかって終点です。今回、この先に川崎と結ぶ橋を架ける計画のために、土手付近が再検討整備リストに載りました。このような計画は第1国道が50メートル道路に拡張されつつある今、しかも環八と1国の交差する南蒲田交差点が隧道化に完成した上に、かつてのにぎわいを見せた町工場の発展に必要とされた道路拡張も残念ながら今や必要性も緊急性も消え去り、逆にがりがりと削り取らるだけのまちになっては、新たなまちの発展に障がいとさえなっていると考えます。交通だけでなく耐震性も必要性と言いますが、圧倒的に戸別住宅が新築され、根拠がありません。
もともと補助39号線は、昭和21年、今から70年も前に計画されたもので、大田区も空襲での焼け野原状態で都市計画されたものです。必要な区域を明確に示す原図がしかもありません。私の委員会での質問に区の担当者は、東京都があると言っていると答弁しましたが、ぼろぼろの継ぎはぎだらけの青写真集1冊だけで、図面のしわはわかっても、肝心の地形を見分ける法線の見分けがつきません。住民にしてみれば、財産権が奪われるもので、到底法治国家として許されません。法を無視してのごり押しはやめるべきです。
私も、設計技師として民間会社で図面を描いていた経験があります。その当時はまだ青焼きと言って、青写真でした。補助39号線の原図も同等です。青写真の保管は長くは持たないことは知っています。ところが、大田区はそのような時代につくられた計画なのに、都市計画道路の完成率が39%と23区の中で最低であり、道路幹線は多くの区民に影響をもたらすもので整備に取り組んでいきますと、2015年12月に行われた東京都の第四次都市計画道路事業化計画のパブリックコメントで態度表明しています。
小池新都知事は、都知事候補のときの「はけの文化と自然を守る会の公開アンケート」に答え、見直しの必要な路線もあると考えています。大昔に決めた都市計画については大胆に見直しを図っている例もあり、先進事例を参考に東京都の道路行政にどのように反映できるのか検討を進めたいと考えておりますと表明しています。
●ご存じとは思いますが、都市計画法が2003年に改正され、住民のまちづくりの取り組みを都市計画に反映させる制度として、①同意する土地所有者とその土地面積が3分の2以上など3件を満たせば東京都に受理されるようになり、東京都では1件ですが既に受理しています。補助39号線は、まちを破壊するだけで都市計画道路の必要はなしとの立場に立つべきです。お答えください。

【まちづくり推進部長】
最後に、都市計画道路補助第39号線に関する質問にお答えいたします。
都市計画道路は、区民生活や都市活動を支える最も基本的な都市基盤の一つでございます。区内の都市計画道路については、東京都と特別区で事業化計画を過去4回にわたり作成してまいりました。補助39号線につきましては、平成26年度、平成27年度の2か年をかけて策定した第四次事業化計画において、「計画内容再検討路線」となった多摩川河川敷にぶつかる南端の一部を除き、将来都市計画道路ネットワークとしてその必要性を検証・確認しております。
さらに、本略線は「大森中・糀谷・蒲甲地区防災街区整備地区計画」の区域内に位置しており、地区計画に基づく防災道路とあわせて、防災上重要な避難機能や延焼遮断機能を担う道路としても位置付けられております。
したがいまして、補助第39号線の整備は、先ほど言及した部分以外につきましては必須のものであると考えております。私からは以上でございます。

【黒沼議員】
また、この都市計画道路のために、せっかく国が公用地の有効活用として大田区に打診してきた気象庁宿舎跡地3000平米の土地を、保育園も、特養ホームにも活用できるのに、建築制限のため活用は無理と断りの返事を国に大田区はしてしまったようです。住民の皆さんと何度か国交省を訪ねて、私は公共利用を求めてきましたが、国は一般入札にかける前に公共利用にと大田区に打診してきたのに断ってしまったというのです。一方で、有効だとパブリックコメントで答えておきながら、一方で、区民の切実な要求である特養建設や待機児解消の絶好の土地である気象庁宿舎跡地の有効利用を諦めてしまう結果となったのです。
気象庁跡地は、国交省に問い合わせたところ、現在国は公共活用を諦め一般入札の準備をしているとの返事を8月15日にいただきました。都市計画道路を条件としても、3000平米の真ん中を貫く道路の面積はほぼ1000平米です。両側にほぼ1000平米ずつ敷地として残ります。馬込の30床特養がほぼ1000平米、3階建てですから建築可能です。認可保育も可能です。区民のために積極的に土地を確保し、有効利用すべきです。
●そこでお聞きします。気象庁宿舎跡地の有効利用に全力を挙げるべきです。お答えください。

【企画経営部長】
私からは、西糀谷の気象庁宿舎跡地の国有地に関するご質問にお答えいたします。
関東財務局から情報提供のございました当該用地につきましては、用地のほぼ中央に都市計画道路補助第39号線が南北に計画されており、計画道路部分が用地の約3分の1を占めてございます。計画道路部分には建築制限がかかるため、施設を整備するには制約があり、有効活用の点で課題がございます。また、当該用地に対して、区における施設建築需要はございません。こうしたことから、現段階で当該用地を区が取得し活用する考えはございません。私からは以上でございます。

町工場を公共財の役割に位置づけて、区の抜本的支援の強化について

【黒沼議員】
次に、我が党の第2回定例会の代表質問に明確な答弁がありませんでしたので、改めて今回お聞きします。区内中小企業を公共財、地域の共有財産として守る重要さについて質問します。
大企業の商品はNC機械に代表されるように、マニュアルに沿って大量に生産されます。しかし、難しいNC機械でつくれない製品は汎用を得意とする下請に発注されます。その特徴は、短納期をこなし、難加工をこなし、少量生産もこなします。それが大田区の町工場です。しかも、ほかに例のないネットワークを持ってこなしています。つまり、大企業のように技術も独占して社内でこなしてしまうような内省的なやり方と違い、どこにも開放され、どこの注文にも応える社会的財産を形成していると言えます。しかも、町工場の収益はその地域内の産業と雇用に還元され地域社会を潤します。また、地域の町工場は、町内会や消防団、野球チームや祭りにも貢献し、青少年の教育、防災の貢献などしています。町工場のすぐれた技術ともに、多面的な機能は商店街とともに、大型店にもない、大企業にもない、地域社会と区民にとって地域の共有財産です。大田区の区民税収増の点からも有効です。町工場を私的財産としてしか見ていない現在から、社会の共有財産、公共財として位置付けるのが必要ではないでしょうか。
●そこでお聞きします。大田区の産業を公共財として位置付け、その発展のための施策に切りかえることを求めます。お答えください。

【産業経済部長】
私からは、産業経済に関する三つのご質問について順次お答えをさせていただきます。
まず、大田区の産業をいわゆる「公共財」として位置付けることについてのご質問ですが、区のものづくり産業については、基盤技術を有する企業群によって構成されまして、我が国の基幹的な産業である製造業を支えてきたものと認識しております。これを形容するために、「あたかも公共財のような機能を担ってきた」と表現したときもございました。しかし、文献によれば、一般的に「公共財」とは、道路・公園や法律のように、対価を支払わない者も含めた全ての人々に共同で消費または利用される財を指すものとされております。その意味において、大田区産業は「公共財」として位置付けられるものではないというふうに考えております。
いずれにしても、区は、ものづくり基盤技術振興基本法の前文に記されました認識に基づき、今後も、工場の立地環境整備や新製品・新技術開発支援、取引拡大の支援、人材の育成、創業支援などの諸施策を通じまして、大田区産業の発展に取り組んでまいります。

【黒沼議員】
大田区は、待っているだけの工場があると言いますが、待っている町工場にその値打ちがあることは親会社が一番知っています。ですから、何とか頼む、これをやってもらえないかとほかにはできないことを注文してきます。しかし、その頻度が少ないのです。怠けているのではありません。区にはそのすばらしさを知っていただきたいのです。NASAに仕事を納めているすぐれた町工場があるのに、続けるのに見合った仕事の量がないのです。この技術を失っていいのでしょうか。
●そこでお聞きします。PiOで行っている100社規模の取り組みを、1000社規模に拡大した規模でネットワークを活かした技術で開発実用化に向け、東松島で開発したような防災面でのさらなるヒントはないか、福祉面でのオーダーメード型の車椅子や寝たきりの方の寝返りをするのに、極端な摩擦なしにひとしいシーツはできないか、教育面ではどうかなど、区としてリーダーシップをとっていいただくことを提案します。また、そのネットワーク支援のために、試作品から実用化まで進める工場が必要です。お答えください。

【産業経済部長】
次に、ネットワークを活かした技術で、開発・実用化に向け区はリーダーシップをとっていくべきとのご提案ですございますが、大田区のものづくり企業は、「仲間まわし」と呼ばれるネットワークにより、試作開発から製品化まで幅広く対応できることが強みであると認識しております。
例えば、代表的な下町ボブスレーネットワークプロジェクトでは、専門的に特化した技術・技能を持つ約100社の中小企業が連携いたしまして、大手自動車メーカーにも対抗できる製品を提供するほどに成熟いたしております。この成功例は、大田区ならではのものづくりネットワークを活かそうとする参加企業の強い意志と行動力によるところが大きいところであり、区としても可能な限り支援を行ってまいりました。オーダーメード型福祉用具製作事業などの開発・製作に当たっては、関係機関と企業が協働体制を組むなど大田区ならではのネットワークを活かした取り組みを福祉部と連携し展開しております。これらの事業は区が音頭をとり、軌道に乗るまで後押しをしていくことにしています。したがいまして、議員のご提案の内容については、区は既に取り組んでいるものと認識いたしております。

【黒沼議員】
次に、後継者について提案しましたが、これも明確な答弁がありませんでしたので、改めてお聞きします。
大田区は人材育成事業として、中小企業次世代ものづくり人材の育成事業に299万円余、若者と中小企業とのマッチング事業に240万円、経営技術指導講習会12回、ものづくり人材育成プロジェクト、工業団体実施研究会10回などやっていますが、これでは真に後継者が育つのか本気度が問われていると思います。このような規模と内容でどれだけの人材が育つでしょうか。
先日、東六郷の町工場を数件訪問した際、二つの工場で、社長さんがおっしゃっていたのが印象的です。息子がNCしか使えず難加工の注文はいまだに私がやっている。汎用機械を学ばせたい。そうでないと注文が絶えてしまうと語っていました。そこで、仕事を継承したい若者に三次元加工など新たな技術の獲得、汎用機の習得など可能になる1人につき3年間で200万円の援助制度を求めます。そのために、後継者を育てる試作品をつくり、プロトタイプの工場の設立も必要です。ここにはまだ頑張っている難加工をこなす現役の方々の力を借ります。喜んで協力してくれることでしょう。1年前の区の実態調査では、約8割が後継者問題を抱えています。
●先日、地域産業委員会で視察した尼崎市では、実態調査に基づき、従業員の給与状況も調査して、技術の継承、後継者対策に取り組んでいました。よい経験は参考にすべきです。提案します。お答えください。

【産業経済部長】
最後に、後継者問題などについてのご質問でございますが、後継者育成、技術・技能の継承につきましては、区内産業の集積、発展を図る上で重要な課題であると認識いたしております。そのため区では、後継者育成施策として、次世代ものづくり人材育成事業を実施しております。具体的には、経営技術指導講習会や次世代経営者育成セミナーを工業団体とともに開催しております。
さらに、公益財団法人大田区産業振興協会では、高い技術を有する「大田の工匠100人」による技術指導・相談事業を実施しております。また、専門家が事業承継に係る相談をお受けしたり、経営改善セミナーにおいて、事業承継をテーマに取り上げるなど取り組みを進めているところでございます。
区としましては、こうした後継者育成や事業承継に係る多様な事業を実施しており、個人を対象とした資金援助という形で事業を行う考えはございません。私からは以上でございます。

以  上

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