第1回定例会一般質問(速報)―佐藤議員


一般質問映像(大田区議会ホームページ)

【佐藤議員】
日本共産党大田区議団の佐藤伸です。質問通告にしたがって順次質問します。

学校から体罰・暴力をなくし、子どもの命と尊厳を守る教育へ

【佐藤議員】
まず、学校から体罰・暴力をなくし、子どもの命と尊厳を守る教育へです。
「なぜ僕だけがしばき回されなくてはならないのですか」大阪市立桜宮高校でバスケットボール部主将の男子生徒が、みずから命を絶つ4日前に、体罰を加えていた顧問に宛てた手紙の冒頭です。男子生徒は男性顧問からくり返し体罰を受けていました。このあまりにも悲しい事件をきっかけに、体罰問題が明るみになり全国に広がっています。区内でも、都立雪谷高校の野球部監督を務める男性外部指導員が昨年7月と9月に男子部員を平手でたたいたり、ひざ蹴りを行うなど体罰を行っていたことが明らかになりました。また、柔道全日本女子・園田監督とコーチをナショナルチームの選手15人が「暴力行為やハラスメントがあった」「心身ともに深く傷ついた」として告発しました。「安心して競技ができる環境に」と訴えた選手たちの行動は、選手の声が「内部では封殺された」もとで、やむにやまれずに取った行動でした。なぜ、「スポーツ指導」ということで、生徒や競技者を殴る、蹴る、棒や器物でたたくという、暴力行為や暴言が許されてきたのでしょうか。なぜ、部員や選手の声は黙殺され、自殺にまで追い込まれ、または決死の思いで告発をしなければならないのでしょうか。生命の尊厳と人権が乱暴に踏みにじられる指導のあり方と体質は異常です。いうまでもなく、学校教育でも一般社会でも、体罰や暴力、ハラスメントは許されるものではありません。スポーツは野蛮な暴力を根絶し、民主的な人間関係を生み出す文化として発展してきました。そこに暴力を持ち込むこと自体、根本に反する行為として指弾されなければなりません。
2月9日伊吹文明衆院議長は、自民党岐阜県連主催の政治塾で、スポーツ指導や教育現場の体罰に関し「体罰を全く否定して教育なんかはできない」と発言しました。また、文部科学省の義家弘介(ひろゆき)政務官は、大阪・桜宮高校の視察中「強くなるための部活の体罰は一定ある」「ありえる体罰とそうじゃない体罰の線引きが必要」と発言しています。学校教育法第11条は「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」と懲戒としての体罰を明確に禁止しています。文科省は2007年、第一次安倍内閣の下で伊吹文科大臣、義家氏が有識者委員として参加した教育再生会議の意を受け、学校教育法の体罰禁止を骨抜きにする通知を全国の教育委員会に発しました。通知の内容は体罰の禁止と言いながら「有形力の行使」を教員らに認めたものです。有形力は「目に見える物理的な力」としながら体罰とはほぼ同義の言葉です。この政府の態度には2010年「第3回政府報告の審査後の国連子どもの権利委員会最終見解」も「体罰の禁止が効果的に履行されていない」と懸念を表明し、改善を勧告しました。
体罰や有形力の行使を認めることは、子どもを力で押さえ屈服させ、恐怖によって支配することに等しいのではないでしょうか。豊かな人格形成を目指す教育の目的とはまったく違ったもので、体罰や有形力の行使をやめることで子どもたちを諭し、心を動かす本当の意味での教育が実現できます。
●大田区教育委員会として区内の小中学校での体罰ゼロ宣言をするよう求めます。お答えください。

【教育総務部長】
私からは、教育に関する質問についてお答えいたします。
まず、教育委員会として区内の小中学校で体罰ゼロ宣言をするご提案でございますが、体罰についての教育委員会としての考え方は、議員ご指摘のとおり、学校教育法第11条の、校長及び教員は教育上必要があると認めるときは児童生徒に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない、とあるとおりでございます。
つまり、児童・生徒の指導にあたり、体罰は学校教育法第11条により禁止されています。そして、すべての教員は採用にあたって法令順守を含めた服務の宣誓を行っております。
しかしながら、依然として暴力を否定することを教えるべき教員が体罰に及ぶ例が後を絶たないことは由々しき問題であると認識しております。
今回、体罰の問題が大きく社会問題として提起されておりますが、児童・生徒との信頼関係に基づく指導の徹底・充実に全校をあげて取り組んでいるところでございまして、改めて、体罰ゼロ宣言をする考えはございません。

【佐藤議員】
こうしたなかで注目したいのは、実績を持つスポーツ関係者から、体罰・暴力指導やハラスメントは「時代遅れだ」との批判の声が上がっていることです。高校球児・プロ野球選手として活躍した桑田真澄さんは、早稲田大学・大学院にいた2009年、論文執筆のため、プロ野球選手と東京六大学の野球部員の計約550人にアンケートをしました。「体罰は必要」「ときとして必要」との回答が83%にのぼりました。この結果に対して桑田さんは「私は、体罰は必要ないと考えています。『絶対に仕返しをされない』という上下関係の構図で起きるのが体罰です」と語り、体罰は「指導者が怠けている証拠でもあり、暴力で脅して子どもを思い通りに動かそうとするのは、最も安易な方法。昔はそれが正しいと思われていました」「スポーツで最も恥ずべきひきょうな行為です」と断言しています。また、「スポーツ医学も、道具も、戦術も進化し、指導者だけが立ち遅れていると感じます。体罰を受けた子は、「何をしたら殴られないで済むだろう」という後ろ向きな思考に陥ります。それでは子どもの自立心が育たず、指示されたことしかやらない。自分でプレーの判断ができず、よい選手にはなれません。そして、日常生活でも、スポーツで養うべき判断力や精神力を生かせないでしょう」と指摘しています。 昨年6月30日の大田区総合体育館の開館イベントで「キッズ教室」を指導されたバルセロナオリンピックの柔道金メダリストの古賀稔彦さんは、「私は体罰をしたことはありません。むしろ、それは指導の放棄だと思っています。でも柔道界では、今回の一件にもみられるように、体罰をする指導者が多い。…選手の成長を止めてしまうし、人間不信になりかねないと危ぐしています。体罰をなくすために提案したい。今回のことを機に、すべての大会で、指導者の体罰、暴力をやめようと宣言すること。文章にして配るなど、柔道界あげて体罰をなくす努力をすべきだと思います」と述べ、「子どもをたたき、罵声を浴びせる指導者がいます。でも、柔道創始者の嘉納治五郎先生は何のために柔道をつくられたか。『精力善用』『自他共栄』。他人の役に立つ人間になろうということです。指導者は…そのことを理解すれば…どんな指導をすべきか見えてくるはずです」として、「いま日本のトップに足りないと思うのは、選手みずから考えて柔道する力。…いまの選手はちょっと試合で予想外の事態になったり、歯車がかみ合わなくなるとそれで終わってしまう。そこが世界の強豪との違い。でも、それはたたく、体罰からは生まれない。みずから考え、工夫する自主的な力が必要…主役である選手の思いを、指導者はどう導き、サポートできるかだと思います」と述べられています。(野球・柔道の)トップアスリートだった桑田真澄さん、古賀稔彦さんに共通することは体罰はスポーツの指導にならないこと。そして子どもたちから自主性や自立精神、判断力を奪ってしまうということではないでしょうか。
●大田区は昨年6月にスポーツ健康都市宣言を行いました。「スポーツを通じて区民が豊かで健康的な生活に営み、まちが賑わいと活力を増していく」ためには、スポーツ界から体罰や暴力の一層が求められます。「スポーツ本来の価値は、人間が自主的に成長し、たたかいを挑むところにある。外からの力で能力を高めようとする体罰は、ドーピングに近い。それでスポーツの中心にある価値に到達することができるだろうか」世界陸上400mハードルで二度銅メダリストになった為末大さんの言葉に象徴される改革が求められます。大田区内のすべてのスポーツ団体・競技団体から、スポーツ指導から暴力・体罰を根絶する指導理念の確立を求めます。そのためにあらゆる段階で討論する機会をつくるために区が積極的な役割を果たすよう提案します。お答えください。

【教育地域力・スポーツ推進担当部長】
私からは、区内のスポーツ団体、スポーツ指導から暴力・体罰を根絶する指導理念の確立に向けての、区の役割についてのご質問にお答えさせていただきます。
区は昨年策定いたしましたスポーツ推進計画において「誰もがずっと元気にいきいき地域の力で未来を築くスポーツ健康都市おおた」を基本理念としたところでございます。心身に深い傷を負わせる暴力・体罰は、この基本理念とは全く相容れないものでございます。そしてスポーツの指導においても当然、暴力・体罰は決して許されない行為でございます。
区は先般、学校支援地域本部のボランティア、また、部活における外部の指導者、また、学校を拠点に活動しているスポーツ団体の指導者の皆様に対して、児童生徒への暴力行為の禁止の徹底について通知をしたところでございます。
今後、地域の中でスポーツ推進のために活動していただいておりますスポーツ推進委員の皆さんや、大田区体育協会等の協力を得ながら、地域で活動しているスポーツ団体へ、暴力・体罰の根絶へ向けた周知徹底を行い、指導者の意識向上を図ってまいります。
以上です。

【佐藤議員】
●1月24日の衆院文部科学委員会で下村文科相は「徹底した意識改革をしていただきたいと感じている」と日本共産党の宮本岳志議員の「不幸な事件を二度と繰り返さないために、教育現場から暴力である体罰の一掃を」求めた質問に答弁しています。もしそういった実態があるならば、教育現場から暴力である体罰を一掃し、学校の運動部の運営も教師集団のあり方も、何よりも民主的な運営になるよう意識改革が必要です。大田区教育委員会としてこの点での学校・教育現場での意識改革を進めるために具体的に足を踏み出すことを求めます。お答えください。

【教育総務部長】
次に、体罰の一掃に向けて具体的に踏み出すべきではないかというご提案でございます。
体罰は行き過ぎた指導ではなく、明らかに暴力行為であり、教員が教育的指導の名の下に体罰を行うことは絶対にあってはならないことだと認識しております。
このことを全校に通知するとともに、校長会、副校長会、生活指導主任会はもちろん、大量に若手教員が採用されている現状を踏まえ、若手教員対象の研修などで教員へ体罰によらない適切な指導の在り方を具体的に示しているところでございます。
また、体罰の発生は運動部の運営や教員集団といった組織の在り方の問題ではなく、教員個々の指導上の問題であると捉えており、あらゆる機会を活用して、教員の人権意識を高めてまいります。

【佐藤議員】
●現在、区内の小・中学校で体罰の実態調査が行われています。3月(来月)には結果が出るとのことですが、区内でも深刻な実態があった場合には第三者による検証機関で、実態を調査し再発しない体制作りが必要と考えます。お答えください。

【教育総務部長】
次に、深刻な体罰があった場合の第三者機関設置についてのお尋ねでございます。
教員などからの申告、児童・生徒からの申し出、保護者からの訴え、地域の方からの情報などから、体罰を疑う事案があることがわかった場合には、加害教員、被害児童・生徒、見ていた者の三者から十分に管理職が聞き取りまして事実確認をいたします。
事実確認の結果、体罰であることが明らかになった場合、学校は被害児童・生徒及びその保護者への謝罪を行うとともに、大田区教育委員会へ報告をいたします。
大田区教育委員会は、校長と関係職員への聞き取りと指導を行い、その内容、程度、期間によって東京都教育委員会が適切に措置をしております。その上で学校は体罰の再発防止に一丸となって取り組みます。
このように、体罰は、教員等の含むに関わる取組が必要であり、教員の措置及び処分が伴うものでございます。第三者機関ではなく、教育委員会による十分かつ慎重な状況調査を行っております。したがって、第三者機関の設置は考えておりません。
以上でございます。

東日本大震災を教訓とし、行政が責任を果たす地域防災計画に

【佐藤議員】
次に、東日本大震災を教訓とし、行政が責任を果たす地域防災計画へについてです。
2011年3月11日に発生した東日本大震災からもうすぐ2年になろうとしています。大田区は、「東日本大震災の教訓と経験に基づき、改めて区の防災力を一層強化するために防災対策の抜本的見直しを行う」として、「昨年…大田区総合防災力強化検討委員会を設置し、…今後の防災対策に関する提言」を出しました。この提言と東京都の新たな被害想定及び都防災計画等をふまえ、あわせて区災害対策各部及び…防災関係機関の協力と連携のもとに「大田区地域防災計画(修正)」を策定しました。今回の地域防災計画は「わがまち防災計画」を作成し、217の自治会・町会ごとに、街頭消火器、消火栓、防火水槽、AED等の防災設備を表示した地図・『わが町防災マップ』を作成し配布するとし、区民の防災意識の向上への取り組みを打ち出しました。また、津波ハザードマップや地震ハザードマップを作成し地域ごとの危険状況を示したことは評価できます。しかし、この地域防災計画には二つの大きな問題点があります。
●第一に地域防災力向上の基本的考え方として、「自分の命と安全は自分で守ること」いう自己責任原則をすえていることです。ですから、大田区等の防災関係機関は、『自ら身を守る「自助」、そして隣近所の協力や地域の助け合いによる「共助」が基本となる一方で、「公助」はそれらの取り組みを支援し、理解促進・普及啓発を行い、地域防災力の充実を図っていく』としています。たとえば災害に強い都市づくり 都市防災性能の向上では「大田区には約13万棟あまりの建築物が建ち、そのうち約68%にあたる建物が、火災に弱い木造となっている…」と指摘し、「さらに、耐震性が十分でない建築物も多く、大地震時に倒壊するおそれがある」と分析しています。基本方針としては「震災に強く、逃げないですむまち・安全に避難できるまち」の実現に向け、建築物の不燃化・耐震化、市街地整備や都市計画道路の整備、公園・緑地・道路等のオープンスペースの確保などにより、防災性能の向上を図っていく」とうたっていますが、建築物の不燃化については一部の地域を除いて計画目標もなく個人の努力に任されています。また、液状化対策については液状化の被害の発生を防ぐとして、大田区の対策は地盤情報の提供と地盤改修工法等の情報提供を行うとして、その工事は個人に任されています。私は災害に強いまちづくりを進めていくためにも、大田区としての責任の明確化と目標の計画化と達成期間の明確化を求めます。お答えください。

【再開発担当部長】
私からは、災害に強いまちづくりを進める上で、大田区としての責任の明確化・目標の計画化・達成期間の明確化をとのご質問に答えさせていただきます。
区では、昨年4月に発表された「首都直下地震等による東京の被害想定」で延焼火災被害が大きい結果となったことなどを受けて、今後10年間を見据えて取り組む「大田区総合防災対策」をまとめました。その中で建築土木部門の対策としてまとめられた、「大田区緊急防災対策実施方針(ハード部門)」で、地震によるゆれ対策、延焼火災対策、液状化対策、津波対策の目標をそれぞれ打ち出してございます。
実施時期につきましても、事業展開について今後10年間を緊急対応期、短期、中期、長期に分け明確化しております。
ご案内のように、平成25年度予算案においても、防災対策を中心に据え、スローガンにも「防災力を強化し」の文言をいれ、大田区としての災害に取り組む姿勢を明確にしてございます。
今後、大田区として対外的に発表している地域防災計画に記述された、今申し上げましたような各種災害対策事業を着実に実施していくことが、区民の生命財産を守る大田区の責務と考えているところでございます。
私からは以上です。

【佐藤議員】
●第二の問題点として、被害想定が最悪を想定したものとなっていないことです。東日本大震災の大きな教訓の一つに被害想定の甘さがあります。今回の地域防災計画は、昨年4月に東京都が東日本大震災を踏まえ、行った被害想定の見直しによって示された想定地震のうち東京湾北部地震を想定とした被害の対応計画になっています。その理由に「短期的に発生確率が高く、被害が大きい」ことをあげています。また、「中長期的には発生確率は低いものの大田区に最大の被害をもたらす元禄型関東地震も含めて検討する」としています。私は、東日本大震災の重要な教訓に立つなら、死者1,228人・負傷者11,705人の人的被害でも、400,268人が避難者としている面でも、35,332棟が焼失するとした火災延焼による建物被害でも、大田区内に最大の被害をもたらす元禄型関東地震を全面的な想定地震とした計画に見直すことを求めます。お答えください。

【防災・危機管理担当部長】
私からは、大田区地域防災計画の見直しに関するご質問にお答えさせていただきます。
今年度、東日本大震災や大田区総合防災力強化検討委員会の提言及び首都直下地震等による東京の被害想定等を踏まえまして、これまでの首都直下地震対策は十分だったのかという視点から、大田区地域防災計画を全面的に見直すことといたしました。
この間、災対各部や防災関係機関等と協議を重ね、昨年12月11日の第1回防災会議で修正の素案をご審議いただき、パブリックコメントを経て、今月13日の第2回防災会議で地域防災計画24年修正として決定をいただきました。
この計画は、起こりうる被害の科学的知見に基づき、発生確率と切迫性が高い、東京湾北部地震を前提条件としました。
なお、津波対策では、中長期的に発生確率は低いですけれども、元禄型関東地震に対応した修正として反映をしております。
今回の地域防災計画の24年修正は、このような経緯で見直して決定しておりますので、ご理解をよろしくお願いします。

苦境の中小企業を守るために

【佐藤議員】
次に、苦境の中小企業を守るためについてです。
松原区長は2月1日に行われた、地域力推進会議でのあいさつで産業について報告し、「昨年11月に開設しました、中小企業向けの「緊急金融特別相談窓口」について…この窓口は本年3月末の「中小企業金融円滑化法」の終了等の、国の動向を見据え開設したものですが、金融庁は4月以降についても金融機関向けの検査方針を大きく変えないという見解を示しており、今のところ金融機関の姿勢が特に厳しくなるような兆候はないと聞いております。しかし、景気の先行き見通しが難しい中、個々の企業の経営は大変厳しい状況が続いていると認識しておりますので、引き続き融資あっせん、経営改善についてのご相談に対応し、専門家相談などの支援制度をご紹介するなど、金融機関との良好な取引関係が継続するよう、対策を継続してまいります」と述べました。
多くの中小企業に喜ばれてきた「金融円滑化法」が3月で期限切れとなります。「金融円滑化法」は、全国の中小零細企業のうち30万から40万社が利用したとされ、区内でも500社が利用したとされています。期限が切れてしまえば、金融機関の6割が、企業倒産の増加を懸念しているという帝国データバンクなどの調査もあります。一部に、「本来なら倒産すべき企業を延命させているのは問題の先送り、モラルハザードだ」などという声がありますが、とんでもありません。東京商工リサーチの調査によれば、倒産の原因は、不況による「販売不振」や「赤字累積」が全体の8割を占めています。「放漫経営」が原因というのは、ごくわずかしかありません。信用金庫法第一条では「国民大衆のために金融の円滑を図り、…金融業務の公共性にかんがみ、…信用の維持と預金者等の保護に資すること」、銀行法第一条の「銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに金融の円滑を図るため…、国民経済の健全な発展に資する」としたそれぞれの目的にてらしても、日本共産党は、不況で中小企業が苦しい時に、金融機関が返済条件などを緩和して支援するのは当然の社会的責任であると考えます。大田区として、「円滑化法」の打ち切りは中止しするよう今からでも国に求めるべきです。
●3月末に「中小企業金融円滑化法」が終了しますが、区内経済、中小企業にどのような影響が出ているか特別な実態調査を求めます。また、区内であっせん融資を行っている24の窓口金融機関に、4月以降も区内中小企業・業者の金融要望に応えるよう大田区として直接申し入れを行うことを求めます。同時に、区内中小企業・業者の救済策として新規の「借り換え融資」制度の創設や、既存の融資制度にある利子補給制度と合わせた信用保証料補助制度の拡充を求めます。お答えください。

【産業経済部長】
私からは、産業関係のご質問にお答えを申し上げます。
まず、金融円滑化法終了による影響の実態調査についてのご質問でございますが、民間の信用調査機関のアンケートによりますと、円滑化法終了により、金融機関の姿勢が厳しくなると予想する企業も多いとの調査結果もございます。
しかし、金融庁が、金融検査・監督方針に変更はないと明確に示しており、直ちに区内中小企業の資金繰りに大きな影響が生じる可能性は低いと思われます。
また、産業経済部では、年4回景況調査を行っているほか、公益財団法人大田区産業振興協会の受発注相談員も日常的に企業を巡回して景況を聴取しております。
さらに、円滑化法終了の影響を調査するために、金融機関及び実際に条件変更をしている企業等にもヒアリングを実施しておりますので、改めて特別な実態調査を行う考えはございません。
次に、金融機関に中小企業・業者の金融要望に応えるよう直接申し入れを、とのことでございますが、金融庁が金融検査・監督方針に変更はないと明確に示しており、それを受ける形で本年2月に、一般社団法人全国銀行協会が金融円滑化法の期限到来後においても、金融のスタンスに不安を持たれることのないよう、これまでどおり企業の資金需要に前向きに対応する旨の表明をいたしました。
また、一般社団法人全国信用金庫協会においても、同様に貸付条件の変更の申し出があった場合に、引き続ききめ細かな対応を行っていくことに変わりはない、表明をしております。
大田区においても、昨年11月に金融特別相談窓口を設置した際に、金融機関にお知らせするとともに、経営安定化への協力を要請いたしました。
また、この3月にも区内金融機関との情報交換を開催いたしますが、区内中小企業の金融要望に応えられるように、申し入れをする予定でございます。
新規の借り換え融資制度の創設についてでございますが、中小企業融資あっせん制度においては、既に借り換えや一本化といった、返済負担の軽減につながる制度を用意してございます。利用件数は増加傾向にございます。
今後も、金融機関の協力を得ながら、これらの制度の利用促進に努めてまいります。
信用保証料補助制度の拡充を、とのことでございますが、現在、中小企業融資あっせん制度を通じた補助の主体は利子補給となっております。これは、原則として個別企業の経営状況に応じた料率が適用される信用保証料に対しまして、一律に有利な利子補給率を適用するほうが、中小企業の費用負担の軽減につながるという判断に基づくものでございます。よって、重ねて信用保証料補助制度を設けることは考えておりません。

【佐藤議員】
融資制度の充実で、区内中小企業・業者の金融・資金繰り環境の改善と同時に、中小企業・業者の仕事をどう増やす施策を強力に押し進めるかが大事な課題です。
●まず、新製品・新規開発支援事業費予算を大きく拡充するなど抜本的な改善を求めます。新年度予算では今年度も行われている開発ステップアップ助成・実用化製品化助成に加え開発コラボ助成を新規に加え、「マーケティング調査や販路開拓等を含め“社会的課題解決のための製品開発”や“売れる製品開発”に取り組む経費に助成をし支援をします。しかし、予算額は9236万円で対象事業所は16社です。これではあまりにも規模が小さすぎます。
だいたい、「産業の町」「世界に誇る技術力が集積した中小企業の町」といわれる大田区において、あまりにも産業経済費の予算額が少なすぎるために実態にあった施策が展開できていません。ものづくりの集積を守るために、具体的には区内ものづくり企業・業者に対して家賃、機械のリース代、休業補償等固定費への助成、中小企業・業者が後継者育成として青年を雇用した場合、指導・教育・訓練等の費用として一人年間200万円の助成を行う等「産業の町・大田区」の名に相応しく、産業経済費を歳出比1.5% 34億7千万円余を3倍にし、歳出比4.5% 100億円余の予算額に増やすことを提案します。お答えください。

【産業経済部長】
次に、新製品・新技術開発支援費の増額、固定費助成や青年を雇用した場合への助成を実施し、ものづくりの集積を守るため予算を増額すべきとのご質問でございます。
国では中小企業の試作開発や設備投資を支援するため、1,007億円の補正予算により、ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金事業の実施が予定されております。大田区の新製品・新技術開発支援事業についても、来年度はインダストリアルデザイナーと企業とが新製品を開発していくことを検討しており、予算のご審議をいただいております。
また、ハローワークでは、中小企業が新たな人材を雇用する際の支援策である、中小企業基盤人材確保助成金制度を設けており、景気の変動等経済上の理由による従業員の休業等に対しても雇用調整助成金などの制度がございます。その活用について周知を図ってまいります。なお、家賃などの個別企業の経費を直接助成する固定費補助については、考えてございません。
産業経済部では、来年度も必要な予算を確保し、こうした事業や制度の紹介、情報提供を図りながら、ものづくり産業の集積維持・発展に努めてまいります。
私からは以上でございます。

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