(映像は大田区議会ホームページより:55分)
- 政治資金問題における信頼回復について
- 区民の暮らし・中小企業の営業を支援する新年度予算について
- 深刻な人手不足により危機が進行している訪問介護について
- 人権の視点から性や人間関係について学ぶ包括的性教育について
- 「新空港線・沿線まちづくり」は地域経済活性化となるのかについて
【清水議員】
日本共産党区議団、清水菊美です。日本共産党区議団を代表して質問を行います。
政治資金問題における信頼回復について
【清水議員】
まず初めに、政治資金問題における信頼回復について伺います。
都議会自民党が2019年と2022年に開催した政治資金パーティーで、所属議員、元都議らに1人当たり100枚のパーティー券、計200万円分を配布しながら、100万円分を会派に納めればよいとして、ノルマを超えた分は収支報告書に記載せず、各都議らの手元に残す中抜きを行っていたことが問題となっています。不記載・裏金は分かっているだけで合計およそ3500万円、大田区選出の鈴木章浩都議は132万円、同じく大田区選出の元都議、神林茂氏は111万円と報道されています。
東京都議会自民党は14日、政治資金パーティーに関する不記載・裏金問題をめぐり、一連の問題に関する内部調査が完了したとして、小松幹事長名で談話を発表しました。都民の信頼を失墜させる事態を招き、深くおわび申し上げると謝罪しつつ、裏金づくりの開始時期や指示の有無については確認できていない、パーティー券の販売ノルマを超えた売上金の一部を会派に納めず、自身が代表を務める政治団体に政治活動資金としてストックするという慣行があったことを認めました。
日本共産党都議団は、極めてシステマチックにルール化されて議員の手元にパーティー券収入が直接渡っていた、単なる会計処理上の問題ではないことは明らか、国会議員の問題よりも都議会議員自民党の裏金は闇が深いとして都議会自民党に公開質問状を提出いたしましたが、ゼロ回答で、裏金の詳細やノルマ超過分の使途についてなどに答えていません。全容解明と再発防止を本気で行う気があるのか疑わしい事態です。お金で政治がゆがめられないように政治資金についての仕組みがつくられていたにもかかわらず、全くその趣旨を無視した裏金づくりが長年まかり通っていたのです。
15日、テレビ放送された、さらに広がる自民党裏金問題の特集番組では、元都議が「裏金づくりは昔からの慣習で、みんな平気でやっていた」と語り、大田区の中小業者の方が「インボイス制度で増税になっているのに、何だ政治家は脱税か」と語り、取材したキャスターは、「業者の方は税金を納めるのに煩雑な作業に追われている。自分たちはこんなに大変なのに、政治家は特別なのかと憤慨されていたが、真っ当な怒りだと感じた」と述べていました。
そこで伺います。鈴木区長は、2019年は落選中で東京都議会自民党政策参与として活動、2022年は自民党都議会議員6期目の活動をされていました。北区、山田加奈子区長は、自民党都議会議員を1期経験されて、2023年に区長に就任されました。この問題について記者会見をされ、ノルマの50枚が売れなかった、裏金はなかったと区民に説明されています。
●長く自民党都議として活動されていた鈴木区長は、パーティー券の不記載があったのではないかといった疑念を持たれないよう、ご自身のパーティー券の収入はいくらであったか、購入者は個人、企業、団体、政治団体それぞれ何枚か、区民への説明責任を果たすべきです。お答えください。
【鈴木区長】
政治資金に関するご質問ですが、政治家及び政治団体等における政治資金の管理は、区民の皆様の信頼を得る上で極めて重要な責務であると考えております。私はこれまで、都議会時代を含め、政治資金規正法等の関係法令に則り、政治資金の適正な管理に努めてまいりました。政治資金の収支報告書への不記載は一切ございません。今後も引き続き、政治資金の適正な管理に努め、区民の皆様の負託に応えるべく、「心やすらぎ 未来へはばたく 笑顔のまち 大田区」の実現に向けて全力で取り組んでまいります。
区民の暮らし・中小企業の営業を支援する新年度予算について
【清水議員】
次に、新年度予算について伺います。
石破政権の2025年度予算案は、禁じ手である国債まで使って軍事費を8.7兆円と突出して増やし、一半導体大企業への支援も補正予算と合わせて1.9兆円にも上っています。これらはアメリカ言いなり、財界中心の政治によるものです。一方、倒産が相次ぐ中小企業や介護事業者への大幅な支援や大学学費値下げ、農家への補塡などが盛り込まれていません。社会保障についても、高齢化などに伴う自然増を1300億円も削減しています。さらに、がん患者らの命綱となっている高額療養費制度を見直し、自己負担額の上限の大幅引上げを狙っており、命と生活が脅かされようとしています。核兵器禁止条約への参加や選択的夫婦別姓の実現、気候危機への対策など深刻な問題が山積みです。
このような国民に冷たい政治から、大田区は地方自治体の役割である住民の福祉の向上のための予算編成が求められています。大田区の新年度予算案は、「心やすらぎ
豊かさと成長を実感できる新しい次代に向け、力強く踏み出す予算」と銘打ち、一般会計総額3527億958万円、前年度比3.4%増で史上最大となりました。歳入では、人口増による特別区民税が昨年度より4.2%増となり、特別区交付金3.1%増、地方消費税交付金6.8%増などとなっています。
歳出では、区民の願いであり、党区議団が長年要望してきたものなどが予算に組み込まれています。こども施策では、区立小中学校の給食費の無償化は、つばさ教室も給食費相当分を支給、5歳児健診の拡充、産後家事・育児援助事業の拡充、一時預かり利用支援、不登校施策の推進など、健康福祉施策では、定額減税補足給付金、認知機能検診、おたふく風邪予防接種費用助成、失語症向け意思疎通支援事業、生活実習所への短期入所などです。環境対策では、住宅リフォーム制度拡充、プラスチック回収事業区内全域実施、田園調布区民農園買戻しなどです。まちづくり施策では、民間住宅への耐震改修や工事費用の助成、健康公園、子育て公園、トイレの整備などの公園のリニューアルなど評価できるものです。
しかし、今、異常な物価高騰が続き、特に食料品は、キャベツなどの野菜や果物が昨年の約2倍、米は何とか市場にありますが、値段は以前の約1.9倍、賃金も年金も物価高騰に見合っていない中、多くの区民の生活は厳しさを増しています。そのような中で、2025年度予算にいくつかの質問と提案をいたします。
2025年度は基本計画・実施計画の初年度の予算で、四つの重点ポイントが掲げられています。重点ポイントの一つ目、子育ち・子育ての環境づくり、教育環境の充実において、党区議団が予算要望していた小中学校の教材費の無償化の予算がありません。区長は14日の所信表明で、「小中学校の教材費の無償化は、経済的意義はあると認識していますが、物を大事にする心や選択の幅を確保するなどの観点から行わない」と発言しました。他区では修学旅行等の費用や制服等の無償化も進んでいる中で、大田区も教材費の無償化に踏み出すことは、安心してこどもを産み育て、学びの充実による人づくりに資する施策にふさわしい事業です。
また、重点ポイント四つ目の防災対策では、耐震工事の補助は拡充されましたが、昨年の能登半島地震からさらに避難所への区民の要望が高まっています。研究者や医師などでつくる団体、避難所・避難生活学会は、避難生活中の災害関連死を防ぐため、清潔なトイレの確保、温かい食事の提供、段ボールベッドなど簡易ベッドを48時間以内に設置することを提言しています。大田区もこの立場に立って準備を進めていくことです。そのためにも、防災基金の積立てが利息のみ4000万円でしたが、防災基金は最終補正で積み立てるのではなくて当初予算で積み立て、計画的に進める姿勢が必要です。
●以上、教育・防災予算の拡充を含めて、物価高騰に苦しめられている高齢者、障害者など全ての区民の心やすらぎ、豊かさと成長が実感できるという予算が実現できているのかについてお答えください。
【鈴木区長】
令和7年度予算案に関するご質問ですが、予算編成に当たっては、私が区長として、地域の実情に触れ、感じ取った様々な課題の解決に向けて、四つの重点ポイントをお示しし、8年後のまちの姿を描く基本計画の施策体系にも反映しております。この中での重点課題は区民生活に直結するものであり、必要な予算措置を講じております。例えば、子育て支援や教育など将来を担う人材育成につなげる施策や、介護や地域保健サービスなどは特に力を入れ、予算を重点的に配分いたしました。また、地域文化を育む施策や再生可能エネルギーの活用、地域全体での防災意識の向上といった自然災害への備えなど、区民の皆様との連携を重視しつつ、将来も見据えた施策を予算案に盛り込んでおります。
これとともに、国の財源を活用した連続性ある経済対策や将来を見据えた財源確保などは、戦略的な行財政運営の表れと認識しております。地方自治体はそれぞれの地域事情を踏まえ、限りある財源を効果的・効率的に配分しておりますが、私は、未来にわたり連綿と続く区民生活を背負う区長として、地域社会を活性化させ、持続可能なまちづくりの実現につながる施策は、ちゅうちょなく実行する所存でございます。
【清水議員】
2025年は戦後80年の年です。平和憲法の下、戦争のない日本でしたが、世界を見ると、ウクライナ、ガザなどで悲惨な戦争はいまだ終結せず、トランプ政権の復活、アメリカ軍事産業の大もうけにつながる軍事費の増大に、区民は戦争への道への不安が増大しています。
●そこで伺います。大田区の戦争の歴史を学ぶ機会をつくるなどの拡充を求めます。
また、2025年は、8月6日・9日、広島・長崎に原爆が投下されて80年になります。昨年、ノーベル財団は、全ての被爆者の方にとノーベル平和賞を日本被団協に授与されました。被爆者の方々の命をかけての核兵器をこの世からなくしてほしい、被爆者を二度とつくらないでの運動が認められたのです。区内の被爆者の高齢化が進んでおります。ぜひ区長に一刻も早く被爆者の方々と会って思いを受け止め、共に非核の世界を目指す懇談をしていただき、その場には多くの区民に参加していただく(仮称)非核平和のつどいの開催を提案します。お答えください。
【鈴木区長】
平和に関するご質問ですが、区は世界の恒久平和と人類の永遠の繁栄を願い、平和都市宣言を行いました。このことを記念するとともに、平和の尊さを確かめ合い、若い世代へ語り継ぐことを目的として、毎年、平和都市宣言記念事業を実施しております。本年度は名称を平和のつどいに改め、第1部の式典では平和都市宣言文の朗読や合唱、戦後抑留をテーマとした映画上映、語り部の動画放映などを行いました。また、平和への思いを込めた親子で参加できるワークショップを行い、お子さんから大人まで幅広い年代の方々が平和について考えられる場といたしました。
先ほどご答弁いたしましたとおり、今年は先の大戦終結と広島・長崎への被爆から80年の節目の年であり、今まで以上に平和の大切さを次世代へと引き継いでいくこと、平和を希求する姿勢を発信することが区の責務であると考えております。こうした思いから、これまで以上に平和のつどいを充実させてまいります。引き続き、核兵器のない平和都市をうたった平和都市宣言を行った自治体として、笑顔とあたたかさあふれる平和な大田区が実現するよう、平和関連の各種事業を着実に進めてまいります。
【清水議員】
次に、産業経済費の予算について伺います。128億4107万4000円となっており、前年度と比較すると59億9299万2000円の増となっていますが、そのうちの55億円は産業のまち未来基金積立金で、中小企業融資基金を廃止するものです。産業の活力で持続的に発展するまちにふさわしい予算となっているでしょうか。大田区内の中小業者の実態は、商工リサーチの調査では、2022年の休廃業・解散は396件、前年344件で15.1%増、うち製造業は91件、前年74件で23%増で、資本金別では小規模な企業が7割でした。一刻も早く対応しなければ、ものづくりのまち大田は存亡の危機と言われています。また、飲食業者は、コロナ後も客は戻ってこず、食用油などの値上げもあり値上げせざるを得ないが、客離れを恐れています。ガソリンの値上げで区内建設業、運輸業は大変な負担増です。中小企業は賃上げしたくてもできない、人手不足が深刻です。家賃支援、ガソリンや電気代、ガス代値上げ対応支援、賃上げ支援など、製造業をはじめ区内中小業者を支えることが今求められています。
以前、大田区が独自で実施したものづくり経営革新緊急支援事業は、1事業者に最大50万円の直接支援で、機械の修理や操業環境改善などに活用され、中小業者の経営を支えました。このような直接支援が今必要です。そのような中、大田区が区内金融機関に預金している中小企業融資基金を廃止することを発表しました。それについて質問します。
●中小企業融資基金の目的は、区内の中小企業者に対して、事業経営に必要な資金の融資を円滑に行うことにより、その経営の安定及び改善並びに企業体質の強化を図るためのものです。基金を廃止することで、区内金融機関から中小企業が融資を受ける際のいわゆる貸し渋りが起こるなど、経営と営業に影響が出るおそれがあります。東京都は金融機関に2380億円の預託金を入れており、東京信用保証協会に信用保証として80億円の損失補塡を予算化しています。また、東京23区内では、江東区で42億円をはじめ8区が実施しています。国内有数の産業集積を誇る中小企業のまち大田区として、中小企業融資基金は廃止せず存続することが必要です。お答えください。
【鈴木区長】
中小企業融資基金条例の廃止に関するご質問ですが、本基金は、区内中小企業者の事業経営に必要な資金融資を円滑に行うことで、経営の安定、改善並びに企業の体質強化を図ることを目的に創設された基金でございます。当初は大田区中小企業融資あっせん制度の各取扱金融機関に預託をしておりましたが、預金保険制度の改正に伴い、区においても、区民の貴重な税を原資とする本基金を全額保護する観点から、平成15年度に預金へと改めた経緯がございます。
区は現在、公金管理運用の見直しを図っている中で、本基金の取扱いについても俎上に上げて検討を重ねてまいりました。昨年7月、改めて本基金について取扱金融機関へ調査を行った結果、全店舗から、預金を取りやめても減額しても、あっせん融資の取扱金融機関を継続するとの回答を得ました。これを踏まえ、当該基金による預金を前提としなくても融資あっせん制度は継続できると判断し、廃止することとしたものでございます。融資あっせん制度は全業種の区内中小企業の経営基盤を支える重要な事業です。融資実行の可否は各取扱金融機関の判断にはなりますが、今後も、中小企業の皆様からのご相談に寄り添いながら、引き続き融資事業を進めてまいります。
【清水議員】
産業のまち未来基金を活用して、ものづくり人材確保のための奨学金返還事業169万9000円は、区内中小企業に就職した方の奨学金返還額の半額を最長5年間助成するという新規事業です。区内中小業者の雇用につながります。後継者がいない、人手不足等で苦労している声を受けて、日本共産党区議団はこの間、一貫して後継者対策の予算を提案し続けてきました。さらなる支援の拡充を求めます。
●そこで伺います。産業のまち未来基金は区内の中小業者に活用すること、中小企業融資基金55億円を廃止して原資とすべきではありません。お答えください。
【鈴木区長】
中小企業融資基金を存続すべきとのご質問ですが、融資あっせん制度が基金によらずとも継続可能であることから、従来の融資基金は役割を果たしたとみなし、本基金の廃止を決断いたしました。同時に、その貴重な原資は引き続き産業振興のために最大限活用すべきと考え、新たな基金を創設するものでございます。そのため、中小企業融資基金の継続は考えておりません。区内企業の大多数は小規模企業であるため、企業の経営基盤を支える施策を継続していくことが求められております。産業のまち未来基金は、人材確保・育成や操業環境の整備・維持、緊急経済対策など、企業の経営継続支援や企業成長に欠かせない新産業の創出などに充当してまいります。今後も、効果的な活用と持続性を考慮した運用により、区内産業集積の維持発展を力強く支援してまいります。
【清水議員】
次に、1月28日に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故についてです。この事故によって周辺の住民47人が避難対象となり、19日に避難は解除となりましたが、日常の生活に大きな支障が出ました。また、転落したトラックの運転手はいまだ行方不明で救出されていません。この事故は対岸の火事ではなく、大田区においても起こり得ると多くの区民から不安の声が上がっています。事故が起きた下水道管は、埼玉県内12市町から汚水が集まり、下水処理場につながる太い管路で発生しました。大田区に森ヶ崎水再生センターがあります。我が国最大の水再生センターで、処理区域は品川、目黒、大田、世田谷区の大部分、渋谷、杉並区の一部で、これは区部全体の面積の約4分の1に当たります。多摩地域の野川処理区等の下水も受け入れています。東糀谷と羽田旭町にも都下水道局のポンプ場があります。
都下水道局に問い合わせたところ、八潮市の道路陥没の原因と思われる管路と同規模のものが区内には多くあり、日常的に点検も行っているが、事故後、緊急に行った、異常はなかったと聞いております。国土交通省は、陥没事故と同様の管路を持つ7都道府県の計420キロを対象として、約1700か所のマンホールを緊急に点検したところ、埼玉県内で3か所の異常が見つかったと発表しています。他自治体は緊急に路面下空洞調査を行っています。昨年9月、大田区矢口で道路陥没事故が発生しました。この箇所は2018年に調査したとのことです。区民の発見で大事故に至りませんでしたが、区民の安全のために路面下空洞調査の頻度を上げることが今本当に必要です。
●そこで伺います。埼玉県八潮市で発生した事故は大田区内でも起こる可能性が懸念されます。新年度予算には路面下空洞調査委託が計上されていますが、大幅に拡充して緊急に区内全域の道路の路面下空洞調査を行い、八潮市と同様の管路が集中している大森南、東糀谷、羽田旭町地域には下水道局と連携して重点的に行い、結果を区民に公表することを求めます。お答えください。
【鈴木区長】
路面下空洞調査についてのご質問ですが、東京都下水道局では、埼玉県八潮市の陥没事故を受け、国の要請に基づき、清瀬水再生センターに流入する下水道管の緊急点検を実施し、空洞の可能性が確認された箇所はなかったとの調査結果を公表してございます。また、追加の緊急点検として、都内に敷設されている下水道管のうち、内径2メートル以上で八潮市と同様に腐食のおそれが大きいものを対象に、下水道管内部の目視点検及び路面下空洞調査を実施していると聞いております。これには区内の下水道幹線も含まれております。区は、道路管理者の立場から調査結果について迅速な報告を求めるとともに、異常が確認された場合は、東京都下水道局と連携しながら、補修等の必要な対応を速やかに実施してまいります。また、区が実施する調査につきましては、今年度から5年を1サイクルと位置づけ、区道全延長の約770キロメートルについて調査を継続的に実施していくこととしております。調査の内容につきましては、区民の皆様にも分かりやすい情報提供に努めてまいります。
【清水議員】
次に、新年度予算の重点ポイント1、子育ち・子育ての環境づくりの保育人材の確保について伺います。
長年にわたり保育労働者、保護者らが日本中で、こどもたちにもう1人保育士を、の運動を続け、四、五歳児の配置基準が76年ぶりに改善されたことは大きな前進ですが、1歳児の基準改正は先延ばしとなっています。地震や災害の際、1歳児6人を1人の保育士で安全に避難させることは到底無理です。実態に合わせた配置基準へのさらなる改善が、こどもの安全と豊かな発達を育む環境を保障し、保育士の負担軽減につながります。保育士は日常的に時間外労働や不払い賃金があり、開所時間も長くなり業務量の多さが問題になっています。人員を確保できず休暇を取りづらいなどが離職につながり、保育士資格を持つ人のうちの4割弱しか働いていない状況となっています。
また、現在、人手不足の園の多くが保育士の確保のために人材派遣会社等に高額な契約金を払っており、その負担は保育園の運営に大きな影響を与えています。昨年、保育士に1か月1万円の応援手当支給事業が、就職5年目以降は5年ごとに一時金10万円へと大きく後退しましたが、継続を求める我が党の質問に対して、区長は、「本手当について、目的を量の確保から質の確保に資する保育士の定着支援に重点を移し、見直しを行うものでございます」と答弁されましたが、現状は質の向上と定着には程遠く、保育士が足りない、すぐ辞めてしまうの声があふれています。
●そこで伺います。新規事業、保育士人材確保及び定着に係る支援の拡充の相談窓口の設置や、潜在保育士の就労のための保育現場の不安解消座談会、保育現場の就業体験がありますが、人材確保と定着のための最大の課題は、保育士の働き方と人手不足と低賃金の改善です。離職者を減らすためには、少なくとも保育士応援手当を以前に戻すべきです。お答えください。
【鈴木区長】
保育士応援手当に関するご質問ですが、これまで区は、区政の重要課題として待機児童解消を目指し、平成29年度に新たな保育所開設に伴う保育士確保を支援する区独自の保育士応援手当を創設いたしました。待機児童を令和3年4月に解消して以降、待機児童ゼロが続いている現在、保育施設の開設計画はなく、開設に伴う多数の保育士を新たに確保する必要はない状況でございます。また、国は、こども未来戦略の中で、量の拡大から質の向上へと政策の重点を移すことが必要であると示しております。加えて、保育士の処遇改善に向け、公定価格を人事院勧告に準拠して毎年見直しをしています。区としては引き続き、保育の質向上に向け、保育人材の定着を促進していくことが重要であると考えております。このような状況を踏まえ、昨年4月、保育士応援手当の目的を量の確保から質の向上に資する保育士の定着支援に重点を移す見直しを行ったもので、現時点で制度を変更する予定はございません。
深刻な人手不足により危機が進行している訪問介護について
【清水議員】
次に、深刻な人材不足により危機が進行している訪問介護について伺います。
大田区は、2024年度大田区介護保険サービス事業所介護人材等に係る調査を行っています。838事業所のうち、有効回答402事業所でした。訪問介護職員の状況の調査では、総数1067人のうち非正規女性職員が56.5%で、職員の半数以上が非正規職員、年齢では60歳代以上が半数、採用率と離職率では増減率がマイナス0.7%でした。また、訪問介護職員の不足感は、大いに不足32.1%、不足25.7%、やや不足15.7%で、合わせて73.5%が不足と答えています。厚生労働省のワークシートで大田区に必要な介護職員を推計すると、2026年は9689人ですが、区が推計した介護職員は7239人で、2450人足りないことが判明しています。
●そこで質問します。区は調査により訪問介護の人手不足を把握しているはずです。そうであるならば、人手不足に対して具体的にどのような施策を行うのか、お答えください。
【鈴木区長】
次に、介護人材の確保に関するご質問ですが、今後、高齢者人口の増加が見込まれる介護分野において、人材の確保は重要な課題です。現在策定中の大田区基本計画においても、区や大田区に関わる全ての人々の間で共有すべき課題の一つとして担い手不足を掲げてございます。こうした中、区では、介護人材の確保、育成、定着に取り組んでおります。人材の確保としては、大田区介護保険サービス団体連絡会やハローワーク大森との連携によるおおた介護のお仕事就職相談・面接会の定期開催や、おおた福祉フェスにおける合同就職相談会などを実施しております。育成、定着としては、様々な研修や、介護人材の裾野を広げる介護助手導入支援事業などを実施しております。さらに、カスタマーハラスメントに関する区民の皆様への啓発活動などにより、介護従事者の皆様が働きやすい環境を整えてまいります。今後も人材確保等の施策を着実に推進してまいります。
【清水議員】
党区議団は、とうきょう福祉ナビゲーションに掲載されている区内147訪問介護事業者へのアンケート調査を緊急に行っています。現在、18件の回答をいただいていますが、経営状況は7割弱が苦しいという回答です。困っていることはありませんかには、人手不足、人材確保、ヘルパーがいない、事務手続きや処理が大変、離職者が多い、なり手がない、スタッフの質の低下などの回答です。また、国、都、大田区への要望の項目では、介護報酬を上げてほしい、介護保険制度は有識者が机上で話し合っているのでしょうが、小さな事業所こそ利用者に寄り添い、よい支援をしている、自分が介護を受けることを頭の隅に置いてほしい、中にはヘルパーは要らないと言われている気がするという意見もありました。報酬を下げられるということは、自分のしている仕事に価値がないと言われていると感じるのも当然です。また、名簿に載っているのに訪問介護は閉鎖したという回答が1件、さらに宛て先不明が2件あり、廃業している事業者が既に出ています。
訪問介護の危機は高齢者の問題だけでなく、家族の介護のために離職せざるを得ない介護離職の増加となり、現役世代にとっても切実な問題です。在宅で暮らす高齢者の尊厳ある暮らしを支え、誇りを持って介護に携わってきた労働者が働き続けるためにも、国が介護保険財政への公費負担を1割引き上げ、国の支出を1.3兆円増やすことが早急に求められています。
このような中、世田谷区は、報酬改定は介護福祉業界が直面する深刻な人手不足を踏まえていないとして、8億7000万円を2024年9月に補正予算に組み、12月から介護の訪問介護事業所には88万円、その他の介護・障害の居宅系サービス事業所には28万円、介護と障害福祉の通所・入所施設には定員1人当たり2万7000円の給付をしています。また、東京都は、介護職員等の処遇改善のために、国が必要な見直しを講じるまでの間、勤続5年目までの介護職員に1万円の居住支援特別手当を支給しています。新年度も継続します。品川区は、この事業を今年度から実施し、さらに新年度は区独自で1万円上乗せをする予算を発表しています。このままでは隣の品川区や世田谷区にヘルパーやケアマネらの介護職員が流出し、さらに介護事業所そのものが出ていってしまいかねません。大田区が訪問介護を支える施策がどうしても必要です。
●そこで伺います。世田谷区のような事業所支援の実施と、東京都の介護職員手当を大田区も活用して実施すべきです。お答えください。
【鈴木区長】
次に、介護事業所への支援に関するご質問ですが、在宅介護を支える訪問介護事業所の役割は重要です。今年度国が実施した調査によると、訪問介護の事業所数は全国的にほぼ横ばいで推移しており、区においてもおおむね同様の状況です。事業所の廃止には人材不足や物価高騰による影響など複合的な要因がある中で、人材不足への対応としては、区内の職能団体と連携した介護人材確保検討会での協議や、様々な機会を捉えた介護の仕事の魅力発信などに取り組んでおります。物価高騰への対応としては、令和4年度から5年度に支援金を交付しており、今後については一般会計補正予算を議案として提出してございます。また、国では、事業所に対し介護職員の賃上げ等を行うための補助を目的とした補正予算が成立しております。実施主体は東京都ですが、区といたしましては、事業の詳細が提示されましたら積極的な周知等を行い、支援してまいります。
人権の視点から性や人間関係について学ぶ包括的性教育について
【清水議員】
次に、人権の視点から、性や人間関係について学ぶ包括的性教育について質問いたします。
こども家庭庁と内閣府で開催した合同会議で、こども・若者の性被害を防止するための対策の全体像を新たに整理し、こども性暴力防止に向けた総合的な対策を取りまとめ、こども性暴力防止法を昨年6月19日に成立し、26日に公布しました。こどもと接する仕事に就く人の性犯罪歴の確認を事業者に義務づけることを目的とした法律で、性犯罪歴確認システムを導入し、こどもに対する性犯罪を未然に防ぐことを重視しています。
●そこで質問します。こどもに対する性暴力は人権を深く傷つけ、その傷跡は心身に生涯にわたって回復のない重大な影響を与えるもので、絶対に許されません。区として、こども性暴力防止法をどのように取り組むのかについてお答えください。
【鈴木区長】
こども性暴力防止法の制定を踏まえた区の取組についてですが、こどもへの性暴力は児童等の権利を著しく侵害し、児童等の心身に生涯にわたって回復し難い重要な影響を与えるものであり、断じて許されるものではありません。国は、令和6年4月に、こども性暴力防止法を含め、こども性暴力防止に向けた総合的な対策を取りまとめました。区においても、国の方針と軌を一にして総合的な対策を着実に推進していくことが重要でございます。区は既に、教職員等に性被害防止に関する国の通知等を周知徹底するとともに、セクシャルハラスメント研修等を実施しております。また、保育現場では、性暴力等により保育士登録を取り消された者を管理するデータベースを活用して、関係法に基づき適切に対応しているところでございます。引き続き、国の動向を注視しつつ、区においても総合的な取組により、こどもの性被害の防止に努めてまいります。
【清水議員】
こども性暴力防止法の制定に向けて、国は、こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージを出しましたが、その中の生命(いのち)の安全教育に包括的性教育という言葉はおろか、性教育の文言さえありませんでした。性加害者をつくらないために、また性被害を受けたときの対応方法を学ぶためにも、包括的性教育が不可欠です。日本でも性教育というと、第2次性徴や生殖の仕組みなどを学ぶものと思われますが、包括的性教育はより広い内容と視野を持っています。国連が作成した国際セクシュアリティ教育ガイダンスで示され、人間関係、ジェンダー、人権、多様性、性暴力の防止を含めた包括的な性教育のことです。年齢層に区分して学習内容が掲げられて、性は人権であることを積極的・肯定的に捉え、自分も他者も尊重しながら適切な行動を取れる力を身につける、こうした包括的性教育が世界の標準となっています。
現在のこどもや若者は、様々なメディアやインターネットで早いうちから膨大な性情報にさらされているにもかかわらず、それらの正しい情報が得られず、むしろそうした誤った情報によって、こどもや若者に深刻な問題が生じています。彼ら彼女らに必要なのは科学的で包括的な性教育です。また、包括的性教育はSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」と、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とも相互発展的な深い関係にあります。
●そこで伺います。性暴力事件、痴漢等々の事件が相次いでいます。中高生から妊娠相談が急増していると報じられています。妊娠を誰にも相談できず、一人で出産して乳児を遺棄するという痛ましいニュースも後を絶ちません。誰もが性犯罪、性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないために包括的性教育を進めることが求められています。殊に小中学校においては、文科省による生命(いのち)の安全教育に加え、包括的性教育を進める立場に立つことを求めます。お答えください。
【小黒教育長】
区立学校における性教育についてのご質問にお答えします。
性に関する指導は、学習指導要領に基づき、小学校体育科、中学校保健体育科、特別活動、人権教育など、教育活動全体を通じて児童・生徒が性について正しく理解し、適切に行動できるように行っております。指導する際は、生殖の仕組み、2次性徴などの身体的な内容だけではなく、性の多様性について指導し、性自認や性的指向などに関する人権教育の視点、SDGsの目標の一つであるジェンダー平等についての視点など、多角的な視点から指導しております。
例えば、今年度は、大森第十中学校3年生では産婦人科医による性教育の授業を実施し、母体保護法や人工妊娠中絶による心と体への影響等について知識を得るとともに、互いの人権を尊重し、かけがえのない命を大切にする指導をいただきました。また、情報モラル教育につきましても、性に関する情報にどのように接すればよいか、児童・生徒が性に関わる犯罪や事件に巻き込まれないように指導しております。今後も、児童・生徒の発達段階に応じまして、様々な角度から性に関する指導の充実を図ってまいります。
「新空港線・沿線まちづくり」は地域経済活性化となるのかについて
【清水議員】
最後に、新空港線について質問します。
新空港線について区長は、「国の新年度予算案に第一期整備事業に関する予算が計上された。1月17日に羽田エアポートライン株式会社及び営業主体を予定している東急電鉄株式会社から、都市鉄道等利便増進法に基づく整備構想及び営業構想が国土交通省に提出されたことで具体的な一歩であり、年内の事業化に向けて手続きを進めていく」と発言されていますが、今後の計画の推移は不透明です。多額の税金が注がれます。区民の多くは利用しません。多摩川線蒲田駅の地下化でJR等の乗換えが不便になります。京急空港線の大混雑などなど問題は山積みです。
朝日新聞1月23日付けで、大田区がJRと東急に駅ビルの建て替えを要請したという報道がありました。記事によると、東急プラザ蒲田とグランディオ蒲田が入るJR・東急蒲田駅ビルについて、大田区が事業者側に建て替えを求めていることを複数の区関係者が明らかにした。区関係者によると、現在三つの建物に分かれる駅ビルを一つの建物にまとめる案を検討している。また、蒲蒲線をめぐっては、事業費の高騰や採算性を懸念する意見もある。ある区幹部は、駅ビルの建て替えは蒲田のまちの活性化という蒲蒲線のメリットを住民に分かりやすく示す狙いがあると報道されています。
●そこで伺います。この新聞記事は、区がJRと東急に駅ビルの建て替えを要請しているというものです。議会には報告がありませんが、そのような事実があるか、お答えください。
【鈴木区長】
蒲田のまちづくりに関する新聞報道のご質問ですが、蒲田駅はターミナル駅であるとともに、羽田空港に一番近いJR線の駅である一方、駅周辺に建築から50年以上経過した建物が多く、まちの機能更新が進んでいない状況であります。蒲田を将来にわたり持続的に魅力あふれる市街地へ変貌させるためには、新空港線整備とまちづくりとを相互に連携し進めていくことが必要不可欠でございます。区はこれまで、国や都から技術的な助言を得ながら関係事業者と協議調整し、駅周辺の中長期的な基盤整備と駅舎、駅ビル及び駅周辺の都市機能の更新を一体的に行うための整備方針を策定してまいりました。この方針を基に、現在、都市基盤施設の整備や駅周辺のまちづくりについて、関係事業者との詳細な協議を進めているところであります。新聞で書かれているような区が駅ビル等の建て替えを要請した事実は一切ございません。
【清水議員】
区が公表した新空港線第一期整備とまちづくりによる経済波及効果は、開業初年度で約4600億円、開業後10年間で約1兆2000億円と、区や東京都だけでなく広範囲に大きな経済波及効果が見込まれるとしています。うち大田区の経済波及効果は初年度2919億円となっていますが、そこには1360億円の総工費と都市基盤施設の費用が入っています。公文書開示請求によって大田区が出した資料によれば、新空港線ではない開発が駅周辺道路と駅前広場等整備費に入っています。一部黒塗りでありますが、それらは蒲田駅東口駅前広場10億円、蒲田駅西口駅前広場7.9億円、蒲田駅東西自由通路整備23.6億円、A市街地再開発159.4億円、B市街地再開発345.8億円、C市街地再開発173.7億円、Aビル建て替え120.3億円、Bビル建て替え359.1億円、合計約1199.8億円と試算されています。
●そこで伺います。区が発表した経済波及効果は、新空港線がなくても進められるまちづくりをわざわざ新空港線と一体化して、新空港線の経済波及効果を大きく見せるようにしているとしか思われません。区民がこれらの経済波及効果が新空港線によるものと誤解が生じます。区民への説明責任を果たすことを求めます。お答えください。
【鈴木区長】
経済波及効果についてのご質問ですが、新空港線の整備を行うことにより、東京圏全体の鉄道ネットワークの向上に大きく貢献いたします。また、鉄道とまちづくりは車の両輪であり、鉄道の整備効果を最大限に引き出すためにも、長期的な視点に立ち、相乗効果を生み出すことができるよう、これまで以上に魅力あふれるまちづくりの取組をしっかり進めていくことが重要であります。そのため、経済波及効果の算定においては、新空港線第一期整備及び蒲田駅周辺のまちづくりに係る建設費を見込んでおり、令和6年4月の交通政策調査特別委員会や区ホームページにおいて、新空港線だけの経済波及効果ではなく、蒲田駅周辺のまちづくりも含めた経済波及効果であることをご説明してございます。
【清水議員】
●最後に、現在約107億4000万円となっている新空港線整備及びまちづくり資金積立基金への積立金は、新年度予算では10億3574万5000円計上されています。新年度予算には、物価高騰で暮らしも営業も逼迫している区民、中小企業への支援こそ必要です。また、喫緊の課題である老朽化している公共施設の整備にも予算が必要です。新空港線計画には確実に予算を確保していますが、予算の優先順序が違います。新空港線計画は中止し、約118億円となる積立金は区民のために使うべきです。お答えください。
【鈴木区長】
新空港線事業のための積立てについてのご質問ですが、新空港線整備及びまちづくり資金積立基金は、新空港線整備のための財源確保の目的で平成24年度に創設したものでございます。また、令和4年の第4回定例会においては、当基金が沿線のまちづくりにも活用できるようにする条例改正を可決いただき、現在まで継続的に積立てを行っております。新空港線整備や都市基盤整備等の総合的なまちづくり事業には非常に長い期間を要するため、後年度の区の財政負担軽減の観点からも積立てを計画的に行っていく必要があります。この新空港線整備とともに、つながる先の鉄道沿線のまちづくりも促進し、大田区を将来にわたり持続的に発展させていくことが重要であります。区は引き続き、これらの事業に必要な資金の積立てを計画的に行っていくとともに、新空港線の整備や沿線のまちづくりを着実に推進してまいります。
以 上