第4回定例会一般質問(速報)―あらお議員



(映像は大田区議会ホームページより:26分)

【あらお議員】
日本共産党大田区議団の荒尾大介です。

高齢者の尊厳と権利を守る介護施策について

【あらお議員】
まず、高齢者の尊厳と権利を守る介護施策について質問します。区内の介護保険第1号被保険者数は今年6月末時点で16万3077人、前年同月の16万349人と比較して2728人増加、うち75歳以上の被保険者数が2481人増加、介護サービス受給者数も6月末現在、施設サービス受給者が3100人、居宅介護サービス受給者が21432人、地域密着型サービス受給者が4476人と、区内での高齢化による介護保険サービス需要の増加が益々進行している実情が明らかになっています。今年に入ってから、地域密着型サービスの事業所が大幅に増え、サービス受給者数も前年度比222%増と、施設基盤の整備が進められています。一方で、特別養護老人ホームの入所待機者数は9月現在で1275人、昨年度同月は1454人でした。待機者が減少したのは、昨年の介護保険制度改悪で特養ホームの入居条件が原則要介護3以上へと狭められ、要介護1、2が入所対象から外されたことにあります。参議院での附帯決議で「軽度の要介護者に対しては、個々の事情を勘案し、必要に応じて特別養護老人ホームへの入所が認められるよう、適切な措置を講ずること」を政府に求めていますが、特例入所を認めるかどうかは、区市町村の判断に任され意見を述べるとされています。区は入所対象者の具体的な状況把握に努めて意見表明をする必要があり、軽度の要介護者の入所についてしっかりと責任を負うことが求められます。
●要介護1と2の特養ホーム入所希望者に対して、申し込みを制限することなく、参議院の附帯決議を守り、区の裁量を発揮して高齢者の命と健康を守るために状況把握を強化し、特養ホーム入所を認めるよう実効性のある措置を講じることを求めます。お答えください。

【福祉部長】
私からは介護に関する質問について、順次お答えします。まず、特別養護老人ホームへの入所についてのご質問ですが、平成27年の制度改正に伴い、特別養護老人ホームの新規入所は原則、要介護3以上の方が対象となりました。
ただし、要介護1、2の方については、やむを得ない事惰等により、特別養護老人ホーム以外での生活が著しく困難であると認められる場合は、特例的に入所が認められます。
これは、特別養護老人ホームは、居宅での生活が困難な中重度の要介護者を支える施設としての機能に重点化すべきとの考えに基づくものです。一方、区では従来から、特別養護老人ホームの入所は優先入所制度によって行っております。
この制度は、要介護1、2の方を含め、申し込みをされたすべての方の入所の必要性について評価を行って、必要性の高い方から優先的に入所していただく方式です。
評価の方法は.要介護度のほか、介護者、住宅、身体、認知症の状況等によってきめ細かく点数化し、その結果をもとに、まず、区による第一次評価を実施します。
次に、希望する特別養護老人ホームごとに、地域の民生委員や専門職の参加による入所検討委員会を開催し、第二次評価を実施し、入所の優先順位を決定しております。
したがいまして、現在、区では、国における重点化の考え方に沿った上で、要介護1、2の方を含めて、申込者ひとり一人の状況把握に努め、特別養護老人ホームへの入所の必要性を適正に評価し、決定する制度として実施しております。

【あらお議員】
介護保険法が施行された当初は、これまで家族介護に依存してきた日本の介護が制度導入によって「介護の社会化」が進むとされてきました。しかし、法の中に「介護の社会化」の目的条項はなく、実際の法制度でも介護保険の給付水準が在宅の一人暮らしの要介護者に24時間介護を保障するものとなっていないため、家族介護が前提となっています。現在家族と同居している高齢者は特養ホームにはほぼ入所できません。しかし家族と同居していても、様々な事情によって特養ホーム入所を希望する方がいるという事実もあります。93歳の義理の母をご夫婦で在宅介護している人は、特養ホームに申し込んでも入所できず、再雇用をあきらめて夫婦で介護に専念、ショートステイ等を利用してもままならず、お泊りデイを利用中に骨折をしたとのことでした。このお泊りデイ施設は夜間職員一人のみ、手すりもなく、段差があるなどバリアフリー構造になっていなかったということでした。施設側の対応が誠実さを欠き、矢のような催促で「お詫びと補償について」という文書がご夫婦の元に届けられましたが、この件で両者が弁護士を立てて現在係争しています。ご夫婦は「特養に入っていれば義理の母もバリアフリーで設備が整っていて、人員も確保された場所で介護を受けられて、自分たちも安心して仕事ができただろう」と悔しい胸の内を語っています。
介護保険制度がスタートして16年、介護を取り巻く現状が困難さを増す中、高齢者本人とその家族を守る体制を作ることがいよいよ急務となっています。ある方からも「今、高齢の母と二人で暮らしているが、自分は日中仕事をして、母はヘルパーさんやデイサービスを利用している。母は常時介護が必要な状態だが、自分も仕事を辞めるわけにもいかないし、何とか特養ホームとか施設に入所できれば…。」と切実な訴えがありました。長引く不況で雇用情勢が悪化している中、家族の介護力が低下していることは以前から指摘されています。核家族化の進展から高齢者の夫婦のみ、単身世帯も増加しています。そのような中で度重なる介護サービスの切り捨て、保険料の値上げが大きな負担となっており、高齢者の実情に見合った介護施策が今まさに求められています。
今年に入り、馬込、萩中、大森西の3箇所に小規模を含む特養ホームが開設されました。その他、現在建設中の矢口の小規模特養と千鳥に建設計画がありますが、まだまだ施設整備が入所待機者数に追いついていません。東京都が特養ホームの整備を進めるために公表している特別養護老人ホーム・促進係数で大田区は、2012年度1.3、竣工施設の定員数を住民基本台帳による65歳以上の高齢者人口で除くことで算出される整備率は1.05%、今年度の係数は1.5、整備率1.02%未満となっています。整備率はわずかに改善し、促進係数が増加たのは、他の区市町村でも施設整備が進められている為で、促進係数が23区の中で係数1.3と一番低い値の足立、葛飾、1.4の千代田、中央と比較しても大田は整備が遅れており、急がなければいけません。
●介護が必要な高齢者とその家族が安心して日々の生活が送られるよう、待機者数に見合った特養ホームの増設を求めます。施設建設のために、西糀谷1丁目の気象庁職員宿舎跡地などの国有地の積極活用を区として取り組むこと、以前実施されていた用地費補助の復活を区として東京都に求めることも合わせて要望します。お答えください。

【福祉部長】
特別養護老人ホームの整備についてのご質問ですが、自宅での生活が困難になった高齢者が、それぞれのニーズに応じた必要な介護サービスを受けられる特別養護老人ホームを整備することは重要な課題と認識しております。
区では、第6期介護保険事業計画におきまして、3施設195床の特別養護老人ホームを、今年度、開設いたしました。
現在、矢口3丁目に30床の整備を進めており、さらに、千鳥2丁目においても84床の整備計画に着手いたしました。
この2つの施設は、民間事業者が国有地を活用した事例であり、区は、事業者の支援を通じて施設整備を進めております。
現在、西糀谷1丁目をはじめとした国有地につきましては、国が社会福祉法人等を対象とする取得等要望を募集しており、区は、国の処分の動向について引き続き注視してまいります。
東京都に対する要望につきましては、特別区長会として、用地取得の困難さをまえた補助制度と支援策について、既に、要望しております。
今後とも、在宅サービスと施設サービスとのバランスを十分勘案し、特別養護老人ホームを含めた介護基盤の整備に取り組んでまいります。

【あらお議員】
次に新しい介護予防・日常生活支援総合事業、新総合事業について質問します。
これまでの一般質問でも新総合事業について質問をしましたが、今回も質問をさせていただきます。今年の4月から大田区での新総合事業がスタートして8か月になりました。嶺町、田園調布でシニアステーション事業が試験的にスタートして、様々な問題を抱えながらも、現場の職員の皆さんが利用者の介護予防、健康増進に奮闘しています。先日、共産党区議団は東嶺町のシニアステーションを視察しました。老人いこいの家の時に使用していた畳部屋は現在使われておらず、浴室もなくなり、二人しか入れないミストシャワー室になっていました。シャワーについては、操作盤が小さく高齢者の方にとっては利用しづらいものでした。実際に私のところにも、「シャワーが使いにくい。操作が分かりづらく、年寄り向きでない」との苦情が寄せられました。利用者の中には、操作盤でなく説明書きの張り紙を押している人がいたということです。シニアステーションに通うには、自分で歩いていかなければならず、元気な方でしたらまだしも、何割の高齢者が通うことができるのでしょうか。
新総合事業の狙いは「生活支援」と「介護予防」から要支援者の保険サービスを外すことです。これによって保険給付で行なってきた生活支援サービスと、区市町村の責任で行ってきた二次介護予防事業を地域住民同士の助け合い、互助に置き換え、それが「自立意欲向上」「高齢者の介護予防」に繋がるとしていますが、果たしてそうでしょうか。町会・自治会役員や民生委員が容易に確保できない地域もあり、担い手が不足する中で「地域の助け合い」を進めることは、地域にさらなる負担を強いるものとなります。これまで要支援者の訪問、通所サービスはヘルパーや介護福祉士などの専門職により提供されており、日常生活を送る上での「命綱」となっています。専門職でないボランティアや地域住民に肩代わりできるものではありません。これまでの有資格の専門職によるサービスを区はどう評価し、どう考えているのでしょうか。私自身、介護の現場でヘルパーや介護福祉士の方々が、専門性を発揮してサービス利用者のADL(日常生活動作)を向上させ、日々の生活を豊かに発展させたケースも見てきました。このようなことが、ボランティアの方々にできるのでしょうか。現場のケアマネジャーの方からも「ボランティアがサービスを担うことはリスクが高すぎる」と警鐘が鳴らされています。
新総合事業は要支援者と事業対象者を対象とした「介護予防・生活支援サービス事業」とすべての第1号被保険者を対象とした「一般介護予防事業」から構成され、「介護予防・生活支援サービス事業」は 訪問型、通所型、その他の生活支援の各サービスと介護予防ケアマネジメントの各事業となっています。
訪問型は現行相当の訪問介護(みなし事業)と、人員配置やサービス単価の基準を緩和する生活援助等のサービスA、現在区が「絆サービス」として実施している住民主体のサービスB、短期集中予防のサービスC、移動支援のサービスDの4種類があります。みなし事業は予防給付と同じ内容で基準単価も同等ですが、経過措置であるため2018年3月で終了します。これに代わるものとして、区独自の基準緩和サービスを検討中とのことですが、ヘルパーや介護福祉士の資格を持たない人を大量に活用するもので、保険給付で実施されてきたサービスを補完するものでなく、代替にもなりません。費用削減を狙い、サービスの質の低下を招く危険性のものであり、認めるわけにはいきません。
●介護保険は、加入者である被保険者は保険料を払い、要介護認定を受けた時にサービスを受給する仕組みが制度の根幹になっています。その根幹が崩されようとしています。それは、制度そのものの崩壊を意味します。新総合事業で要支援者の訪問通所サービスを基準緩和サービスに置き換えることは止め、予防給付と同等のサービスを2018年4月以降も継続することを求めます。お答えください。

【福祉部長】
続きまして、介護予防・日常生活支援総合事業の新たな基準のサービスについてのご質問でございます。
介護保険法施行規則附則第31条では、介護予防訪問介護・通所介護の指定事業者を総合事業の指定事業者としてみなし、有効期間は、平成30年3月までと明確に規定しています。
現在区は、新たな基準の訪問型・通所型サービスの詳細について、サービス提供の関係者団体等と協議を重ね、平成30年4月以降についても、指定事業者による専門性を有するサービスを提供できるように準備を進めております。
区は、高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターによる最適なケアマネジメントにより、利用者にとってこれまで以上に、真に必要なサービスを安心して受けることができるよう、適切に対処してまいります。

【あらお議員】
●今国でサービス利用料の3割負担や、保険料負担の拡大が検討されています。これ以上高齢者の負担が増えないよう、国に対して保険料引き上げや介護報酬削減、その他サービス削減をしないよう、区として国に要求することを求めます。お答えください。

【福祉部長】
私からは最後でございますが、国が検討している介護保険制度改革についてのご質問でございます。
現在、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会において、3年に1度の介護保険制度の見直しに向け、議論が行われております。
審議の内容は、高齢化で介護費用が増大し続けている中、介護保険制度の持続可能性を高めていくために、介護保険のサービス給付と負担の在り方が焦点となっております。
見直しの内容といたしましては、利用者負担については、サービスに対する利用者の負担割合や高額介護サービス費の上限金額などです。給付内容については、福祉用具・住宅改修や軽度者への支援のあり方などです。
また、保険料の費用負担につきましては、計算方法の変更などが挙げられております。
現在、審議は詰めの段階に入っており、来年早々には法案が提出される見込みのため、国の動向を注視しております。

若い世代の学びを応援する末吉育英基金に続く給付型奨学金創設について

【あらお議員】
次に区独自の給付型奨学金創設について質問します。
今月18日の夜、国会前で学生の皆さんが中心となって給付型奨学金を求める緊急アクションを起こしました。今回の行動は首都圏の大学生を中心に結成された「Rights to Study(本物の奨学金のための学生アクション)」が呼びかけ、200人もの学生が国会前に集結し、学生ローンではない、本物の奨学金制度の実施と学費値下げを求めました。
世界を見てみると、奨学金は給付型というのがトレンドとなっています。奨学金のそもそもの定義は学業成績等が優秀な学生の就学促進が目的の、返済義務のない給付型のことを指し、貸し付け型は奨学金でなく、学生ローンです。その中には利息付きのものもあり、返済額が増えるものもあります。大学の授業料が無料で生活費を給付する奨学金があるのは、スウェーデン、フィンランド、ハンガリー、フランス、ポーランド、ドイツ、デンマークなど、授業料が有料で給付型奨学金があるのは、アメリカ、カナダ、オランダ、ベルギー、スペイン、韓国などで、日本は授業料有料、給付型奨学金なし、貸付型が主流という学生にとって過酷な状況だということが明らかになっています。また、大学教育支出の対GDP比を見ても、日本はOECD(経済開発協力機構)加盟国の中で公費支出割合が最低で、他国と比較しても学費そのものが高いということがデータで示されています。
大学を卒業したあと平均約300万円の「借金」を背負って社会に出て、それが後々に負担となり、返済に追われて、生活に困窮する人が増え、結果として自己破産の道を選ばざるを得なくなる。若い世代だけでなく、親世代も連帯保証人として負担を背負うケースもあり、社会問題化しています。学生を応援するための奨学金が、結果として若者を苦しめるものになっているという現状を改善し、この矛盾を打破しなければ、日本に未来はありません。
大田区でも「大田区奨学金貸付制度」「末吉育英基金」という2つの奨学金制度を設けています。「大田区奨学金貸付制度」はその名の通り貸し付け型の奨学金で、高校、専門学校、大学に進学または在学している人が対象、毎月の貸付と入学準備金が無利子で貸し付けられるものです。「末吉育英基金」は奨学金貸付制度を利用している人を対象に、専門学校、大学に4月から入学する人に30万円を給付するものです。今年の第1回定例会で菅谷郁恵議員の質問でも触れられましたが、この「末吉育英基金」は末吉氏の遺産7000万円の寄付により2014年10月から5年間の期限付きで開始されました。この基金はあと3年で終了予定となっていますが、これを終わらせることは、これから進学を目指す子ども達、若い世代の希望を摘んでしまうことになります。若者の学びの大きな支えになっていることを区は重く受け止め、基金を継続すべきです。
政府はこれまで給付型奨学金創設に消極的姿勢を取り続けてきました。しかし、給付型奨学金を求める多くの国民の声に押され、安倍首相も来年度予算編成で実現すると明言しました。東京都でも10月27日の総合教育会議で小池都知事が都独自の給付型奨学金創設に言及するなど、国、都レベルでの給付型奨学金創設をめぐる動きが活発になっています。大田区もしっかりとこの流れを掴み、給付型奨学金創設を検討するべきではないでしょうか。
●憲法26条「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」とあるように、教育は憲法に保障されている権利です。国や都の動向いかんにかかわらず、返す必要のない区独自の給付型奨学金を創設することと、末吉育英基金が終了しても末吉氏の遺志を汲んで区が継続することを求めます。また、入学金だけでなく、授業料も給付対象にし生活費も加えた、より充実した奨学金制度を実施することを求めます。

【福祉支援担当部長】
私からは給付型奨学金に関するご質問についてお答えします。
現在、区が実施している給付型奨学金制度は、故人となられた区民の方からの尊いご寄附と遺志をもとに創設したものでございます。本奨学金は、入学金等の一時的な経費に充てるため経済的事情のある優秀な学生に対する給付として、大きな支援となるものと認識しております。
現在、国では、給付型奨学金の創設に向けた検討が進められております。その議論の中では、意欲のある学生が高等教育の受益に授かることは、広く国民全体に社会的便益をもたらすものであり、奨学金制度を恒久的に実施する場合には、国民的な理解を得つつ、安定財源が必要であり、税制措置等も含めた財源確保策について検討する必要があるとされております。
実際の進学には、国が想定する給付型奨学金のみならず、家計の負担やアルバイトによる収入、各大学や民間団体等が行う奨学金などの支援制度を併用することにより、進学及び修学の費用を用意することが必要となります。
区の奨学金貸付制度は、学生生活に必要となる様々な費用を支弁するものであり、他区と比較いたしましても、現在区の制度は充実した制度となっております。
区といたしましては、限りある財源の中、より多くの学生への支援を行うためには、現行の貸付型奨学金制度が適当であると考えております。

以  上

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