第3回定例会代表質問(速報)―すがや議員(9月13日)



(映像は大田区議会ホームページより:54分)

【すがや議員】
日本共産党大田区議団のすがや郁恵です。代表質問を行います。

今年前進した「大田区平和都市宣言記念事業」の更なる推進について

【すがや議員】
まず、平和事業についてです。
大田区は、これまで8月15日に行ってきた平和都市宣言記念事業、花火の祭典から、今年度は平和のつどいに変更しました。区民ホールアプリコを活用して、午前中からこどもたちが参加して折り鶴や風鈴作成が体験できるワークショップ、壁には福岡県筑前町の戦争資料のパネル展示、隣のフロアではアニメ「シベリア抑留ものがたり」の上映、午後は大ホールで記念式典が行われました。多摩川河川敷での花火打ち上げなどだけでなく、一日を通して平和の取組が行われたことは、党区議団も区民の皆さんと求めてきましたので評価するものです。特に、平和記念式典での東調布第三小学校の児童たちによる大田区平和都市宣言の合唱は感動的でした。「平和って なあに しあわせなことよ しあわせって なあに 自由で楽しいくらしができること だから 世界中の人と 力をあわせて 大切な 平和を守らなければ いけないの 地球上どこへ行っても 笑顔があるように… この人類共通の願いをこめて 大田区は 平和憲法を擁護し核兵器のない 平和都市であることを宣言する」、まさに先人たちの熱い思いが伝わってきます。合唱曲は大田区の平和の歌として歌いつなぐことを求めます。
●そこで質問します。平和のつどいの広報誌で、区長は、区民の皆様一人ひとりに平和の尊さを感じていただくことが大切であると思っています。平和のつどいを通して、平和への思いが一つになり、笑顔と温かさあふれる平和な大田区が続くよう心から願いますと挨拶しています。来年度は戦後・被爆80年を迎えます。国が対米従属の下での戦争国家づくりを加速させようとするときだからこそ、大田区の平和事業はさらに拡充し、戦争体験者の話を聞くなど平和の尊さを若い世代につないでいくこと。ワークショップの企画、広報の仕方など、区民参画で行うこと。品川区では、広島へ毎年、区立中学校、義務教育学校から8年生を各校1名、長崎には公募で選ばれた6名の青少年を派遣。杉並区、新宿区、目黒区、板橋区、豊島区、台東区などもそれぞれ派遣しています。大田区も考えてください。鈴木区長も、昨年は広島、今年は長崎を訪問しています。本年は大田区平和都市宣言記念事業を平和のつどいとして拡充しましたが、さらに宣言を活かした平和への取組の拡充を求めます。お答えください。

【鈴木区長】
平和都市宣言事業に関するご質問でございますが、まずはご評価をいただきましてありがとうございました。区は、昭和59年8月15日、世界の恒久平和と人類の永遠の繁栄を願い、平和都市宣言を行いました。このことを記念するとともに、平和の重要性や戦争の悲惨さを後世に伝えていくことを目的として、毎年8月15日に平和都市宣言記念事業を実施いたしております。本年度は名称を平和のつどいに改め、第1部は屋内において式典やワークショップを、第2部は多摩川河川敷において平和祈念花火の打ち上げを実施いたしました。第1部では、平和都市宣言文の朗読や合唱といった式典のほか、戦後抑留をテーマとした映画上映、語り部の動画放映などを行いました。また、平和への思いを込めた、親子で参加できる風鈴の絵づけも行うなど、お子さんから大人まで幅広い年代の方々に平和について考えていただける場とすることができました。実施に当たっては、これまで同様、事業を効果的に実施していくために不断の見直しを行っております。区民の皆さんと共に、平和について考え、次の世代へ伝えていくための取組を充実してまいります。

2023年度決算は、物価高騰など区民の困難に対し、自治体の役割を発揮できたかについて

【すがや議員】
次に、2023年度決算についてです。
本決算は、一般会計歳入総額は3162億4739万円、歳出総額は3129億4275万円、歳入歳出差引き額は33億464万円となり、歳入歳出差引き額から繰越金を引いた実質収支は27億1125万円です。不用額は約127億9460万円余です。2023年度予算は、前区長が「地域課題に立ち向かい、ひととまちに寄り添い、豊かさと成長が両立する持続可能な未来への歩みを着実に進める予算」と位置づけ、編成した、最後の予算でした。特定不妊治療費助成、(仮称)大田区子ども家庭支援センター建設工事、不登校特例校分教室における転入学支援スペースなど、評価できるものです。その後、区長選が行われ、鈴木区長の下、6次にわたる補正予算が組まれました。特に学校給食費無償化予算が第1次補正予算で組まれ、党区議団は2014年以来6回にわたる条例を提案するなど、繰り返し求めてきました。区民に大変喜ばれている事業であり、評価します。しかし、区民の状況は、新型コロナウイルスの影響やロシアによるウクライナへの軍事侵略戦争、アベノミクスによる異次元の金融緩和がもたらした異常な円安により、物価高騰が一層深刻になり、電気やガス料金をはじめ、あらゆる生活必需品が急騰し、生活、営業がより深刻になった年でもありました。党区議団は、物価高騰で深刻な区内中小企業支援など不十分であると指摘し、物価高騰による区民影響調査と補正予算を組むことを求めましたが、区は、個々を対象とする直接的な支援は、公費投入における地域経済全体への波及効果の観点から慎重に捉えてございます。物価高騰の影響調査は、国や都の影響データ等を活用し客観的に把握していくべきとし、対応しませんでした。
●そこで質問します。決算年度は、最終補正第6次で公共施設整備資金積立基金に約20億円、防災対策基金に約20億円積み立て、財政基金に約440万円、公共施設整備資金積立基金に約12億円を積み戻しています。基金だけで52億円になるため、予想を超える大幅な物価高騰への対策ができたのではないかと第1回定例議会で質問したところ、区長は、区長として必要な施策の積極的な展開と将来にわたる持続可能な財政運営を両立しつつ、区民の期待に応える区政のかじ取りを行ってまいりますと答弁しましたが、昨年、東京1年間の消費者物価指数は、速報値で天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が前の年と比べて3.0%上昇しました。これは、第2次オイルショックの影響があった1982年以来、41年ぶりの高水準です。このような物価高騰に苦しむ区民の暮らしを守るために、基金約52億円を活用することが十分できたのではないでしょうか。お答えください。

【鈴木区長】
令和5年度最終補正予算で物価高騰対策ができたのではないかとのご質問でございます。当該補正予算は、第5次補正予算編成後に生じた状況の変化に速やかに対応すること、財政の持続可能性を確保することの二つを基本的な考え方に据え、編成いたしました。後者は、予算執行過程において歳出及び歳入の精査により生まれた財源などを活用し、公共施設や都市機能の維持更新、災害への備えなど、将来を見据えた財源確保を行うものでございます。また、同時に編成した令和6年度当初予算において、中小企業融資あっせん制度として原油価格・物価高騰対策資金の創設を行うなど、社会経済状況を踏まえ、家計や事業活動を支える連続性ある施策としております。令和5年度を改めて振り返りますと、区長就任後、速やかに編成した補正予算において、区立小中学校の給食費の無償化をはじめ、福祉サービス事業者等への助成事業など、区独自の物価高騰対策を講じ、区民の暮らしに寄り添う施策を迅速に実施いたしました。その後も区民生活、区内経済の実情を捉え、数次にわたり補正予算を編成し、物価高騰対策の令和5年度事業費は約134億円に上り、その時々に必要な対策を重層的に講じてまいりました。区は引き続き、区民生活、区内経済の状況をつぶさに捉え、政府の政策とも軌を一にしつつ、財源の裏づけの下で、区民生活に寄り添った施策を積極果敢に展開し、区の責務を果たしてまいります。

【すがや議員】
次に、公共施設使用料についてです。
決算年度は、受益者負担適正化の名の下に、新型コロナで1年間延期された公共施設使用料の値上げが行われました。党区議団は、物価高騰で緊急事態の中、受益者負担適正化の考えを改め、施設使用料を値上げ前に戻すことを求めました。区は、公共施設の建設、運営には多くの経費が必要となることから、利用される方とそうでない方との公平性の観点から受益者負担適正化の考えの下、社会経済状況の変化を踏まえ、施設が区民生活を支え、質を高める公共空間となるようサービス向上に努めてまいりますなどと答えています。しかし、利用料金が高くなったことにより利用しづらくなったの声が届いています。
●そこで質問します。8月の総務財政委員会では、施設使用料の基本的考え方に、これまでの経過、区民負担の公平化を実現し、より一層受益者負担の適正化に資するとして施設使用料のさらなる値上げをする内容となっています。そもそも地方自治法第244条は、普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとするとしています。公共施設は、住民自治と住民生活に役立つものとして多くの区民に利用されてこそ、その目的が達成されます。しかし、人件費と建設費、大規模修繕などを使用料に組み込めば、さらに値上げになります。区民の税金で建てた公共施設をなぜ納税者の区民が負担しなければならないのか、さらに、受益者負担の適正化として人件費や建設費、大規模修繕費などを含むのは、租税で賄うべきことを二重に区民に負担させることになり、適正化を理由にした使用料の見直しという値上げはやめるべきです。誰でもが低料金で安心して利用できるようにすることが行政の役割です。利用料引上げは決して利用促進にはならないのではないでしょうか。これ以上の値上げはやめるべきです。お答えください。

【鈴木区長】
施設利用料の見直しに関するご質問ですが、区はこれまで多くの公共施設を整備し、住民福祉の向上を図ってまいりました。公共施設を管理運営し、サービス提供をするには、施設の維持管理費や人件費などの経費が伴いますが、これらは施設サービスを利用される方にご負担いただく施設使用料と税により賄う仕組みとなっております。このため、区民負担の公平性を確保する観点から、利用される方に一定の施設使用料をご負担いただく必要があります。令和6年7月に作成した施設使用料の基本的な考え方は、人口推計や環境負荷低減に向けた社会的要請、改築や運営コストの変動など、公共施設を取り巻く状況の変化を踏まえ、施設総量や利用促進、サービス向上などの観点から外部有識者の意見も交え、改めて整理したものでございます。受益者負担の適正化は、現行のサービス水準を維持・向上させつつ、徹底したコスト削減に努力することを前提に、これまでの原価計算方式に基づく共通の基準、方法をベースに進めていくことが重要です。こうした一連の取組は、健全財政を維持する歳入確保という側面のほか、区民間の公平性の確保と施設サービスの維持・向上を目指し、区の行財政運営の改善を図るものでございます。区は、区民負担の公平性の下、施設サービスを将来にわたり安定的に提供し、区民生活を支え、その質を高める公共空間となるようサービス維持・向上と、行財政運営の改善を両立してまいります。

【すがや議員】
次に、公民連携についてです。
区は、2022年1月、大田区の公民連携基本指針作成、その後、大田区公民連携SDGsプラットフォームの設置、最近では7月に、連携に関するアイデアを広く受け入れるワンストップ窓口として公民連携デスクを設置しています。党区議団は2023年第1回定例会において、公民連携については、市場取引の原則を官から民へ、受益者負担といううたい文句で持ち込み、公的責任を否定し、民間大企業に利益の機会を与えるものと批判し、見直すことを求めました。しかし、区は、連携の中で公共性が担保された形で企業が利益を上げることは、何ら否定されるものではない。企業がビジネスをしながら社会課題の解決を図っていくことも想定いたしまして、2022年1月に大田区公民連携基本指針を改定し、区民、民間企業、行政の真の三方よしが実現する持続可能な区政運営を推進してまいりますと述べています。しかし、そのようになっているでしょうか。
●そこで質問します。今決算では、羽田イノベーションシティとの連携に1400万円、東邦大学との連携に2300万円余、三井不動産インダストリアルパーク羽田において4ユニット中の二つのユニットが空いたままであり、区は収入として8135万円余が入ってこず、1億8000万円余の使用料を三井不動産に支払っています。区はこの間、公民連携を進めてきました。民間企業は利益にならないところには参入しませんから、公民連携によってビジネスチャンスの拡大になっています。しかも、公民連携やデータなどの様々な資源が民間企業の利益につながります。民間企業との連携を推進する公民連携の政策の見直しを求めます。

【鈴木区長】
公民連携に関するご質問ですが、不確実性の高い社会において質の高い区民サービスの提供を続けていくためには、民間企業等が有する専門的な知見、技術、ノウハウなどを積極的に活用していくことが重要です。公民連携は、限られた資源を最適に活かし、より高度な公共サービスの提供を可能にするものです。未来を見据えた施策を講じる上で公民連携は単なる手法にとどまらず、新たな価値創造を促進する、区政の発展を支える重要な推進力となります。今後も公民連携を力強く推し進め、持続可能な区政運営を実現してまいります。

【すがや議員】
次に、防災についてです。
今年1月1日、震度7の能登半島地震が発生しました。8か月過ぎても建物の公費解体は1割しか進まず、暑い夏でもビニールハウスで生活をするなど復興が遅れ、避難生活を強いられている方々が取り残されています。一日も早く生活となりわいが取り戻せるよう、国、自治体が支援することを求めます。
能登半島地震により、防災に対する区民の意識が高まった年度でもあります。特に、テレビ報道により避難所の様子が映し出され、体育館にマットを敷いただけの避難所環境の劣悪な状況でした。一方、台湾の地震ではすぐに避難所にプライバシーを守るテントが張り出されており、日本と台湾の違いに愕然としました。区民の方からも、区の避難所には段ボールベッドはあるのか、大田区の避難所は物品はそろっているのかなど、備蓄品に強い関心が寄せられています。
●そこで質問します。防災対策として、能登半島地震以後、区民の要望に応えて、区は耐震診断費用助成の申請期限を延長したのは評価できますが、学校避難所の段ボールベッドは主に要支援者用であり、仮設トイレなども避難者に見合う数ではありません。備蓄品など不足している状況であるにもかかわらず、年度途中に20億円を基金に積み立てましたが、必要な防災対策に充てるべきでした。品川区ではトイレトレーラーの導入、板橋区では感震ブレーカー全世帯配布など、拡充させています。区は、区民のために拡充すべきだったのではありませんか。お答えください。

【鈴木区長】
防災対策についてのご質問ですが、区は、大規模災害が発生した際の避難所を指定し、必要な備蓄をしております。また、トイレ等は内閣府が定める数量を確保し、備蓄以外の物品は緊急調達のために民間事業者との協定を締結、支援物資とともに着実に輸送するために、災害時の物流体制を整えています。能登半島地震ではトイレの確保が課題になりました。区は、被災地の状況を踏まえ検討し、区内では下水道の耐震化が進んでいるものの、被害想定に基づく対応の強化が必要と判断いたしました。このため、今年度は防災対策基金を取り崩し、在宅避難者への配布も想定した簡易トイレの集中保管に取り組んでおります。防災対策基金は、自然災害のリスクに備え、突発的な財政需要に対応することを目的としており、執行努力等によって生じた財源を積み立てつつ、その時々に必要な施策の財源として有効に活用しております。引き続き、区の状況と新たな知見を踏まえた防災対策を進めてまいります。

【すがや議員】
次に、新年度予算についてです。
国は6月、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態と判断すれば、国が地方自治体に指示ができる指示権を新たに導入する改正地方自治法を成立させました。改正地方自治法は、指定地域共同活動団体制度を盛り込み、地域特定の団体を市区町村が指定して財政支援を行い、公共サービスを担わせるもので、営利企業の参入も認めており、自助、共助、互助を基本とする受皿づくりを進める内容ですから問題です。また、国は、経済財政運営と改革の基本方針、骨太方針の閣議決定をし、財政健全化の名の下、医療、介護などの全面改悪を打ち出す内容です。国、地方の基礎的財政収支、プライマリーバランスの黒字化を目指すとし、高齢者医療費窓口負担引上げ、都道府県内統一化の名による国保料・税の値上げ、介護保険の利用料2割負担の対象拡大、要介護1、2の生活援助の保険給付外し、児童手当拡充の財源として2026年度から子ども・子育て支援金の名で現役世代の社会保険料を引き上げることも明記しています。まさに全世代に対する負担増攻撃です。今こそ、国の悪政の防波堤になる地方自治体の役割が求められています。しかし、区長は無批判に国の骨太方針を受け入れ、今後の経営改革の方針についてを通知しました。
●そこで質問します。初めて区長が示した今後の経営改革の方針についてです。公共施設マネジメントの人口の推計と延べ床面積のグラフでは、人口は推計ピーク時から2060年までは2%しか減っていないのに大幅に減っているかのようなグラフになっています。また、延べ床面積は2015年から2022年まで約3万平米増加し、2060年まで同じ増加率で計算し、削減目標に33万平米の乖離としていますが、現在の公共施設延べ床面積増加率のまま増加するとは考えられません。確かに学校教育関係施設では35人学級実施のために教室は増えますが、2060年まで延べ床面積が増え続けるとは考えられません。延べ床面積を1割減らすという公共施設の延べ床面積削減ありきではありませんか。さらに、区のこの資料を基に事業の必要性、効率性、実績の検証、評価を行い、既存の事業の廃止、統廃合を含め見直し、再構築を一層進めることは問題です。お答えください。

【鈴木区長】
今後の経営改革の方針に関する質問ですが、区が保有する公共施設は、その約半数が築40年を経過しており、今後の公共施設整備は、こうした現状はもとより、人口構成や行政需要の変化、さらには中長期的な財政見通しを的確に捉えながら、計画的に取組を進めていく必要があります。このような中、区は、地域のまちづくりと連動しながら公共施設整備を進めることで、地域課題の解決や利便性の一層の向上を目指すと同時に、施設の複合化や多機能化を通じて、施設総量をおおむね1割程度削減することを目標に掲げております。その一方で延べ床面積については、学校施設におきまして、文部科学省の基準に基づく必要諸室の確保や施設のバリアフリー化により、改築後には約3割以上の面積が増加しており、今後も継続的に推移していくことが見込まれております。このように、国の基準や法令の改正はもとより、多様化、複雑化する行政ニーズに着実に対応するためには、既存事業について、その必要性や効率性にとどまることなく、効果の視点からの検証や評価が重要であり、こうした取組を通じ、限りある経営資源を適切に分配していくことが、持続可能な自治体経営に向けて必要不可欠でございます。今後も引き続き、時代に合わせた施設の適正配置を進めるなど、効果的、効率的な施設マネジメントによる区民サービスの維持・向上を実現してまいります。

【すがや議員】
次に、両副区長名による2025年度予算編成、組織・職員定数の基本方針についての通知についてです。
心安らぎ豊かさと成長を実感できる新しい次代に向け力強く踏み出す予算とし、区の財政事情と今後の見通しでは、重要な施策の選択肢を狭めることなく、限りある経営資源を効果的、効率的に配分するよう英知を結集し、これまで培ってきた健全財政を堅持し、将来世代に負担を先送りしない、今を担う現世代の責任を果たす持続可能な自治体経営の実践に全庁を挙げて取り組むとしながら、財政基金に頼らない財政運営を予算編成の方針に掲げています。
●そこで質問します。まず、財政運営の基本方針では、一般財源の大幅な増収は見込まれない一方、社会保障関係経費や公共施設等の更新など必要な財政需要の増加が見込まれるとして、約142億7500万円の財源が不足するとしています。しかし、歳入において、特定目的基金繰入金を増額し、財政基金繰入金は活用しないなど、未来志向の戦略的な投資として着実に推進するとしています。毎年毎年不足するとし、事務事業の見直しで区民の願いである施策が進まない一方で、区民施策が実現できず歳入歳出残高で余らせ、積み立てるということが続いています。区民のために実現しなければならない施策がたくさんあります。公債費を増額して必要な起債を行い、区民サービスを充実させる予算編成とすることを求めます。

【鈴木区長】
予算編成に関するご質問ですが、まず収支については、令和5年度は形式収支33億円余で、その財源対策として財政基金70億円を取り崩していることなど、近年の決算は収支を余らせているとのご指摘は当たらない実情でございます。次にお話しの特別区債ですが、今後、公共施設等の老朽化に伴う維持更新経費や、防災・減災に向けた都市インフラの強靭化など、投資的経費はより一層高水準で推移することが見込まれております。この財源として、これまで培ってきた積立基金や特別区債の活用が重要性を増しますが、同時に償還経費など後年度財政負担を十分考慮しつつ、蓄積と効果的な活用を図る必要があると考えております。区民生活に必要な施策は、その時々の社会経済状況に応じて絶えず変動するものであり、区はこれまで議会の皆様のご理解、ご協力をいただきながら困難な局面をその都度、迅速かつ的確に打開してまいりました。基本計画を策定するこの時期だからこそ、そのスタートダッシュに向けて、施策の新陳代謝が改めて重要と考えており、それに資する事務事業見直しは、単に事業を縮小、廃止することではなく、限られた経営資源を、区民が真に必要とする施策に振り向け、持続可能な自治体経営を実践することにほかなりません。今後も、戦略的な施策展開と持続可能な財政基盤の堅持を両立できるよう、引き締めるべきことと、今なせばならないことの、めり張りのある予算編成を行ってまいります。

新空港線事業を見直し、環境に配慮した、くらしと福祉・営業を支援する新年度予算について

【すがや議員】
次に、新空港線及びまちづくりについてです。
区長は、自民、公明の国会議員、都議会議員、議長、副議長、自民、公明、つばさの幹事長を伴い、8月2日、国土交通大臣に新空港線整備と蒲田のまちづくりに関する要望書を届けました。要望内容は、1、新空港線の都市鉄道利便増進事業としての令和7年事業化に向けたご支援及び調整。2、高さ制限を受けている蒲田のまちづくりに対する財政面及び制度面のご支援となっています。また、報道によりますと、東急電鉄の蒲田駅と京浜急行電鉄の京急蒲田駅を結び、羽田空港までつなぐ新空港線蒲蒲線の整備について、国土交通省は2025年度概算要求として初めて、整備主体の第三セクターが調査、研究に当たるための3000万円の補助金を計上しました。先ほど、自民党の質問に区長は、大田区にとって大変大きな一歩とお話しされましたが、区民の暮らし、営業が物価高騰などで深刻であり、区民には便利にならない路線の開発には、基本構想のアンケートでも疑問の声が多く出ているにもかかわらず、今年度も積立基金に10億円積み立て、108億円にまでなっています。
●そこで質問します。国土交通省が3000万円の概算要求を行いました。しかし、この間、議会に出された経済波及効果の数字については、所管の交通政策調査特別委員会でも議論になりましたが、その数字の基となった根拠や経済波及効果の想定について明らかになっていません。またこの間、区民から寄せられた様々な意見からも明らかなように、現計画には多くの区民から理解を得られず、改めて見直し、白紙撤回の意見が多く出されています。便利にならない路線に多額の税金を投入するべきではありません。白紙撤回を求めます。お答えください。

【鈴木区長】
新空港線についてのご質問ですが、経済波及効果については、既に令和6年4月の特別委員会で報告いたしましたとおり、新空港線整備に蒲田駅周辺のまちづくりを加えて算出しており、大田区においては初年度で約2900億円、開業後10年で約5700億円という非常に大きな効果が確認されているところです。また、新空港線については、多くの方から早期の整備を望む声をお聞きすると同時に、事業内容等について数多くのお問合せやお手紙を頂戴しております。大田区基本構想の策定に向けて行った区民アンケートでも、幅広い層から早期実現を望む声を多くいただきました。引き続き、区民からの理解を得られるよう、丁寧な広報に努めてまいります。新空港線は、区内東西方向の移動利便性を向上させるのみならず、蒲田など、長年更新されずにある市街地を魅力的なまちへと変えていくための起爆剤となる事業であります。区では、引き続き早期の事業化に向け取組を進めてまいります。

【すがや議員】
次に、熱中症対策についてです。
昨日は矢口西小学校児童が熱中症で搬送されたということです。命に別状はなかったということで、本当によかったです。熱中症対策は、様々な角度から取組が求められています。気象庁は、日本の今年の夏、6月から8月の平均気温が、昨年夏と並んで1898年の統計開始以来、最も高かったと発表しました。気温の上昇は体に大きな負担です。特に、体温調整機能が低下している高齢者、持病のある人、乳幼児は特別の注意と配慮が必要です。東京消防庁速報値によりますと、大田区で7月、熱中症が原因として234人が救急搬送され、うち75歳以上は112人と、搬送者の約半分を占めています。気候変動の影響で災害級の危険な暑さが繰り返される中、区民の命が失われないようにするため、区が危機感を持って対策を強化することが重要です。昨年、国は熱中症対策を強める法を改正し、自治体が公民館や図書館などを指定避暑施設、クーリングシェルターにして開放する施策が盛り込まれました。今年度、大田区は公共施設や民間事業所などへも要請してクールスポットを増やしましたが、東京23区で6月から8月までの3か月間で熱中症の疑いで亡くなった248人のうち、239人が屋内で、213人はエアコンを使っていませんでした。兵庫医科大学、服部医師によると、夏の熱中症の約4割は夜間に発症。熱中症の初期症状は目まい、意識消失の立ちくらみ、手足のしびれなどがあり、それらの症状を自覚できないため、睡眠中の熱中症は一層重症化すると述べています。よって、最長22時までしか開設していないクールスポットだけでは不十分です。また、熱中症対策だけでなく、温暖化を抑制するには地球環境に優しい省エネタイプのエアコンの導入です。東京都では、家庭の省エネ行動を促すため、省エネ性能の高い家電等への買換えに対しポイントを付与する事業を行っていますが、区は、熱中症については適切な予防によって正しい知識の指導、啓発に努めておりますの姿勢で、エアコン購入、設置、修理に関する助成を行おうとしていません。今、極端な高温の発生リスクを高めている気候危機の打開に真剣に取り組むことが重要であり、党区議団は大田区気候変動適応対策エアコン購入費補助金交付事業の条例案を提出しています。
●そこで質問します。地球環境に優しく、区民の命を守るための熱中症対策としてのエアコン購入設置の助成は、足立区は7万円、荒川区では区内購入5万円、区外3万円、生活保護受給者と低所得者に葛飾区は上限10万円、墨田区は生活保護受給者に上限10万円、江戸川区、生活困窮者は最大5万4000円など、23区ではますます広がってきています。2018年4月以降に生活保護となった世帯にはエアコン購入、設置の助成6万7000円が制度化されましたが、それ以前の方には修理や買換えの助成がありません。また、生活保護になれない、ぎりぎりで生活している低所得の方にエアコン購入、設置の助成が必要です。お答えください。

【鈴木区長】
低所得者の方などに対するエアコンの購入、設置の助成に関するご質問ですが、気温が高い日が続く中、熱中症予防の取組は重要です。区では、区民の方を暑さによる健康被害から守るため、民間事業者のご協力の下、高齢者をはじめとした区民の方がお休みいただける場所として、300か所を超える涼み処を設置しているほか、区公式Xでの熱中症警戒アラートの発信などを通じて、熱中症対策やその普及啓発を図っております。エアコンの設置助成については、低所得世帯の方は、区や社会福祉協議会が実施している貸付制度を活用することができます。また、故障などにより省エネ性能の高いエアコンに買い換えた際などは、東京都で実施している事業である東京ゼロエミポイントを活用することもできます。こうした状況を踏まえ、現時点では、区としてエアコンの購入、設置に係る助成制度を導入する考えはありませんが、引き続き、区民の皆様を熱中症から守るための取組を推進してまいります。

すべての子どもが自分らしく成長できる子育て支援について

【すがや議員】
次に、子育て支援についてです。
区は新年度予算の重点課題に、安心してこどもを産み育て、学びの充実による人づくりに資する施策を上げています。今定例会に提出された補正予算第2次、衛生費に5歳児健診として261万円が組まれています。党区議団は、2012年に発達障害の学習会を開催し、区内クリニックの医師から発達障害の早期発見に5歳児健診が有効とのご意見をいただき、議会質問や予算要望の項目に5歳児健診の実現を12年間求めてきましたので、やっと実現できると評価します。千代田区、葛飾区、目黒区、板橋区は、それぞれの方法で5歳児健診を既に行っています。また、既に2011年には東京方式を医師会が進めていましたし、現在、国も推奨しています。
●そこで質問します。5歳児健診の目的は、健やかな身体発育の確認と発達障害の発見の機会です。今回補正予算に組まれたモデル事業は6園の保育施設と希望する未就園児と行うこととなっていますが、全5歳児を対象とした5歳児健診を来年度予算に反映すること、さらに、健診で発達障がいなどの診断が出た園児には、保育体制の拡充や相談体制などの援助など、きめ細かな対応を求めます。お答えください。

【鈴木区長】
次に、5歳児健康診査についてですが、昨年12月に発出された国の方針を受け、区は、実施に向けた検討をいち早く開始しました。区の状況に最も適した実施方法とするため、まずはモデル事業として開始し、段階的に規模を拡大しながらスキーム構築を図ってまいります。保育園での実施に当たっては、区が主体となり、保育園と連携しながら、保健指導や専門相談、必要な支援につなげていくことが大変重要です。このため、保育士がこどもたちの日頃の様子を把握し、保護者とのコミュニケーションが図りやすいといった保育園ならではのメリットを活かした支援の在り方、区との連携方法を、モデル事業を通じて検討してまいります。

【すがや議員】
次に、学童保育についてです。
こどもたちが放課後や長期の休みに生活の場として安全に安心して過ごせる学童保育の拡充は、働く父母の切実な願いです。コロナ禍でも、学童保育は働く父母を支えるため開所し続け、学童保育は社会的に必要不可欠な施設であり、その果たしている社会的役割の重要性が浮き彫りになりました。学童保育のニーズが高いからです。今年6月、こども文教委員会に出された資料では、5月1日現在、学童保育施設数は増えない中、学童保育定員は前年度に比べ235人増やし、6050人になっています。定員を増やしたけれども、保留数は前年より46人増え158人もいます。また、施設数が限られているため、大規模化や施設環境も不十分なところが多く、指導員は専門性が求められているにもかかわらず、処遇は大変低いままで、さらに、2018年9月には厚労省と文科省が進める新・放課後子ども総合プランは、学童保育室専用施設の増設ではなく、学童保育と異なる全児童対象の放課後事業と一体型で推進するということに後退しました。自治体直営から民間委託となり、低賃金のため、指導員が長く働き続けることができません。
●そこで質問します。この間の民営化や法改正で学童保育事業が安全・安心な居場所としての機能が脅かされています。専用の学童保育室が不足していることや、学童保育の申請数が多い学童では、学年が上がると入所資格の点数評価が下がるために、学童保育が必要な児童が入所できないこと、今でも満杯なのに定員を増やせと区から求められ、民間委託事業者が苦慮しています。区は、学校への学童保育移行は保護者からの要望だと答えてきましたが、施設、設備の基準は、児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な水準を確保しなければならないと規定している児童福祉法に基づく方針を実現すべきです。区が責任を持って行うことです。お答えください。

【鈴木区長】
次に、学童保育の基準についてのご質問ですが、区では条例において、児童1人当たりの面積を1.65平方メートルとし、おおむね40人以下の児童に対し、2人以上の放課後児童支援員を置くとすると定めています。これは児童福祉法に基づき国が定める基準と同一となっており、この基準により学童保育の受入れを行い、近年の学童需要の高まりへの対応に取り組んでいます。また、国の方針に基づき、小学校施設を活用して学童保育事業と放課後こども教室事業を一体的に実施し、学校内でこどもたちが安全で安心して過ごせる居場所の整備を推進しています。あわせて、近年改築した小学校においては、改築を機に、施設環境の一層の充実に取り組んできました。このほか、こどもたちが過ごす居場所としての機能の充実や、こどもたちの成長につながる体験活動の充実を図っています。今後とも教育委員会と連携・協働して、保護者の学童保育ニーズに応えるとともに、こどもたちが自分らしく、いきいきと過ごせる居場所づくりに努めてまいります。

【すがや議員】
また、大田区は今年4月から大田区保育士応援手当の対象者を5年未満とし、経験年数が10年以上は5年ごとに一時金10万円が支給されることになり、毎年12万円の応援手当が削減されました。区は、認可保育園の新規開設が終了し、目的を達成したためとしています。国が公定価格の見直しで引き上げたとしていますが、民間の給与よりも6万円も低い状況です。保育士の賃金を引き上げるなど処遇を改善し、希望を持って働き続けられる環境をつくることは、区が言う保育の質を高めるために必要です。コロナ禍の中でも懸命にこどもたちの命、安全を守るために、様々な工夫により育ちを支えてきた保育士。この保育士不足は保育園の存続に大きく影響しますし、こどもの成長に影響することから、私立保育園園長会が急遽集めた反対署名は、保育士758筆、保護者1331筆に上りました。新年度の予算に、保育士応援手当を元に戻すことを求めます。

大田区で安全に安心して住み続けられる障害者支援について

【すがや議員】
次に、障害者支援についてです。
先日、党区議団は、都有地を活用した障害者グループホーム、パステルリビング鵜の木を視察しました。肢体不自由を合併する知的障害、医療的ケアが必要な重症心身障がいの方などを受け入れ、本人や家族の希望する生活環境など、充実していることを感じました。皆さんの願いは、親亡き後も住み慣れた地域で安心して住み続けられることですが、区内には、重症者を受け入れる障害者グループホームが不足しています。
●そこで質問します。2023年度決算では、障害者グループホームの整備促進事業に当初予算が2100万円余であるのに、年度途中で1700万円余減額し、執行額76万円余で、当初予算に対する執行率は僅か3.51%でした。区内は土地が高くて、民間業者はグループホームをつくりたくてもつくれないと言われています。党区議団の調査だけでも、本羽田にある都営住宅跡地、厚生労働省所管の元大田年金事務所、日本郵便株式会社保有の萩中東郵政宿舎など、使われていない公有地や元公有地が区内にあります。区が取得し、障害者グループホームの拡充を進めることを求めます。お答えください。

【鈴木区長】
公有地を区が取得し、障がい者グループホームの拡充を進めることについてのご質問ですが、区は、おおた障がい施策推進プランの中で、障がい者グループホームの整備・運営支援に取り組んでいくことを明記しています。区有地を活用したグループホーム整備については、既に取り組んでいるところです。他の公的機関が所有する公有地を、グループホームの整備のために取得できる機会は少ないのが実情ですが、地域福祉のインフラ整備などを目的に、定期借地権などで活用できる制度もあり、区に制度活用の打診があった場合は積極的に検討し、これまでも特別養護老人ホームや障がい者グループホームを整備した実績が複数あります。具体的な事例を挙げますと、国有地を活用した特別養護老人ホームや、都有地を活用した医療的ケアを必要とする方も利用できる障がい者グループホームの整備を行っています。グループホームの整備には用地の確保以外の課題もありますが、引き続き、障がいのある方の住まいの確保、充実を進めてまいります。

【すがや議員】
次に、障害者の避難行動計画についてです。
今年の1月には能登半島地震、また、甚大な豪雨災害など毎年発生しています。東日本大震災で亡くなった方の約6割以上が60歳以上、障害者の死亡率は住民全体の2倍以上と報告されています。
●そこで質問します。区は、令和4年から3年間で、高齢者や障害者などの個別避難計画を1万7000人分作成する目標を持ちましたが、なかなか進んでいません。障害を持つ要支援者は一人ひとり、様々な特質があります。先日、様々な障害者団体の方々からご意見を伺いました。避難勧告が出ても、人が多くいる避難所には行けない。家族が個別避難計画を作成しようにも、避難に必要な支援を近所の方にお願いすることはできないと深く悩みを抱えていました。自ら避難できない方に、区の責任でそれぞれの特性に合わせた支援をすることを求めます。お答えください。

【鈴木区長】
障がい者の災害時の支援に関するご質問ですが、区では、本人の同意に基づいて避難行動要支援者名簿を作成し、支援関係者に配付して、災害時の避難が円滑に行われるよう支援の体制整備に取り組んでおります。また、令和4年度から避難の実効性を高めることを目的として、個別避難計画書の作成を推進しております。これまでも浸水エリアや家屋倒壊等、氾濫想定区域等にお住まいで、水平避難が必要な方のうち、特に支援が必要な障がいのある方を対象として、区職員や福祉専門職が個別避難計画書の作成支援を行っております。また、風水害が発生したときに、いつ、誰と、何をするのかを整理しておくマイ・タイムラインの作成の普及にも取り組んでおります。引き続き、区は支援関係者と連携しながら、障がいのある方それぞれの特性に応じた災害時の支援体制の構築を進めてまいります。

以  上

カテゴリー: 議会の動き・政策・発言集 パーマリンク

コメントは停止中です。