第3回定例会代表質問(速報)―黒沼議員



(映像は大田区議会ホームページより:63分)

【黒沼議員】
日本共産党大田区議団を代表して、質問項目に沿って順次区長に質問します。まず最初に、関東・東北の記録的大雨により被害に遭われた皆様方に心よりお見舞い申し上げます。

安全保障関連法案に自治体として明確な態度を示すことについて

【黒沼議員】
さて、安倍自公政権の安全保障関連法案、既に広い国民の中に通称戦争法案として呼ばれています。よって、質問の中では安全保障関連法案を通称で扱わせていただきます。安倍内閣は日本を海外で戦争できる国にするために、憲法を変えないで解釈を変えることで成立させようとしていますが、国会論戦などを通じてこの法案が憲法違反であることが明々白々になり、立場を超えた各分野の国民が立ち上がり、全国各地で戦争法案反対運動がかつてない規模で広がっています。戦争法案が国会に提出されて4か月近く、衆院で採決が強行され、参議院に送られてからでも2か月近くたつのに、国民は安倍政権の説明を納得するどころか、各地各界で空前の反対運動が巻き起こっています。どの新聞・テレビでも反対は過半数に上り、「今国会で成立させるべきではない」は7割以上に上っています。「政府は説明不足」という声が8割以上から減らないのも、危険な中身が日に日に明らかにされているからです。憲法学者や法律の専門家、日弁連はもとより、最高裁の元長官からさえ、集団的自衛権の行使は憲法違反と言われる始末です。
私も参加いたしましたが、8月30日の国会前の12万人集会と、当日連帯して開かれた全国1000か所以上での100万人規模の集会とは、安倍内閣への大きな痛手となりました。8月末現在、学者の会アピールへの賛同は1万3647人、東京大学や学習院大など全国115大学へと予想を超えて広がっています。区長の出身大学である早稲田ももちろん含まれています。そして、若者、パパ・ママたち、学者、文化人など、いてもたってもいられないと広がっているのが現状です。さらに、いわゆるSEALDsという学生たちの会も空前の広がりを見せています。宗教界でも立正佼成会や創価学会の中からも反対に立ち上がり、マスコミにも取り上げられるまでに広がりました。大田区でも8月9日に行われた3回目のピースパレードに700名が参加し、元助役の方や大田区シニアクラブ会長、元都議会議員もメッセージを寄せ、党派を超えた区議会議員の一点共同宣伝行動などが広がっています。
安倍総理は、安保関連法提出当時、憲法違反ではないと説明していた理由を全て失って、最近言い出したのが中国脅威論です。区長は庁内報5月号で、「中国、インド等アジアの発展によって羽田空港を生かして区の発展につなげたい」と語っています。そのとおりです。中国と日本は経済交流で特にアメリカとよりも密接さを増し、戦争になれば両国とも大きな痛手を受ける関係です。アメリカの軍事責任者も脅威とは考えないと表明し、日本の防衛大臣も国会で同じ答弁をしています。安保関連法案、戦争法案の根拠にすることなどできません。
今回の戦争法案は、2015年に改定された日米防衛協力の指針、いわゆる新ガイドラインを実施する内容でもあるのですが、新ガイドラインでは、地方自治体にかかわって二つの重大な改悪が行われています。一つは、重要影響事態を地理的に無制限なエリアでの出来事のために地方自治体を動員できるようになったことです。同時に、日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動が加えられ、このために地方公共団体が有する機能を適切に活用するとされ、アメリカが自国の戦闘のために直接地方自治体を利用できる文言にされたことです。世田谷区長は、「集団的自衛権の名のもとに武力行使の抑止を解くことがあってはならない」と議会で答弁しています。
●お聞きします。第2回定例会の我が党の代表質問に、区長は「平和な都市を築くことは最も重要な使命であると考えております」と答えましたが、住民の命と財産を守る自治体の長として、自治体が巻き込まれる戦争する国づくりを許さず、戦争法案にはきっぱりと反対するよう求めます。お答えください。

【松原区長】
まず、安全保障関連法案に関するご質問でございますが、次世代に向け平和な都市を築いていくということは、我々の最も重要な使命であると考えております。私は、これを主導していくために、昨年の広島市に続きまして、今年は長崎市の平和祈念式典に出席し、核兵器の廃絶と世界恒久平和を希求する決意を新たにしたところでございます。今国会には、いわゆる国際平和支援法案など安全保障関連法案が提出され、現在、参議院にて審議が行われているところでございます。安全保障政策は国の専管事項に属するものでございますので、国民の代表機関である国会におきまして十分な議論が行われることが肝要であると考えております。

【黒沼議員】
こうしたときに大田区では教育委員会が、日本が行った侵略戦争と植民地支配を美化し、正当化する育鵬社の教科書を不採用としたことは、区民の良識を反映したものであり、心から喜ぶものです。

民営化を進める区政からの転換について

【黒沼議員】
次に、アベノミクスに関して伺います。区長は今でもアベノミクスは有効だと考えているようです。区長は第2回定例会で、消費の回復が期待されると表明しましたが、アベノミクスで日銀の物価上昇率を大胆な金融政策により今年度まで2%としていたのができないと言い出しました。経済成長率も2.9と見ていたのがマイナス成長になってしまいました。消費税再増税、大企業には減税、社会保障切り捨て、雇用破壊の地方衰退をさらに加速させるだけのアベノミクスは、現実認識も理論も間違いです。異次元の金融緩和の効果は、過去2年間で150兆円も資金を供給させながら、効果はゼロに等しい結果にもあらわれています。区長が挨拶で使った実質賃金の上昇も速報値であり、最終結果はマイナスでした。景気指標には企業収益が入っているため、専ら株高で資産価値が膨らんだだけで、生産が上がっていないわけで、勤労者家計収入はマイナスに落ち込みに示されるように悪化しています。勤労者家計収入はマイナスなのは、区長の挨拶に失業率改善の指標も使いましたが、賃金の低い派遣労働者が増えたからで、正社員が減ったからです。
日本経済の長期停滞の最大の問題は、家計の消費需要が落ち込んでいることです。24か月連続での実質賃金落ち込みがその主要な原因です。区長は、1月から3月の景気動向を調査した「大田区の景況」を見ていないのでしょうか。「大田区の景況」は、製造業は今後悪化傾向が大幅に強まると見込み、小売業は仕入れ価格の上昇傾向が大幅に強まると見込み、建設業は悪化傾向がわずかに強まると見込み、運輸業は悪化傾向が大幅に強まると見込んでいます。区長の挨拶と逆行する深刻な事態を景況は示しています。
●そこでお聞きします。「大田区の景況」に見られる深刻な事態を直視し、アベノミクスの見方を改め、暮らし、福祉、子育てを守る防波堤の役割、地域の力を生かす中小企業振興、住民の命と財産を守る防災・減災政策、公共施設の集約化ではなく、住民が必要なサービスを受けられる自治体という真の地方再生への道に必要な手を打つべきと考えます。お答えください。

【松原区長】
次に、住民が必要なサービスを受けられる自治体への道に必要な手を打つべきではとのご質問でございますが、区におきましては、現在、区民生活や区民経済を守り、区民の皆様が安全で安心して暮らせるまちづくりを進めております。平成27年度予算におきましては、子育て・福祉の分野では待機児童解消、保育士人材確保支援事業、高齢者見守りネットワーク事業、地域包括ケア体制の推進など、暮らしの安心を支える予算を配分しております。産業分野におきましては、企業誘致、区内企業の持続的創業支援、商店街活性化推進事業、飲食店の魅力アップを図るための繁盛店創出事業、成長産業認証等取得補助の創設など、区内産業振興に取り組んでいるところでございます。また、総合防災力強化に向けた耐震診断・改修助成の拡充、橋梁の耐震性の向上、不燃化まちづくりの取り組み、防災地図の全戸配布、緊急医療救護所の設置など、区民の方々の安全・安心を守る取り組みを進めております。まちづくりにおきましては、羽田空港の跡地、蒲田駅・大森駅周辺、臨海部をはじめ、区全域を国際都市おおたにふさわしい魅力あるエリアとして進化させ、未来の大田区の遺産となるよう、必要に応じて国家戦略特区の仕組みを有効に活用しながら整備を進めてまいります。今後もこうした視点から区民にとって必要なサービスを着実に推進し、70万区民の福祉増進のために、地域力の向上、国際都市の推進を目指し、安全・安心で暮らしやすく、にぎわいのあるまちづくりを一層力強く進めてまいりたいと思います。

【黒沼議員】
次に、何でも民営化で官製ワーキングプアを生み出し、区民を苦しめる区政からの転換を求め質問します。
民営化を指定管理者制度方式等で行っていますが、最低賃金を守っていれば問題ないと歴代の担当者が本会議で答弁してきました。東京の時給は888円です。区行政に関する求人広告では、区役所の事務補助で980円、保育部門では保育支援1070円、調理支援1010円、民間委託の募集では学校給食調理補助890円から1000円と、まさに答弁を裏づける低い実態です。何でも官から民への手法で低賃金化に進み、選択と集中をまねて区民施策を削減・廃止し、その結果、納税額も減るというので、区民が払えないほど国民健康保険料を高くして苦しめ、それでも収納率を上げろと差し押さえや保険証取り上げに走るのは、区政が健全財政だといくら自慢しても、悪循環で出口が見つかりません。
これに輪をかけているのが大田区職員定数基本計画です。大田区職員定数基本計画の主な実行方法は、事務事業のスクラップ・アンド・ビルド、行政サービスのアウトソーシング等による職員削減です。これまで区は、2003年度まで累計1055人の削減、さらに2010年度までの7年間に1076人削減、総累計で16年間に2131人削減したことになります。さらに、その後2013年度まで248人削減し、今後2016年度までの3年間で220人削減目標とあります。その結果どのような状態になっているでしょうか。以前の国保関係の窓口業務の委託事業で、法的に問題はないかとの我が党議員の質問に、厚生労働省に問い合わせ確認するとの答弁でした。確認すると答弁せざるを得ないまでの法遵守ぎりぎりの委託事業なのです。
また、最近、戦没者特別弔慰金支給の家族に対する年金一時金支給の件で窓口を訪れた区民に、謄本をとるのに3回も窓口を訪ねさせ、ようやく書類が完成しましたが、2回目までは説明が要領を得ず理解できず、3回目でようやく内容はわかったのですが、初めからちゃんと説明してくれれば3回も通うことはなかったのにということでした。この方が何よりも怒りながらおっしゃったのは、「私は幸いにもこの制度を受けられることを偶然知ったが、区報にでも載せてくれればよかったのに」と言ったときに、「それは税金の無駄遣いです」と職員に言われたことです。「もっとよくわかる方を呼んでください」と言うと、奥から詳しい職員が慌てて出てきて、ようやく納得してくれたとのことでした。実は区報には載せていたとのことはわかったのですが、受付職員は区報に載せたことも含め丁寧に説明すべきで、税金の無駄遣いなどの言い方はしてはならないはずです。
また、住宅問題での問い合わせに1か月も返事をよこさず、相談された議員が問い合わせたらようやく返事が来たなど、区民に必要以上待たせたり、説明できなかったり、委託事業の質の低下、サービスの低下が言われます。これは民にできることは民にという新自由主義の立場で本来やるべき公共体の役割を放棄し、職員削減に明け暮れてきた区政の欠陥を示しているのではないでしょうか。区民の懐から奪う政治、施策削減政治ではなく、逆に温める政治をやってこそ区民税も伸び、好循環に転換します。
自治体職員について、日本共産党は、憲法15条に基づく自治体職員の圧倒的多数は労働者であるとともに、住民全体への奉仕という特性を持った職務を行う者と位置づけています。区の経営改革推進プランの「職員力を活かす行政経営の推進」の項で、職員の個性を尊重しつつ、職員一人ひとりの力が区民サービス向上のため最大限発揮されるよう適材適所の職員配置を推進するとしていますが、実際は逆になっています。区はこの立場で進めるべきです。
指定管理者制度などの民間委託、アウトソーシングでも問題点が出てきています。大田体育館の指定管理者が消費税増税分を支払わないで国から是正勧告を受けたり、保育士の給料があまりに低く、人手不足などを生み出しています。これでは区民の安全が守れません。
●大田区として指定管理者制度はやめるべきです。労働条件を把握し、質の低下を招かず、責任のとれる体制を整えるべきです。同時に、委託、アウトソーシングはやめて改善を求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、指定管理者制度の運用についてのご質問をいただきました。指定管理者制度の導入施設において労働条件を適切に確保することは、施設設置者であります区の責務であります。業務に従事する人が、その能力を最大限に発揮して区民サービスの維持向上を図る上で不可欠であると考えております。そのため、今年度より、社会保険労務士の専門性を活用して、原則として指定管理期間の3年目のモニタリングにおいて労働条件審査を実施しております。審査の実施と結果の反映を通じまして、業務に従事する人にとって良好な労働環境を確保するとともに、区民の皆様の満足度向上に資する施設運営を実現しているところでございます。今後とも、限られた財源を有効に活用して、コストの縮減はもとより行政サービスのさらなる向上を図るために、指定管理者制度も含めた行政の外部化を適正かつ効果的に運用してまいりたいと思います。
次に、アウトソーシングについてのご質問でございますが、区は、健全で安定した行財政運営を継続しつつ、おおた未来プラン10年(後期)を着実に推進し、同時に新たな行政課題に的確に対応することを目指しております。そのためには、最少の経費で最大の効果を発揮できる効率的かつ効果的な組織を実現するとともに、執行体制のスリム化を図ることが必要と考えます。大田区職員定数基本計画では、行政のアウトソーシングなどの内部努力を計画的に進め、これにより確保した人員を優先度の高い施策に振り向け、適正な職員配置に努めることとしております。今後も、アウトソーシングによる成果の十分な検証を行い、その効果的な活用を進め、区民サービスの向上につなげてまいります。

駅前再開発からの転換について

【黒沼議員】
大型開発では、駅前再開発に典型的にあらわれています。京急駅前再開発には参加組合員制度を通じて大手ディベロッパーが入っています。京急蒲田西口には野村不動産と住友商事、糀谷には三井不動産と旭化成不動産等です。全国市街地再開発協会2011年発行の「日本の都市再開発7」に収録された97地区のうち、ディベロッパーが入っているのは55地区に上っています。参加組合員制度というのは、保留床の購入を条件に、その価格に見合った事業費を負担する仕組みです。保留床というのは、売買によって事業の財源とするマンションのことです。
総事業費に占める保留床処分金は、京急蒲田西口で約40%の79億円、糀谷では55%の99億円です。この金額は評価額といって、市場価格と違い、等価変換時の金額です。これを買い取ったディベロッパーは市場価格で分譲し、巨大な利益を上げます。全国市街地再開発協会の資料によれば、平均25%ほどになります。これを参考にすれば、西口再開発では20億円、糀谷再開発では25億円がディベロッパーの利益になります。
このような巨大な利益をなぜディベロッパーは保留床を販売することで上げることができるのかというと、再開発は容積率の大幅アップと膨大な補助金でビルは完成するので、市場価格は評価額を上回って大幅に価格が上がります。これで膨大な利益を上げることができるのです。補助金の恩恵は権利床の方も得ていると言われるかもしれませんが、保留床と権利床の割合は7対3です。圧倒的にうまみはディベロッパーの利益になります。権利変換という行政処分を通じて不動産事業に多大な利益を与える仕組みが再開発ということになります。補助金はさしずめ大手開発企業の利潤保証制度と言っても過言ではありません。駅前再開発とは、このように大企業に巨大な利益をもたらす性格を持っています。
さらに、公共施設整備とは、この再開発制度では道路、駅前広場に限られています。公益施設は入りません。
駐輪場や駅前保育園、図書館のような公益施設を確保しようとすれば、保留床を買い取る以外ありません。京急蒲田の地下駐輪場、糀谷再開発での区施設購入がまさにそうです。そのあげくに、マンションを購入できる資金を用意できる新住民は入居できますが、これまでの古くからの住民で、資産、所得の少ない者は出ていかざるを得ないのが現実です。結局、京急蒲田西口も糀谷も6割の住民が立ち退かされたではありませんか。
駅前再開発は、不燃化、耐震化を名目に6割の住民を追い出して生活と営業を奪い、権利床で残れた住民も今後過大な共益金を払い続けなければならず、苦しみ続けます。さらに、新住民が近隣で買い物してくれなければ商店街の営業を脅かす事態になりかねません。今、真に求められるのは、住まいづくりを中心としたまちづくり、再定住です。決して超高層マンションをつくり出すことではありません。低層でいいのです。区営住宅を入れてもいいのです。そのほうがコミュニティが強まるし、膨大な財政を使う必要もありません。まさにヨーロッパではこうしたまちづくりが行われています。地域情報紙「かまた東」2013年8月23日号で京浜蒲田町会長は、「半信半疑だった40年前の計画が現実のものとなりました。建物の取り壊しによりゴーストタウンのように見えます。今、まちは大きな変貌を遂げようとしておりますが、効率、利便性に走らず、地域の子どもを中心としたまちづくり、次世代につながるまちづくりになることを願って努力を続けたい」と述べていました。
区長、まちの人々はこのようなまちづくりを求めているのです。巨額の補助金を出し続けてきた大田区は、マンション業者にだけ奉仕するのではなく、区民に応える責任があります。このようなまちづくりをしてはなりません。先日、スポーツ・観光推進特別委員会で視察した群馬県富岡市では、90%以上合意を取りつけていた中心市街地計画を、お金がかかり過ぎると白紙撤回していました。
●そこでお聞きします。このような住民追い出し型、大企業利益型である、従来の駅前再開発である雑色駅周辺地区計画は中止し、再定住できて住み続けられる住民の声を聞きながらのまちづくりを進めるべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、雑色駅周辺のまちづくりについてのご質問をいただきました。京急蒲田西口駅前地区と糀谷駅前地区の再開発事業では、地域住民の皆様が主体となって次世代につながるまちづくりを進めております。京急蒲田西口駅前地区では、再開発ビル及びペデストリアンデッキを含む駅前広場が本年12月に完成し、糀谷駅前地区では再開発ビル、駅前広場ともに平成28年度に完成予定でございます。この再開発事業は、まちの不燃化や耐震化を促進し、防災性を向上させるとともに、駅前広場などの整備により交通結節点としての機能が強化され、区民の利便性の向上や快適なまちづくりを実現する事業でございます。また、本事業は、土地の所有者や借地権者など土地に権利をお持ちの方が権利を継続できる仕組みになっております。雑色駅周辺地区では、地元地権者の皆様が10年以上にわたり、将来に誇れ、住み続けられるまちを目指してまちづくりに熱心に取り組まれております。区といたしましては、地域の皆様が目指す安全・安心で魅力のあるまちづくり活動をこれからも支援してまいります。

「新空港線」から区民の求める「蒲蒲線」について

【黒沼議員】
次に、新空港線計画は撤回し、区民の求める蒲蒲線について伺います。
新空港線計画は今でも1080億円の計画です。大田区の分は今でも360億円です。さらに、計画に入っていない操車場など入れるとどこまで膨らむかわからず、永久に赤字のおそれもある上に、区民利用は1割から2割と言われており、はかり知れない困難を区政にもたらします。二つ目は、東京都が新空港線を除いた優先整備5路線を決め、国に提示しましたが、東京都の協力が得られなければ大田区は360億円以上になりかねません。
さらに、新たな困難を抱えかねないのがフリーゲージトレイン方式です。大田区は2015年1月19日の新空港線「蒲蒲線」整備促進区民協議会でこれまでの計画を変更し、京急蒲田駅まで複線化し、フリーゲージトレイン方式で相互直通運転案としました。東急蒲田地下駅で乗り換えなければならないという致命的な欠点を補おうとするものです。しかし、これには二つの大問題が新たに生じます。一つは、フリーゲージトレイン方式はいまだに実用化されていないからです。1998年から長崎新幹線に実用化されることを目指していますが、17年間経ても実用化のめどが立っていません。走行試験の最終段階に入ったとされる現在も、耐久性などの開発目標がクリアされていません。さらに、昨年12月の走行試験中に10か所の部品が欠け、4か所で亀裂が生じるなどの重大なトラブルが発生したため、走行試験は半年以上も中断したままで、車両の量産に向けたスケジュールも示せず行き詰まっています。フリーゲージトレイン方式に頼り、膨大な税金を投入する新空港線計画はあまりに無責任で無謀です。
二つ目は、相互乗り入れにした場合、東急と京急がどのように利益を分け合うかが問題になります。京急に不利ならば承諾しないでしょう。さらに、大田区がかかわる第三セクター運営方式をとることになり、黒字にならなければ新空港線は永久に区のお荷物となります。区民にしわ寄せだけという計画です。
●そこでお聞きします。このような計画は中止し、JR蒲田-京急蒲田間の区民の求める蒲蒲線計画に立ち返り、区民に喜ばれる計画にすることを求めます。また、積立金20億円は区民のために有効活用すべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、新空港線についてのご質問でございますが、新空港線は大田区が30年来取り組んできた区民にとって悲願の事業であります。区内の移動利便性の向上はもちろんのこと、整備に合わせて沿線まちづくりを進めることで区の活性化につながるものとなります。また、東急東横線、副都心線を介して東武東上線や西武池袋線と相互直通運転をすることにより、渋谷、新宿三丁目、池袋などの副都心や、練馬、川越、所沢などの東京圏西部地域や埼玉の都市との交通利便性も著しく向上させ、広域的な交通ネットワークを形成する上で重要な路線となってまいります。
なお、新空港線は、平成12年度の運輸政策審議会答申18号において、平成27年度までに整備着手することが適当な路線と位置づけられ、今年度末には交通政策審議会において次期答申が出される予定となっております。区は事業化に向けて、関係者間で事業主体、事業費、事業計画や事業スキームなどの深度化を進めてきております。そのため、新空港線整備資金積立基金は、関係者合意後、速やかに事業を図るための準備資金であり、新空港線の早期実現のために必要なものと考えております。

区民の要求に応え、区民の安全と命を守る区政のあり方と決算について

【黒沼議員】
次に、区民の要求に応え、区民の安全と命を守る区政のあり方と決算について伺います。
2014年度の決算には、消費税増税の年度であり、安倍内閣の先取りの施策が散りばめられているのが特徴です。2014年度の一般会計予算は、歳入決算額2525億円余、歳出決算額2407億円余で、差し引きは118億円余です。その結果、実質収支額の増は106億円余、実質収支比率7%、特別区税は過去5年間で最高の約705億円で、監査委員の報告でも極めて良好な状態を継続していると報告されています。基金は1114億円余と前年比84億円増、区債は407億円で前年比44億円余減少であり、区民のための必要な施策は削減する必要もなかったし、さらに要望に応える豊かな財源と見ることができます。
2014年度の予算について、日本共産党大田区議団は、リフォーム助成の拡充など17項目の施策を評価しながら、寿祝金削減、限度額300万円の小規模融資制度の廃止など、区民に親しまれた事業の廃止・縮小したことや、職員定数削減に基づいてひたすら民営化、アウトソーシングを行い、官製ワーキングプアを生み出し、質の低下を来していること、その一方で大型事業のオンパレードで、区民の生活を守る予算を圧迫していると指摘し、区政の転換を求め反対しました。その指摘が正しかったことが決算にあらわれています。
大型開発事業の一つである京急関連駅周辺のまちづくり事業には54億9152万円余の税金が使われましたが、何と1事業だけで産業経済費32億円の1.7倍であり、都市基盤事業で最大の支出となっています。それなのに、少ない産業経済費の不用額では全ての款で率の一番大きい8.2%、金額では福祉費の9億円の不用額で、その内容は臨時給付金です。ここには該当者に粘り強く連絡し、事情のある高齢者には自宅まで届けるなどの努力をすれば不用額はもっともっと減らせたはずです。防災が目玉だとした割には不用額1億円も問題です。区民生活犠牲決算と指摘しないわけにはいきません。
第2回定例会で区長は、「選択と集中で区民サービスにはハード・ソフト両面からバランスよく配分することが重要でございます。引き続き維持可能な行財政運営を進めてまいります」と答弁されました。区は予算編成に当たって、選択と集中を徹底し、限りある資源を成果達成の視点から予算要求をと指示し、さらに副区長名の通知で、国家戦略特区の指定など最大限利用をと大企業に奉仕する内容を求めました。しかし、この選択と集中という考えは、1980年代にアメリカの巨大企業ゼネラル・エレクトリックで用いられた戦略で、選択した事業に予算も人員も集中させ、ほかは削減するというものです。政府はこの手法を少子化時代に対応するものとして、将来財源不足になるので、公共建築物の統合とか施策を縮小させながら、大規模開発は聖域とするということに取り入れています。大田区も例外ではなく、選択と集中で大型開発を聖域にし、国家戦略特区方式を取り入れ集中させ、一層の拍車をかけようとしています。そのために区民の生活と営業は徹底して削減、縮小、廃止されています。
●来年度も選択と集中で大型開発中心の予算編成をすべきではありません。住民の福祉の増進という地方自治法の精神に立ち戻り、来年度の予算編成をすべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、地方自治法に基づく予算編成をすべきとのご質問でございますが、自治体の使命として、地方自治法に規定されている住民の福祉の増進に努め、最少の経費で最大の効果を上げる区政を実現するためには、区民の皆様から預かった貴重な財源を区民サービスの向上に効果的に活用できるよう、区民目線に立った事業の見直しや再構築を行うなど、選択と集中を強化することが必要でございます。区は現在、待機児対策、防災力・防犯力の強化、公共施設の更新やにぎわいのあるまちづくり、様々な産業振興施策など、区民の誰もが安全・安心でいきいきと暮らせるまちづくりを進めております。平成28年度予算編成においても、70万区民の福祉の増進のため、引き続き地域力の向上、国際都市の推進を目指し、安全・安心で暮らしやすく、にぎわいのあるまちづくりを一層力強く前進させるよう、ハード・ソフト両面においてバランスのとれた予算を取りまとめてまいります。

町工場を守る政策の提案について

【黒沼議員】
次に、産業集積としての区内中小零細企業への施策充実についてお聞きします。
日本の中小企業は全企業の99%を占め、勤労者の78%が中小企業で働いているように、雇用の重要な担い手にもなっています。しかも、ものづくりの基盤を形成し、日本経済や社会を土台で支えています。まさに日本経済の主役です。中小企業は地域に根を張り、雇用を守り、地域に貢献する経済循環の核です。製造業は地域経済を高めます。なぜなら、製造業は労働分配率は50%から60%であり、価値を生み出す源泉だからです。区民税の増につながり、悪循環から好循環になります。現在、現金給与額2079億円、1従業員当たり約487万円、所得の状況は23区で14番と平均より低く、営業所得も23区で平均より低く、地域経済を高めるにはこの改善が求められます。その中小企業が、全数調査や大田区景況調査にあらわれているように、かつてなく危機にさらされています。その中小企業に文字どおり日本経済の主役にふさわしい対策を確立することが強く求められています。
アメリカ、ヨーロッパでは中小企業が増えていますが、その主な理由は、アメリカのようなふさわしい予算とヨーロッパの中小企業憲章という位置づけがあります。アメリカは空洞化対策で予算を大幅に増やした結果、中小企業は増えました。ヨーロッパは中小企業憲章で大企業と中小企業を対等にし、その結果、中小企業は増えています。日本と大田区では減り続けています。この際、海外訪問調査に参加されようとしている区議の皆さんに申し上げます。日本共産党は反対いたしますが、何度ヨーロッパに行っても、何度アメリカに行っても、このような中小企業がなぜ増えているのかを調査し、減り続けている大田区の町工場を救う条例提案もない海外訪問調査は税金の無駄遣いと区民から言われるでしょう。改めて中止することを求めます。
全数調査の最大の教訓である全ての中小企業を救うための予算が求められているという立場で、充実についてお聞きします。全数調査の結果の主な特徴は以下のとおりです。生産動向は、海外との受発注はここ10年間、数%程度です。その中で一貫して伸びているのは非鉄と航空機産業のみで、自動車関連は減り続けています。電気、航空機以外の輸送機器、プラスチック関連では親企業の海外移転が最も著しく、取引が減っています。伸びていくには精密加工の高度化が求められています。調査からは、今でさえ倒産・廃業等でネットワークにほころびが生じています。ネットワークの強みこそ大田区町工場の強みです。今なら間に合います。
区長は以前、私の代表質問で、「中小企業全数調査は下請いじめ、仕事発注の親会社の責任について調査する考えはない。企業間の取引促進、研究開発型企業の誘致など有効な施策を検討したい」と答弁されました。また、大田工連の総会で挨拶し、「3481社、よく踏みとどまった、そして生き残った企業は足腰がしっかりしている。技術力もあり、製品も優秀です」と挨拶されました。第2回定例会で区は、「この調査の区民検討委員会立ち上げの考えはございません」と答弁されました。
ここから言えることは、区は自社製品など開発・設計系業務を手がける3割の存在、既存の技術やノウハウ等をベースに新規顧客を開拓したい意向を持っている3分の1の企業は相手にするけれども、ほかは見捨てるということでしょうか。しかし、それはとんでもないことです。全数調査の結果は、「現状のまま継続したい」が84.2%なのに、技術・技能継承に6割も危機感を感じています。後継者を決めていない従業者3人以下は8割弱で、廃業等の要因になっているとの結果です。減少を食い止める施策が区の再生のため最重要課題です。減少を食い止めるために、緊急な課題も含めて今後の方向性を打ち出すことが求められるのです。
適切な対応とは以下の点ではないかと考えます。
●区は、墨田区でのかつて部課長が直接訪問調査を行い、認識が一変した教訓をぜひ学んでほしいと思います。大田区は部長、課長などの区幹部の直接訪問調査を行いませんでした。調査結果の概要の今後の施策の方向性を具体化するには、これまでの産業経済部の予算規模ではできないことは明白です。この方向性を具体化するためには、区がかつて行った1993年の産業ビジョン委員会を設置し、1995年に産業ビジョンを作成した経験と、2007年の学識経験者や区内産業関係者などで構成される検討委員会をつくり、大田区産業基本戦略をつくった経験を生かすことです。早急に再構築を図るための対策委員会をつくり、中小企業の声を生かす仕組みをつくることを求めます。
このことに関して第2回定例会でも提案しましたが、区は、「受発注相談員が年間で約2000社への企業訪問などで事業存続・継承など伺っているなどしているので、設置の考えはない」と答弁しています。今後の施策の方向性から見て具体的な成果が生まれていないことが証明しています。区は変わっていません。従来どおりなのです。今後の施策の方向性を全面的に実施する施策を求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、ものづくり産業等実態調査の結果を具体化するための対策委員会に関するご質問ですが、実態調査は、今後の大田区のものづくり産業の集積の維持・発展や大田区の産業振興施策の推進に向けて、大変貴重な基礎資料となっております。区では、この調査結果に基づき、区内ものづくりが区外に移転することを未然に防ぐための留置対策や、地域産業への起爆剤となる企業の誘致などを今年度から事業化しております。さらに、平成27年度では、調査結果から想定された課題に対応するため、研究開発型企業等拠点整備助成事業も予算化しています。また、区及び産業振興協会の職員が様々な機会を捉え、ものづくり企業の皆様から直接ご意見を伺い、その結果を施策立案に生かす取り組みも日々行っております。今後も情報収集、情報交換を行い、調査結果を生かしてまいります。そのため、現時点では検討委員会を設置する考えはございません。

【黒沼議員】
あれもやっている、これもやっていると区は言いますが、あらゆる制度の規模が小さ過ぎて予算規模が少な過ぎるために、自己負担、援助金の後払い、高度最先端技術の研究費や試作品費用など、資金にゆとりのない企業は利用できないからです。よって区内中小零細企業の大半は支援から締め出されています。
●新技術だけでなく、内発型の地域振興に軸足を移すには、既存技術と新技術のマッチングに力を入れるべきです。既存技術支援として以前の活性化支援事業などの復活はとても有効と考えます。それと新製品をマッチングさせるために、既に開発されたものをリスト化して需要開拓助成に力を入れることです。そうすれば1社では見えてこない技術の生かし方が見えてくる可能性が特段に広がるはずです。
区はこれまでもその手段としていろいろ行ってきたと言いますが、新製品・新技術開発支援事業はたった21件、新製品・新技術コンクールたった9件、研究開発マッチング事業、技術相談たった150件、新事業連携チャレンジ助成たった10企業グループなど、多くて100件余で、区内約4000社を対象とするにはあまりに規模が小さ過ぎます。しかも、新製品・新技術開発支援事業は不用額4000万円も出しているのです。もっと規模を大きく、しかも使いやすい制度にすることが必要です。
提案します。北欧諸国で成功している一人ひとりに合ったオーダーメイドの車いすなどの福祉器具・機械への拡大、さらに大田区の技術を生かせる自然再生エネルギー分野などに拡充すべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、新製品・新技術開発支援事業の予算規模を増やし、福祉機器や自然再生エネルギー分野等を拡充することに関するご質問ですが、新製品・新技術開発支援事業は、技術力や製品開発力の向上を図り、高付加価値を生み出すことでイノベーションの創出と区内産業の活性化に結びつけていくことを目的としております。この制度は、成長産業として注目されている福祉機器や自然再生エネルギー分野へも活用することが可能となっております。また、例えば福祉機器の開発に対する支援のため、この7月に区と東京工科大学の交流会を開催いたしました。区は、区内のものづくり企業の技術力と東京工科大学をはじめとする学術機関との連携の力を最大限に生かし、福祉機器の開発・改良を目指す取り組みを現在進めております。このような連携がひいては区内産業と地域経済の活性化を生み出すことにつながり、新製品・新技術開発支援事業においても十分な成果を上げられるものと考えております。

【黒沼議員】
●次に、マッチングとネットワークを再構築するため、個々の企業では持ち得ない最新設備の備え、試作、技能訓練、検査、測定などが行える、今までの工場アパートとは違う、第二ボブスレーを目指すような共同開発施設をつくって、場所と設備の提供をすべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、個々の企業では持ち得ない最新設備を整え、試作、技能訓練、測定などが行える新たな共同開発施設の提供に関するご質問でございますが、大田区産業プラザ内には、試作から測定まで一貫して行える施設として東京都立産業技術研究センター城南支所がございます。昨年12月には、地元機関との連携強化、欧州をはじめとした海外展開を目指す企業への支援を目的として、医工連携支援及び航空機産業支援をキーワードに、新たに6種類の機器を導入した先端計測加工ラボが新設されました。試作、技能訓練、測定などが行える新たな共同開発施設をつくる考えは今のところ持っていないところでございます。

【黒沼議員】
第2の課題は、技能・技術の継承、発展、後継者づくりについてです。若者や後継者が実際に仕事を覚えるまでには時間がかかります。
●雇用を継続する経営者への支援も含め、1人当たり年200万円で3年以上の後継者育成の助成を求めます。加工の神様と言われるような技術者を、生活を保障しつつ有効活用し、地域の若い人を育てる。さらに収入の不安等を解決することを求めます。お答えください。

【松原区長】
次に、後継者育成事業についてのご質問でございますが、大田区及び公益財団法人大田区産業振興協会は、ものづくり人材の育成を目的とした事業を実施しております。区は、自社の技術力向上や技術的課題の解決、人材育成の一環として活用できる大田の工匠による技術指導、相談事業や、区内ものづくり企業の若手人材確保・育成に資する大田の工匠Next Generation表彰制度に取り組んでおります。また、次世代経営者育成のセミナーなどを含む次世代ものづくり人材育成事業等を実施しております。後継者への経営の引き継ぎについては、事業承継セミナーを開設しております。各ケースに応じた相談・助言を各分野の専門家が行うビジネスサポートサービスも実施しております。平成27年度予算においてもこれらの事業に取り組み、区内中小企業への支援を進めております。したがいまして、後継者育成事業の直接支援については考えておりません。

【黒沼議員】
●第3の課題は、中小企業、町工場への家賃助成の設置です。大田区の町工場は約50%が賃貸です。まちを歩くと、家賃が払えずやめるしかない、続けるためには家賃が払えればという声が少なくありません。区は家賃助成などを個人の資産形成になるので困難と言いますが、実際東糀谷六丁目工場アパートで行われている家賃助成は、経営支援という名目で15%の使用料を減額しています。町工場も家賃助成という名目ではなく、経営支援という制度にふさわしいのではないでしょうか。区内全域で経営支援資金として拡充すべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、中小企業、町工場への家賃助成の設置についてのご質問ですが、東糀谷六丁目工場アパートは、国外の企業も含めた中堅企業の入居を誘導し、区内企業への外注等経済波及効果を狙うという政策目的のもと、使用料にインセンティブを付したものであり、経営支援という名目の使用料減額ではありません。区といたしましては、家賃助成の創設につきましては考えていないところです。

【黒沼議員】
次に、グローバルアライアンスセンター構想について質問します。2014年9月8日付けで、大田区は羽田空港跡地成長戦略拠点の形成を発表しました。区空港跡地の成長戦略拠点は、国内と海外をつなぐ産業交流施設を整備する、地域と世界をつなぐ産業ハブ拠点の形成のため国内企業と海外企業をつなぐとし、研究開発、創業支援、ビジネス環境、技術革新となっていますが、研究開発は新製品・新サービス提供と、工業だけでなく農・水・畜産等の分野における産業ムーブメントを起こすとなっていますし、ビジネス環境の整備は国内外からの企業誘致です。創業支援も国内外からの起業家を集積させ、大田区ではなく我が国の創業率向上に寄与となっています。このことからは区内中小企業を救う方向が見出せません。
また、区は産業交流センターをクールジャパン発信として、世界を引きつける和のおもてなしエントランスの形成を大きな柱にしています。そのために全国320団体にアンケート調査を実施し、機能に日本各地の文化を消費・体験する、農産物などの高品質な日本各地の物産を免税販売する、訪日外国人向けに観光サポート・インフォメーション等を入れ込みました。国家戦略特区の指定地域に入ったことで国有地の購入の減免があることが財政的に有効だとされていましたが、何の進展もなく、一体どれほどの予算になるのかいまだに示すことができずにいます。いくらかかるのかわからない、いつできるのかわからない、大田区民のためより国内外の大企業優先である、工業だけでなく農産物のショールームへ、観光、食の楽しみ提供、これでは全数調査で明らかになったような区内の中小企業の一刻の猶予もない状況への打開策にはなりません。また、産業交流支援センター、いわゆるグローバルアライアンスセンターに期待している声は町工場からは聞こえてきません。
国家戦略特区とは、大企業が最も活動しやすい日本にするために、トップダウン方式で都市計画に取り組むことです。さらに、これまでの中小零細企業の持続的発展は切り捨てられ、従業員も外国人材の活用で占められ、日本人の雇用は取ってかわられます。グローバルアライアンスセンターの役割はそういうものになります。大田区に役に立つ施設には到底なり得ません。
●そこでお聞きします。グローバルアライアンスセンター構想は中止すべきです。お答えください。

【松原区長】
次に、グローバルアライアンスセンター構想についてのご質問ですが、空港跡地については、本年7月に羽田空港第1ゾーン整備方針を策定し、新産業創造・発信拠点の形成を進めていくことといたしました。この方針では、跡地に多様な人、物、情報を集め、区内中小企業がその集積に接する機会を創出することによって、区内中小企業の先端産業分野における開発への参入機会を創出することとしております。新製品開発に直接参加することで技術力向上や試作・加工の注文が増加することが期待されます。今後、整備方針に沿って、平成32年のまちづくりの概成を目指して取り組んでまいります。

国保料は下げられる提案について

【黒沼議員】
次に、国民健康保険について伺います。
ある建設業を営むAさんは45歳、妻40歳、10歳の子どもさんと3人暮らしですが、事業収入1500万円、所得360万円で、所得税、事業税、国保料、国民年金料、住民税、消費税、そして事業税を払うと146万5000円程度で所得の40%、これにガス・電気・水道代が年間90万円を引くと残り150万円以下です。これで1年間暮らせと言われても、奥さんがアルバイトしても大変なことは目に見えています。国保料55万円は所得の15%にもなります。何度計算しても、何度やりくりしても税金、国保料は払えないと悲鳴を上げています。多くの国保加入者世帯からこうした悲鳴が聞こえてきています。これを救うのが自治体ではないでしょうか。今必要なのは負担の軽減です。
ところが、大田区は、国保法第1条にあるとおり、社会保障制度なのに生命保険などと同じ相互扶助制度として間違った扱いで区民にとても重い負担を求めています。相互扶助制度ではなく、社会保障制度として払える保険料にすることです。国は低所得者対策の強化として、保険料の負担軽減を目的に2015年度から1700億円を予算化しました。国保加入者の約7割が年収200万円以下というように圧倒的に低所得者です。
ところが、区は、この制度からは3億円入る予定とのことですが、財政基盤支援として一般財源に入れて、区民の保険料軽減には使わないとしています。しかし、国は低所得者対策として1700億円の財源を組み、2015年2月12日にまとめられた国保基盤強化協議会の「改革により期待される効果」によると、被保険者の負担軽減を図るとして、被保険者1人当たり5000円の効果が実現できるはずとしています。事実、全国ではこの財源で軽減を実施している自治体が増えてきています。
ところが、大田区は、法定外繰り入れと区の軽減に使ってしまい、保険料負担軽減に使おうとしていません。
さらに、今後2018年以降、毎年約3400億円が投入されますが、これまた政府の発表では被保険者1人当たり1万円の改善効果があるとされます。厚労省は保険料の負担軽減を目的としています。よく確かめた上で実施されるよう要望します。
●そこでお聞きします。国からの補助金は被保険者の負担軽減に活用すべきです。お答えください。

【松原区長】
最後に、国民健康保険被保険者の負担軽減についてのご質問でございますが、国保制度改正により、平成27年度から保険料均等割軽減制度の対象者が広がりました。これに伴い、国保財政の安定化を図るため、保険料軽減対象者の数に応じ、国保保険者への財政支援制度、保険者支援制度が拡充されました。拡充の内容は、今まで財政支援の対象となっていなかった保険料均等割軽減対象者の拡大、軽減対象者の数に応じた補助率の引き上げなど、財政支援のために行われたものとなっています。国及び都の負担金は、区の負担金と合わせて一般会計から国保事業特別会計へ繰り入れ、低所得の方を対象とした保険料均等割額の軽減措置の拡充に充てることになります。保険者支援制度の拡充により、国及び都からの負担金は増える一方で、法定割合による区の負担額も増えることが見込まれます。そのため、国保財政は依然として厳しい状況にあると考えております。区では、財源不足のため一般会計から繰り入れる法定外繰入金は、平成26年度決算で約56億円となっております。多額の繰り入れを行って国民健康保険の維持運営をしております。平成27年度の保険料の算定に当たりましては、国の制度改正による軽減措置拡充の影響も勘案して、被保険者の方に過大な負担とならないよう十分に検討を重ねてきたものです。国民健康保険料について区独自に負担軽減を実施することは、23区の共通基準に基づく統一保険料方式として行っていることから困難であると考えております。

【黒沼議員】
●さらに、利用しにくい減免制度の改善を求めます。国保法44条に基づく窓口負担の軽減があります。改善を求めます。条例減免を求めます。お答えください。
2011年、仙台高裁で、生活保護基準を下回る国保被保険者からの一部負担金減免申請を認めなかったのは国保法44条を逸脱している。生活困窮の程度を重視していないのは違法とする判決が確定しています。つまり、最近の景気動向により、リストラや失業などで生活保護に近いという区民は到底払える保険料ではないので、減免対象にするのが制度の趣旨です。昨年度実績で減免を受けたのは693人、免除はたった15名しか受けられていません。至急実態に合った改善を求めます。

【時間切れのため答弁なし】

【黒沼議員】
保険料引き下げ及び減免に関して、区は今年の第1回定例会で、「区は23区統一保険料なので、区独自に下げることはできない」との答弁ですが、各区の特別会計に基づき、各区の国保運営協議会に区長が諮問し決められます。区独自で保険料の引き下げと減免は行うべきです。たとえ23区の統一保険料であっても、条例減免制度は独自に決められるのです。実行を求めます。
以上ですべての質問を終わります。

以  上

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