第4回定例会一般質問(速報)―黒沼議員



(映像は大田区議会ホームページより:42分)

【黒沼議員】
日本共産党区議団の黒沼良光です。

区内中小企業・商店の全数調査の分析にもとづいた中小企業発展について

【黒沼議員】
はじめに地域経済振興政策について伺います。
先日、地域の町工場や商店を訪問いたしました。NC旋盤ではなく汎用機を使っているI製作所を尋ねたところ機械が一つも動いていませんでした。「一緒に働いていた息子は残念だが後継を断念して外資系の会社に移った。幸い給与もよくいまでは息子に食わしてもらっている。しかし息子が使っていたNC旋盤は私は使えないので借金だけ残った。私の少ない年金だけではどうしようもない、何とかしてほしい」という胸が締め付けられる現状でした。ある八百屋さんを訪ねたところシャッターが閉まっていました。「先日一緒に仕事をしていた兄弟が働きすぎで脳こうそくで倒れ、市場に仕入れに行かれなくなっていたので、やめることにした。4月からの消費税増税は値上げできずかぶるしかなかったし、売り上げも3割減っていたので見切りをつけました。」話してくれたおかみさんの顔は苦渋に満ちていました。このように街は不景気と消費税増税で大変な状況です。
こうした時期に、今年の6月、小規模企業振興基本法が51年ぶりに改定されました。本法律は日本経済の根幹を支える中小企業の9割を占める小規模事業、中でも従業員5人以下の小企業の[振興に関する施策を総合的・計画的に推進]することを目的にした法律です。これまでの中小企業政策は創業や急成長型の中小企業に特化していましたが「持続的発展」をめざす小規模事業者の支援を真正面から掲げたことは中小企業政策の大きな転換を意味します。なぜこの小規模企業振興基本法ができたのかを経済産業大臣は「小規模事業者は地域の経済や雇用を支える極めて重要な存在であるが売り上げや事業者数の減少、経営者の高齢化等の課題を抱えておりその打開のため小規模事業者に焦点を当てた」と説明しています。大田区でも小規模企業を中心にした廃業は増加の一途をたどっておりこの法律を生かした抜本的な計画が求められていると大田区も受け止めておられると思います。しかし政府は財源の保証をしていません。大田区は国に地方交付税の増額を強く働きかけていくことが求められています。
本法律は中小企業一般と小規模企業の違いを明確にし「個人事業主をはじめ、多様な事業を創出する小企業が多数を占める小規模企業の発展を図ること」としています。大田区は「産業のまちづくり条例がある」とこれまで答弁してきました。しかし大企業と中小企業をごちゃ混ぜにした条例ではだめだと国が手本を示したのです。墨田区が初めて中小企業振興基本条例を制定するうえで大きな力になったのが幹部職員による全数実態調査です。職員自身が中小企業、小規模事業者の役割の重要性を痛感し、区の産業政策の策定や振興に大きな力になったということです。東大阪での実態調査も注目を集めています。墨田区の中小企業振興基本条例の目的は「中小企業の健全な発展と区民福祉の向上に寄与することを目的とする。」と明確にしています。東大阪の中小企業振興条例の目的は「中小企業の振興に関する基本理念及び施策等を定め、地域経済を活性化し、豊かで住みよいまちの実現に寄与する」とあります。「大企業者の役割」についても「中小企業の振興が地域経済の活性化に重要な役割を果たすことを理解し施策の推進及び中小企業の健全な発展に協力するよう努めるものとする」と明記しています。神奈川県知事は議会での答弁で「小規模基本法の視点で条例も見直す、その中で調査や意見聴取の方法も検討する」と答弁しています。
●お聞きします。大田区も墨田区や東大阪市、神奈川県も参考にして、小規模基本法の視点で「中小企業振興条例」に変更すべきです。また、「地方自治体は、施策を策定し実施する責務を負う」とされ、その前提に“実態調査”を行い公表することが義務付けられています。大田区はタイムリーに“実態調査”中ですので全国に先駆けて施策策定を求めますがお答えください。

【産業経済部長】
「産業のまちづくり条例」を「中小企業振興条例」に変更すべきとのご質問ですが、「大田区産業のまちづくり条例」は、産業者を中心に区民及び区が一体となって産業のまちづくりを推進することを目指すものとなっています。基本施策として、中小企業の経営の安定と改善も明文化し、小規模企業振興基本法の改正に明記される「事業の持続的発展」や国の定める基本計画との連携についても網羅する内容となっています。したがいまして、現状では「産業のまちづくり条例」の変更は予定しておりません。また、実態調査を踏まえた施策の策定を求める、とのご質問ですが、今年度実施しております実態調査は、経営上の課題や業種間の連携など、踏み込んだ内容を盛り込んでおります。基礎データを収集すると共に、調査結果により集積したデータをしっかりと分析し、今後の産業政策立案を図ってまいります。

【黒沼議員】
現在、大田区は、庁内報10月号でも「国家戦略特区の活かした街づくりをすすめます」とのタイトルで特集を組んでいます。テクノプラザ7月号で産業経済部が本庁舎に移転した理由として「国家戦略特区に指定されたこと」が大きな理由だとしています。
しかし「国家戦略特区法」は「成長戦略」を実行するうえで大企業が気に入らない規制や制度を撤廃するものです。その多くは国民の暮らしや安全、労働者の権利を守る役割を果たしているものです。国民になくてはならないルールを壊そうとしているのが国家戦略特区です。その証拠に、国家戦略特区は首相と大企業代表などで構成する諮問会議で決めたもので規制や制度を徹底的に取り除く「特例措置」はじめ、税金の優遇、外国企業を呼び込むための基盤整備などまさに大企業の利益追求のために至れり尽くせりです。
国際戦略特区で建前にしていた「地域の活性化」という言葉は国家戦略特区では消えました。地域の住民生活や産業振興など眼中にないことを示しています。区長は第3回定例議会の代表質問に「国際戦略特区大田未来プラン後期の取り組みを加速させる有効な手段と考えております」と答弁していますが間違いです。医工連携も特区構想では富裕層を対象にした公的医療制度の緩和であって医療の安全をないがしろにし、もうけのための医療に変質させる危険をはらんでいます。しかも区内には関連企業が約40社程度しかないと区も答弁しています。4000社全体の利益にはならずごく一部の取り組みにしかなりません。大企業がやりたい放題できる国際戦略特区は、大企業にとって“楽園”であっても国民にはとりわけ大田区の中小企業・零細企業には“ルールなき無法地帯”でしかありません。
●お聞きします。このような「国際戦略特区」への邁進(まいしん)はきっぱりとやめて「小規模企業振興基本法」に基づく施策の策定に全力を挙げるべきです。お答えください。

【産業経済部長】
「国家戦略特匡」への邁進はやめて、「小規模企業振興基本法」に基づく施策の策定に全力をあげるべきとのご質問ですが、区では、「国家戦略特区」を重点的な事業ととらえ、羽田空港跡地に予定している産業交流施設への制度活用や、医療分野や創業人材など高度外国人材の受入れ推進などの分野における規制緩和への取り組みなどを通じ、区内産業の活性化とともに日本経済の再生を図ることを、適宜、区議会へ報告させていただきながら進めております。また、「小規模企業振興基本法」に示す基本的施策である「国内外での販路開拓支援」「事業承継、創業・第二創業支援」などは、大田区では既に産業振興施策として着手をしております。今後も、区内産業者の皆様が利用しやすい制度となるよう、適時対応してまいります。

【黒沼議員】
次に、小規模企業振興基本法を生かしての施策拡充について、お聞きします。
●法律の第7条には「地方自治体はその区域の条件に応じた施策を実施する義務を負うことが明記されました。お聞きします。来年度の予算にその準備は進んでいるのでしょうか、お答えください。

【産業経済部長】
小規模企業振興基本法第7条の規定に沿って来年度予算への準備を進めているか、とのご質問ですが、同法第7条は、地方公共団体の責務として、区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施すること、小規模企業が地域社会の形成に貢献していることについて、地域住民の理解を深めるよう努めることを規定しています。それらは区の産業振興施策策定のうえで前提にすべきものであるため、他部局と十分に連携し、区内産業の活性化や特色ある地域社会の実現を目指してまいりたいと考えております。来年度以降につきましても、このような考え方に沿って、事業の推進を図ってまいります。

【黒沼議員】
次に施策の拡充について順次お聞きします。まず「商店リニューアル助成」についてです。先日、党区議団は、高崎市に「商店リニューアル助成」を視察に行ってきました。店の改装や備品購入費用の50%上限100万円を助成することで商店主に笑顔を広げ仕事を請け負う地元業者の新たな仕事おこしにもつながっています。昨年度は1年間で申請738件、当初1億円が2回の補正を行い助成額は4億4千万円に増額、経済効果は10億2700万円余りで経済波及効果は2.3倍に及んでいます。当初3年間で1億と計画していたのがあまりにも評判になり市が予算増で応えてきたものです。高崎市長は「ちょっとした金額では経済波及効果は充分ではないと3年間で3億の金額にしたがそのことで市の税収も上がってきている。当初マスコミの一部にはバラまきと報道されたが続けてよかったと思っている」と述べていました。商工会議所の役員も「商店街の打開策として次の世代に胸張って継がせようと後押しをしてくれる制度」と高く評価していました。
●お聞きします。小規模企業振興基本法を生かした施策として、今回私ども条例提案の準備もしておりますが「商店リニューアル助成」を大田区でも設置を求めます。お答えください。

【産業経済部長】
商店リニューアル助成を大田区でも設置を、とのご質問ですが、区は、商店支援のひとつとして、区内の小売業、飲食業、サービス業を営む事業者を対象に、繁盛店創出事業として、店舗改修費用の一部助成を実施しております。区といたしましては、本制度を活用し、各商店のリニューアル、経営改善を図り、売り上げの増加と商店街のにぎわい創出につなげていただきたいと考えております。そのようなことから、新たに「商店リニューアル助成」の設置は検討しておりません。

【黒沼議員】
●併せて、「住宅リフォーム制度」についてお聞きします。現在250件の実績で予算残額950万円程とのことです。景気の落ち込みが影響している物と思われます。完全執行のために先日区長に緊急要望しましたが、補助率も高めて年末対策の一環とするよう求めました。産業面での経済波及効果からも重視し税収面での増額にも反映するような予算の抜本的増額を求めます。現状では規模が小さすぎます。お答えください。

【まちづくり推進部長】
住宅リフォーム助成制度についてのご質問ですが、この事業は地域経済の活性化と安全、安心、快適なまちづくりを目的としており、今年度の予算額は、昨年度の当初予算に対して1000万円増の4000万円とさせてただいております。現在の申込状況は当初の想定どおり推移しております。助成金は年度内に工事が完了するものを対象としており、このまま推移すれば予算内で執行できる見込みと考えております。今後も一人でも多くの区民の皆様にご活用いただけるよう取り組んでまいります。

【黒沼議員】
「住宅リフオーム制度」で要望しておきます。遮熱塗装についてですが助成からはずしてしまったとのことです。区は遮熱塗装を単なる塗装と勘違いしているのではないでしょうか。
遮熱塗装はエコ事業です。遮熱塗装とは近年の地球温暖化の流れを受け省エネルギー対策の一環として遮熱性を特徴とする塗装をさしており屋外での赤外線を有効に反射させることで単なる錆止めではありません。一般塗装では屋根の温度が72.6度の時、遮熱塗装では42.6度と40%以上の効果があるとも言われております。二定でのわが党の代表質問に、区長は「エコ、防犯、防災等の工事が含まれれば助成対象となる」という答弁ですが助成対象には本体工事が条件であって部分工事は該当しないとしています。しかし家屋全体の遮熱塗装などは立派に本体工事です。できるだけ切り捨てでなく、助成すべきです。要望しておきます。
【黒沼議員】
施策の拡充の次の質問は私が決算特別委員会で取り上げた新製品開発支援事業についてです。62件の申請があったにもかかわらず19件しか交付されず1634万円の不用額を出してしまったことの改善を求めました。区が審査基準に充てはまらなければ切り捨てるという冷たいやり方で無く、交付できるよう事前の行き届いた助言などで申請の内容を高めて交付できる対象者を増やしていくことこそ大田区の役割ではないでしょうか。視察した高崎市では、職員がやりがいを持って取り組み、少しくらい不備があっても助言をして補助制度が受けられるようにしているのが特徴です。また予算規模が小さいことも利用しにくい原因になっています。
●財政規模も増やし、区民の願いに応えた制度の拡充を求めます。お答えください。

【産業経済部長】
新製品・新技術開発支援事業の予算規模を増やし、交付対象者を増やすべきだとのご質問ですが、新製品・新技術開発支援事業は、区内ものづくり企業の技術力、製品開発力の向上を図り、高付加価値を産み出すことで、区内産業と地域経済の活性化に結び付けていくことを目的としております。支援事業の採択に当たっては、本事業の目的にふさわしいかどうかを、学識経験者や中小企業診断士など専門家の意見や判断を参考にしながら、新規性、優位性、市場性、開発体制、開発スケジュール、資金計画など様々な観点から審査をしており、区民の皆様からいただいた税金が有効に活用できるよう努めております。区内産業の技術力・製品開発力の促進によって競争力を高めていくという事業の目的が、最小の経費で最大の効果を目指す中で達成されることが重要と考えます。

【黒沼議員】
3番目は経営革新緊急支援事業の復活です。当時の事業の当該委員会に提出された区の報告書には、54%が利益増加につながった、65%が経営革新計画の策定に意義があった、96%が役に立ったなど大変に効果のあったものです。今回の小規模企業振興基本法の精神を先取りしたような制度で先の町工場訪問でも6割以上が「新製品開発支援事業」も悪くはないが使いやすい「活性化支援事業」の再開を望んでいます。
●上限50万、100社の取り組みだったと思いますがこれも規模を大きくして来年度からの実施を求めます。お答えください。

【産業経済部長】
経営革新緊急支援事業の復活についてのご質問ですが、ものづくり経営革新緊急支援事業は、区内ものづくり企業の経営改善や革新を促すことを目的として、経営に関する専門家を派遣し、経営革新計画を策定・実施することを支援するものでした。当該事業は、経営を見直す契機となり、2年間で一定の目的は達成したと認識しております。現在、区は、区内企業の技術力・製品の開発力の向上に注力し、「新製品・新技術開発支援事業」を拡充し実施しております。開発された技術や新製品を活用し、技術の高度化や新分野、新市場進出等を図ることで、経営力強化につなげていく事業となっております。この制度を活用し、技術力の向上などにつなげていただければと考えます。

【黒沼議員】
次は新たな分野です。日本共産党大田区議団は2001年5月、政務調査費を活用し、独自に「大田区機械金属工業の課題と展望」を発表しました。この調査では、「日本の製造業企業の海外移転は90年代に急速に増加し海外進出企業が部品を調達する割合は日本の自社工場から39.8%、現地企業から39.1%、日本の協力企業から14.7%で日本の協力企業からの部品調達は少なく、これが仕事の減っている大きな原因となっています。」と分析しこの対応を求めてまいりました。
仕事を増やしていくには、需要開拓が求められます。大田区がこれまで手掛けてこなかった福祉機器、自然再生エネルギー機器への進出もあります。それぞれが部品加工であってもネットワークで製品の完成はできます。ボブスレーがその典型例です。この点で特に、「自然再生エネルギー産業のまち、大田区」をキャッチフレーズに大々的に取り組んではどうかとの提案をさせていただきます。区内で原発部品加工に携わっている工場も少なくありませんが危険な原発は直ちに廃止しても解体に60年かかると言われていますから仕事が無くなる心配は当分ありません。区内企業の仕事は続くことに加えて自然再生エネルギーの仕事が加わることで、かえって仕事が増えます。原子力依存から自然再生エネルギーへの大転換が大田区に新たな活気をもたらすことでしょう。ドイツに視察にいかれた議員もおりますがドイツはいち早く原子力発電の廃止を決定し自然再生エネルギーへ切り替えていますが650万人の雇用拡大も生み出しているとのことです。自然再生エネルギーは枯渇の心配がありません。クリーンなのも特徴です。化石燃料も減らしていかれます。エネルギーの国産化をすすめることになり、「資源の無い国からの転換になり日本経済の構造を大きく転換するチャンスです。そこに大田区のモノづくりの技術を貢献できるならば全国、世界に有名になり「自然再生エネルギーのまち大田区」として大きく羽ばたけます。現在の特区構想に注いでいるエネルギーをこの道に注ぐことこそ大田区の区内企業の世界に羽ばたく方向ではないでしょうか。
●そこでお聞きします。新製品開発支援事業も活かせますが規模が小さすぎて使いにくいという声が少なくありません。そこで新たに自然再生エネルギー開発・研究・実用化支援事業を立あげていただきたいのです。小型の発電装置の開発、製造、維持・管理などは中小企業の仕事を増やすことになります。またイノベーションの大きな起爆剤になります。大田区の自動車産業や原発などで養われた大田区のモノづくり力が生かされます。低エネルギーへの取り組みでも住宅の断熱リフォームはじめ新しい需要を生み出し、技術革新を進めることが期待できます。お答えください。

【産業経済部長】
新たに自然再生エネルギー開発・研究・実用化支援事業を立ち上げてもらいたい、とのご質問ですが、自然再生エネルギーに関運する分野は、医療や航空宇宙などと並ぶ成長分野であり、区内中小企業が自然再生エネルギーの開発・研究・実用化に取り組むことは、区内ものづくり産業の活性化につながるものと認識しております。既に区は、「新製品・新技術開発支援事業」、「新製品・新技術コンクール」、「ビジネスプランコンテスト」などを通じ、自然再生エネルギー分野を含めたチャレンジ企業への支援を行っております。これらの制度をご活用いただくことによって、自然再生エネルギー分野の開発・研究・実用化が進むものと考えます。

サービス切り捨ての「医療・介護総合法」から区民を守る大田区の役割について

【黒沼議員】
次に介護保険について伺います。
先週、62歳の男性が3年間親の介護に明け暮れて疲れ果てた末に脳こうそくで倒れ「生死をさまよっている状態でどうしたらよいか、今後の相談をしたい」との相談がありました。結婚もせずに、クリーニング業を廃業して両親の面倒を長い間見てきましたが先に母親が亡くなり、ここ数年は父親の介護で頑張っていました。ショートステイ利用の時だけ少し休めるだけで夜も眠らず介護しなければならない状態になり相談の翌日亡くなりました。高校時代からスポーツをしてきた病気一つしたことのない丈夫な人だったのにと惜しまれます。一人残された父親の今後が心配ですが私は大田区の介護施設整備の遅れが区民の犠牲を生んでいると思わずにはおれません。
また65歳女性ヘルパーさんは身体介護として時給1,500円で働き月11~2万ほどしかならず年金、4万5千円を加えてようやく16万円程です。全産業の平均29万円と比べても本当に低賃金だと言えます。腰痛、肩こり、不眠などに悩まされながら働いています。45分に減らされたサービスで「充分なサービスを提供できず心苦しい」など業務が過密で精神ストレスも増しているとのことです。こうした劣悪な条件の下での労働で介護制度は支えられています。耐えられず介護現場から去っていく人が多いのも現実です。充実こそ求められているのに、厚生労働省は今月13日に介護報酬の引き下げを発表し介護事業所の存立を危うくしています。
安倍・自公政権は、先の通常国会で「医療・介護総合法」の可決を強行しました。この法律は今述べました介護の状況を一層後退させ要介護者も家族も苦しませる内容です。2006年の要支援制度がつくられた時、要介護1の6割が要支援に追い出されて今度は要支援者から訪問介護と通所介護を介護制度そのものからはずし、自治体の地域支援事業に移行されるのです。公的介護を土台から掘り崩す大改悪法です。このような法案を可決した自公政権に大きな怒りを禁じえません。区長は三定のわが党の代表質問に「利用者の自立した生活ができるよう適切に対応してまいります」と答弁しています。
●そこでお聞きします。移行については2017年3月末までとなっています。2年の猶予があります。それまで現行を継続させることは可能です。区民に周知徹底と大田区の介護制度の現状維持が求められます。そのためには財政的な検討、人的確保など現行を継続させるための充分な時間をとって進めるべきです。来年度は実施せず充分な準備をすべきです。お答え下さい。

【福祉部長】
要支援者の訪問介護及び通所介護の地域支援事業への移行時期についてのご質問ですが、今回の介護保険法の改正に伴い、従来、予防給付として提供されていた介護予防訪問介護事業及び介護予防通所介護事業は、区市町村が行う地域支援事業の一つとして介護予防・日常生活支援総合事業に移行することになりました。介護予防・日常生活支援総合事業は、既存の介護事業所によるサービスに加え、住民主体の多様なサービスの充実を図り、住民主体のサービス利用拡充、効果的な介護予防ケアマネジメントなどにより、結果として費用の効率化が図れることを目指しております。この総合事業は、平成29年4月までに実施することとなっていることから、区としては、平成27年4月実施も視野に入れ、検討してまいりました。一方、現時点においても国から実施にあたって必要な詳細な事項が示されていないため、平成28年4月を目途に実施してまいりたいと考えております。

【黒沼議員】
15日、高齢者の要介護認定の更新の有効期限を更新申請の場合は最大2年まで延長することを明らかにしました。厚労省の委託調査では新規申請から12か月以内に状態が変化した人は46%に上りました。有効期間の延長はこうした人たちの認定の機会を奪うことになります。介護崩壊ともいえる改悪を続けています。これは2015年度以降からの総合事業を始めた自治体から適用するとのことですが介護サービス切り捨てのテコとする狙いです。とんでもないことです。
●お聞きします。「介護報酬の引き下げで介護事業所の存立を危うくする不安」について大田区は介護事業者からの意見、要望を聞く場を予定しているとも答弁しています。聞いたのでしょうか、お答えください。

【福祉部長】
介護事業者からの意見聴取についてのご質問でございますが、本年9月には、介護予防・日常生活総合支援事業について、訪問介護事業所及び通所介護事業所に対してアンケート調査を実施しました。アンケートの結果、区内訪問介護事業者からは150事業所のうち96事業所、区内通所介護事業所からは、201事業所のうち128事業所から回答を得ました。アンケート結果の主な内容は、国が定める上限金額程度で訪問介護相当サービスを実施した場合、75%の事業所は指定を受けるとしております。また、介護予防・日常生活総合事業について、大田区介護保険サービス団体とこれまで3回意見交換会を開催しており、総合事業の実施時期や人材育成、訪問介護員の専門性の評価などの要望をいただきました。さらに、10月には、介護関係の区内NPO団体とも意見交換会を開催し、地域包括支援センターの取り組みの強化などのご要望を頂戴しました。

【黒沼議員】
「総合法」には次のようなとんでもないことが含まれています。一つは、“代替えサービス”の導入です。地域支援事業の「介護予防事業」に、要支援者の訪問、通所介護の“代替えサービス”を導入し、「専門的サービスからボランテイアによる低廉なサービスに変えます。厚労省の「ガイドライン」では、冒頭で要支援者の多くは、食事・排泄などの日常生活行為は「自立」しているとし、掃除や買い物などの生活行為に困難があるのは掃除であれば掃除機からほうきやモップに変える、買い物であればかご付歩行車を活用するなどで要支援者の「自立意欲の向上」を図るべきとしています。驚くべき非科学的な要支援者像です。さらに「相互の助け合い」というやり方で、要支援者に、より重度の高齢者を助ける「支え手」となることを求め、そのために今回保険料による介護サービスを止めることにした、というのが「ガイドライン案」の説明です。これは“要支援者は自立せよ”、「公的支えをなくせ」という方針と言えます。二つ目は水際作戦で要介護認定を受けさせないことです。三つ目は「かがめるようになる」「一人で買い物に行けるようになる」などの目標を持たされ、行政から「目標達成」とみなされるとサービスの「終了」などを求められ、人間的扱いもしないようなカッコつき自立の強制です。このようなことが実施されるならば、専門的サービスは50%に減り新規利用者はボランティア等のサービスを受けざるを得ず、「多様なサービス」には研修受講者でもよくなりシルバー人材センターの活用も可能というサービス低下になります。要支援者はけっして「軽度者」ではありません。介護認定では無視される生活環境、生活力、精神状態、生活意欲、経済力、地域関係などを全体を把握するための知識と視点、サービスの技法と倫理観を持ち、熟練した対人援助をおこなうことのできる専門職を備えた支援とボランティアによる支援は役割が違います。それを専門職でないボランティアが担うことは無理です。それぞれがお互いに補充しあってこそ効果を発揮するのです。
介護労働者の平均月収は20万8千円、全産業の平均29万6千円を大きく下回っています。こうした低すぎる賃金と長時間労働やサービス残業、福祉の初心を生かせない労働環境など、劣悪な労働条件のために、介護現場は人手不足に陥っています。国費の直接投入による改善に向けた施策が求められています。公的介護の充実は政府の「産業連関表」によっても好循環をもたらすと認めています。介護の提供基盤を強化することこそ経済成長や財政再建に道を開きます。自治体には、その悪政の防波堤になることが求められます。
また、今以上の保険料の値上げも計画されていますが、納めることができるでしょうか。これは「要支援者の状態悪化を招くだけ!結局重度化を招き給付費膨張化を招くだけ」と介護現場からも声が沸き起こっています。あるご家庭の事例を紹介します。事業収入1,500万円、所得360万円の建設業を営むAさんは妻、10歳の子どもの3人暮らしですが、介護保険・国保料で558,960円、国民年金360,960円、所得税93,500円、住民税202,500円、事業税35,000円、消費税214,200円などで合計146万5120円、何と所得の40%にもなります。月17万8千円にしかなりません。夫45歳、妻40歳、子ども10歳の家族でどうやって暮らせというのでしょうか、「何度計算しても、やり繰りしても払えない」と悲痛な訴えを受けました。今でも家庭を崩壊させるような状態です。これ以上の介護保険料の値上げは何としても食い止めなければなりません。
●区は、これまで「第6期事業計画で検討してまいります」の答弁一辺倒でした。それは政府の言うとおりにすることもあり得ますということも含みます。今、区民が求めているのは、そんな答弁ではありません。「保険料は値上げせず、区民の介護はこれまで通り維持します。」という姿勢を望んでいるのです。答弁を求めます。

【福祉部長】
第6期の介護保険料についてのご質問ですが、大田区では、高齢者が増加しており、高齢化率は、平成24年度には21.2%、平成25年度には21.7%であり、上昇傾向となっております。これに伴い、保険給付費は、毎年、増加しており、平成24年度には399億円、平成25年度には419億円であり、5%の伸びを示しております。このような傾向は、今後も続くものと推計され、介護サービスを利用する方が多い後期高齢者人口を見ると第5期計画期間ではおよそ3000人が増加したのに対し、第6期計画期間ではおよそ5000人の増加が見込まれ、保険給付費は、第5期の1274億円から第6期では1484億円となり、第5期と比べ、16.5%の増加になるものと見込んでおります。また、保険給付費に占める第1号被保険者の負担割合は、第5期では21%であったものが、制度の見直しに伴い、第6期では22%に増加することが既に国から示されております。これらを勘案しますと、現時点では、第6期の保険料基準額の月額は第5期を上回るものと見込まれます。今後、国の平成27年度予算編成過程の中で、所得の低い保険料段階への公費投入や介護報酬の改定が示されて参ります。区としては、これらを踏まえ、介護保険財政の安定的な運営に配慮した介護給付費準備基金の取り崩しや保険料の多段階化などについて慎重に検討し、適切に対応してまいります。

【黒沼議員】
次に、引き続き特養ホーム増設に公的用地、民有地活用をとの提案です。西糀谷一丁目にある気象庁宿舎が来年空地になります。先日、財務省に行きレクチャーを受けてきました。すでに大田区に打診しているとのことでした。都市計画決定道路がある土地ですが2階建てだった制限も3階まで可能など緩和措置もあり約3000㎡の土地は100名基準の特養にピッタリです。塩漬け都市計画決定道路計画の廃止の動きも出てきそうです。さらに馬込のような小規模特養ならば認可保育園と合築の可能性も出てきています。まだ住んでいる社員もいらっしゃるのですがその所属する労働組合にも問い合わせたところ「マンションになるよりも公的施設ならば賛成です。」との意向も聞くことができました。
●もう障害はありません。区の前向きな決断を求めます。お答えください。

【福祉部長】
西糀谷一丁目の気象庁跡地を活用した特別養護老人ボームの整備についてのお尋ねですが、現在、区では高齢者福祉計画・第6期介護保険事業計画の策定作業を進めているところであり、平成27年度から平成29年度の次期計画の中では、特別養護老人ホームの整備については、295床の増員を検討しているところです。介護基盤整備のため、未利用国有地や都有地等を積極的に活用していくことは有効な手法と認識しており、区としては、情報提供の充実等を国や東京都に働きかけてきたところです。議員お話の用地ですが、敷地中央に都市計画道路補助線街路第39号線が南北に計画され、計画道路部分が敷地面積の1/3以上を占めており、その部分は建物の構造等に制限がかかることになります。一方、特別養護老人ホームの東京都の補助協議では、都市計画道路の区域内での建物構造や都市計画との整合性など、立地場所の妥当性も審査されることとなります。したがいまして、現在のところ区としては高齢者施設としての活用は考えておりません。

東京蒲田医療センターの「医師による分娩」の再開について

【黒沼議員】
最後に東京蒲田医療センターの「医師による分娩」の再開の見通しについて伺います。東京蒲田医療センターは独立行政法人「地域医療機能機構」で医療のみならず、保健、介護、衛生でも地域に役割を果たすことを法律は求めています。
具体的には地域連絡協議会をつくって地域のニーズに応えていく体制を法律は求めています。新しく院長になられた内野医師は産婦人科医で先日お会いしたところ「医師による分娩の再開」を強く望んでおられました。以前の病院では1300児のお産の実績があるので大丈夫です」と言います。1年程度でめどをつけられればともおっしゃっていました。力強い限りです。
●地域連絡協議会、1回目の会合が持たれたとのことですが区は独立行政法人「地域医療機能機構」の目的を生かして、区としてもぜひ「医師による分娩の再開」を求めていただきたいのですがいかがでしょうか。お聞きします。

【保健所長】
東京蒲田医療センターの、分娩再開要望に関するお尋ねですが、社会保険蒲田総合病院は、本年4月から、独立行政法人地域医療推進機構による運営に移管され、ジェイコー東京蒲田医療センターに改められました。今後は、独立行政法人地域医療機能推進機構法に基づき、地域の実情に応じた運営を行うこととされています。本年8月には、第1回の東京蒲田医療センター地域協議会が開催されました。病院からは、分娩の再開につきまして、その意向があることを伺っています。ただし、分娩を再開するにあたっては、人材の確保など、多くの課題があることも聞いております。

【黒沼議員】
最後に昨日総務財政委員会で審議された公務員給与引き上げ関連条例について、以下の理由で、すべての議案に賛成しました。
15年ぶりの公務員給与の引き上げは、最低賃金の引き上げや民間企業における賃金上昇に波及する効果があります。なぜならこれまでは「公務員給与が下がったのだから民間も」下げ競争と言われるように下がり続けたからです。公務と民間の給与の関係で言えば、公務員の給与を引き上げ、それを指標として民間、とりわけ中小企業等の労働者の給料や最低賃金を引き上げていくと言うのが本来の姿です。その場合、「公民格差の解消」のために、国が中小企業等を援助するというシステムをつくることが必要です。

以  上

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