第2回定例会代表質問(速報)―杉山議員(6月19日)



(映像は大田区議会ホームページより:40分)

【杉山議員】
日本共産党大田区議団を代表して質問します。

東京都知事と大田区政のかかわりについて

【杉山議員】
まず初めに、東京都知事と大田区政の関わりについて質問します。
東京新聞の6月4日電子版によると、東京都知事選挙に向け、5月28日に新宿区の吉住区長と調布市の長友市長、瑞穂町の杉浦町長が小池知事に要請文を手渡しました。区市町村長62人のうち52人の連名で、8割が小池知事に3選出馬を要請しています。大坪日野市長は、小池知事側からの応援依頼だったはずが、なぜか出馬要請になってしまった、心外だと疑問の声が出ています。自身の選挙で都民ファーストの会を含む与野党の相乗り推薦を受けていたことから、選挙は貸し借りなので、どのみち小池知事を応援せざるを得ない立場だと述べています。
このような中、新宿区、足立区、大田区、文京区、西東京市の5区市の住民が6月6日、都庁で記者会見し、不透明なプロセスで要請が行われているとして、経緯の説明や要請の撤回を求めています。新宿区から参加した住民は、仮に小池知事から働きかけがあったのであれば、公職選挙法に抵触する可能性もあり、刑事告発も視野に入れていると話しています。
大田区長は小池都知事出馬要請に加わっていますが、都の予算をいかに大田区に注ぎ込んでもらうのか、新空港線沿線まちづくりでの財源的な支援などをおもんぱかってのことなのでしょうか。
小池都政の8年間は、地方自治の役割である福祉の増進とは裏腹に、コロナ対策で大きな役割を担った都立・公社病院の独立行政法人化を強行し、1年半で19病棟629床を休止に追い込み、保健所は一つも増やさず不足のまま、都営住宅も25年間新規増設ゼロ、高過ぎる国保料を引き下げる財政支援もしない上、むしろ引上げを推進してきました。都民の命と暮らしよりも、企業が一番活動しやすい東京を掲げ、神宮外苑再開発や日比谷公園など、緑を切り、地球環境にもダメージを与える開発、築地は残すと約束しながら、ドーム型の球場、イベント会場として再開発計画を打ち出し、都庁舎へのプロジェクションマッピングに2年間で48億円、財界の目先の利益を最優先にする石原都政以来の自民党政治を加速させています。しかし、今、都民が求めているのは、一部の大企業優先の都政から、都民の暮らしを応援する都政への転換です。
●そこで伺います。小池都政は豊かな財政力があるにもかかわらず、経済ファースト、大規模開発の政策を優先し、都民の切実な声に応えてきませんでした。小池都知事に出馬要請をした鈴木区長は、小池都政を追認することになり、区民の願いに反することになりませんか、お答えください。

【鈴木区長】
これまでの都政を肯定的に捉え、私個人が自発的に応援の意思を表したものでございます。今後も引き続き東京都と連携し、それぞれの個性や強みを発揮した様々な政策に取り組むことで、地域を活性化させ、大田区の持続的発展へとつなげてまいります。

区民からも政治不信が沸き起こっているパーティー券などの裏金問題の区長の認識について

【杉山議員】
次に、区民からも政治不信が沸き起こっているパーティー券を含む企業・団体献金、裏金問題などの区長の認識について質問します。
政治資金規正法改定案を、自民党、公明党両党と日本維新の会が合意し、衆院を通過させ、本日、参議院本会議で自民党、公明党の賛成で可決されました。政治資金規正法改定案には、政治資金パーティー収入を含む企業・団体献金を温存するだけでなく、政党が議員個人に渡すつかみ金の政策活動費を合法化する大改悪が盛り込まれています。政党や政治家の政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治資金の収支を公開するという政治資金規正法の理念に逆らうもので大問題です。
野党各党が共通して求めている、1、企業・団体献金の禁止、2、政策活動費の廃止、3、連座制の適用には一切答えておらず、衆議院では、日本共産党と立憲民主党などは反対しました。共産党は政治改革として参議院に企業・団体献金全面禁止法案を提出しています。
6月3日発表のJNNの世論調査によると、改定案を評価しないと答えた人が70%に達しました。また、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」のコメンテーター、玉川徹氏は6月3日の同番組で、企業から金をもらうと貸し借りが発生し、企業のための政治になってしまうというゆがみが生じると指摘、企業・団体献金を止めない限り、今までどおりのシステム、サイクルがずっと続くことになると警鐘を鳴らしました。玉川氏は5月23日の同番組でも、企業、団体の献金禁止は一番の肝です、1年余以内に行われる総選挙で我々有権者が選ぶとコメントしています。
町田市議会では、自民党派閥による政治資金パーティーをめぐる裏金問題の真相解明を求める意見書を全会一致で可決、羽村市議会も全会一致で意見書を可決、三鷹市、狛江市、小金井市、日野市議会では、賛成多数で可決されています。地方から真相究明と抜本的改革を迫る動きが出てきています。
●そこで伺います。パーティー券の購入を含めて、企業・団体献金が政治をゆがめ、国民、区民からも政治不信が沸き起こっています。この間、立川市長は、裏金はあってはならないものであり、国民に説明責任を果たすべきものであると考えると、また、世田谷区長は、企業・団体献金の禁止も含めて、政治資金規正法の抜本的な見直し及び腐敗防止法などの制定が必要と、それぞれ議会で答弁しています。政治全体にかけられた大きな問題であり、立川市長も世田谷区長も、国会の審議にかかわらず、政治家としての立場を明らかにしています。鈴木区長も政治と金の問題について立場を明らかにすべきです。お答えください。

【鈴木区長】
政治資金規正法の改正をめぐっては、改正法案が、本日、6月19日、参議院本会議で可決、成立したことは承知いたしております。国の動きにかかわらず、私としましても、引き続き、区民の信頼を得るため、政治資金の透明性の確保をしっかりと図ってまいります。

円安・物価高騰から区民の暮らし・営業を守る区政について

【杉山議員】
次に、円安、物価高騰から区民の暮らし、営業を守る区政について質問します。
内閣府が3月に発表した国民生活に関する世論調査を見ると、現在の生活に不満と答えた人が初めて5割を超え、1年前に比べて暮らしが悪くなったという人は過去最多になっています。6月から実施の定額減税は、1人4万円を減税するというものですが、物価高騰の影響で生活に欠かせないあらゆるものの値段が上がり続け、6月から電気やガス代の助成もなくなり、これでは全く足りないと、まちでは生活の厳しさを訴える声が上がっています。また、共同通信が6月3日から5日に実施した全国世論調査では、62.5%が定額減税を評価しないとの回答がありました。専門家も物価高の逆風を打ち消すほどの影響力はないと言います。不公平さも指摘され、物価高騰の対策を言うなら、消費税減税こそ必要ではないかと批判されています。しかも、減税を実感させるために、政府が無理やり給与明細に明記するよう義務づけたことで、事務作業はさらに煩雑化し、制度の複雑さに加え、企業や自治体に大きな負担を強いることになっています。支持率改善のためにもくろんでの減税という、あまりに国民をばかにするやり方に、この政権の救いようのなさが表れています。
診療報酬の改定で患者負担も増えます。薬剤では、特許が切れている薬、先発品で、ジェネリック薬品、後発薬があるものについて、窓口負担を10月から引き上げます。先発薬と後発薬との差額の4分の1を保険外で患者に負担させます。患者によっては自己負担が3倍にも膨れます。また、入院時の食事代の負担は月約3000円増えます。保険給付は据え置いて、患者の自己負担だけを増やすものです。受診料は値上げされ、低所得者は医療受診を控える事態も起きます。さらに、介護保険料は3年ごとの見直しのたびに値上がりし、保険料の基準月額は、介護保険制度が始まった2000年度3070円から、2024年度、第9期事業では6600円と2倍以上となり、物価高騰と保険料の引上げが生活を圧迫しています。社会保障負担増をやめ、安心の制度となれば、将来不安からの貯蓄も消費に回る、社会保障の充実こそが経済の好循環をつくり出します。
●そこで伺います。国保、後期高齢者医療、介護保険料の減免制度は、災害や急激な収入減などに適用していますが、2020年度国保は、区内307件、後期高齢者医療は東京中で1320件、介護保険では区内35件となっており、実際にはほとんど活用できていない実態です。さらに、急激な物価高騰で支出が増えて生活を圧迫している方に対しての減免制度がないため、区独自の保険料の減免を求めます。お答えください。

【鈴木区長】
各保険料については、災害等や収入の著しい減少などにより保険料を納付することが困難な場合に保険料を減免する制度がございます。また、所得が一定基準以下の方への対応として、国民健康保険、後期高齢者医療制度では、所得に応じた保険料の均等割額の軽減が、介護保険では、非課税世帯の方への保険料額の軽減など、被保険者の様々な経済状況に対応するため、減免や軽減制度が設けられております。減免の要件などについては、各制度によって異なる部分もあることから、対象となる方々からのお問合せやご相談などに対して、それぞれの所管窓口で丁寧に対応させていただいております。ご質問のように、区独自で減免対象を拡大することは、その財源を一般会計等からの繰入金に求めることになり、被保険者以外の方が納めている税を充当することにつながり、他の医療保険に加入している方との公平性の観点からも、実施には極めて慎重であるべきと考えております。今後も、個々のご事情などを詳しく伺うとともに、ご相談の内容に応じたご案内をするなど、区民に寄り添った丁寧な対応を続けてまいります。

【杉山議員】
東京商工リサーチは6月10日、5月の全国倒産件数は前年同月比43%増の1009件となったと発表しました。約11年ぶりの1000件台です。原材料費の値上げなどに伴う収益の悪化などが主因と見ています。倒産が目立つのは、収益力や価格転嫁力が乏しい小規模企業で、全体の9割を従業員10人未満の企業が占めています。大田区中小企業の景況でも、2023年10月から12月期のDIは、製造業でマイナス36、小売業でマイナス16、建設業でマイナス18、運輸業でマイナス22となっており、製造、建設、運輸業の業況は悪化傾向が強まりました。また、来期、2024年1月から3月期の製造業マイナス43、建設業マイナス22は悪化傾向が強まると予測しています。大田区内の中小零細の事業者に対し、倒産、廃業を防ぐ対応が急務です。
岩手県では、昨今の物価高騰により、物価の上昇に実際の賃金の上昇が追いついていないことを踏まえ、県内の中小企業等の賃上げの加速化を図り、中小企業に必要な人材を確保していくため、物価高騰対策賃上げ支援事業を立ち上げ、賃上げ支援金として4万人を上限として、従業員1人当たり5万円、最大20人分、1事業所当たり最大100万円を実施しており、申請受付は既に1万5000人を超えています。杉並区では、エネルギー価格の高騰により負担が増加している区内中小事業者に対し、経営安定化と負担軽減を図るため、光熱費、電気・ガス料金の一部を最大15万円助成する杉並区中小企業光熱費高騰緊急対策助成金制度を昨年10月から開始し、当初は昨年12月末までの申請締切日を2月末まで延長し、支援をしました。また、江東区では、エネルギー価格高騰の影響を受け、負担が増大した区内中小企業者に対し、水道光熱費、燃料費の一部を最大20万円まで補助するエネルギー価格高騰対策補助金を6月10日から始めています。中小企業のまち大田区でも、このような支援が必要です。
●そこで伺います。円高などによる原材料、原油価格、電気・ガス料金等の物価高騰により負担を強いられている区内の中小零細事業者に杉並区や江東区のような事業者向け支援策などを実施するよう求めます。お答えください。

【鈴木区長】
区は、これまで国や東京都などの動向を注視しながら、基礎自治体としての役割を十分に認識し、その都度、有効な対策を講じてまいりました。今年度においては、これまでの融資あっせん制度に加え、新たな支援策として、原油価格・物価高騰対策資金を時限的に設置いたしました。これまでも申し上げているとおり、融資あっせん制度により融資を受けた事業者の皆様が金融機関に支払う利子の相当分を区が代わりに負担する利子補給は、まさに直接的な支援制度であると考えております。本支援策は、利益の減少に着目し、それを要件とした融資制度であり、この制度により、物価高騰等の影響を大きく受け、利益を上げられずに苦慮されている区内事業者の資金繰りを支援し、経営基盤の安定及び維持強化を図ることを目的としております。内容につきましては、他の自治体の制度と比較しても、融資期間や利子補給率など、手厚い支援となっており、好評を得ております。中小零細事業者は、特に社会状況の変化による影響を受けやすく、事業者を取り巻く環境は依然として厳しいものであります。区といたしましては、引き続き、社会情勢の推移をしっかりと注視し、限られた財源を有効に活用し、効果的な支援を適時適切に行うことで、産業のまち大田区のさらなる発展を目指してまいります。

【杉山議員】
東京消防庁によりますと、6月15日、1日だけで10歳から87歳までの男女合わせて18人が熱中症の疑いで緊急搬送されたと発表しました。先日、仲六郷にお住まいの生活保護を受給されている高齢男性は、体がふらふらしてしんどいのに、すぐに診療所に行かず、数日後の持病の定期受診時に診てもらい、熱中症と診断されました。電気代の高騰もあり、まだエアコンは使っていなかったそうです。
このような事例が増えることが危惧され、低所得者世帯への支援は必要です。墨田区では、物価高騰対策として、エアコンが1台もない、または、故障等によりエアコンが1台も動かない生活保護受給世帯等にエアコン購入費の一部を助成しています。エアコン購入費税込み6万2000円、設置工事費税込み3万8000円が上限額で、助成金額最大10万円を実施しています。また、港区、品川区、杉並区、豊島区、練馬区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区、国立市、小平市、八王子市など、10区3市でエアコン設置費用助成が始まっています。
●そこで伺います。新たに生活保護を受給された世帯には国のエアコン購入助成などがありますが、全ての低所得者世帯を対象に、命を守る熱中症の対策としても、墨田区と同様なエアコンの購入・設置費用の一部助成を行うよう求めます。お答えください。

【鈴木区長】
近年、全国的に猛暑が続いており、熱中症予防を適切に講じることは重要です。区は、これまで高齢者の見守り対策の一環として、高齢者をはじめとした区民の方がお休みいただける涼み処を開設し、熱中症対策に取り組んできたほか、区ホームページのトップに「熱中症に注意!」の画面を設け、予防と対策の情報発信の強化に努めております。また、民生委員の皆様や地域包括支援センターの職員が独り暮らし高齢者として登録された方のご自宅を訪問し、エアコンの活用や水分補給の重要性などの啓発活動を行うなどの取組も進めております。エアコンの購入、設置につきましては、故障などにより買換えが必要な場合、環境に配慮したエアコンを購入した際は、東京都が実施している東京ゼロエミポイントを活用することも可能です。また、低所得世帯の方は、社会福祉協議会が実施している生活福祉資金貸付制度を活用することができます。こうした状況を踏まえ、現時点においては、区として、エアコンの購入、設置に係る助成制度を導入する考えはありません。引き続き、様々な機会や手法を活用し、民間企業とも連携しながら、区民の皆様を熱中症から守る取組を全庁一丸となって推進してまいります。

新空港線(蒲蒲線)などの大規模開発推進の区政を改めることについて

【杉山議員】
次に、新空港線蒲蒲線などの大規模開発推進の区政を改めることについて質問します。
大田区鉄道沿線まちづくり構想は、新空港線整備を契機とした駅周辺のまちづくりに向けた、にぎわいのある持続可能なまちづくりなどとうたっています。しかし、区民は800メートルに900億円もの多額な税金が使われる大型公共事業が、物価高騰に追いつかない賃金、年金で暮らしも営業も厳しいこのとき、本来、必要な福祉・公共事業に大切な税金が使われないのではないかということを区民は問うており、理解は得られません。
関西大学、宮本勝浩名誉教授に依頼し、新空港線蒲蒲線の第一期整備と蒲田駅周辺におけるまちづくりによる大田区内への経済波及効果を、開業初年度約2900億円、開業10年後約5700億円と算出し、大きな経済波及効果が見込まれることが分かったと区のホームページに掲載してあります。そもそも建設投資額に人々や企業の消費額を加えて算出するため、直接効果が大きくなれば、波及効果の数字も大きくなります。さらに問題なのは、蒲田駅周辺の都市基盤施設等の整備の約1200億円など、算出根拠が曖昧です。
異常な物価高騰が続き、資材や人件費なども上がっている中で、総事業費がさらに大きく膨れ上がることが容易に予想され、大きな財政負担を伴い、将来にわたり赤字をつくり続けます。また、羽田エアポートライン株式会社の事業の概況と今後の見通しでは、2023年度の事業の経過及びその成果は、外部への情報発信と早期の事業化に向けた事業計画の深度化を推進したとしていますが、今年度の事業目標も同様となっており、計画は一向に進んでいません。
●そこで伺います。新空港線事業について経済波及効果を公表しましたが、それで事業が進んだことにはなりません。区のホームページの新空港線メインページにある「主なできごと」では、2023年8月31日に国土交通大臣に新空港線整備と蒲田のまちづくりに関する要望書を提出した以降、動きがありません。異常な物価高騰が続き、資材費や人件費なども上がっている中で、総事業費がさらに膨れ上がることが容易に予想されます。大きな財政負担を伴う新空港線事業の白紙撤回を求めます。お答えください。

【鈴木区長】
第一期整備の事業費について、令和4年6月の都区合意の中で示された「大田区は、整備主体となる第三セクターとともに、本事業の事業計画の検討に当たり、事業費の圧縮に努める」こと、また、「本事業の都市計画決定及び都市計画事業認可の後、大田区が本事業を特別区都市計画交付金制度の対象事業とすることができるよう、東京都と大田区は調整を行う」ことに基づき、区は現在、整備主体となる羽田エアポートライン株式会社と連携し、事業費の精査、圧縮に向けた検討を行っているところでございます。加えて、特別区都市計画交付金制度を活用するなど、区の財政負担を最小限に抑えられるよう、東京都と引き続き協議調整を続けてまいります。また、先日公表いたしました新空港線第一期整備と蒲田駅周辺のまちづくりの経済波及効果は、大田区において、初年度で約2900億円、開業後10年で約5700億円となり、大きな効果があることが改めて確認されました。このように、新空港線事業は、羽田空港へのアクセス性を向上させ、区内東西交通の分断を解消するだけではなく、長年課題となっている蒲田をはじめとする沿線のまちの機能更新のきっかけとなるなど、区の活性化にも大きく寄与する重要な事業であります。そのため、大田区を持続的に発展させる新空港線事業については、羽田エアポートライン株式会社と連携をしながら、早期実現に向けて取組を進めてまいります。

【杉山議員】
次に、蒲田駅東口駅前15番・16番街区の再開発についてです。
蒲田駅東口駅前地区市街地再開発準備組合ニュースによりますと、2023年12月25日に基本計画準備組合案を理事長から当時の大田区鉄道・都市づくり部の部長に提出したとあります。基本計画原案策定に向けたスケジュールでは、大田区各課や東京都各課と協議、相談を継続して計画内容を具体化し、2024年6月まで基本計画案を策定し、東京都事前協議の開始を目指すとなっています。また、準備組合との意見交換で当時の部長は、蒲田が空港とつながることで、まちのポテンシャルも高まる、駅前再開発事業には蒲田のリーディングプロジェクトとして期待している、まちづくりが順調に進むよう、大田区として支援をしていきたいと述べています。
限られた街区、敷地において個別建て替えが進行し、まちのポテンシャルを引き出す面的なまちづくりが進んでいないから、大規模再開発を進めるものです。地元説明は、蒲田駅東口商店街エリアまちづくりガイドラインに則し、説明先はまちづくり協議会内の再開発検討委員会、町内会長や商店会長、おいしい道関係者等が所属に6月の基本計画案作成までに2度ほど説明予定とあります。これまで所管委員会には、この再開発計画の進捗状況や基本計画原案の説明がなされていませんでした。区民や議会にも報告がなく、これは大問題です。
この地域で営業されている方からは、テナントを借りて営業しており、再開発で追い出しを食らう、再開発が始まれば立ち退き、3年後に完成したら戻ってこいと言われているが、その3年間をどこで、どのように営業すればいいのか、現在でも店を開いて営業して何とか食べていけるぐらいしか稼げない、移転して店をどう開けばよいのか分からない、今のままの暮らしと営業を守りたいと声を上げている方もおられます。
国の補助金を活用する駅前再開発は、国土交通省の鉄道沿線まちづくりガイドラインに沿ったものとなり、大田区らしさ、蒲田らしさは望めず、日本中どこにもあるような駅前広場と高層建物をペデストリアンデッキでつなぐまちです。再開発ビルには大手スーパーやチェーン店等が入り、高層建物の住居部分は高額で、権利床で入居しても、高額な管理費に耐えられず、長年住み慣れたまちを多くの方が出ざるを得なくなります。見た目はきれいなまちとなったとしても、京急蒲田駅、京急糀谷駅前再開発の例で明らかなように、今まで住んでいた住民や商売をされていた商店、飲食店等が立ち退き、約6割が戻ってこられなかった駅前再開発となります。
●そこでお聞きします。大田区鉄道沿線まちづくり構想を抜本的に見直し、新空港線蒲蒲線などの鉄道事業とまちづくりは切り離すべきです。蒲田五丁目15・16番街区の再開発は、そこで暮らす住民や生業業者を追い出すことにつながりかねません。蒲田駅東口駅前地区市街地再開発は見直すべきです。お答えください。

【鈴木区長】
鉄道とまちづくりは車の両輪であり、鉄道の整備効果を最大限に引き出すためにも、長期的な視点に立ち、相乗効果を生み出すことができるよう、これまで以上に魅力あふれるまちづくりの取組をしっかりと進めていくことが重要であります。大田区鉄道沿線まちづくり構想は、鉄道整備とともに良好なまちづくりが行われるよう、沿線のまちの将来像である「東京と世界をつなげるまち・おおた-交流と創造があふれる沿線まちづくり-」の実現に向けて必要な考えを示したものであるため、切り離す考えはございません。また、蒲田五丁目15・16番街区については、現在、蒲田駅東口駅前地区市街地再開発準備組合が設立されており、市街地再開発事業の都市計画決定に向けた活動が行われております。準備組合においては、地権者や関係者など地域の方々と合意形成を進めるとともに、再開発計画の協議調整を適切に行いながら、事業化に向けた取組を進めているところでございます。一方、区の中心拠点である蒲田のまちは、戦災復興の土地区画整理事業から既に半世紀以上が経過しているものの、航空法の高さ制限の影響もあり、長年の間、都市の機能更新が進まないという課題があります。区としましては、令和4年4月に策定した蒲田駅周辺地区グランドデザインに示されているまちの将来像「にぎわいあふれる多文化都市、誰もが安心して気持ちよく過ごせる人にやさしい蒲田」の実現に向けて、建築物の建て替え、共同化に関する支援及び助言を行っており、その方針の見直しは考えておりません。

羽田空港で相次ぐ事故・インシデントから区民の命と財産を守る対策の強化について

【杉山議員】
最後に、羽田空港で相次ぐ事故、インシデントから区民の生命と財産を守る対策の強化について質問します。
空港で直接運航に関わる職場の労働者約1300人から寄せられた24春闘アンケートでは、人員については、87.2%が「不足している」と感じていると答えており、「足りている」は12.8%でした。コロナ禍での減便から運航再開、増便の中で、人員不足はより深刻になっており、人員増は待ったなしと分析しています。また、安全面の回答では、「安全は向上した」は昨年の18.8%から10.6%に減り、「安全は低下した」は昨年の28.2%から33.9%に増加し、「どちらとも言えない」は52.9%から55.5%に増えています。安全が低下傾向であることを示しています。また、「ヒヤリハット経験」は26.2%と4人に1人がヒヤリ・ハットを経験していると答えています。ハインリッヒの法則では、一つの重大事故の背景には、29件の軽微な事故、300件のヒヤリ・ハットが存在するとして、重大事故の裏に潜むヒヤリ・ハットを把握する重要性を説いています。問題が小さいうちから対策を立てることが重要とされています。ヒヤリ・ハットの事例に対する対策を行い、重大事故を防ぐための手法です。
羽田空港で5月23日、日本航空機同士の翼が接触する事故が発生しました。空の便をめぐっては、国内でトラブルが相次いでおり、専門家は便数増加や人員不足が原因だと指摘しています。航空機の誘導を担当するグランドハンドリングの職場などでは、採用数の65%の離職が続いており、採用してもすぐ離職し、入れ替わりが激しく、スキルの伝承が困難な状態が引き続いています。
●そこで伺います。相次ぐ事故、インシデントから乗客や区民の命と財産を守るために、人員不足と過密化している羽田空港の現状を直視することです。以前から、管制官、パイロット、整備士、客室乗務員、グランドハンドリング要員などは不足していたのに、2020年3月29日から運用された羽田空港の機能強化、増便、新飛行ルートによって、さらに深刻な状態となっております。せめて増便前の発着枠に戻すよう、国に求めるべきです。お答えください。

【鈴木区長】
本年1月2日に羽田空港で旅客機と海上保安庁の航空機が衝突、炎上し、死傷者が発生する非常に重大な事故を受けまして、区では、1月5日に国土交通大臣に対して、事故の徹底した原因究明と再発防止に向けて取り組むよう、申入れを行っております。国は直ちに航空の安全・安心確保に向けた緊急対策として、五つの柱から成る対策を講じており、事故の詳細については、運輸安全委員会による調査が行われています。また、滑走路上における航空機等の衝突防止のためのさらなる安全・安心対策をハード・ソフト両面から検討するため、本年1月19日に設置された羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会において、現在までに6度会議が開催されており、この夏の中間取りまとめに向け、論点整理を進めていると聞いています。羽田空港における航空機の発着回数につきましては、安全に取り扱える範囲内で設定していると承知しております。なお、先日、安全上のトラブルが相次ぎ、国土交通省より厳重注意を受けた航空会社からも、区に対して、直接、再発防止策の報告を受けており、その際には安全への取組について改めて要望いたしました。引き続き、現在、実施している緊急対策や事故対策検討委員会での取組を注視し、状況を確認してまいります。

以  上

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