第4回定例会一般質問(速報)―清水議員(11月30日)



(映像は大田区議会ホームページより:18分)

私立認可保育園の運営費が、豊かな保育環境のために使われるようにすることについて

【清水議員】
日本共産党大田区議団清水菊美です。
まずはじめに私立認可保育園の運営費が豊かな保育環境のために使われるようにすることについて質問いたします。認可保育園の増設が続き、区内には2023年4月時点で認可保育園と小規模・事業者内保育園の総数は220園、そのうち区立園は37園、社会福祉法人、株式会社などの運営の私立園は183園となりました。しかし、私立園では保育士の人手不足が深刻です。保育士の賃金が低いことが理由の1つです。国は、保育園の運営費のうち81%は人件費に導入されることを想定していますが、株式会社が運営している私立の認可保育園では人件費率が50%以下もあります。その原因の1つに運営費を保育士などの賃金に回さず本部に収納することができる弾力運用にあります。事業費以外に支出することができるというものです。
2000年に株式会社による認可保育園の設置が解禁されてから弾力運用が認められ、子ども・子育て支援法が施行された2015年には運営費の使途が大幅に緩和されました。弾力運用を認めたことによって保育事業への民間事業者の参入を呼び込み、「待機時解消」へつなげるための1つの政策になりました。この弾力運用の実態が今、大きな社会問題になっています。
東京自治労連発行の「東京の株式会社保育事業の闇―弾力運用の実態と『不正受給』の問題を告発する」では、株式会社が運営する保育園では、低人件費率の下で本部に多額の資金(利益)を吸い上げている実態を告発しています。同書の大田区の事例によると、2020年度前期未払い資金残高から(株)日本保育サービスは7園合計で1億5,935万円、(株)さくらさくみらい5園合計で1億1,895万円を本部に繰り入れています。他社を合わせて約3億8,000万円を本部や他自治体拠点に流出させております。そのほか積立資金の他自治体拠点への流出額も7,800万円に上るとしています。これだけでも約4億6,000万円となります。
●そこで伺います。認可保育園委託費、弾力的運用によって人件費などの十分な保育環境確保以外に、本部や他拠点への繰り入れなどに多額に使われている実態があります。子どもの健やかな成長を支える公費が、株式会社などの保育事業者の利益とならないよう是正が必要ではないでしょうか。お答えください。

【子ども家庭部長】
はじめに認可保育園の委託費についてのご質問ですが、委託費の運用につきましては内閣府及び厚生労働省発出の通知に規定されております。本通知では、一定の要件を満たす場合には、当該施設での積み立てのほか、本部経費や他の保育所の設備の整備・修繕経費等への繰り入れが、弾力運用として認められておりますが、適切な施設運営が確保されていることを前提としております。
また、本部経費は法人本部の人件費支出及び事務費支出であり、かつ、保育所の運営に関する経費に限り認められております。
さらに弾力運用のうち、積み立てた資産を目的外に使用する場合や期末残高を本部経費に充てる場合は、東京都知事が事前の審査を行います。
この審査では繰り入れ先で確実に生じる経費についてのみ充当を認めるなど、委託費は事業者が無制限に運用できる制度とはなっておりません。
区の指導検査時においては、事業者が東京都に承認された金額の範囲内で弾力運用を行っているかを確認することで、適正な運営を図っております。

【清水議員】
社会福祉法人が運営している保育園の決算資料、2020年度の資料を見ました。委託費を自由に運用する実態は大田区外から進出してきた法人の中に多く見られました。人件費率では大田区外法人平均61.1%、大田区内法人74.3%で13.2%も開きがありました。区立保育園を民営化した際、区外の社会福祉法人等に委託していることがありますので、このような事態に驚きました。さらに、株式会社が運営する認可保育園の人件費ですが、東京都のホームページから検索して見てみました。(株)さくらさくみらい平和島保育園は令和3年度施設の収支で事業区分間、拠点区分間・サービス区分間繰り入れ金支出は9,265万2,000円ありながら、事業活動収入に占める人件費の割合は43.2%でした。他の園では30%台も多く見られました。世田谷区では人件費率50%以上でないと区の補助金を出さない要項があります。大田区にも同様のルールを導入すべきです。東京都ではキャリアアップ補助を受けているすべての保育施設のモデル賃金を公開する準備を進めています。大田区でも保育士の賃金・処遇の公開は入園を希望する区民にとっても就職を希望する保育労働者にとっても必要です。
●そこで伺います。株式会社が運営している私立認可保育園の人件費率の実態を社会福祉法人のように公表し、50%以下は指導し、国の基準である70から80%を目指すよう指導することを求めます。お答えください。

【子ども家庭部長】
次に、人件費比率についてのご質問ですが、東京都では、キャリアアップ補助金の支給対象施設について、施設の収支や人件費の比率等が記載された財務情報の公表を、補助金交付の条件として定めております。
人件費比率などの情報は、施設を利用される保護者なども比較して確認できるよう、「東京都福祉保健財団」が運営する「とうきょう福祉ナビゲーション」で共通様式にて毎年度公表されています。
保育所運営費に当たる公定価格は、国が人件費を含む園全体の上にかかる費用相当額として算出しているものです。また人件費につきましては、各保育施設の職員の年齢構成や保育士等の経験年数によって給与水準が変動し、賃金は労使の協議により決定されるもので、公定価格における割合につきましては、国から明確な基準が示されておりません。これらのことから区といたしましても人件費比率を指導対象とする考えはございません。

【清水議員】
認可保育園の運営費の弾力運用や低い人件費率の問題から見ても区立保育園の民営化は中止することを改めて、強く要望いたします。

区民の実態に沿い、バスなどの公共交通を守り拡充するよう、交通政策を改善することについて

【清水議員】
次に区民の実態に沿い、バスなどの公共交通を守り拡充するよう、交通政策を改善することについて伺います。
昨年12月から羽田~日の出経由蒲田行きバス路線が午後4時以降ゼロになりました。六郷周りの蒲田駅行きも昼間は1本もなくなりました。
また11月1日から、蒲田駅~森ケ崎の路線が蒲田駅発12便減、森ケ崎発11便減となり、通勤時間帯以外は30分に1便となりました。この路線は福祉施設や病院も多く、高齢者や障害のある方から多く利用されており「困った」という声が上がっています。西馬込経由蒲田行きの路線が廃止になってから久しいですが、馬込地域の多くの区民は買い物などは五反田、川崎、銀座方面で蒲田にはなかなか来ないようです。区役所等に来なければならない時は不便だの声を聞いています。
区が交通不便地域としている地域は鉄道駅から500m以内で、かつバス停から300m離れている地域としています。しかし、バス停があってもバスが来ない、30分に1便程度しか来ないこの地域は、区の指定する交通不便地域とはなりません。交通不便地域という概念の見直しが必要になってきています。
路線バス乗務員は運転しながら乗客の安全を確保し、様々な対応をしなくてはならない重労働ですが、低賃金と長時間労働となっており、その改善は必須です。自動車運転業務の時間外労働を原則月45時間、年360時間に規制するとしていますが、もともと基本給が低いため残業しないと生活できないのが実態で、退職者が増え人手不足は解決しません。事業者の問題だけではなく社会全体の問題であり、自治体の責任も問われております。大分県別府市は県外在住の就職氷河期世代を対象に、市内に移住してバス運転手になると最大400万円を支給する制度を設けたところ、問い合わせが約90件寄せられたとのことです。
区担当課は昨年12月の交通政策特別委員会において、「地域の足であるバス便の維持など優先的な稼働課題として、バス事業者と連携していきたい」と答弁されております。
しかし、減便は止まりません。何らかの対策を考えなければ高齢者をはじめ区民の生活に支障が生じることになります。
●そこで伺います。保育士不足が深刻で大問題となった際は、大田区は独自で応援手当を支給し、東京都は家賃助成を実施し、保育士確保に大きな成果を得ました。運転手不足が大問題となっているこのときに同様な対策が必要ではないでしょうか。バス事業者と連携について、乗務員不足による減便を止めるためにどのような対策を実施していくのかお答えください。

【まちづくり推進部長】
まず、バスの乗務員不足に伴う減便に関するご質問でございます。路線バス事業におきましては、厳しい経営環境の中、全国的に運転者の要員不足が深刻な問題として顕在化しつつあり、運転者不足を原因とした減便や路線の廃止事例も散見される状況にあります。こうした中、地域の交通を支える路線バス輸送の維持や安全の確保の観点からバスの運転者の安定的な確保と育成は、課題の一つと認識しております。
現在国の方ではバス事業者の運賃改定申請から認可までの迅速な対応、二種免許取得費用の助成など、事業者に対する各種支援を行っているところでございます。
区内の路線バスにつきましては、減便などが行われている路線も出るなか、いわゆる働き方改革関連法の施行により来年4月からバス運転士の残業時間の規制強化が始まるなど、今後さらに慢性的な人手不足が懸念されており、引き続き国および近隣区などの動向を注意するとともに、事業者と連携して取り組んでまいります。

【清水議員】
大田区は交通政策基本計画の中間見直しを進めています。前回の見直しから約6年の間、状況は著しく変化しています。高齢化の加速、産業の構造変化、新型コロナ感染症の大流行による生活様式の変化、バスやタクシーの乗務員不足の深刻さ、まさに見直しは必然です。ここで声を大にして言いたいことは新空港線(蒲蒲線)は東西交通の改善には到底なり得ない人も書いてあります。
中間見直しの課題として、移動が困難な区民への施策について基本的な施策として―公共交通の乗務員不足、また、コミュニティバスの課題を踏まえ、自動運転車や超小型モビリティ、ライドシェアなどの新たな技術サービスの活用を踏まえて検討する―としています。けれども、自動運転車などの実施はまだまだ時間がかかり、法の改正が必要なものもあります。何より安全性について多くの問題があります。ことにライドシェアは一般ドライバーが自家用車を有償で乗客を運出するもので、法制度上原則禁止です。海外では性暴力事件の多発などの問題が起こり、8割が禁止されております。さらに、公共交通のタクシー事業の崩壊が危惧されております。「移動の自由」を名目に、政府が規制緩和の議論を進めていますが、財界の要望によるもので、利用者の安全は確保されません。今すべきこととしてタクシーの活用、福祉タクシーなどの拡充と、高齢者などの外出支援のためのタクシー券など具体的な検討を交通政策に加えることを求めます。
●そこで伺います。高齢者、障害者、乳幼児、子育て世代など、特に移動が困難な区民への支援には、自動運転車や超小型モビリティ、ライドシェアなどの新たな技術サービスの活用では解決はできません。あらゆる手立ての検討が必要で、当面はコミュニティバスや実証実験中のデマンドバスの拡充を求めます。お答えください。

【まちづくり推進部長】
次にコミュニティバスやデマンド交通の拡充に関するご質問でございます。
区では、交通への多様なニーズに対応するため、交通政策基本法に基づきまして「交通政策基本計画」を平成30年3月に制定しております。この計画におきましては、誰もが住み慣れた地域で生き生きと快適に暮らせる移動しやすい交通環境の創造を目標の一つとして掲げまして、この目標の中でライフスタイルや価値観に応じて様々な移動手段を選択できる交通サービスの提供、誰もが円滑に移動できる交通サービスの提供を基本方針として位置付けているところでございます。
コミュニティバス、デマンド交通につきましては、公共交通不便地域の改善、タクシーの利用につきましては、公共交通としてのタクシーの活用、また需要に応じた福祉分野での移動の支援等、こういったものを基本的な施策として、既存の公共交通の充実を図るとともに、多様な移動サービスとの連携を深め、交通機能の向上に取り組むこととしております。
コミュニティバスやデマンド交通の地域の導入につきましては、矢口地域のコミュニティバスの本格運行や現在実施しておりますデマンド交通の実施や実験など、これまでの取り組みや改善点、こういったものにつきまして、様々な課題等を十分に検証した上で、交通事業者と連携しながら今後の方向性を探ってまいります。

以  上

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