(映像は大田区議会ホームページより:21分)
【あらお議員】
日本共産党大田区議団のあらお大介です。
高齢者の尊厳を守る大田区介護予防・日常生活支援総合事業(新総合事業)について
【あらお議員】
まず大田区介護予防・日常生活支援総合事業(新総合事業)について質問します。
大田区は今年4月1日から介護予防・日常生活支援総合事業、新総合事業をスタートさせました。この事業は介護保険の予防給付の内、訪問介護・通所介護を利用している人のサービスを自治体独自が行う地域支援事業の訪問型・通所型サービスに移行させるものです。
区は、2016年度中に更新認定のタイミングをみて、順次新総合事業サービスに移行させるとし、移行の際に引き続き新総合事業のサービスを受けるために介護認定を受けるか、さわやかサポートでの基本チェックリストを含むケアマネジメントを受けるかは、利用者が選択できるとしています。2018年3月までは経過措置期間として現行サービスと同等の「みなし事業サービス」も利用可能となっており、必要であれば、これまでと同様のサービスを受けることができるとなっていますが、厚生労働省はガイドラインで新たに事業対象となる要支援者等について「自らの能力を最大限活用しつつ、住民主体による支援等の多様なサービスの利用を促す」と、新サービスへの強引な移行を強調しています。
新総合事業の中で今年度から、生活援助に限定した「絆サービス」をモデル試行という形でスタートさせましたが、利用料金30分1単位で600円でその内500円が自己負担分、区からの補助が100円となっています。週2回、月4周で利用すると、自己負担額は4000円となり、現行相当のみなし訪問型サービスⅡの2335円よりも1665円負担が増えることになります。
そもそも、要支援1・2の認定を受けている人の内、要支援2の人は2006年4月の制度改訂前までは要介護1に該当しており、その中で約6割の人達が要支援2に介護度を下げられました。介護保険法第7条2に「要支援状態」についての条文があります。「要支援状態」とは「身体上若しくは精神上の障害あるために入浴、排泄、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について、継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に支援を要し、継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態」と定義されており、適切な援助を行うことによって要介護状態になることを防ぐ必要があるのです。そのために「予防給付」が保険サービスに位置づけられて、ヘルパー等の専門職によるサービスが提供されてきたのです。
それが、専門職でないボランティア等のサービスに置き換わることは、サービスの質の低下と利用者の介護度悪化に繋がりかねず、介護保険制度の精神からも逸脱したものになります。
●利用者の絆サービス等の新総合事業サービスへの強引な移行はやめて、現行相当サービスの継続を求めます。お答えください。
【福祉部長】
介護予防・日常生活支援総合事業への移行についてのご質問ですが、国からは、現行介護予給付相当の訪問型・通所型サービスを提供する事業者を総合事業の事業者として、平成30年3月末まで、みなし指定できる経過措置が示されました。区におきましては、この経過措置を活用し、平成28年4月1日から、総合事業への円置な移行を行っています。この事業は、高齢者の総合相談窓口であるさわやかサポートによる最適なケアマネジメントにより、利用者の状況に応じて、専門的なサービスやその他の多様なサービスを提供します。利用者にとってこれまで以上に、真に必要なサービスを安心して、受けることができ、サービスの質の低下を招くものではございません。介護保険法の趣旨に基づき、高齢者が可能な限り、住み慣れた地域で、自立した日常生活を営むことができるよう、適切に対応してまいります。
【あらお議員】
次に要介護等高齢者紙おむつ等支給事業について質問します。
要支援外しの典型としてあらわれたのが、今年度の「要介護等高齢者紙おむつ等支給事業」の変更です。対象者が「要介護1~5と認定された者」から「要介護3~5と認定された者」へ、「要支援と認定され、かつ、傷病による失禁のため、医師が紙おむつを必要と認めた者」が「要介護2以下と認定され、かつ、傷病による失禁のため、医師が紙おむつを必要と認めた者」に変更されました。このうち、要支援1・2については2018年3月31日までを対象とし、それ以降は対象から外されてしまいます。また、区が支給するおむつを使用できない病院に入院をしている人には、毎月5000円が実費支給されていたものを4500円に減額しました。実際に実費支給を受けている人の家族の方からも「なんで減らされたんだろう?」との寄せられています。
今回の変更で問題になっているのは、要支援1・2が支給対象から完全に外されるということです。区は軽度の尿失禁者は新総合事業における一般介護予防事業につなげるとし、傷病等で支援を要する人に限定して支給すると、説明していますが、一般介護予防事業の機能訓練だけで尿失禁が改善されるのでしょうか?
尿失禁には、咳やくしゃみなどの腹圧の上昇で起こる「腹圧性尿失禁」、強い尿意で我慢しきれずに漏らしてしまう「切迫性尿失禁」、腹圧性と切迫性の「混合型尿失禁」、尿閉などの排出障害による「溢流性尿失禁」、運動機能障害や認知症などで排泄行為が認識できない「機能性尿失禁」の5種類があります。尿失禁を改善するためには現状把握、アセスメントと適切な対処が必要であり、一律に要支援者を支給対象から外し、一般介護予防事業につなげることは乱暴なやり方です。また「適正化」や「公平性」という名のもとでの実費支給額の減額もやめるべきです。
●おむつ等支給事業は区の単独事業であり評価できるものですが、変更の撤回を求めます。お答えください。
【福祉支援担当部長】
紙おむつ等支給事業についてのご質問ですが、本事業は、単に紙おむつ等を支給するだけでなく、紙おむつに頼らない生活の質の向上を目指していただく事業として実施しております。区といたしましては、尿失禁予防の啓発に努めており、利用者の方にも、介護予防事業等に参加をしていただき、失禁の改善を図っていただきたいと考えております。現在、さわやかサポートでの介護予防教室や個別相談、また地域福祉課での理学療法士による尿失禁予防教室などを実施しております。さらに、今年度から開始した「介護予防・日常生活支援総合事業」において、自立度の高い要支援の方をはじめ、軽度の尿失禁者に対して、一般介護予防事業の各種体操につなげております。今後もこうした取り組みを継続してまいります。
【あらお議員】
次に介護職員の処遇改善について質問します。
2014年度の雇用動向調査と介護労働実態調査で介護職員の離職率が16.3%で全産業平均の12.2%より4%も高い水準となっていることから、政府は「介護離職ゼロ」を掲げ、2015年度補正予算で介護職確保に444億円を投入し、2020年代初頭までに約25万人を増員する計画を策定した他、昨年の介護報酬改定で月1万2000円の介護職員処遇改善加算を設けましたが、その数字の根拠が示されていないばかりでなく、介護報酬が2.27%減らされた中で、事業所運営が厳しくなり、職員の賃金アップにつながっていない状況です。また政府が2012年度から実践キャリアアップ戦略の一環として、介護分野へ参入する人材を増やすためのキャリア段位制度をスタートさせ、東京都でも今年度、都内の1690事業所を対象に、キャリアパス導入等に要する費用の一部を補助する「東京都介護職員キャリアパス導入促進事業」を進めています。
要介護者の増加が見込まれる中で、介護職員の確保は急務となっており、対策が急がれる状況ではありますが、処遇改善加算1万2000円では賃金が上がった実感を得られないのではないか、という声や、キャリアパスについては、民間事業所のみで1事業所レベル認定者4人を上限、補助上限額最高200万円、補助期間3年間と、極めて限定的な内容となっており、介護職員を内部評価するアセッサーも同事業所内の職員が担うこととなり、事業所内職員の段位取得者と他の職員との賃金格差増大や、アセッサーとなるには講習受講や外部評価などで多くの時間を費やすことになり、事業所の負担が増大するという声もあります。職員のキャリア形成には一定の効果はあると考えられますが、職員確保の実効性にどれだけ繋がるのかは、不透明な状況です。処遇改善加算や金銭的インセンティブの付与、キャリアアップ支援策などよりも、全ての介護職員の賃金を大幅に上げる施策こそ必要です。
大田区で今年3箇所の特別養護老人ホームが開設されましたが、そのうちの1施設が当初開設予定の5月1日から6月1日にオープンがずれ込む事態が発生しました。その理由として職員確保が間に合わずに開所が遅れたとのことでしたが、入居を心待ちにしていた多くの方々に影響を与える結果となりました。
介護職員が不足している原因には重労働と低賃金が挙げられます。介護福祉士を養成する全国の専門学校数も2006年405校だったのが、2014年には378校に減少しており、定員割れの状況も進んでいます。重労働に見合わない低賃金のために、若い人たちが介護職を敬遠している傾向が顕著になっています。
大田区でも「おおた福祉フェス」の開催や、毎月ハローワークと共同開催している「おおた介護のお仕事定例就職面接会」実施などの支援を行っていますが、より踏み込んだ支援も必要と考えます。
●区として、介護事業所の運営を守る上でも国に対して介護報酬の引き上げを求めるべきです。
【福祉部長】
国に対して介量報酬引き上げを求めるべきとのご質問ですが、国は、処遇改善に向けた対策として、昨年度から介護職員の賃金に関しての処遇改善加算額の上乗せを実施しておりますが、来年度は、「一億総活躍プラン」の中で、介護職員の賃金を平均で約1万円引き上げるとの方針を示しているところです。介護報酬アップを求める等の介護保険制度に関する国への申し入れにつきましては、これまでも特別区区長会などを通じ、実施してきたところです。
【あらお議員】
●また、提案ですが、介護職員確保のため、保育士処遇改善の一環で区が実施している職員の家賃補助と宿舎借り上げ制度を実施することを強く求めます。お答えください。
【福祉部長】
介護職員確保のための施策についてのご質問ですが、介護人材確保に向けて、区はこれまで、議員お話しのように「おおた福祉フェス」の開催支援や介護従事者の資質向上のための研修等を実施してきたところです。今年度は4月から、ハローワーク、事業者団体と区が連携し、「おおた介護のお仕事定例就職面接会」を開始したところです。また、新規雇用職員定着のためのフォロー研修や、有資格で離職している方への再就職に向けたセミナー等を新たに実施する予定でございます。お話の、家賃補助、宿舎借り上げの助成については、今後の国や都の動向を慎重に注視して行く必要があることから、その動向を踏まえ、適切に対応してまいります。
高次脳機能障がいのある人への支援について
【あらお議員】
次に高次脳機能障害の人への支援について質問します。
大田区では2008年に20第99号「第2期大田区障害福祉計画への高次脳機能障害者の支援の策定に関する陳情」、2012年に24第70号「身体障害を伴わない高次脳機能障害者への支援に関する陳情」が採択され、支援の強化を進めてきました。高次脳機能障がい者と家族の会大田支部や高次脳機能障害支援者ネット、医療機関と協力をして、相談窓口の設置や訓練施設の設置はされているものの、高次脳機能障害への理解はあまり進んでいないように感じます。
先日、高次脳機能障害の息子さんを持つご家族の方から相談を受けました。息子さんは現在58歳で要介護度5、精神障害1級、身体障害等級5級。杉並区に在住していた2011年に脳内出血で倒れ、手術を行ったものの、高次脳機能障害と体幹機能障害と診断され、左眼の弱視と左上下肢動作、記憶障害等の後遺症が残りました。4か月間渋谷区初台の病院でリハビリを受け、退院後に杉並区内の高次脳機能障害対応デイサービスに通いました。在宅生活に戻ったものの、薬が合わないことが原因で粗暴な言動などがあらわれたことより妻と離婚し、2012年に大田区内の両親のところで暮らすことになりました。
自宅に戻ってから精神科の病院に入院して薬の処方を見直したところ、現在は精神面で安定を取り戻し、現在は介護保険サービスの通所介護を週6回利用しています。若年であるために、他の70代、80代の利用者が多いという中で違和感を感じていて、また、ご自身は病気や障害のことを十分認識しておらず、社会に復帰をしたいという希望をあるとのことですが、心身状況の悪化が進行しており、ご両親も大変なご苦労をなさっています。
ご両親が高齢であるために、在宅介護への限界も感じています。送迎付きの通所訓練施設の充実や退院後に在宅復帰をするための中間施設の設置など、「多様なニーズ」に対応した施設整備が求められています。そうした中で、この方が利用していた池上の高次脳機能障害に特化した民間会社運営の小規模通所施設が、この4月からの介護保険制度改訂で、地域密着型サービスに移行したことにより、事務処理上の煩雑な手続きや採算性の問題などで事業休止に追い込まれたという事態も発生しています。制度改訂が利用者の不利益になっていることを、区はどう考えているのでしょうか?
制度間の狭間で苦しんでいる方々がいるという現実問題に対して、どう取り組むのか、ケアマネージャーをはじめ、福祉の現場で仕事をしている方々の努力だけでは補いきれません。だからこそ行政の責任が問われるのであり、福祉基盤の充実・整備を急ぐことが必要なのです。
●高次脳機能障害を持った人への理解を広めるための周知活動と実態把握強化するとともに、個々の障害に適応した訓練施設の充実と整備を求めます。お答えください。
【福祉部長】
高次脳機能障害を持った方への施策の充実や施設の整備についてのご質問ですが、高次脳能障害は現れる障がいが様々であるため相談も多岐にわたり、幅広い支援が必要となります。区といたしましては、こうしたニ一ズを踏まえた支援が重要と考えています。高次脳機能障害の実態把握・周知については、区民向け講演会の開催、支援機関連絡会議の開催や支援者向け研修への協力などを実施しています。また、通所サービスについては、新蒲田福祉センター、上池台障害者福祉会館の機能訓練部門での訓練体験の受け入れや障がい者総合サポートセンターの居住支援部門での生活訓練サービスの実施などの取り組みを進めてまいりました。特に、新蒲田福祉センターでは東京工科大学と連携し、高次脳機能障害の支援に特化した生活改善プログラムを実施しているところです。さらに就労を通じての社会復帰を支援するため、就労支援系サービス事業所に対して、円滑な受け入れを支援する取り組みも進めているところです。このような取組を今後も継続していく考えです。
以 上