第3回定例会一般質問(速報)―すがや議員



(映像は大田区議会ホームページより:42分)

「子ども・子育て支援新制度」実施のもとで、保育の質と量の拡充について

【すがや議員】
まず、子ども・子育て支援新制度について質問します。
2012年度に成立した子ども・子育て関連3法を受け、来年4月から子ども・子育て支援新制度をスタートするために、大田区でもこの議会に5本の条例が提出されました。日本では、児童福祉施設としての機能を持つ保育所と学校教育施設としての幼稚園の二つの制度が併存し、戦後六十数年の歩みを重ね、それぞれが地域に必要な施設として定着してきました。それを大きく変えるのが子ども・子育て支援新制度です。この狙いは、保育の市場化を目指したものです。保育関係者が望んでもいないのに、国は保育制度について、2000年の介護保険制度、2006年の障害者自立支援法の福祉制度改革と軸を一体に進め、2009年に誕生した民主党政権は、幼稚園と保育所の一元化をつけ加え、保育所全てを総合こども園という新しい施設にすることを柱に関連法案を国会に提出、しかし、修正を繰り返し、最終的に自民、公明、民主の3党合意によって認定こども園を提案、2012年8月の国会で子ども・子育て支援新制度が消費税増税とセットで成立しました。
新制度は介護保険制度がモデルになっており、これまでの市町村の責任によって保育を提供する現物給付の制度を改め、利用者と事業者の直接契約の現金支給の仕組みへの変更です。市町村は保育の契約に介入することはできないので、市町村の責任が後退し、保育への企業参入、市場化に道が開かれました。
一方、公的な保育制度を改悪させないという保護者や保育関係者などの粘り強い世論と運動は、当初は削除される予定だった市町村の保育実施義務をうたった児童福祉法第24条第1項を復活させました。これは現在と変わらない市町村の責任で保育が実施され、私立保育所には市町村から委託費が支給され、保育料も市町村が徴収します。これに対して、第24条第2項に基づく認定こども園、小規模保育所などは、直接利用者と事業者が契約し、保育料も事業者が直接徴収します。このように施設、事業の多様化や、複雑でわかりにくいのが子ども・子育て支援新制度です。
第1に、区民への説明責任についてです。大田区は区民への説明責任を、8月20日、嶺町特別出張所午前10時から、参加者40人、28日、入新井特別出張所午前10時から、参加者31人、31日、本庁舎午後2時から、参加者128人の3回開いただけです。10月から新しく子どもを保育園に入園させる人たちを対象にしたものとしていますが、これで区民への説明責任を果たしているでしょうか。また、現在保育園にお子さんを通わせている方々から、このまま保育園にいられるのだろうか、手続きは必要ないのか、説明会があると知っていたなら聞きに行きたかったなど声が出ています。
●特に、制度が大きく変わるのですから、在園児はもちろん、保育関係者や区民の皆さんを対象とした説明会を再度繰り返し行うべきです。お答えください。

【こども家庭部長】
まず、制度改正に関して、全ての区民を対象にした説明会を繰り返し行うべきとのご質問でございますが、議員お話しのとおり、本年8月に新制度の概要と保育園、幼稚園の利用手続きの変更点などを主な内容とした区民説明会を大森地区、調布地区、蒲田地区の3会場で開催いたしました。また、私立幼稚園、認証保育所、小規模保育事業者などの事業者向けの説明会を7月以降、順次行っているところでございます。保育園などに在園する保護者に対しましては、来月以降、施設を通じて新制度に関する周知を図ってまいります。あわせて、改めて区報で新制度に関するお知らせを予定しているところでございます。なお、子ども・子育て会議の資料や新制度に関する情報については、区のホームページにも掲載をしてございます。子ども・子育て支援事業計画に関しましては、本年12月にパブリックコメントと区民説明会を開催し、区民からのご意見をいただく予定でございます。

【すがや議員】
第2に、大田区がつくる保育園の基準についてです。子ども・子育て支援新制度になっても責任は大田区です。大田区はこれまで、行政、保育関係者、保護者、そして議会などがともに、子どもたちの命を守り育てる大変責任のある事業として、国基準を上回る基準をつくり維持してきました。しかし、今度の条例では、第24条第2項による新たに給付の対象となる小規模保育事業6から19人、家庭的保育事業3から5人、事業所内保育事業、居宅型訪問事業の認可基準を大田区が定めます。
以下、小規模保育事業について質問します。まず、保育にとって一番大切な保育士についてです。国は、A型は全員が保育士、B型は保育士の割合が2分の1以上、C型は市町村の研修を受けた家庭的保育者、無資格でも可としています。この間、幼い子どもの死亡事故を通じて、子どもの命を守るためにも保育の質が指摘され、保育士資格は最優先です。大田区が示した条例は、小規模保育事業B型、保育士資格者6割で、国基準を上回るものですが、これでは不十分です。
また、先日、現在小規模保育所を運営している事業所から相談がありました。全員が保育士資格を持っており、A型を申請したいと申し出たら、B型と言われたとのこと。補助金がかかるからでしょうか。神戸市は、小規模保育は原則としてA型を実施です。ですから、大田区はA型にすべきです。
●どのような施設、事業であっても、子どもの命を守り、保育をひとしく保障する観点から、保育者は全員が保育士資格者のA型にすることを求めます。お答えください。

【こども家庭部長】
続きまして、新制度における小規模保育所の保育士配置基準についてのご質問でございますが、子ども・子育て支援新制度における地域型保育事業は、地域の様々な状況に応じて保育の場を確保するために、待機児の多い0歳児から2歳児を対象とし、区市町村が認可し実施する事業でございます。認可基準の設定に当たりましては、保育施設を新規開設する際の保育士確保の困難性を鑑み、小規模保育所B型につきましては、現行の大田区小規模保育所の配置基準と同じ6割としたものでございますが、国が示した保育士有資格者5割を上回る配置基準となってございます。なお、保育士有資格の配置が10割であれば小規模保育所A型としての認可が可能でございます。
地域型保育事業の実施に当たり、保育の質の確保は重要な課題と認識しており、保育士資格のない従事者につきましては、区長が定める研修の受講を義務づけてございます。また、保育施設に対する巡回指導の実施のほか、区立18拠点園を中心に保育連携推進事業を進め、地域の保育施設への支援や交流などにより保育の質の向上を図ってまいりたいと考えているところでございます。

【すがや議員】
次に、調理の問題です。条例では、調理業務の全部を委託する場合、搬入施設から食事を搬入する場合は調理員を置かなくてもよいとしていますが、とりわけ0から2歳児は食事には配慮が必要です。0歳児保育はミルクの調乳、離乳食と大変気を使う時期で、保育所では栄養士、看護師の配置がされています。特に、複数のアレルギー源を持つ子どもが増える中で、アレルギー食対応は子どもの命に直結するので、ものすごく神経を使います。搬入などとんでもありません。契約ですから、アレルギーがある子どもはお弁当持参や手がかかるので、保育園が受け入れを拒むことも考えられます。また、園舎の中で給食をつくるおいしいにおい、湯気の出る食事は、子どもたちの豊かな成長、発達に欠かせません。人間の味覚を左右する最も大切な時期です。
●子どもたちに安心・安全なバランスのとれた保育の一環としての給食の提供のために、自園調理を原則とし、調理員を配置すべきです。お答えください。

【こども家庭部長】
続きまして、保育施設の調理業務については自園調理とし、調理員を配置すべきとのご質問でございますが、子どもが豊かな人間性を育み、生きる力を身につけていくために、食育は重要であると認識をしており、地域型保育事業の認可基準についての条例案では、居宅訪問型保育事業を除き、原則として自園調理とし、調理設備を設置し、調理員を配置することとしてございます。その上で、調理業務の全部を委託する場合には、調理員を置かないことができるとしているところでございます。認可保育所においても、一定の条件のもと、調理業務の委託は可能であるため、地域型保育事業でこれを認めないことは、認可保育所との均衡を欠くものと考えているところでございます。
また、条例案では、食事の提供の特例として、連携施設などからの食事の搬入を認めてございますが、搬入施設が限定されていることに加え、衛生面、栄養面など業務上必要な注意を果たし得る体制などが確保されていること、栄養士による必要な配慮が行われること、子どもの年齢、発達段階、健康状態に応じた食事の提供が可能であること、アレルギー、アトピーなどへの配慮ができることなどを条件としており、安全・安心な食事の提供は十分可能なものと考えてございます。

【すがや議員】
次に、保育環境についてです。先日、マンション1階にある小規模保育所を見学いたしました。マンションの1部屋を明るくきれいに改装してありましたが、保育室は1歳、2歳のお部屋に分かれるのではなく、ワンルームを間仕切りで仕切ってあるだけ。狭いので6人は保育室の中で保育され、10人の子どもたちは近くの公園の散歩から帰ってきました。園庭がありませんから、暑い夏だったら経験できる子どもたちの大好きなビニールプールや水遊びも経験できません。
●私は、0歳から2歳まで年齢の異なる子どもたちを保育するには、1人当たりの面積基準に加えて、遊びや食事などのスペースと睡眠のスペースなど、年齢差を考慮した複数のスペースが確保できる基準にすべきと考えます。また、4階以上に保育室を設定する場合には、屋外避難階段の必要はなくなりますが、子どもの安全や、いつ来るかわからない地震など災害時の避難を想定して、小規模保育室など原則1階に、それを超える場合は複数の避難路を明確にさせることや職員の加配をすることです。お答えください。

【こども家庭部長】
続きまして、小規模保育所などの保育室についての面積基準及び保育室を1階に配置できない場合は職員の加配をすべきとのご質問でございますが、子ども・子育て支援新制度における地域型保育事業は、地域の様々な状況に応じて保育の場を確保するために、区市町村が認可し実施をする事業でございます。地域型保育事業の実施に当たって、認可保育所を上回る面積基準を義務づけることは、認可保育所制度との均衡を欠くことなどから困難なものと考えているところでございます。
また、火災や地震などの災害発生時に子どもの安全を確保することは極めて重要な課題であると認識をしてございまして、条例案におきましても、2階以上に保育室を設ける場合については、認可保育所と同じ水準の規定を設けているところでございます。具体的には、2階以上に保育室を設ける場合には、耐火建築物または準耐火建築物であること、設置されている階に応じて複数の避難設備等を設けていることなどの条件を規定しているところでございます。このように認可保育所と同じ水準の基準を設けていることから、職員の加配を義務づけることは認可保育所との均衡を欠くこととなり、困難であると考えているところでございますが、保育の質の向上や子どもの安全を確保する取り組みにつきましては、今後もその充実に努めてまいります。

【すがや議員】
次に、認定についてです。新制度では、市町村が保育の利用に際して、保護者の就労に応じて保育の必要性と必要量を認定し、利用調整をします。認定については、1号、3歳以上教育のみ、2号、3歳以上保育が必要、3号、3歳未満保育が必要の区分、さらに2号、3号は、パート勤務対応の保育時間8時間とフルタイム勤務対応の保育標準時間11時間に区分します。保育時間はこれまでの11時間保育を基本とし、延長保育や土曜日の保育についてはこれまでの保育を後退させないことです。
さらに、現在保育園に通園している子どもたちの認定はどのようにするのか。また、補正予算で認定に当たって受け付け業務の委託予算が組まれましたが、代表質問で指摘したように、個人情報は守られるのか、区の判断を求められるような大事な実務を委託業者に任せることは問題です。
●さて、障がいがある子どもの認定はどのようになるのでしょうか。小規模保育所など契約になりますから、障がいがある子どもたちが断られることも考えられます。障がい児保育はこれまでと同様、保育士を加配するなど現状を維持向上させることや、巡回指導も必要です。お答えください。

【こども家庭部長】
続きまして、障がい児についての保育の必要性の認定と障がい児保育に関する職員配置についてのご質問でございますが、保育の必要性の認定につきましては、条例の認定基準に基づき、保護者の状況によって認定を行ってまいります。障がいのある子どもの保育の利用につきましては、集団保育が可能かどうかなどの観点から判断させていただいているところでございますが、保育サービスアドバイザーによる窓口相談では、区立保育園での豊富な実務経験を有する保育士が個別のニーズに寄り添った丁寧な相談対応を行い、保護者の就労に向けた支援に取り組んでいるところでございます。
障がい児保育に係る職員配置につきましては、区立保育園についてはこれまでと同様の基準で保育士の加配を行う予定でございます。また、私立保育園につきましても、障がい児の処遇改善の経費を加算するなど適切に対応してまいりたいと考えてございます。なお、統合保育実施園に対しましては、現在も巡回指導を行っているところでございますが、引き続き指導の充実に努めてまいります。

【すがや議員】
第3に、企業参入についてです。子ども・子育て支援新制度は株式会社の参入をさらに促進させるものです。今、社会問題になっている保育士の低賃金が保育士の職離れを進め、定着しません。企業参入が進んでいる横浜市では、事業収支総額に対する人件費率は、社会福祉法人平均70.7%に対し株式会社は53.2%と、株式会社の保育士の人件費が大きく抑えられていることが明らかになりました。さらに、法人本社の税金を傘下の保育園が分担して払うなど、公金によって企業が資産形成をしていることが明らかになっています。運営費が保育以外に使われれば、人件費や研修費、保育に必要な環境整備が削られ、保育の質が低下することになります。株式会社の参入はやめさせることと、現状の中では給付金の使途制限や配当規制を行うこと、また世田谷区では、企業や社会福祉法人の財務諸表の公表、賃金台帳をチェックするなど取り入れました。
●大田区は、さらに公開を含めて、大田区の保育ガイドラインをつくることが求められます。お答えください。

【こども家庭部長】
続きまして、保育事業への株式会社の参入及びガイドラインの作成についてのご質問でございますが、子ども・子育て支援新制度の地域子ども・子育て支援事業の一つとして、多様な主体の参入促進事業がございます。保育の場の確保やニーズに沿った多様なサービスの提供に向けて、民間事業者の参入促進、多様な事業者の能力の活用を進める事業でございまして、区といたしましても必要な支援を行いながら、株式会社を含めた多様な主体との連携によりまして保育サービス基盤の拡充を図ってまいりたいと考えているところでございます。
現行の保育所運営費の経理につきましては、国の通知により運営費の使途範囲が決められてございます。基本的には、保育所を運営する事業に係る人件費、管理費、事業費となりますが、職員の配置や給与規程の整備など一定の要件を満たす場合には、長期的に安定した施設経営を確保するため、積み立てなどの弾力運用が認められているところでございます。また、運営費のうち、民間施設給与等改善費につきましては、配当に対して支出が行われている場合には対象とならないとされているところでございます。さらに、財務諸表の公表は、社会福祉法人会計、企業会計などの基準として各法人が行うこととなってございまして、賃金台帳につきましても、雇用者が整備すべきものとして認可保育所に対する東京都の指導検査基準にも定められていることから、区として改めてガイドラインをつくることは現在のところ考えてございません。新制度における保育所運営費の取り扱いにつきましては、国の動向を注視しながら、適切に対応してまいりたいと考えてございます。

【すがや議員】
第4に、保育料についてです。新制度のもとでは、新たに保育所以外の施設も自治体が保育料を設定します。国は教材費なども含めて上乗せ、実費徴収をしてもよいとしていますが、これまでも保育所の保育料は国の基準が高いため、大田区は独自に軽減措置として所得による保育料の設定をしてきました。先日、国の発表では、子どもの貧困率は16.3%、6人に1人が貧困という状況で深刻です。
●保育料は若い子育て支援としてさらに引き下げることを求めます。また、保育所以外の施設や事業所についても軽減措置をとることです。認証保育所について党区議団は条例提案しましたが、今回の説明会でもその要望が出されていました。他区より低い助成額の増額を求めます。お答えください。

【こども家庭部長】
続きまして、保育料の引き下げと認証保育所保育料助成の増額についてのご質問でございますが、子ども・子育て支援新制度における認可保育所の保育料につきましては、保育標準時間及び保育短時間の区分に応じて設定することとなっておりまして、国が示した考え方を踏まえ、現在ご負担いただいている保育料などを参考にしながら検討を進めてまいります。
認証保育所の利用者に対しましては、園児1人に対し月額1万円、2人以上在籍する場合には2万円の補助を行っているところでございます。このことによりまして、子育て支援の観点からは負担軽減の一助となっているものと認識をしているところでございます。なお、他区におきましては、補助についての条件や内容が様々であることから、補助額の多寡についての比較を行うことは困難な面もあるものと考えてございます。いずれにいたしましても、地域型保育事業も含め、利用者負担のあり方につきましては、新制度への移行の中で適切に対応してまいります。

【すがや議員】
第5に、子ども・子育て支援新制度が待機児童解消になるかということです。早速10月から保育入園の申し込みが始まりますが、国は市町村が利用調整をするとしています。今年4月、大田区で認可保育園に入園できなかった第2次不承諾数1786人でした。申請の取り消しや認証保育所などに入所しても、最終的に613人の待機児童です。認証保育所などに入園した子どもたちも今回申請しますから、また保育所が足りなくなります。厚生労働省の発表では、女性が一生で子どもを産む合計特殊出生率は1.42であり、少子化傾向はとまっていません。ところが、首都では出生数は年々少しずつ増えています。このことは若い世帯が東京に入ってきているということです。保育園を必要とするのは、女性の社会進出ということもありますが、若い世帯の年収は少なく、共働きをしなければ生活を維持できない状況はさらに広がっています。ですから、少子化といっても保育園を希望する数は年々増えるばかりです。大田区が子ども・子育て支援事業計画作成のために行ったニーズ調査でも、0歳から5歳まで各年齢で、認可保育園の希望者は40%を超えて高くなっています。
保護者の多くは認可保育所での保育を希望しています。認可保育園を増設しない限り、点数や保育アドバイザーによる小規模保育所などへの利用調整になりかねません。大田区は、保護者が望まない施設や事業所の誘導はやめることです。
●新制度では、市町村のニーズ調査を踏まえ支援事業計画をつくることが義務づけられ、子ども・子育て会議で話し合っていますが、待機児童解消の計画は平成29年でなく、認可保育園増設で直ちにゼロにする計画にすることです。お答えください。

【こども家庭部長】
待機児解消対策についてのご質問でございますが、増加する保育ニーズに対応するため、平成26年度大田区待機児解消緊急加速化プランを策定し、取り組みの一層の強化を図ったところでございます。この間、認可保育所の整備のほか、認証保育所、小規模保育所、グループ保育室の開設や定期利用保育事業の拡充などの取り組みを積極的に進め、620人の定員増の目標については達成できる見込みとなってございます。さらに、来年の子ども・子育て支援新制度への円滑な移行を図るため、引き続き集中的に保育サービス基盤の拡充に取り組んでまいります。

【すがや議員】
次に、学童保育についてです。新制度では、学童保育が地域子ども・子育て支援事業の一つとなり、国の基準が初めてつくられました。児童福祉法第6条のままで、児童福祉施設にはなりませんでしたが、自治体が条例で基準を制定するなど市町村の責任も明確になりました。対象児童は小学6年生までになりました。大田区では、今でさえ低学年で定員いっぱいとなっているのに、高学年は利用できないのは明らかです。
国の基準は1単位40人の定員、専用区画の面積は1人1.65平方メートルです。体の大きい小学6年生も小学1年生と同じなのでしょうか。基準ができたことはいいのですが、1人1.65平方メートル確保するには、学童保育室だけでは足りないので、遊戯室など全て含めて面積をはかることになります。現在でも基準より狭い学童保育室は、学校の空き教室を利用する考えのようですが、まず児童館を増設することです。
また、国の制度には、支援の単位はあっても部屋や設備の基準が定められていませんから、2単位80人がワンルームで生活し、活動するようなことが想定できます。今でさえオーバー対応で大変な状況なのに、これでは子どもたちが落ちついた生活ができません。宿題、読書、学習のためのスペース、体を使った遊びをしてもよいスペース、静養するための機能を備えたスペースなどを保障する整備計画を持ち、水準を落とさないことです。
開所時間については、小学校の休業日は1日につき8時間、休業日以外は1日につき3時間以上としていますが、保護者の労働時間を考慮して利用できる時間が必要です。
●また、障がいを持つ子どもたちの受け入れがようやく6年生まで10施設で行われ、来年には全学童室で実施です。障がいを持つ子どもたちの受け入れや体制を大田区でしっかり持つことです。お答えください。

【こども家庭部長】
学童保育での障がい児の受け入れ体制についてのご質問でございますが、障がい児など特に支援を要する児童の受け入れにつきましては、議員お話しのとおり、現在10施設において6年生までの受け入れを行っておりますが、来年度からは全ての学童保育室での受け入れを予定しております。なお、受け入れに当たりましては、児童の支援の必要度に応じて支援員を配置するとともに、職員に対して必要な研修を実施することで、児童一人ひとりに対応したきめ細かな保育に努めてまいります。

【すがや議員】
次に、職員の体制についてです。放課後児童支援員は支援の単位ごとに2人以上、1人は補助員に変えることができるとしています。児童支援員は都道府県知事が行う研修を修了した者です。保育士、社会福祉士、高等学校卒業であって、2年以上児童福祉事業に従事した者などとなっております。大田区は児童館、学童保育、分室、フレンドリー、おおたっ子ひろばで事業が行われていますが、正規職員192人、非常勤職員246人、アルバイト90人です。現在正規職員の採用をしないため、非常勤とアルバイトに支えられています。非常勤職員は1年ごとの契約で5回まで更新です。正規職員は定年や再雇用で雇いどめをし、非常勤職員は働き続けたいのに5年という契約でやめなければならない。これでよい学童保育や技術の継承ができるでしょうか。
●官製ワーキングプアを拡大せず、正規職員の採用を開始することです。お答えください。

【こども家庭部長】
児童館、学童保育事業での正規職員の採用を開始すべきとのご質問でございますが、現在、区の児童館、学童保育事業において、非常勤職員である児童育成指導員は貴重な戦力となっています。区の指導員は全て有資格者ですが、区として毎年度必要な研修を実施し、サービスの質の確保と技術の継承に努めているところでございます。また、来年4月には民間事業者が運営する児童館は8施設となりますが、今後も多様な運営主体との連携・協働により事業を進めてまいります。このような状況を踏まえ、区の児童指導職に関しましては、担うべき役割など、そのあり方を今後整理してまいります。私からは以上でございます。

【すがや議員】
子ども・子育て支援新制度は、このほかにも問題の多い制度ですが、子どもの権利条約の立場に立ち、発達保障のため、保育の質を最優先とすることです。
さて、先に述べたように子どもの貧困率は悪化し、今年の1月、子どもの貧困対策法が成立しなければならない状況です。先日ようやく施策が発表されましたが、児童手当の拡充や給付型の奨学金制度などは見送られ、施策の貧しさが明らかになりました。特に、ひとり親家庭の収入は低くなっているのが現状です。来年度予算編成に当たって、就学援助については今年度と同様、大田区は生活保護の基準引き下げの影響が及ばないようにすることを求めます。

障害者権利条約にもとづく実効性ある施策について

【すがや議員】
次に、障がい者施策についてです。
この夏、肢体不自由、精神障がい、聴覚障がい、視覚障がいなど多くの障がい者団体の方々と懇談しました。お話を伺いながら、障害者権利条約を批准した国として、その条項を生かした整備づくりが急がれていることを強く思いました。国連総会で障害者権利条約が採択されて7年が経過、今年1月、全国83障がい者団体の障がい者運動が広がる中で、国はようやく障害者権利条約を批准しました。条約の批准に伴って、例えば条項第19条「全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有する」とあり、これを履行するだけでも大田区の障がい者の皆さんの生活が大きく変化するのではないでしょうか。
これまでの日本の障がい者施策は、社会福祉構造改革の実施によって介護保険との統合が企てられ、応益負担、日額報酬制度が導入されました。しかし、障がい者、関係者の運動で自立支援法違憲訴訟が起こされて、国と訴訟団によって基本合意が成立し、国は障がい者参加による障がい者制度改革推進会議を設置して、障害者権利条約を批准するための国内法の整備に着手、骨格提言がまとまり、障害者基本法の改正、障害者差別解消法の成立及び障害者雇用促進法の改正など、障がい者のための様々な制度改革が行われましたが、2012年6月に成立したのは、基本合意や骨格提言を無視し、応益負担や日額報酬が残された障害者総合支援法でした。
障がい者団体きょうされんが全国の事業所を中心とした障がいのある1万人の調査では、約99%の人が年収200万円以下、56%の人が年収100万円以下にあります。親への依存や家族の支えなしに地域生活が成り立たないことも明らかになりました。また、こうした所得状況を補うはずの就労支援事業での平均工賃は月額1万数千円にとどまっています。障がいのある人の生活水準はとても低い状態です。障がいのある人の生活実態は、生活保護受給率で健常者の6倍となっています。ですから、障害者総合支援法は、骨格提言に沿って障がいに伴う必要な支援は原則無償とすべきでした。よって、来年度策定の第4期大田区障害福祉計画は、障害者権利条約の立場に立つことが求められます。
まず、親が病気になったときなどの短期入所できる施設や将来的な住まいの問題です。懇談会の席でも、「子どもの行き先が見つからず入院するのを延ばした」、「あったとしても千葉のほうに連れていかれた」、「この問題は50年近く進展していない」などの声が出されていました。保護者の方々も高齢化していますから待ったなしです。住まいは権利条約で示す地域で暮らすのか施設なのか、自分の意思で決める選択権を貫くことが基本です。それには受け皿がなくてはなりません。世田谷区では居住の整備として、都営住宅の建て替えのときに障がい者施設の整備、民間アパートを修繕してグループホームなど積極的に進めています。
●大田区の計画の目標を大幅に増やして計画に盛り込むことです。お答えください。

【福祉部長】
まず、障がいのある方の居住の場の確保についてのご質問でございます。居住の場の確保や介護者の緊急時の対応につきましては、障がい者の方がライフステージに応じ、住み慣れた地域でその生活を支援していくために必要な事業の一つであると認識しております。区といたしましては、これまで計画的にグループホームの整備支援を行ってきておりまして、未来プラン10年や障害福祉計画に沿いまして毎年2か所程度増設し、現時点におきましては区内に50か所のグループホームがございます。現在、平成27年度から平成29年度までの3か年の計画期間でございます大田区障害者計画・第4期大田区障害福祉計画を一体的に策定しているところでございます。その中で居住の場の確保や緊急時の一時預かり体制の整備などについて検討しているところでございます。今後とも在宅の障がい者の支援に向けまして適切に対応してまいります。

【すがや議員】
次に、精神障がい者への支援です。ブラック企業などの過労で心を壊す、うつ病の発症など、誰でもが精神障がいになる可能性は多く、日本の中でも一番多い疾患になっています。3日間続けて救急車に乗った、妄想が入ったり、睡眠薬を飲んだり、夜間に発症することが多い、退院してきても家族が面倒を見切れないなど、家族の方は壮烈な思いで日々過ごしています。24時間の相談体制、医療体制が必要ですが、全く足りません。中部総合精神保健福祉センターや大田区の病床もいっぱいです。すぐに活用できません。保護者のお話で、もっと病院や先生を増やしてほしいというほど重い患者さんが多いのです。
●特にアウトリーチが重要で、アウトリーチ、訪問できる体制と保健師さんの増員計画を持つべきと考えます。お答えください。

【保健所長】
アウトリーチ、いわゆる訪問支援につきましては、地域健康課の保健師がご自宅を訪問して相談をお受けし、その後の支援に結びつけております。また、複数の困難な問題を抱えた事例が増加する中、医師、看護師、福祉の専門職チームによる東京都立中部総合精神保健福祉センターのアウトリーチ支援事業も活用し、個々の状況に応じた適切な支援をしております。ほかにひきこもりに悩むご家庭には、平成26年6月に開始された東京都ひきこもりサポートネット訪問相談事業がございます。保健師の増員につきましては、今後の行政需要を踏まえ、適切に判断してまいります。以上でございます。

【すがや議員】
次に、障がい者の支援を使っていたとしても、65歳になると優先的に介護保険制度を使わなければならないという問題です。そのため、1割の利用負担と介護保険事業者のヘルパーに切りかえ、従来の介助者の支援が受けられないなど様々な問題が起きています。岡山では居宅介護の支給量をめぐって訴訟が始まりました。
●本人のニーズで必要な支援を選択したり、併用できるようにすることが大事であり、大田区がその立場で、本人の必要な支援を選ぶことができるようにすることです。お答えください。

【福祉部長】
次に、障がいのある方の福祉サービスの選択についてのご質問でございます。介護保険法では、原則といたしまして介護保険サービスは障がい福祉サービス等に優先して適用されることとされております。ただし、65歳以上の全ての障がい者の方への支援につきまして、一律に介護保険を適用することは、障がい特性や心身の状況によっては対応が難しい事案がございますことから、厚生労働省通知に基づきまして障がい福祉サービスの利用を活用することも可能となっております。サービスの利用に当たりましては、具体的な内容を聞き取りにより把握し判断することとしておりまして、個々の障がい者の方の実情に応じました適切な対応が図れるよう引き続き努めてまいります。

【すがや議員】
●来年3月1日竣工予定の大田区立障がい者総合サポートセンターには新蒲田福祉センターから就労支援室と声の図書室が移り、その場所が空きます。新蒲田福祉センターは視覚障がい者の方々が通い慣れていることもあり、空く部屋は障がい者の方々が会議や活動に使えるようにすべきです。お答えください。

【福祉部長】
次に、新蒲田福祉センターの声の図書室の移転後の空き部屋の活用についてのご質問でございます。新蒲田福祉センターの声の図書室につきましては、平成27年3月に開設いたします障がい者総合サポートセンターにその機能を移すこととしております。区といたしましては、移転を契機にさらなるサービスの向上に努めていきたいと考えております。一方、議員お話しの現在の新蒲田福祉センターにおけます声の図書室の移転後の空き部屋の活用についてでございますが、同センターがこれまで区における障がい者支援の拠点の一つとして果たしてきた役割等も踏まえまして、関係部署と調整いたしまして適切に対応してまいります。

【すがや議員】
このほかにも、ホームドア柵やまちづくりの問題、手話通訳や要約筆記者の育成の問題など出されました。何年要望しても実現に至らない状況に、OHCの設置など、どうしてこんなに小さなものまで我慢させるのかと胸が痛みます。来年度策定する第4期大田区障害福祉計画は、障害者権利条約のどこで誰と暮らすのかの選択権、必要な支援を請求する権利、一般市民と平等の選択権、また障害者基本法に基づいて施策を作成すべきことを求めて質問といたします。

以  上

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