(映像は大田区議会ホームページより:18分)
【あらお議員】
日本共産党大田区議団の荒尾大介です。通告に従い、順次質問します。
地域で介護を支える小規模介護事業者への支援について
【あらお議員】
まず、小規模介護事業者への支援についてです。
大田区内の介護保険第1号被保険者数は、2022年6月現在、16万6565人で、前年同月比で532人、0.3%減少、そのうち75歳以上は8万9278人で、こちらは前年同月比2415人、2.8%増加しています。介護サービス利用者数は、施設サービス利用者2917人、前年同月比0.7%減、居宅介護サービス利用者2万3129人、前年同月比2.1%増となっています。居宅サービス利用者が増える一方で、居宅サービス事業所数は、2022年6月現在、区内671事業所で前年同月比5か所減っています。
コロナ感染症拡大が発生して以来、特に小規模の居宅介護サービス事業者は苦境に立たされています。こうした事業者の多くは、地域のために貢献したいという志を持って、高齢者の方が介護が必要になっても尊厳が守られ、住み慣れた地域で自立した生活を支えるために日々活動してきました。介護保険サービスの土台を支えてきたのです。
2017年度から始まった介護予防・日常生活支援総合事業、新総合事業は、介護保険サービスの予防給付で提供されていた要支援1、2の訪問・通所サービスを自治体が行う地域支援事業に移行させました。新総合事業サービスの訪問・通所サービス実績を見てみますと、利用人数が、2017年度、訪問通所サービス5万8449人、利用回数が32万2641回だったのが、2021年度は、利用者数3万302人、利用回数が17万7243回と減少しています。一方で、有償ボランティアが主に担う絆サポートは、利用人数、回数とも、第8期になってから大幅に増加しました。これは専門性が求められる質の高い介護保険サービスから切り捨てられたことの表れではないでしょうか。
3年ごとの制度改悪によって保険料基準額が増加し、その一方で、サービス抑制、介護報酬の削減が行われてきました。介護保険サービスは充実どころか、制度の持続可能性のためという理由で、給付抑制、サービス切捨てが繰り返されてきました。介護の現場では、コロナ以前から深刻な人手不足が常態化しており、コロナ禍がそれに追い打ちをかけています。介護サービスの基盤を守るためには、介護報酬の引上げが何より求められます。
厚生労働省は、昨年2月から9月までの間、介護職員処遇改善支援補助金を実施し、標準的な職員配置の事業所で職員1人当たり月額9000円相当の補助金を支給するという時限措置が実施されました。取得要件は、処遇改善加算1から3のいずれか取得していること、2022年2月、3月から実質賃上げを行っていること、補助額の3分の2以上は介護職員のベースアップに活用することなどとなっています。10月からは福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算として実施されています。
厚労省の統計では、処遇改善加算取得事業者は、全国で2022年4月85.3%、経験、技能のある職員に重点を置いた特定処遇改善加算取得事業者は53.6%にとどまっています。加算を取れないと給料を上げることができず、小規模事業者は職員採用でさらに不利な立場に追い込まれてしまいます。
介護職員の処遇改善は、処遇改善加算、特定処遇改善加算、そして、ベースアップ等支援加算と3層構造になっており、事務処理が大変複雑です。介護事業所、自治体の担当課からは厚労省に対して改善を求める声が出ていますが、介護職員の低賃金の原因は介護報酬が低いことであり、加算を追加していくことよりも、報酬の引上げで賃上げを実施するべきです。小規模事業者の安定的な経営にもつながり、人材確保と介護の質を確保するためにも、報酬の引上げは必要です。
●そこで伺います。小規模介護事業者は、地域の高齢者の状況をしっかり把握し、福祉の担い手として重要な役割を果たしています。新総合事業導入とコロナ禍で経営困難に陥っている事業者に経営支援を行い、区の責任で地域の介護サービスの基盤を守り支えることを求めます。お答えください。
【福祉部長】
区内には約900余りの介護事業所があり、介護が必要な高齢者の皆様の日常生活を支えてくださっています。区では、介護保険制度や介護予防・日常生活支援総合事業を適正に運営しながら、様々な支援を行っています。コロナ禍の当初においては、区内の介護事業所を支援するため、大田区新型コロナウイルス感染症に係るサービス事業所・施設に対するサービス継続緊急支援金を実施し、感染対策に要した経費の一部を支援いたしました。また、今年度まで複数回にわたり区内の介護事業所に対して、衛生物品等の配付を実施いたしました。今年度は、急激な物価高騰に対応するため、原油価格・物価高騰等における介護サービス事業所、施設に対する支援を実施し、区内の介護事業者が引き続き安定したサービスを提供できるよう、支援金を支給しております。このような施策は、経営規模が比較的小さい事業所が多い介護事業所に対して、効果的に支援できたものと考えております。区では、区民の皆様が安心して介護サービスを受けられるように、引き続き、区内の様々な介護事業所に対して必要な支援を行い、介護サービスの維持向上に努めてまいります。
【あらお議員】
次に、要介護認定についてです。
厚生労働省は昨年2月の事務連絡にて、認定期間を従来の期間から最長12か月延長できる臨時的取扱いを通知しました。しかし、この適用は来月3月31日をもって終了することにより、4月1日以降に有効期間満了を迎える場合には、通常の更新認定を実施することになります。コロナ感染症拡大を受けての今回の臨時的措置ではありますが、事務連絡でも述べられているように、被保険者の臨時的取扱いを複数回適用することによって、長期間にわたり被保険者の心身あるいは生活状況を適切に把握し、評価することができない事態が起こることが懸念されます。
もう一つ懸念されていることは、臨時的取扱いが終了した4月以降の1年間に更新申請が集中し、自治体の事務作業が増大することです。事務連絡では、区市町村の判断で2023年度に限って臨時的取扱いを適用することは差し支えないとしていますが、大田区では、どのように対応されるのでしょうか。
年度末に入り、既に申請件数も増えています。申請件数が増えれば、介護認定審査会の件数も増えることになります。今から混乱に備えた対応を取るべきと考えます。
●そこで伺います。認定調査に係る区の職員を増員するとともに、調査委託をする事業者に対しても適切な支援を行うことを求めます。お答えください。
【福祉部長】
国の通知により、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図る観点から、令和2年以降実施している、認定申請者からの申出により認定有効期間を延長できる臨時的な取扱いについて、原則として有効期間満了日が今年度末までの被保険者をもって適用を終了することとなりました。これにより、令和5年4月1日以降に有効期間満了を迎える被保険者に対しては、新型コロナウイルス感染拡大前の通常どおりの認定調査を実施していくことになります。この間、多くの認定申請者の方が期間延長を繰り返されており、今回の臨時的な取扱いの終了により、累積している認定申請者に対して、速やかに調査を実施していかなければならない状況となります。区では、令和5年度中は件数や事務量の大幅な増大が予想されるため、国から示される方針に基づき、段階的な対応を取っていくとともに、新規の認定調査員に必要な、東京都が実施するeラーニング研修について、より一層の周知啓発を行います。さらに、既に認定調査を行っていただいている調査員の方に対する区の集合研修について、感染状況を鑑みながら、内容や回数などを拡充し、認定調査の質の向上にも努めると同時に、区の認定調査に係る体制の強化を図ります。こうした一連の取組により、今後見込まれる調査件数の大幅な増加に対応していき、区民の皆様の介護サービス利用に支障をきたさないよう、介護認定業務を適切に実施してまいります。
「住民が主人公」の立場で進める下丸子のまちづくりについて
【あらお議員】
次に、下丸子駅周辺まちづくりについてです。
今年1月13日、14日に大田区民プラザにて下丸子駅周辺地区まちづくり構想(素案)についての住民説明会とオープンハウス型説明会が開かれました。私も14日の説明会に参加しましたが、参加した方々から活発な意見が出されました。まちの姿が今と大きく変わってしまうのではないか、商店街が寂しくなっているので、何とかしてほしいなどといった意見が出されました。いずれも貴重な区民の皆さんの意見として受け止め、今後の計画に反映するよう要望します。
この間、下丸子駅周辺地区のまちの将来を考える会という勉強会が7回開かれています。会の目標は、「地区のビジョンとなる『まちづくり構想』を地元関係者と意見交換しながら取りまとめること」としています。
2015年12月に国土交通省が発表した鉄道沿線まちづくりガイドライン(第一版)では、沿線まちづくりを進めることにより期待される効果として、鉄道をはじめとした公共交通を利用して、中略、大規模商業施設を含めた都市機能のさらなる駅前への集積が図られ、駅周辺を中心とした地域の活性化につながることが期待されるとあり、駅前周辺の大規模開発を推奨しています。また、まちづくりの進め方として、1、体制の構築、2、現状把握、3、目標の共有、4、方策の検討、5、役割分担、6、方策実施、7、連携拡大となっており、2から6に関しては協議会を組織し、4から6でPDCAサイクルを回していくと示されています。
下丸子駅周辺まちづくりについても、この国交省ガイドラインに沿う形で進められるものと考えられますが、大規模施設を建設することが地域の活性化につながるのか、地元の商店街に与える影響はどうなるのか、まちの姿が変わってしまうのかといった懸念があります。ある町会の方が、地域の人がこの計画を知らないうちに勝手に決まってしまうのが一番困る、計画が出てから声を上げては遅いから、今の段階から住民に広く知らせて、意見を求めるべきだと話していました。
●そこで伺います。まちづくりの主人公は地域住民です。今後、下丸子駅周辺のまちづくりコンセプトの実現に向けた推進体制を構築していくとのことですが、多くの住民が参加できるようにし、住民の声をより反映させて計画を進めていくよう求めます。お答えください。
【鉄道・都市づくり部長】
下丸子のまちづくりは、国が下丸子1号・2号踏切を抜本的な対策が必要な踏切として指定したことを受け、取組が始まっております。区では、平成30年度から踏切の対策と併せ、周辺のまちづくりについても検討を進め、令和3年3月、下丸子駅周辺地区のまちづくり構想(案)をまとめております。これを基に、地域で活動されている団体の方などで構成される下丸子駅周辺地区のまちの将来を考える会を設置し、まちのあるべき姿等について検討を深めてまいりました。勉強会は公開で行っており、その結果はまちづくりニュースに掲載し、地域内の掲示板や回覧などを通して周知を図ってまいりました。また、区は、まちの将来を考える会でのご意見を踏まえ、まちづくり構想を素案として取りまとめ、本年1月に住民説明会及びパブリックコメントを実施し、広く皆様からのご意見を募集したところであります。素案では、地域住民や民間事業者などの地域の関係者と行政が一体となって、地区の空間、機能の整備や活動など、まちづくり全般の取組を担う推進体制の構築を目指していくこととしており、構想の実現に当たっては、地域住民などと連携した取組の検討を進めてまいります。来年度以降は、(仮称)下丸子駅周辺地区グランドデザインの策定に向け、引き続き取組を進めていく予定です。
【あらお議員】
最後に、踏切についてです。
下丸子1号・2号踏切の改善は、長年の地域課題です。区はまちづくりとセットで計画を進めていますが、これでは時間がかかり過ぎます。速やかに改善のための計画をつくることが求められます。
●そこで伺います。下丸子1号・2号踏切改良について、(仮称)下丸子駅周辺地区グランドデザインに向けて検討を進めるとしていますが、まちづくり計画と切り離して速やかに進めるよう求めます。お答えください。
【鉄道・都市づくり部長】
踏切道は、毎日多くの方が利用する地域生活に密着した施設であり、その改良に当たっては、接続する道路や沿道など、周辺のまちづくりと一体的に考えていく必要があります。これにより、安全性の確保や利便性の向上だけでなく、より魅力あふれ、快適なまちを実現することができます。下丸子駅周辺は、踏切による渋滞発生や歩行者の安全性の低下といった問題に加え、オープンスペースの不足や駅の交通結節機能などに課題があり、こうした課題の解消に向けたまちづくりを適切に行っていく必要があります。現在、踏切の改良とまちづくりを一体的に進めていくために、踏切対策を含めた将来のまちのあるべき姿を示すまちづくり構想の策定に向け取組を進めております。来年度以降は、構想の実現に向け、より具体的な方策を盛り込んだグランドデザインの策定に向け検討を進めていく予定です。今後も、下丸子駅周辺がより一層安全・安心で魅力あふれるまちとなるよう、地域の皆様や関係機関などと連携し、踏切改良と一体的なまちづくりに取り組んでまいります。
以 上