第3回定例会代表質問(速報)―あらお議員(9月14日)



(映像は大田区議会ホームページより:60分)

【あらお議員】
日本共産党大田区議団を代表して、通告に従い順次質問を行います。

核廃絶を求める国際世論と市民運動に連帯し、「核のない世界」実現に向けて大田区の果たすべき役割について

【あらお議員】
初めに、核兵器をめぐる国際情勢と大田区の果たすべき役割についてです。
今年6月21日から23日にかけて、オーストリアの首都ウィーンにて、核兵器禁止条約第1回締約国会議が開催されました。この会議は、核なき世界の実現を国際社会に呼びかけるウィーン宣言と、核廃絶に向けた具体的な取組をまとめたウィーン行動計画を採択しました。宣言は、核抑止論がもはや成り立たず、核兵器の脅威を根絶するには核廃絶以外にないという固い決意を表明するものでした。
この会議には、条約を批准している65の国と地域のほか、条約を批准していないNATO加盟国のドイツ、ノルウェー、ベルギー、オランダなどの国もオブザーバーとして参加しました。これは、核兵器禁止条約を無視することができない現実となっていることを示すものであり、それだけに唯一の戦争被爆国である日本政府がこの重要な会議に参加しなかったことは、失望と批判の的になりました。締約国会議の議論に耳を傾けることすらできない岸田首相に核兵器保有国と非保有国の橋渡し役の資格はありません。
そして、8月1日から開かれた核不拡散条約(NPT)再検討会議は、26日の閉幕日に最終文書案の採択を目指しましたが、ロシアの反対により採択されませんでした。唯一反対したロシアをはじめ、核保有5大国が核抑止力に固執して、核兵器のない世界への前進を押しとどめようとしている姿勢、ロシアによるウクライナ侵略での核による脅しに対して厳しく非難をします。採択されなかったとはいえ、ロシアを除く全ての締約国が異議を唱えなかった最終文書案には、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的結末への深い懸念、NPT第6条の下で約束している核兵器の全廃を達成するという核兵器国の明確な約束の再確認、核兵器禁止条約の発効と、その第1回締約国会議の開催を認識することなどが盛り込まれ、前進をしました。
この会議に初めて参加した岸田首相が、会議の焦点だった核軍備の縮小・撤廃の交渉義務を定めたNPT第6条にも核兵器禁止条約にも一言も触れず、世界の流れに逆行する姿勢をあらわにしたことは、唯一の戦争被爆国の首相として恥ずべき態度と言わざるを得ません。
●質問します。平和都市宣言をしている大田区として、国に対し、核兵器禁止条約に批准し、核のない平和な国際社会の実現に力を尽くすよう働きかけることを求めます。お答えください。

【松原区長】
まず、平和都市宣言と国への働きかけについてのご質問でございますが、令和3年12月の参議院予算委員会において、岸田首相は核兵器禁止条約について、核兵器のない世界に向けての出口に当たる重要な条約だとした上で、世界最大の核兵器国である米国を動かすことを日本としてやらなければならない、信頼関係をしっかりと構築していくところから始めたいと表明しています。日本は唯一の戦争被爆国として非核三原則を堅持し、核兵器のない世界の実現に向け、国際社会による核軍縮・不拡散の議論を主導しています。区といたしましては、これまで繰り返し答弁申し上げているとおり、平和という人類共通の願いを込めて、「大田区は平和憲法を擁護し核兵器のない平和都市である」とうたった平和都市宣言を行った区の責務として、区民の皆様とともに平和の尊さについて考え、次の世代に語り継ぎ、平和な世界を築いていくという趣旨に沿って、平和都市宣言実現のため、引き続き基礎自治体として平和関連の各種事業を着実に進めてまいります。

【あらお議員】
●また、区議会第2回定例会では、ロシア、プーチン政権に対して核兵器使用禁止の抗議声明を出すことを求めましたが、その後、核兵器禁止条約締約国会議、NPT再検討会議が開催され、核廃絶に向けた大きな前進がありました。核廃絶の実現を政府に求めるだけでなく、区長自らが声明を出すことを求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、核廃絶の取組を踏まえた声明に関するご質問でございますが、ロシアによる軍事侵攻によって核兵器が使用されることへの懸念が高まる中、令和4年6月21日から23日までの日程で、ウィーン市で開催された初めての核兵器禁止条約締約国会議は、核なき世界の実現を目指すウィーン宣言と、具体的な取組をまとめたウィーン行動計画を採択して閉幕しました。また、8月1日から約4週間にわたって国連本部で開催された世界の核軍縮の方向性を協議するNPT(核兵器不拡散条約)の再検討会議は、ウクライナ情勢をめぐる対立が解けず、最終文書の草案にロシアが反対したことから、文書こそ採択されませんでしたが、岸田首相が会議初日に核兵器の廃絶に向けた日本の行動計画であるヒロシマ・アクション・プランを表明するなど、今後の核軍縮の一定の流れがつくり出されたものと認識しています。区といたしましては、国における核軍縮の取組や国際的な議論をしっかりと見守ってまいります。

コロナ感染症第7波、物価高騰への区民のいのち、くらし、営業を守るための抜本的な対策強化について

【あらお議員】
次に、コロナ感染症第7波、物価高騰への対策についてです。
区内の感染者数は、6月3014人だったのが、第7波の感染拡大が始まった7月には3万4395人、8月は3万6846人と急増し、厳しい事態が続きました。医療現場は逼迫し、救急搬送されても受入れ先が見つからず、亡くなられるという痛ましい事案も発生しています。まさに感染拡大による災害級の医療崩壊が発生した状況に陥りました。
区内の病院で8月上旬にコロナに感染し、自宅療養中に亡くなったという事例がありました。この方は心不全と糖尿病の持病があり、入院前のPCR検査で陽性が判明したにもかかわらず、病院のコロナ病床が満床、さらに一般病棟もクラスター発生で入院できず、他の病院でも入院ができなかったため、自宅療養となりました。薬が処方されたものの、3日後に急変し亡くなられました。こうした事例が各地で頻発し、医療崩壊が起こったのです。
日本共産党は、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が8日に示した「Withコロナに向けた政策の考え方」については、第6波、第7波で起きた医療崩壊など深刻な事態を直視していません。成り行き任せを続けたことへの反省もありません。第7波では、発熱外来がパンクし、早期治療の遅れから重症化につながりましたが、今回の基本的考え方では、「高齢者・重症化リスクのある者に対する適切な医療の提供を中心とする考え方に転換」と書いてありますが、これでは、それ以外のコロナ患者は医療にアクセスできなくてもいいことになりかねません。
また、政策転換の柱である全数把握の全国一律の見直しは、事務作業の効率化だけでなく、軽症者は受診しなくてもいいようにするものであり、医療体制の強化の考えが抜け落ちており、大変問題です。小池都知事は都の対策本部会議で今後の方針を決めるとしていましたが、昨日、全数把握の見直しを検討すると表明をしました。医療体制を抜本的に強化する上でも全数調査は継続するべきです。
●そこで質問します。症状が出るのが早い、感染力が強いというオミクロン株の特性を踏まえた新しい戦略が必要です。従来どおりではなく、早期診断、早期治療の体制を強化することを求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、オミクロン株の特性を踏まえた新型コロナウイルス感染症対策に関するご質問でございますが、2019年の発生以降、新型コロナウイルスは、アルファ株、デルタ株など変異を繰り返してきましたが、それぞれの特性に合わせ対策を変更・強化してまいりました。今般の感染力の強いオミクロン株による爆発的な陽性者数の増加に対しては、医療専門職が重症化リスクの高い方や症状の重い方に対する健康観察や入院調整等に注力できるよう、発生届の処理などの事務作業について外部委託を積極的に活用し、保健所体制を強化してまいりました。さらに、医療が必要な方を早期に治療へつなぐことができるようにコールセンターの増強を行い、適宜的確な案内に努めてまいりました。
一方、感染症対策は広域的な対応が必要であることから、東京都では、軽症者への抗原定性検査キット配布と、陽性者登録センターの運用が開始され、受診せずに診断と発生届の登録が可能な体制が整備されております。区では、このような事業も有効に活用し、診療・検査医療機関の逼迫の解消に努めております。引き続き、医師会や医療機関と連携を密にし、入院病床の確保に関する国や都の状況を注視しながら、区民の命を守る対応に尽力してまいります。

【あらお議員】
コロナ感染症拡大の次の波が襲ってきても、医療に確実にアクセスでき、救えるはずの命が救えないという状況を絶対につくらないよう強く要望します。
8月8日、日本共産党大田区議団は、区長宛てに13項目から成るコロナ感染第7波・物価高騰・猛暑への対策を求める緊急要望を提出しました。本定例会に補正予算案が提出をされ、コロナ感染症、物価高騰、経済対策などに対応するための71億3000万円余の規模となっています。内容は、コロナ感染症対策として、1、地域医療連携の推進として陽性者の入院治療を行った場合、患者1名、1回につき10万円助成、2、インフルエンザワクチン接種費用助成、3、保健所体制強化のための業務委託継続、4、オミクロン株に対応した新型コロナワクチン接種、物価高騰対策として、1、臨時給付型奨学金支給、2、原油価格・物価高騰等における障害福祉、介護、保育の各サービス、私立幼稚園、学校給食食材費への支援、公共工事の前倒し実施による経済対策などです。補正予算で実施される事業には、党区議団の緊急要望に盛り込まれているものもあり、これに速やかに対応されたことは評価できます。さらに踏み込んだ対策に取り組むよう求めます。
江戸川区では、燃料費高騰による経営への影響が顕著であり、取引価格、サービス料金への転嫁が困難な区内中小事業者を対象に、経費負担軽減の一助として、年間売上高に応じて支援金を5万円から20万円の範囲で支給する独自の支援金制度を実施しています。
●そこで質問します。物価高騰対策本部を設置し、事業者、労働者の実態把握のための調査の実施や、相談窓口を設置することと併せて、中小事業者に対する物価や燃料費等の高騰分の負担軽減補助など、臨時交付金を活用して直接支援を行うこと、実質無利子の特別資金融資制度の再開を求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、物価高騰に対する区内中小事業者等の支援に関するご質問ですが、事業者への影響、実態把握については、四半期ごとに作成・公表している大田区の景況・大田区中小企業の景況をはじめ、政府が発表する経済統計など様々な指標を基に、マクロとミクロ、双方の観点から実態把握に努めております。また、直接支援につきましては、これまでも度々お答えを申し上げているとおり、融資あっせん制度により融資を受けた事業者の皆様が金融機関に支払う利子の相当分を区が代わりに負担する利子補給は、まさに直接的な支援制度であると考えております。現在も、新型コロナウイルス対策特別資金の後継制度である一般運転資金利子補給加算を継続しており、コロナ禍のみならず、物価高騰などの影響を受けている中小企業・小規模事業者の皆様の資金調達を支援しております。現時点で、これに加えて新たな直接支援を行っていく考えは持ち合わせておりません。

【あらお議員】
次に、国民健康保険料の減免についてです。
区民生活と区内中小事業者の営業を守るためにも、国民健康保険をはじめ社会保障費の負担軽減は不可欠です。為替市場では円安が加速し、1ドル140円台に突入し、さらなる円安が進行するとの見方が強まっています。円安の傾向が続くことは、さらなる物価上昇を招き、国民生活に多大な悪影響を及ぼしかねません。
区は、新型コロナウイルス感染症に係る国民健康保険の減免申請の受付を実施していますが、2021年、2022年の事業収入等の額には、国や都からの各種給付金は含めない規定となっています。つまり、事業の売上高のみを比較することになります。昨年、料飲店は時間短縮等の協力の代わりに売上げはほとんどない状態でした。昨年1年間で約1400万円の感染拡大防止協力金があり、それを収入として確定申告を求められたので、その申告を基に算定された今年度の国保料は、40から64歳の場合で、年間で102万円となっています。ところが、今年に入ってからはほとんど時間短縮等を要請されていないため、多くの店舗が営業をしています。ですから、現在支払っている国保料は高額になっている一方で、売上額はコロナ禍前より少ないとはいえ、今年のほうが昨年よりも多いので、先の規定があるために減免対象から除外をされてしまいます。そもそも、都の協力金を収入として認定する、課税対象とする国の姿勢に最大の問題がありますが、地方自治体は国の悪政の防波堤になる必要があります。
●そこで質問します。新型コロナウイルス感染症に係る国民健康保険料の減免制度について、区ホームページには、減免対象となる世帯、令和3年・4年の事業収入等の額には、国や都からの各種給付金は含めませんとありますが、保険料算定の際は収入として認定しておきながら、このような規定を設けることは不公正であり、本来の減免制度になっていません。この規定の削除を求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、新型コロナウイルス感染症に係る国民健康保険料の減免制度についてでございますが、新型コロナウイルス関連の保険料減免は、令和2年4月の緊急経済対策の一つとして、厚生労働省から通知された国の財政支援の対象となる保険料の減免基準を踏まえて、各自治体が実施することとなっております。その要件は、勤務形態にかかわらず、主たる生計維持者の事業収入の減少などが要件となっています。その際、国や都から支給される各種交付金については、事業収入等の計算に含めないこととされております。区といたしましては、国の財政支援の基準の範囲内で減免制度を実施することとし、令和2年6月より実施しております。したがいまして、現在、国や都からの各種給付金は含めないという規定を削除する考えはございません。なお、特別区長会として、新型コロナウイルス感染症の影響による保険料の減免については、減免に対する財政支援の継続及び要件の緩和について要望しております。今後も、国民健康保険の運営については、被保険者に寄り添い適切に対応をしてまいります。

コロナ禍の区民生活を守るには不十分だった決算について

【あらお議員】
次に、2021年度(令和3年度)決算について伺います。
本決算は、一般会計の歳入総額は3103億9988万円、歳出総額は2999億6498万円、歳入歳出差引額は104億3489万円となり、歳入歳出差引額から繰越金を引いた実質収支は96億9265万円となりました。不用額は161億2302万円となりました。党区議団は、2021年度決算について、第1に、コロナ対策が不十分な上、コロナ感染の影響等により今後3年間で580億円余の減収が出るという理由で、事務事業で決算年度は3億8000万円余の廃止・減額をしたこと、第2は、ポストコロナとして大規模開発優先の予算としたこと、第3は、委託とデジタル化で職員削減など、福祉、暮らしを守るという自治体本来の役割を果たしていない問題点を指摘しておきます。
決算年度は、東京都では、緊急事態措置等が4月25日から6月20日、7月12日から9月30日、2022年まん延防止等重点措置が1月21日から3月21日まで、その間、飲食店は休業や時間短縮要請が出されていました。対象になっていない月は10月から12月までの僅か3か月間でした。飲食店には東京都の協力金が支給されていましたが、一部であり、多くの事業者が新型コロナウイルスの影響を受けて深刻な経営状況となっていました。感染者数が広がり、医療機関には重い負担がかかり続けて、さらなる感染拡大に備えるために、医療機関の体制確保のための支援の強化が求められ、飲食店をはじめとした多くの事業者が、先の見えない、展望が持てない事態となっていました。自粛と補償はセットの立場で支援の強化が求められていました。政府が持続化給付金、家賃支援給付金を打ち切る一方で、消費税の納税や家賃などの固定費の支払いが迫られ、また、生活に困窮する区民への支援も求められていました。
この間、一般会計では第8次まで補正予算が組まれましたが、ほとんどは国や都の補助金等の活用をしたものでした。党区議団は、決算年度の2021年4月20日、感染拡大の第4波から区民の命、暮らしを守るための緊急申入れ(第14次)から翌年1月28日(第21次)まで、8回申入れを行ってきました。当初予算では財政基金から118億円繰入れ予定でしたが、決算では繰入れは行われず、取り崩しを予定していた118億円の一部を使えば区民への独自の支援を行うことは今決算から見ても十分できたはずです。
●質問します。財政基金からの取り崩しを行わなかったことについて、監査委員の意見書では堅実な活用だったと評価されていますが、区の独自施策は特別融資の利子補給などで、ほとんどは国や都の補助金等を活用したものでした。コロナ禍で疲弊した区民の生活と営業を守るために、党区議団は緊急要望を重ねてきました。財政基金の積極的な活用で実現できたのではありませんか。お答えください。

【松原区長】
次に、財政基金の活用に関するご質問ですが、令和3年度を振り返りますと、企業収益の堅調な推移を背景とした特別区交付金の増収など一般財源の伸びにより、想定より多くの歳入を確保することができました。また、コロナ禍における不用額精査や執行努力など、きめ細かい歳出の見直しを通じて生み出した財源を活用し、膨大な行政需要に対応できるよう財政の持続可能性を担保する自治体経営を行った結果、財政基金の取り崩しに着手しない健全財政を実現いたしました。これに至る予算執行の経過では、感染症への対応をはじめ、区民生活や区内経済を守る喫緊の課題に対応する施策に必要な財政需要を支えるため、ピーク時には財政基金繰入金を144億円まで増額した経過もございます。今年度も引き続き、感染症対策はもちろん、急激な物価高騰に直面する区民生活、区内経済を支える喫緊の課題などは機を逸することなく、必要に応じて区の財源のみで実施することは区の責務であると考えております。このような考え方を基に、引き続きこの難局を乗り切る重責を果たしてまいる所存でございます。

【あらお議員】
次に、今決算から見ての事務事業の見直しについてです。
2021年度(令和3年度)予算編成、組織・職員定数の基本方針についてでは、事務事業の見直しを踏まえた予算編成で、「区が直面する喫緊の課題に迅速かつ的確に取り組むため、部長は経営責任者として、今後の財政見通しを十分認識し、明確な経営判断とマネジメントのもと、以下に掲げる方針を留意の上、予算編成を進めること」。1として、事務事業の見直し・再構築、最適な実施方法の追求で、「費用対効果を踏まえ、抜本的な対策が必要な課題に対しては、スクラップ・アンド・ビルドや統合、必要な見直し・再構築を徹底すること」と述べています。
また、2021年度予算編成時で、歳入と歳出の乖離があると、今後の財政見通しについて、令和2年度から4年度までの3年間で580億円余と予定しており、「歳出に対して歳入が大幅に不足し、財政基金の取崩しが必要と推計される。このような大変厳しい財政状況を的確に把握し、今後も安定的、継続的に行政サービスを提供するため、現時点において見込まれる歳入・歳出の見通しを推計した」と、財政上からも事務事業の見直しを求めています。
そして、今決算年度で、事務事業の見直しの効果として、重点事業203項目、6114万円余、総計310項目、3億8500万円ほどで取り組み、その手法を効率化・簡素化28.1%、縮小10.1%、休止9.8%、廃止1.2%、その他50.8%としてきました。今決算では、6年ぶりに財政基金を取り崩さなかった結果からしても、住民サービスの切り捨てとなる事務事業の見直しは必要なかったのではないでしょうか。むしろ住民サービスの充実ができたのではないでしょうか。コロナ禍の下で見直すべきは、鉄道・都市づくり関連事業の着実な推進7億円余、HANEDA GLOBAL WINGSのまちづくり8億円余などの施策ではないでしょうか。
●質問します。2020年度から今後3年間で580億円余の財源不足が見込まれるとして全事務事業の見直しが行われ、リフト付福祉タクシー運行委託、応急小口資金貸付金、家具転倒防止器具の支給、感震ブレーカーの支給など、区民生活に欠かせない事業が廃止・縮小されました。コロナ禍で区民の生活や区内経済が厳しい中、このような事業こそ必要であり、全事務事業の見直しの対象にするべきではなかったのではないでしょうか。住民サービス切り捨ての全事務事業見直しの方針は撤回をするべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、事務事業見直しに関するご質問ですが、区は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い発生した緊急的な課題に機動的に対応し、区民生活と区内経済を守り抜くため、全庁が一丸となって事務事業の見直しを行ってまいりました。その結果、財源と人的資源をより優先度の高い施策に配分することにより、この大きな難局に的確に対応することができております。将来にわたり良質で満足度の高い区民サービスを継続して提供するためには、従来の考え方、手法にとらわれることなく、その時々の区民ニーズを的確に把握した上で、施策の新陳代謝を図る必要があります。過去2年間に実施した事務事業見直しでは、ウェブ会議の実施やロボットによる業務の自動化のほか、助成制度の改正、外郭団体との連携など、具体的な成果とノウハウを得ることができました。今後も、これらの成果を活かしながら、コロナ禍以前の事務遂行に戻ることなく、必要な見直し、再構築を徹底し、持続可能な自治体経営を実現してまいります。

【あらお議員】
次に、指定管理者制度と業務委託についてです。
指定管理者制度は、今決算年度で136のスポーツ・文化施設、社会福祉施設で導入されました。監査委員の意見書では、この間、民間事業者の保有するノウハウや柔軟な運営形態で、区民ニーズに対し満足度の高いサービスを提供してきたと評価すると述べています。指定管理者制度は2003年から導入された制度ですが、「民でできることは民で」の掛け声で、公の施設の民営化が進められてきました。施設管理はかつて公的団体に限定されていましたが、経済界の規制緩和の求めに応じて、2003年の法改正で一般企業やNPOにも開放されてしまいました。経済界は、2兆円市場、設備投資なしでもうけられるなどと歓迎した、いわくつきの制度です。
指定管理者制度の導入は、経費削減とサービス向上が目的です。経費削減するため、事業者は、まず利益の確保をし、物的経費は導入前とほとんど減らないので、人件費が大きく下げられることになります。必然的に職員は最低賃金とほとんど変わらない低賃金、不安定な非正規に置き換えられることになり、官製ワーキングプアを自治体自ら大量につくり出します。また、SDGsにも逆行するものです。事業者の利益は本社へ吸い上げられ、地域振興には役立ちません。このような指定管理者制度や民間委託では、住民福祉の増進と質の高いサービスを提供するという公共性が保てなくなるというのが最大の問題です。
●質問します。監査委員の意見書では、指定管理者制度にも言えることだが、長年業務委託を行ってきたサービスについて、職員のノウハウが希薄になり、委託を行う区と受託業者の関係における業務コントロールが難しくなる課題もある。委託業務は、事故があれば区が全面的にリスクや責任を負うことを所管は常に意識していただきたいと指摘されています。指定管理者制度と業務委託については見直しをし、公に戻すべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、指定管理者制度と業務委託に関するご質問でございますが、区はこれまで、民間事業者等が有する専門性やノウハウを有効に活用することにより、効果的かつ効率的な自治体経営を行ってまいりました。区が事業を実施するに当たっては、民間が運営することにより区民サービスの向上が図られるかなどの視点から、民間活用の妥当性を適切に判断しております。また、区は、常に事業の執行状況を確認するとともに、実績報告やモニタリング、第三者評価等によってサービスの質を担保しております。引き続き、事業の内容等に応じてアウトソーシング手法を有効に活用することにより、区民サービスを向上してまいります。

【あらお議員】
次に、介護保険特別会計について伺います。
介護保険は、制度がスタートしてから、高齢化の進展から予算規模が増大する傾向があるとされ、保険料の負担も増え続けています。中長期的な介護給付費、保険料水準の推計でも、標準給付費と地域支援事業費は、団塊世代が後期高齢者になる2025年度、団塊ジュニア世代が第1号被保険者になる2040年度ともに増加、第1号被保険者保険料の基準額が現在6000円ですが、2025年度7000円、2040年度9000円と負担増が予測されています。
決算年度も、介護予防・日常生活支援総合事業の導入によって、要支援者の訪問・通所サービスが保険サービスから除かれたことは、被保険者のサービスを選択する権利を侵害するものでした。第8期介護保険事業計画では、全ての高齢者が住み慣れた地域の中で自立した日常生活を継続していけるよう支援することが明記をされています。介護が必要になっても、個人の尊厳が守られ、必要なサービスを受けられることは、介護保険の理念そのものです。今、大田区が行っていることは、理念とは真逆のサービス抑制、保険料収入強化であり、高齢者が自立した日常生活を送ることを妨げるような状況です。
●そこで質問します。監査委員の意見書では、要介護認定率が東京都の平均より下回る水準で推移しており、フレイル・介護予防事業等の取組の効果が現れているとなっていますが、区の要介護認定率は横ばいであり、要支援1・2は減少していることは問題です。これは、いわゆる介護外しではないでしょうか。お答えください。

【松原区長】
次に、要支援の方の介護予防に関するご質問でございますが、区は、65歳以上の方ならどなたでもご利用いただける元気アップ教室やリモート型介護予防教室、体力測定会など、様々な一般介護予防事業を実施しております。体力の衰えが気になり始め、フレイル予防に関心を持っていただいた方などが、これらの事業をご利用いただくことで健康維持とフレイル予防の効果に大いに役立っているものと考えております。また、要支援の方が利用する総合事業では、介護事業者やボランティアなどが連携し、高齢者の生活を支えており、生活力のアップや改善につながっています。このように、早い段階から介護予防に取り組んでいただける事業の展開と、地域の多様な主体が連携して生活を支える事業、双方の推進等により、大田区の要介護認定率は東京都の平均を下回る水準で推移しております。今後も、高齢者の方々が地域で自分らしくいきいきと暮らすことができる地域社会を目指し、元気高齢者施策を推進してまいります。

区民のくらしと福祉、営業を充実させる新年度予算について

【あらお議員】
次に、2023年度予算についてです。
8月15日、区議会総務財政委員会に報告された大田区令和5年度予算編成、組織・職員定数の基本方針は、岸田政権の2022年骨太方針から、「『成長と分配の好循環』を拡大していく必要がある」としていますが、新自由主義の成長と分配の好循環は、国民の賃金は上がらず、年金引下げ、社会保障の負担増、消費税増税、その一方で、大企業には内部留保の拡大、株主配当などにより富裕層に一層の富をもたらすものとなっています。さらに、骨太の方針が新しい資本主義の中核と位置づけたのは新たな官民連携です。公共施設の建設、維持管理、運営などを営利企業の資金と人員で行い、さらに施設の所有権を自治体に残して、運営権を営利企業に売却する方式を、文化・社会教育施設や公園に拡大して加速する方針を掲げました。
羽田空港跡地の公園がこの方針で行われようとしていますが、公園という区民の財産で企業が利益を得ることになります。会計検査院が官民連携のPFI事業を調査した報告によると、債務不履行が繰り返し行われており、さらに自治体が運営する従来方式と比べ、維持管理費が1.96から2.85倍と高額でした。岸田政権の骨太方針は、公共の施設等で大企業がさらにもうけるためのものです。
現在、官民連携で進められている区の事業は多くの問題が出ています。Luz大森は、まちのにぎわいにつながらず、入新井集会室の使用など区民から不満も出ています。国から区民の税金で土地を購入し、鹿島建設を代表企業とする羽田みらい開発株式会社が事業を開始した羽田空港跡地第1ゾーンの羽田イノベーションシティのハネダピオは、区が使用料を払っていますが、交流施設でのイベントは多くがベンチャーで、さらに入居企業からの区内製造業への波及効果の報告はいまだにありません。旧羽田旭小学校跡地の事業も、区民の財産である区有地に民間事業者が開発をし、集会室や体育施設等は区が使用料を支払うことが進められようとしています。このような民間との連携で区の施設の運営は見直すべきです。
まちづくりについては、新空港線整備で川崎、品川等の都市間競争に打ち勝つとして、また、自治体経営とまちづくりの在り方の第2段階、国土強靱化への取組強化についてでも、コロナ感染収束が見えない中、新空港線計画や蒲田・大森駅周辺開発を進めようとしていますが、区民や中小業者、商店街などの意見や声が届いているのでしょうか。
区民の暮らしを支え、区内地域経済を活性化する事業の一つに住宅リフォーム助成事業があります。建設等の事業者にとっても、利用する区民にとっても喜ばれており、地域への波及効果もあります。他区からも注目をされております。党区議団が提案している商店リフォーム助成事業、グリーン投資支援、公共施設等への太陽光発電パネル等の設置、個人宅への設置助成などの事業の拡大推進こそが地域循環型と言えるのではないでしょうか。
●質問します。都市間競争に打ち勝つ取組ではなく、SDGs、脱炭素を意識し、地域経済の持続的な発展と快適な魅力ある都市機能の向上を進めていくためにも、区民とともにつくる地域循環型経済のまちづくりこそ進めていくべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、予算編成に関するご質問でございますが、区は、感染症や物価高騰等に直面する現下の社会経済状況において、区民生活、区内経済を支える取組に日々全力を投じているところです。区政は、こうした苦境を乗り越え、区民の皆様が豊かさを実感し、希望あふれる未来へと成長を続ける地域社会を支える力強い歩みを進めていく必要があります。こうした基本的な考え方を基に、令和5年度予算編成方針は、「地域課題に立ち向かい、ひととまちに寄り添い、豊かさと成長が両立する持続可能な未来への歩みを着実に進める予算」と位置づけました。社会経済状況の厳しい変化の中で、どのような苦難に直面しても、未来に向けて躍動し、絶え間ない成長を続け、選ばれる自治体を目指すことが重要であります。私は区長として、このような施政方針の下、令和5年度の予算編成方針を策定しております。

【あらお議員】
新空港線(蒲蒲線)計画について伺います。
6月6日、松原区長と鈴木区議会議長の突然の記者会見の後、6月9日、交通臨海部活性化特別委員会が急遽開催されました。区の財政負担について、行政側は、整備主体の費用を大田区が44億円ということになりますと、地方負担分の東京都が3割、大田区が7割、これが317億円ですから、合わせて361億円になることが確認をされましたが、区の負担分は都市計画交付金や都区財調を活用するので多額にはならないと繰り返し説明がありました。しかし、都市計画交付金や都区財調の全体の枠は決まっており、新空港線計画に使われれば、ほかの福祉の分が削減されることになります。区の負担分は361億円より少なくなると必死に説明していますが、幾らになるか分からないでは区民の理解は得られません。区民の税金で積み立てた積立金90億円余、第三セクター設立に1.8億円が使われることは確実です。
おおた区報新空港線臨時特集号、7月30日付が区内全戸に配布されました。表面で事業費総額の表がありますが、総額1360億円の明記がなく、地方分のうち大田区7割に東京都などからの財源を活用とありますが、都区で調整中とあり、大田区が負担する額が明確ではありません。さらに、肝心の大田区民にとって、特に東急多摩川線沿線住民にとって便利になるのかについてですが、沼部、鵜の木、下丸子、武蔵新田、矢口渡駅には止まるのか、東急多摩川線の東急蒲田駅は、地下になると池上線やJR蒲田駅への乗換えにどのくらい時間がかかるのか、下丸子1号・2号踏切の解消はどうなるのかの説明はありません。また、京急蒲田駅周辺の東蒲田、南蒲田等の住民や、京急空港線利用者がJR蒲田駅に行くのに便利になるのか、京急蒲田地下駅はどこになるのか説明がありません。
また、新空港線がつなぐ未来の大田、新空港線を契機として輝くまちづくりを進めますとありますが、なぜ大森エリア、臨海部エリア、羽田空港エリアが輝くのか、周辺住民からどうなるのかの声が上がっている下丸子駅エリアについても何の説明もなく、まちづくりにかかる費用についての説明もないのは区民に不誠実です。
●質問します。区報臨時号には、「新空港線によって新たな人の流れが生まれ、沿線のまちづくりを行うきっかけとなり、まちがにぎわい地域の活性化につながります」などとして、区内全域の駅周辺が活性化すると(仮称)新空港線沿線まちづくり構想を策定するとしています。しかし、事業規模も費用も明らかにされておらず、コロナ禍で区民生活が困難な状況の中、無責任な新空港線計画は白紙撤回することを求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、新空港線についてのご質問ですが、コロナ禍にあっても区民の豊かで活力ある生活を支えるためには、未来に向けて持続的なまちづくりを進めていく必要があります。新空港線は、昭和57年の大田区基本構想に位置づけてから40年にわたり取り組んできた、区のさらなる発展に資する最も重要な事業の一つであります。新空港線が整備されることで、区内の東西移動の利便性が格段に向上するとともに、羽田空港と渋谷、新宿、池袋などの拠点や埼玉方面ともつながり、新たな広域的な鉄道ネットワークが形成されます。また、新空港線の整備に合わせ、沿線のまちづくりを連携して行うことで、地域の活性化にも大きく寄与するものであります。加えて、災害時の代替ルートの役割も期待されており、今後の区及び首都東京の発展にとって重要な事業であります。本年6月6日に都区費用負担割合について合意したことを受け、新空港線の早期整備に向け、現在鋭意取り組んでいるところです。引き続き、新空港線の整備に向けて全力で取り組んでまいります。

【あらお議員】
次に、インボイス制度についてです。
消費税のインボイス(適格請求書)制度が来年2023年10月から導入されることに、多くの自営業者などから不安と批判の声が上がっています。インボイス制度が導入されれば、今、帳簿で行っている計算を、インボイスを使って納税することが義務づけられます。インボイスには、取引の金額、年月日、品目、消費税額などのほか、税務署が割り振った事業所ごとの登録番号が記載され、そのインボイスを7年間保管する義務が課されるなど、これまで消費税の納税を免除されていた小規模の事業者や個人事業主に新たな税負担がのしかかります。
さらに、深刻なのは事業者の税の負担増です。インボイス制度の導入は、消費税の価格転嫁が困難な零細業者にも課税業者になることを迫ることになります。現在は、年間売上高1000万円以下の業者は消費税納税を免除されています。しかし、インボイスは課税業者しか発行ができず、制度が実施されると、インボイスのない仕入れでは消費税額の控除は認められなくなり、多くの課税業者は免税業者との取引をやめることが想定されることから、取引継続のために課税業者になるしかなく、赤字経営になっても身銭を切って消費税を納めざるを得なくなります。
日本出版者協議会は2月3日、インボイス制度の中止を求める声明を発表しました。そのほかにも日本俳優連合や日本SF作家クラブなど、多くの団体が懸念を表明しています。また、業界団体の日本税理士会連合会が制度の導入に反対し、日本商工会議所、日本商工団体連合会、全国青色申告会総連合、全国中小企業団体中央会など、数多くの中小業者団体がインボイス制度の廃止、見直し、凍結、中止などの意見を公表しています。全国の地方議会でも、インボイス制度の実施中止や実施延期等を政府に求める意見書が急増し、7月末には423件が財務省に出されています。
●質問します。来年10月から導入されるインボイス制度は、コロナ不況と円安、物価高騰など最悪の経済状況の中で実施が見込まれています。日本共産党はインボイス制度導入の中止を求めていきますが、少なくとも大田区として、インボイス制度の実施延期を政府に申し入れることを求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、インボイス制度に関するご質問ですが、消費税は国税であり、また、地方消費税は都道府県税であることから、その制度運用に対して基礎自治体である区が意見を申し上げる立場ではございません。区内3税務署より区内中小企業等への周知の強化に対する協力依頼を受け、区では、東京商工会議所大田支部や大田工業連合会、大田区商店街連合会といった区内経済団体を通じた制度の周知依頼や、税務署による出張説明の周知に協力するなど、制度運用開始に向けた区内企業の対応支援を行っております。また、インボイス制度の導入を含め、中小企業の経営のお悩み事については、産業プラザPiO1階の総合窓口、PiOフロントでご相談いただくことも可能でございます。引き続き、関係機関と連携しながら、インボイス制度の運用開始に向けた区内企業支援を行ってまいります。

【あらお議員】
次に、保育についてです。
静岡県牧之原市の認定こども園に通う3歳の女児が、およそ5時間にわたって通園バスに放置をされ、重度の熱中症で亡くなったことに胸が締めつけられます。園側が幾つもの確認を怠っていたことは許されるものではありませんが、何よりも命を預かる、守るということが軽んじられてきたからではないでしょうか。
現在、待機児童解消のため、東京都内では園庭のない保育園が増え、子どもが散歩中に置き去りにされるケースも相次いでいます。ここには深刻な保育現場の人手不足が指摘をされ、あまりにも低い保育園の職員配置基準を改善したい、せめて各年齢に、子どもたちにもう1人保育士を!実行委員会などが立ち上がっていますが、子どもの命を守るためには、どうしても配置基準見直しが求められますし、大田区が独自で行うことが必要です。
新おおた重点プログラム(令和2年から5年)では、「子どもを健やかに育む場を整備します」として、1、良質な保育環境の維持・向上、2、保育人材の確保、保育の質の向上、3、区立保育園の改築・改修、4、安全・安心な放課後の居場所づくり、5、在宅子育て支援事業等の拡充の施策を挙げ、来年度の予算編成、組織・職員定数の基本方針でも、重点課題に安心して子どもを産み育て、成長を支える包摂的な地域づくりに向けた取組となっていますから、予算に確実に反映することが求められます。
さて、2000年、効率化の名の下、小泉構造改革から始まった区立保育園民営化は、大田では区立保育園60園が今年の4月現在23園に、また、待機児童ゼロを目指すとして認可保育園を増設し、4月1日現在、大田区の認可保育園は220園になりました。また、安倍元首相は、保育に企業参入の規制緩和を行った結果、私立認可保育園155園のうち株式会社立は100園になっています。区立保育園は、障がい児保育や医療的ケア児を受け入れるなど、公的役割を果たしています。区は区立保育園の民営化を進めていますが、応募する事業者が見込めないことなどを理由に、昨年度に引き続き、今年度も区立保育園の民営化が見送りとなりました。
東京都が行った保育士実態調査では、公設公営の認可保育園の保育士平均賃金約330万円と比較して、民設民営の株式会社経営の認可保育園の保育士の平均賃金は年264.7万円にとどまるなど、低賃金で人手不足が常態化をしています。さらに、少子化で欠員が出るなど、事業として運営が成り立たない状態です。
●質問します。大田区の公的役割で保育の充実を図るべきであり、民営化計画は中止をするべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、区立保育園の民営化についてのご質問ですが、区立保育園の民営化については、平成14年度に計画を策定し、平成16年度から実施しております。これまで37施設を民営化し、民間事業者の創意工夫を活用することで多様な保育ニーズに応えてまいりました。区立保育園の民営化見送りは、新型コロナウイルスの収束が見通せない中、子育て世帯を取り巻く環境が変化していることなどから、令和5年度以降の民営化計画を見送ることとしているものであり、現時点において計画を中止する考えはございません。引き続き、区立拠点園が中心となって民間保育所との連携強化を推進し、これまで培ってきた知識や経験を他の施設と共有するなど、良質な保育の提供に取り組んでまいります。

【あらお議員】
また、大田区のホームページには、大田区の保育園別・クラス年齢別欠員リスト、9月2日現在が掲載されていますが、全体で0歳児19人、1歳児65人、2歳児209人、3歳児309人、4歳児327人、5歳児356人の欠員状況です。各保育園は欠員でも定員に見合った保育士の確保をしていますが、保育園に支払われる経費は子どもの人数で計上されており、欠員対策費は支払われていますが、実態に見合っていません。
大田区が法外援護費等の拡充をすることを求めます。保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業が今年の2月から9月まで実施をされています。10月からは公定価格に組み入れるとしていますが、配置基準に基づくため、実際には月9000円の賃上げにはなりません。全員が一律に上がっておらず、全産業との賃金格差は約8万円です。さらに区は、2022年度予算で法外援護の処遇改善費4600円を削減しました。さらに来年度は、勤続7年目以上の保育士の応援手当を削減しようとすることは、現場で働く保育士の皆さんにとって到底認められるものではありません。
●質問します。来年度、保育士応援手当を削減することなく、引き続き全ての保育士の処遇改善に区が責任を果たすことを求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、保育士応援手当に関するご質問でございますが、これまで区は、区政における重要課題として、待機児童の解消を目指し、多様な保育基盤の拡充に取り組み、その結果、令和3年4月に待機児童を解消いたしました。保育基盤の拡充には大田区の保育施設で働く保育士の大量確保が必要であったことなどから、保育士に月1万円を直接振り込む本手当を平成29年度に創設し、保育士の確保や区内施設への定着を支援してまいりました。待機児童が解消された現在、新規認可保育所の開設を見送っていることや、国による保育士の処遇改善が実施されたことなどから、区独自に支給している本手当については見直しを行う時期にあることから、今後も必要な検討を進めてまいります。これからも、国の動向を注視するなど、子どもを取り巻く保育環境を適切に把握し、子どもの視点に立った保育行政の推進に努めてまいります。私からは以上でございます。

【あらお議員】
次に、学校給食費についてです。
物価対策で学校給食の食材調達に係る費用への支援について、児童・生徒の健康や成長を支えるために、その質を確保するための支援を行うことは大変重要です。ほかの自治体でも地方創生臨時交付金を活用して給食費への補助を行っているところが増えています。杉並区の岸本聡子区長は、物価高騰に苦しむ区民負担軽減のため、前区長が値上げを実施した学校給食費の値上げ分を4月に遡って助成する補正予算案を提案することを表明しました。さらに、党区議団は学校給食費の無償化の提案を繰り返しています。費用約20億円ですが、毎月の給食費の負担がなくなった分は地域での消費喚起になり、子育て世帯を支え、子育てしやすい大田区につながります。葛飾区では、9月7日の区長記者会見で、2023年度から区立小中学校給食費の無償化を実施することを表明しました。東京都の自治体で、そして特別区では初ということです。葛飾区では、2013年に第3子の給食費無償化、2014年に就学援助の対象に給食を追加することなど、独自の支援策を実施してきましたが、ここに来て無償化に踏み出すことになりました。
質問します。第3次補正予算案で食材料費の物価高騰に対する支援に係る経費が計上されましたが、今年度限りです。
●物価高騰が続いており、来年度以降も給食費の値上げをしないこと、また、将来を見据えて給食費の無償化に取り組むことを求めます。お答えください。

【松原区長】
今般の急激な物価高騰に伴う学校給食食材の調達への影響を抑え、給食の質を確保するため、このたび第3次補正予算案に区立小中学校の給食食材の調達に係る費用を支援する経費を計上いたしました。今後、緊急対策として実施する中で、物価の推移については引き続き注視しながら適切に対応してまいりたいと考えております。また、給食費の無償化につきましては、学校給食法第11条に学校給食の経費負担について定められており、同条第1項では、学校給食の実施に必要な設備、運営に要する経費は学校設置者の負担とされ、第2項には、それ以外の経費は、学校給食を受ける児童又は生徒の保護者の負担とすると明記されております。これに基づきまして、教育委員会といたしましては、児童・生徒の心身の健全な発達に重要な学校給食の質の確保や、食育のさらなる推進のために取り組んでまいります。学校給食費に関する経済的な支援につきましては、生活困難と認められている世帯への生活保護及び就学援助事業により実施しており、実質的な負担額が生じないよう引き続き対応してまいります。

以  上

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