第1回定例会一般質問(速報)―金子議員



(映像は大田区議会ホームページより:43分)

介護保険の保険料・利用料減免と改善について

【金子議員】
まず、介護保険の保険料と利用料について質問します。3年に1回の改定で第1期の2000年から大田区基準額は3070円第2期3200円、第3期3900円、第4期4100円、第5期4900円と期毎に値上げされてきました。
今議会に介護保険料の値上げ条例が出されています。今回の値上げは基準額で5600円となっていて、第1期から見ると、2倍近い大幅値上げになっています。区民の収入が2倍になったわけではないのに、このままでは際限のない値上げがされます。この際限のない値上げは止めなければなりません。
(仮称)おおた高齢者施策推進プランで素案として、第6期介護保険事業計画が出されており、15年度から17年度の介護保険標準給付費見込額を、1543億円としています。第1号被保険者の負担割合が21%から22%に変更され、第2号被保険者は29%から28%に変更されています。非課税世帯には保険料の負担が軽減されるとしています。
しかし、19段階にするはずだった所得段階別保険料額が17段階になり、賦課上限額は2500万円に据え置かれました。基準額は5600円で、地方税法に規定する所得金額120万円以下の人に課せられますが、本人が特別区民税非課税の世帯です。課税できないほどの所得の人に値上げは過酷と言わなければなりません。第5期の第1段階と第2段階を6期では第1段階にまとめて、しかも値上げになっています。
●非課税世帯の1段階、2段階は、値上げを撤回すべきです。お答えください。

【福祉部長】
まず、介護保険料でございます。現在、策定しております第6期介護保険事業計画でございます「おおた高齢者施策推進プラン」におきまして、要支援・要介護者数の増加等に伴いまして、平成27年から29年までの計画期間中の保険給付費につきましては、約1,484億円、第5期に比べ、約13.7%の増加を見込んでございます。また、第1号被保険者の負担割合でございますが、第5期では保険料給付費の21%であったものから、第6期では22%に変更となっております。これら保険料上昇要因に加えまして、国の審議会が示しました介護報酬の2.27%の引き下げや利用者負担の一部見直しの影響などを総合的に勘案すると共に、介護給付費準備基金の取り崩しや保険料負担段階を15段階から17段階に見直すことなどの対応を行うことなどにより、保険料基本月額を5,600円に設定したところでございます。お話の保険料負担段階の第1段階と第2段階につきましては、基準額に対する比率を、第1段階では0.5から0.45に、第2段階では0.75から0.65に、介護保険法施行令の定める標準比率よりも引き下げることにより、保険料額の上昇を抑制しております。なお、第1段階の公費による保険料軽減につきましては、今後、介護保険法施行令で規定された場合につきましては、適切に対応してまいります。介護保険制度は、国民共同連帯の理念に基づきまして運営されているものでございまして、非課税の方も課税されている方も保険料をご負担いただく制度となっております。介護保険事業は、保険料と公費を財源として実施しているものでございまして、安定的な運営を図っていくため、ご理解をお願いしたいと考えております。

【金子議員】
厚生労働省は介護保険料に対する自治体の独自減免について「独自補てんはできない」などとする見解を自治体に通知していた問題で、しんぶん「赤旗」の問い合わせに対して、1月30日に「独自減免は法令上禁止されていない」と認めています。大田区は独自減免をしているとしていますが、不十分であり、区民の実態に即して、支援をすべきです。
●区は、何としても値上げをしないために、あらゆる努力をすべきです。国に補助金の増額を求めること、東京都にも支援を求めることです。そういう要請は23区区長会を通して行っているというのが、今までの答弁ですが、区民への負担増を止める仕事として、第1義的に取り組むことを求めます。それには基金を全額使うこと、足りなければ一般財源も使って、値上げしないとすべきです。お答えください。

【福祉部長】
介護保険財政及び介護給付費準備基金についてのご質問でございます。介護保険制度については、制度発足以来、利用者が負担する部分を除きまして、国、東京都、大田区の3者が法で定められた割合を負担する公費負担分と、65歳以上の第1号被保険者及び40歳から64歳までの第2号被保険者から徴収する保険料を財源として事業運営を行うこととしております。一方、政令で特例を定める場合を除きまして、区の負担する割合を超えて、一般財源を繰り入れることはできない仕組みとなっております。また、介護給付費準備基金は、3年間の介護保険事業計画期間中における介護保険財政の均衡を保つために設置された基金でございまして、計画の最終年度には、保険給付費等の不足が予想されるため、あらかじめ基金として準備しているものでございます。第6期計画におきましては、基金につきましては、約5億6千万円の取り崩しを行い、保険料の上昇を抑制することといたしました。なお、基金残額につきましては、今回の介護保険制度の大きな改正を受ける第6期期間中において、事情の変化などによりまして保険給付費や地域支援事業の経費不足が生じた場合などに備えることとしているものでございます。したがいまして、大田区の介護保険事業の健全で安定的な運営を行う観点から、介護給付費準備基金の全額取り崩しは難しいものと考えております。

【金子議員】
●制度はあります、といくら「みんなの介護保険」に書いても、実際に減免された人が少なければ、制度としての意味がありません。第5期の減免の方は、どの程度受けられていたのですか。お答え下さい。

【福祉部長】
介護保険料減額制度の実績についてのご質問でございます。区は、区の単独事業として「大田区低所得世帯に対する介護保険料減額取扱要綱」を定めており、介護保険料の未納がない等、一定の要件に該当する場合は保険料を1/2に減額するなどの対応を行っているところでございます。この減額制度は、「みんなの介護保険」や、毎年7月にお送りする介護保険料納入通知書などのお知らせでご案内すると共に、区報や大田区ホームページにも掲載するなど、減額制度の周知を図っているところでございます。お話の第5期の低所得者世帯に対する介護保険料減額取り扱い件数につきましては、平成24年度62件、平成25年度59件となっております。今後とも、この制度につきまして区民の周知に努めてまいります。

【金子議員】
●健康で3月に確定申告をした71歳の男性が、6月に心筋梗塞の治療中に、脳梗塞を起こし、要介護5になってしまいました。年金もないのに前年所得で課税者でしたので、「年度の途中では何ともなりません。今年の確定申告で非課税になれば、来年度の保険料は下がります」と言われましたが、介護保険適用病院に入院している現在、課税者であるため、食費や居住費は減免の対象になりません。2重に理不尽です。こういう場合の救済措置も検討すべきです。答弁を求めます。

【福祉部長】
介護保険料や施設入所時の食費や居住費の減免に関するご質問でございます。介護保険制度の保険料の決定は、当該年度の特別区民税の課税状況を基に決定しているところでございます。また区独自に保険料の減額を実施しているところでございます。また、介護保険料の食費や居住費につきましては、段階的に3段階に定め減免しているところでございます。個々のご家庭に対する保険料の決定や減額の適用、施設等利用時の食費や居住費の減免につきましては、現行の介護保険制度に基づきまして適切に実施しているところでございまして、引き続き個々の家庭の状況に応じて丁寧に対応してまいります。

【金子議員】
●16段階、17段階は新設されて、年額204,960円、年額215,040円となっていますが、7段階の本人課税の場合7%であるのに、17段階は0.86%ととんでもなく安い保険料です。保険料の負担の在り方としては、応能負担であるべきで、高額所得者には優遇制度であり、少なくとも19段階に賦課上限額も拡大すべきです。お答えください。

【福祉部長】
所得の高い方の保険料負担段階についてのご質問でございます。現在、策定しております「おおた高齢者施策推進プラン」におきまして、負担段階を15段階から17段階に増やすこととしております。これは、介護保険法施行令に定める標準段階の9段階に比べますと、より多段階化を進めたものでございますし、最高段階の第15段階と基準額となる第6段階に対する比率が2.9であるのに対し、第6期計画では、最高段階の第17段階と基準額との比率が3.2としたところでございます。これは、標準比率の1.7よりも高い比率を設定するものとしておりまして、すでに応能負担の考え方にも十分配慮したものと考えているところでございます。

【金子議員】
次に、介護保険の利用料について質問します。
2015年から3年間で介護保険が大きく改変されようとしています。要支援1.2のサービスが、介護保険から外されると、法令の基準がなくなり、サービス内容や価格は自治体任せになります。要介護1.2は特養に入れないということで、すでに、区によっては要介護2の申し込みを受け付けないという例が出てきています。年160万円以上の所得がある人、年金収入で280万円以上の人が2割になること、現役並み所得の人も利用者負担額が一定の額を超えた場合に超えた分が支給される上限金額が4万4千円に引き上げられること、低所得者に施設の居住費や食費が補足給付されていたものが、資産調査をして軽減しないこと、厚労省が「公費で低所得者の保険料を軽減する」といっていますが、消費税10%を前提にしているため、ほとんど軽減されないことです。
しかし、現在でも利用料の負担は大変なものがあります。本人・家族ともこの負担をしきれない状況を置き去りにすることは許されないと考えます。4つの例を紹介しますと、
先に紹介した71歳の男性は現在介護保険適用の病院に入院中です。要介護5の人の介護療養型医療施設の場合、介護保険の1割負担ですから42,900円です。しかし、居住費や食費は保険外で、自費払いになりますので、137,100円が別に必要で、総額18万円です。
昨年夏から、急に要介護状況が進み、昼夜逆転になって、自宅介護が困難になった男性は、病院に救急搬送されて後、足立の有料老人ホームに入所しました。有料老人ホームは特定施設入居者生活介護として介護保険が使えますが、要介護3の場合、利用者負担は22,863円ですが、施設への支払いは14万円です。在宅介護では、在宅サービスの利用料が高くて大変だったこと、娘さんが昼夜逆転の介護をしながら、「日中働くのは疲労困憊して、いつまで続けられるか辛かった。あの時も大変だったが、現在の14万円の負担も厳しい」ということです。
●課税世帯へも居住費や食費を助成する横だしの支援をすべきです。

【福祉部長】
有料老人ホームの居住費や食費の支援についてのご質問でございます。現行の介護保険制度では、施設等の利用時における食費・居住費などの減免対象となりますのは、介護老人福祉施設等の利用者世帯が特別区民税非課税等の場合と定められております。区といたしましては、現行の介護保険制度に基づきまして、引き続き適切に対応してまいりたいと考えておりまして、お話の有料老人ホームにおける居住費、食費の助成を行うことは考えておりません。

【金子議員】
二人住まいの兄、妹が要介護状態になって、葛飾の妹が時々様子を見に来ていました。ケアマネージャーに兄のショートステイを勧められ、その時提示された利用料金は、1日3600円程度で、減免制度が使えるはずですという説明でした。が、7日間で4万円を超える額になり、びっくりして介護保険課に問い合わせてみましたが、「課税世帯なので、減免はなにもない」という説明でした。ショートステイは家族の介護負担を1週間でも軽減するための介護サービスですが、「人手不足のためか、5,6歩のトイレまで車いすに乗せられて、足がどんどん弱くなる。帰宅したときトイレには行ってもらいたいのに、これでは困ります」という状況です。
介護サービスを使っていなかった80代の男性が、2014年5月に入院後要介護4になり、リハビリを受けて回復してきていましたが、同居している妻が要支援なので、8月に老健施設に入り、11月には自宅に帰りました。老健施設は要介護4の場合負担は3万9900円ですが、その他8万円の保険外負担があるため1か月12万円から13万円の負担だったそうです。
全く何のための介護保険なのでしょうか。利用料が2割になったら、とんでもない事態が起きる可能性があります。介護を苦にした心中事件や殺人事件が5年間で1741件起こっており、年平均で348件に上っています。
●区として、受けている人の実際の負担額がいくらなのか、保険外負担も少なくないのですから、把握しているのでしょうか。レセプトも区を通していくのですから、わかるはずです。把握して対策を立てることです。お答えください。

【時間切れのため答弁なし】

【金子議員】
また認定を受けても介護サービスを受けない人、利用したくても費用がかさむと、サービスを削らざるを得ない人など、利用率は保険料の割には上がりません。介護事業者に聞くと、ケアプランを立てる際に、本人や家族の意向も聞きながら、組みますので、介護サービスが限度額を超えることは少なくて、むしろ利用を制限する人の方が多いということです。年金が減らされる状況ではますます利用制限が進んでいくことになります。所得によって、介護サービスは明確に格差を生み出しています。介護保険導入以前は、高齢福祉費で対応していましたし、東京都から老人福祉手当も出ていました。介護サービスは、ほとんどの人が無料で受けられていました。
年金から天引きされる保険料、要支援12の介護サービス外し、進まない介護基盤の整備、など問題は山積みです。マンションの中に届け出をしない有料老人ホームがあり、ベッドに高齢者を縛りつけていた虐待と報道されましたが、認知症高齢者が行き場がなくて、利用せざるを得ないなど、法制度の間をくぐって違法な介護事業とは呼べない悲惨な事例もあります。
●介護の必要な高齢者に対する介護サービスが人権を尊重して人間らしく生きられるように、非課税世帯については、利用料を無料にするよう、区が実情に応じて独自支援を行うことを求めます。

【時間切れのため答弁なし】

【金子議員】
今回、生活相談で介護保険利用料にかかわるものが多かったのですが、これらの事例に共通することがありました。それは、どの施設も人手不足だということです。介護報酬が下がると、人手不足に拍車がかかることになります。介護崩壊という事態は、なんとしても招来しないよう、区としても最大限の努力をすべきです。

高すぎる国民健康保険料の値下げについて

【金子議員】
次に国民健康保険料の値下げについて質問します。
日本共産党区議団は、2月12日に、松原区長に、「国の補正予算、国民健康保険、子育て支援に関する緊急要望」を提出しました。
そのうちの国民健康保険については、
1. 保険料の値上げをしないこと。
2. 国保料の値上げについては、広く区民に情報を提示し、意見を聞いて決める仕組みにすること。
3. 国保料を抑えるために、国庫負担割合を増やすことを国に求めるとともに、東京都にも財政支援を求めること。また、大田区でも独自で支援を強化すること。
4. 国保料滞納世帯に対し、生活や営業に支障をきたすような差押えはしないこと。
5. 都道府県単位への広域化に反対の意見をあげること。
という内容です。
毎年のように値上げされる保険料は、3割を超える世帯が滞納せざるを得ないほど、高すぎて払えない区民が増えています。
2月17日、大田区国民健康保険運営協議会が開かれました。この会議で「所得200万円の世帯に18万円の保険料は、給与所得者の健康保険料と比べても高すぎるのではないか」という質問がありました。
厚生労働省の調査でも、国保加入者の所得水準は健保組合加入者の4割程度なのに、保険料の平均負担は健保加入者の約2倍にもなっています。所得の低い人たちが高い保険料を負担する構造的な矛盾となっています。課長の答弁は「その所得水準では、生活保護の対象になります」というものでした。保険料のモデル成人2人子ども1人の200万円の世帯に18万円の例示はありますが、払えない人を増やすことは、この問題の解決をより困難にしていくばかりです。
年収の1割を超す保険料は、低所得の世帯ほど深刻です。全国では2014年時点で滞納世帯が372万2千世帯で全加入世帯の2割近い水準であり、滞納世帯が加入者の3割を超す大田区は、全国的に見てもすでに深刻な事態と捉えるべきです。この状況を打開するには、所得水準からみて払える保険料にすることです。
昨年4月から消費税が5%から8%へ増税され、保険料の値上げはさらに負担を重くしています。国民健康保険制度は、憲法25条にもとづいた社会保障であり、他の社会保険に加入できない自営業者や高齢者、無職者などが加入する「国民皆保険」制度です。財政基盤が弱い保険制度であり、加入者の圧倒的多数が年収200万円以下と言われています。払えたくても払えなければ、健康保険証を取り上げられ、すぐに命と健康が脅かされることになります。
●これ以上区民生活を圧迫する国民健康保険料の値上げは中止すべきであり、所得の10%を超える世帯については思い切った引き下げをすべきです。国庫負担の大幅な削減が国保料の値上げの原因になっていることから、国庫負担を増やすよう国に求めること、東京都にも都民の命を守るために財政支援を要請すること。お答えください。

【区民部長】
国民健康保険における財政支援についてのご質問ですが、23区の国民健康保険料は、特別区共通基準保険料として、当該年度の23区全体の被保険者数、所得状況、医療費、療養給付費、高額療養費の動向などを推計すると共に、国庫負担金及び都支出金の額、前期高齢者交付金及び後期高齢者支援金の額など基礎となる数字を踏まえて算定しています。更に、国から示される制度改正や各種数値、係数等により変動いたします。また、23区の国民健康保険を取り巻く状況として、被保険者数は減少傾向にある一方で、医療費は前期高齢者の加入割合が高くなるため増加傾向が継続するものと見込まれます。したがって、国保の運営は、財政状況が依然として厳しい中で、国民健康保険制度を維持し運営することを強いられる状況にあると考えております。平成27年度、特別区共通基準に基づく国民健康保険料の算出にあたりましては、賦課限度額及び均等割軽減判定基準の見直しなど、国の制度改正の動向とその影響等を踏まえると共に、被保険者の過大な負担とならないように十分に検討を重ねてまいりました。国保の財政基盤の強化については、特別区長会、全国市長会を通じて、国に対し繰り返し要望してきております。東京都に対しても財政措置の充実強化を要望しております。今後も機会を捉えて大田区として強く要望してまいります。

【金子議員】
厚生労働省は12日、国民健康保険の運営を2018年度から都道府県に移管する案を全国知事会、全国市長会、全国町村会に示し、了承されました。区市町村が行っている国保への繰り入れをやめさせ、国保料の更なる引上げと徴収強化を招くものです。
●国民健康保険の広域化は、国保料の更なる値上げにつながります。大田区として広域化に反対の声をあげるべきです。お答えください。

【区民部長】
国民健康保険の都道府県化についてのご質問ですが、国保の都道府県化につきましては、本年1月、政府の「社会保障制度改革推進本部」において「医療保険制度改革骨子」として決定されました。「医療保険制度改革骨子」では、都道府県については、「平成30年度から都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業運営の確保などの国保運営について、中心的な役割を担い制度の安定化を図る」、市町村については、「保険料の徴収、資格管理、保険給付の決定、保健事業など、地域における事業を引き続き担う」とされ、具体的な制度改革の内容については「引き続き地方と協議を進める」とされております。国保制度改革にあっては、高齢化の進展、高度な医療の普及等による医療費の増大が見込まれる中で、医療保険の基盤を支える国民健康保険が、将来にわたり安定的に運営できるようにしていくことが、何より重要でございます。その意味で、従前より全国市長会を通じて要望してきた「国による国保財政基盤強化策の拡充、国保制度の抜本的な改革」へ向けて動き出すことになったことは、評価すべきものと認識しております。今後明らかになる制度改革の具体的な内容等について、区として十分に注視してまいります。

【金子議員】
来年度の保険料については、引き下げを発表する自治体が相次いでいます。引き下げの背景の1つに国の15年度からの「保険者支援金」約1800億円があります。自治体の一般財源からの繰入削減に使うのではなくて、保険料の引き下げに役立つという側面もあります。
●この他に国保の都道府県調整交付金で、影響を少なくする調整が可能になったのですが、大田区がこの制度が使えるのであれば、なんとしても値下げをするために活用すべきです。区民の命、財産を守ることは、大田区の第一義的な自治体としての任務なのですから、区として抜本的な低所得者対策を、払える保険料にするため尽力することを求めます。お答えください。

【区民部長】
国民健康保険の低所得者対策についてのご質問ですが、都道府県調整交付金は、区市町村国保の安定的な運営を確保するため、財政基盤強化策として行われているものであります。国保料の低所得者対策としては、均等割額の7割・5割・2割を減ずる軽減措置が実施されており、平成26年度から保険料軽減措置に係る所得判定基準が見直され、軽減対象が拡大されております。平成27年度も、同様の制度改正が予定されており、軽減対象が広がることになります。国民健康保険料については、国の制度改正による影響を勘案すると共に、被保険者の方に過大な負担とならないよう十分に検討を重ねてきております。平成27年度、特別区共通基準に基づく国民健康保険料の算出については、保険料の賦課総額に、葬祭費・出産育児一時金審査支払手数料の経費を引き続き算入しないこと、保険料負担が厳しい世帯の急激な上げ幅を緩和するため、所得割と均等割の賦課割合を据え置くこととしております。また、平成25年度、大田区国民健康保険事業特別会計・決算では一般会計からの繰入金のうち、財源不足のため繰り入れる法定外繰入金は、約51億9188万円となっており、国保加入者一人当たりおよそ2万8000円に相当しております。以上のような状況にある中、国民健康保険料について区独自に軽減措置を実施することは、23区の共通基準に基づく統一保険料方式を行っていることから、困難であると考えております。

地域経済をあたためる中小企業対策について

【金子議員】
最後に、地域経済をあたためる中小企業対策について質問します。
大田区は昨年秋に、製造業・商店など全数調査を行いました。それと並行して、不況打開大田区実行委員会が、区内の1人から10人の町工場の独自調査を行っています。2月16日付のニュースで広報していますが、この調査で新しい視点が得られたということです。
中小零細企業といえども、正規雇用の割合は92%、正社員が当たり前なのです。非正規雇用が40%を超える日本社会で、安心して働き続けられる雇用体制が、高度な技術力を支えているのです。この調査企業の受注先の53%が区外、外注先の65%が区内であることです。大田区の工場集積の特徴は、受発注構造にあり、中堅企業が大企業を含む全国の企業から受注し、仕事を区内の中小工場にまわし、その技術力で作られた製品・部品を全国に納品しているのです。この受発注構造が中小零細工場にも生きていることがわかった、ということです。父親が倒れて入院中で、息子さんが後継者の工場では、お父さんの仕事仲間の人たちが、仕事まわしをしている、ということを聞いて、そういう助け合いもあるのだと、感動しましたが、非常時だけでなく日常的に仕事まわしが行われています。政府の大企業優遇政策で、低単価、短納期、不況時の下請け切り捨てなど、その工業集積をこわす、下請けいじめが行われています。消費税8%への増税が、売り上げが減った67%、変わらない31%増えた2%という結果で、円安による材料代の急騰に、消費税増税が追い打ちをかけています。そういう中で、経営努力とネットワークでモノづくりを維持して頑張っている状況が明らかになったということです。
大田区の中小零細工場集積は、日本のモノづくりの技術的基盤であり、この宝の灯を消さない行政の支援が、今なにより急いで届くことです。
2014年の4定で、共産党区議団が質問した「小規模企業振興基本法」を生かして来年度予算への準備を進めているか、について、「地方公共団体の責務として区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、実施すること。小規模企業が地域社会の形成に貢献していることについて、地域住民の理解を深めるよう努めることを規定しています。それらは区の産業振興施策策定のうえで前提にすべきものであるため、他部局と十分に連携し、区内産業の活性化や特色ある地域社会の実現を目指してまいりたいと考えております」と産業経済部長が答弁しています。
今回の質問は、それを踏まえて、より具体的に発展させるため、モノづくり大田の目指すべき方向性を明らかにしていきたいと思います。
外からの呼び込みと大型開発に頼る破たんした振興策から、地域にある力を活かし、伸ばす産業振興策、経済政策への転換こそ求められています。地域に根を張ってがんばっている中小企業、産業を応援し、地元の資源を活かした魅力ある事業発展を支援してこそ、本当の地域再生をはかることができます。再生可能エネルギーの拠点を地域に作るなど、地産地消を勧めることも、地元を潤し、雇用の拡大など地域経済の好循環をつくりだします。地域にある力を元気にする振興策をすすめてこそ、若者をはじめとした定住の拡大、人口回復にもつながり、地方経済と地域社会の持続可能な成長に道を開くことができます。
まず、地域にある力をどう活かしていくかについてです。中小零細企業にとって、後継者を育てることは、その企業だけの努力では困難です。
●後継者育成とネットワークへの継続的な支援が必要です。
大田のモノづくりは仕事まわしといわれるネットワークで形成されてきたこと、中小零細工場のネットワークでモノづくりを存続させる努力が続いていることは重要です。後継者がいなければ、この努力が報われません。東京都が正社員として採用する場合に年額150万円を補助する制度を来年度予算で実施することになっています。これとあわせて、大田区が50万円を補助すると、後継者育成が画期的に進みます。それと合わせて、先に述べたネットワークを維持するための継続的な支援を求めます。おこたえください。

【産業経済部長】
後継者の件でございますが、区は、既に後継者を含めたものづくり人材の育成を目的に、「大田の工匠による技術指導・相談事業」や「次世代ものづくり人材育成事業」、「高等専門学校を活用した中小企業人材育成事業」等を実施しており、後継者等の育成を支援しております。東京都の新規補助制度の詳細については承知しておりませんので、対象となる企業の範囲など、幅広く情報収集してまいります。次にネットワークについてですが、発注企業が外注先を見つけられないような場合は、専門相談員による受発注相談、あっせんを行っています。また、受発注や技術提携などの情報交換をする場としての受発注商談会なども開催しております。各企業が有するものづくりネットワークに加え、受発注支援などにより、大田区の工業集積の維持が図れるよう取り組んでおります。

【金子議員】
●次に工場家賃や賃金への直接支援です。工場家賃や賃金への直接助成は、特に後継者育成に有効です。経営者の時間単価は驚くほど安い状況で、工場家賃を払うために、年金をつぎ込んだり、アルバイトをして支える状況です。後継者がいなければ廃業するしかありません。直接支援こそ地場産業の底上げになります。お答えください。

【産業経済部長】
工場家賃や賃金への直接支援についてのご質問です。区は、後継者育成に寄与する人材育成事業をはじめとして、事業承継に関わる個別相談やセミナーを既に実施しております。積極的な事業展開に取り組もうとしている企業には、取引拡大の支援、新市場の開拓支援、新製品・新技術開発支援策等を活用いただいております。各企業は、各種支援を受け、事業に取り組む一方で、企業経営は、新分野進出、販路開拓、事業の効率化などに自ら主体的に取り組んでいく必要があると考えます。工場家賃や賃金など、企業の経費に直接補助をすることは考えておりません。

【金子議員】
次に、原発に代わる自然エネルギー産業を大田区に育成することです。
私は、2月22日日曜日に、地域の方々と、住民の方から要望され、西六郷・仲六郷の6か所の空間放射線量測定をおこないました。そろそろ原発事故から4年になろうとしている時ですが、屋外の大気中にはまだ影響があるのです。
●原発再稼働などとんでもないことです。区から新製品・新技術開発支援事業で助成を受けている風力発電があります。この際、再生可能エネルギー、自然エネルギー産業に特化した補助金をつくるべきです。こういう産業を育成することは、モノづくり大田区の使命ではないでしょうか。お答えください。

【産業経済部長】
再生可能エネルギー、自然エネルギー産業に特化した補助金をつくり育成することについてのご質問です。再生可能エネルギー、自然エネルギー産業は、医療や航空・宇宙分野と並び、区内ものづくり産業の活性化につながる成長分野として非常に重要であると捉えております。既に区は、「新製品・新技術開発支援事業」、「新製品・新技術コンクール」を実施しており、議員ご指摘のように、「風力発電」をテーマとした事業を採択しております。今後も中小企業の製品・技術開発を促進してまいります。したがいまして、再生可能エネルギー、自然エネルギー産業に特化した補助金の創設については考えておりません。

【金子議員】
最後に、産業経済費の増額・職員増員についてです。14年度に行った製造業や商店の全数調査を、分析して新しい計画を立てることになります。この新しい計画を立案し、モノづくり大田の事業を全庁的に展開していくために大幅増員が必要です。
新製品・新技術開発支援事業は、中小企業を励ますものでしたが、今回の予算案には載っていません。産業振興協会に移したということでしたが、1億円の予算だったものが8000万円に減額されています。これでは区がモノづくりを支援する任務を放棄したことになります。予算を2倍、3倍と増やして規模と内容を実情に応じて使えるよう増額すべきです。
ものづくり集積都市間連携事業は、他市との連携が多いのですが、大田区内でネットワークのために学識経験者も交えた区民中心の懇談会が持たれることが必要です。また、廃業などによって地域のネットワークが壊れた時にそれを修復するための支援が今後はますます重要になってきます。そういう相談にのるにはやはり区の職員が対応することが必要です。目玉の事業も、大田ブランド発信事業は150万円、研究開発マッチング事業に1339万円、新事業活動助成100万円と、呼び込みの事業であり、しかも規模が小さいです。
●モノづくり大田を区が発信するには、全庁挙げて横断的に取り組むことが求められます。予算も人も確保して、文字通り全庁挙げて取り組むよう求めます。

【産業経済部長】
ものづくり大田を発信するために、予算も人も確保して全庁挙げて取り組むことを求めるとのご質問です。区は、おおた未来プラン後期において、基本目標2で「まちの魅力と産業が世界に向けて輝く都市」を掲げ、様々な産業支援や創業者支援について取り組んでいるところです。大田区のものづくり産業は、大田区の強みの一つであると考えており、施策を推進するための必要な予算と人材については確保できていると認識しております。既に、観光施策との連携をはじめ、環境施策、地域の安全安心、食の安全、将来の人材確保など、他部局と連携した様々な取り組みを実践しているところです。

以  上

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