第1回定例会一般質問(速報)―清水議員



(映像は大田区議会ホームページより:17分)

全数調査を生かし、直接支援での産業振興施策について

【清水議員】
日本共産党の清水菊美でございます。
全数調査を生かし、直接支援での産業支援施策について質問をいたします。
大田区は、大田区のものづくり産業等を取り巻く環境は依然として厳しい状況が続いており、実情を把握することは今後の産業振興策を検討していく上で喫緊の課題などの目的で、2014年度全数調査を行いました。9000社以上あった工場は3481社となり、規模は3人以下が約半数、9人以下が8割弱を占めるという結果で、大田区は小規模・零細事業者を中心に区内取引が密に行われており、得意分野に応じて仕事を互いに融通し合って、ネットワークが大きなメリットであるが、多くの事業者が、外注先の転廃業、移転等が進み、ネットワークが弱体化していると感じているとなっています。さらに、3人以下の小規模企業の8割は後継者がおらず、廃業を考えている割合が極めて高い。技術・技能の継承と同様、早急に手を打つ必要があるとなっています。区長は、約8割の事業所が大田区で継続して事業をしたいと答えたことを評価していましたが、手だてをとらなければ廃業がとまらないことは明白です。ものづくりのまちとして有名な大森南、東糀谷地域でも、調査の後の昨年、今年と、あそこも、ここもと倒産、廃業が後を絶ちません。
●全数調査の結果の今後の施策の方向性をより具体的にするために、調査結果に基づく産業振興計画を策定することを求めます。策定に当たっては、中小企業経営者を含めた委員会を設置し、展望が持てる計画にすることです。お答えください。

【産業経済部長】
まず、ものづくり産業等実態調査結果に基づく産業振興計画策定に関するご質問でございます。調査結果を受けまして、既に平成26年度から企業訪問によります立地や事業継続にかかわる課題のヒアリングを行いまして、持続的な操業支援に取り組んでおります。また、区内ものづくり企業への外注が期待できる企業誘致も進めているところでございます。区内企業の成長産業への参入意向が高いことを受けまして、医療機器メーカーが集積する文京区と医療関係機関が立地する川崎市との連携による展示・商談フェアにも取り組んでおります。平成28年度予算では、ものづくり産業等実態調査の結果を踏まえまして、ものづくり企業の立地促進のための工場物件等の調査や、医工連携の取り組みなどを計上しております。現在策定を進めております大田区まち・ひと・しごと創生総合戦略の産業分野におきまして、区内外の企業経営者や学識経験者などで構成します検討会を設置しました。この検討会では、ものづくり産業等実態調査の結果をベースに、区が今後実施すべき産業施策の方向性について活発にご議論いただきました。したがいまして、現時点では議員お話しの委員会を設置し、産業振興計画を策定する考えはございません。

【清水議員】
2016年度予算案、産業振興の予算は全体の1.46%で、日本共産党区議団は予算の増額を提案しましたが、区長は、全数調査を踏まえつつ、必要な十分な予算を組んだと昨日答弁されましたが、従来どおりのイノベーションの創造、新分野への進出やベンチャー企業創出と一部の企業しか対象としていません。「高度な技術力を生かした集積、ネットワークが衰退していくのを本気で食い止める気があるのか」と不信の声が上がっています。大田区の製造業工場は3481社から2500社程度になるだろう、小規模で高齢化で、ただ待っているだけの待ちの工場は廃業やむなしという考えがあるのなら大問題です。小規模事業者がみずからのすぐれた能力・技術レベルに気づき、今までの親企業からの部品加工から製品化につながる努力ができるよう支援をすべきです。
●機器の購入や修理、ホームページの開設、新製品開発等々、自由に使う助成金制度で元気、やる気が出たという実績を生かして、区内で長年操業してきた小規模企業への直接支援の助成金制度を提案します。お答えください。

【産業経済部長】
次に、区内の事業者への直接支援の助成金にかかわるご質問でございます。区は既に様々な助成制度を実施しております。ものづくり工場立地助成は、区内ものづくり企業の集積の維持発展に結びつけることを目的としております。設備投資助成は、技術の高度化に伴う産業競争力強化や高付加価値化を目的とした助成制度です。大田区産業振興協会が実施します新製品・新技術開発助成は、技術力、開発力向上を目指すものです。これらの助成金は、業績の拡大や新規取引先の開拓等により企業の新たな価値の創出につながっております。実施した事業につきましては、効果検証を行い、より効果的な産業振興施策に反映しております。したがいまして、直接支援の助成金制度を構築する考えはございません。

【清水議員】
テレビドラマ「下町ロケット」は高い視聴率を上げ、大田区ものづくりのアピールになったと言われています。撮影が行われた工場は1938年創立、長年にわたり自動車部品、ねじやボルト品などの製品を生産してきました。従業員は多いときは300人以上、現在は約120名、下請企業も区内に多い会社です。しかし、静岡県に移転が決まっています。あの工場、社宅は取り壊し、本社機能、研究機能のみ残す予定とのことです。労働者は退職せざるを得ず、下請企業は廃業のおそれがあり、労働者、家族も大きな影響をこうむります。区内には同じように中規模の企業の区外移転がとまりません。その影響は労働者、下請企業のみならず、周辺の商店街、飲食店にも多大な影響を与えています。
区は、企業誘致と区内企業の持続的操業支援の施策として、ものづくり工場立地助成をしていますが、2014年度決算は、認定数は7件でした。継続支援補助金は7件、設備投資助成は8件、貸工場・工業用地マッチング助成2件という、努力はされていても成果がなかなか上がっていません。長年操業してきた中規模企業の区外移転を食い止め、そして新規に大田区で操業をと言っても、なかなか来てくれない。その原因の一つに区内の地価の上昇があります。固定資産税等の経費負担は深刻です。国家戦略特区指定地域となり、羽田空港跡地開発の税制優遇が期待されていますが、長年操業を続けている企業の税制優遇こそ求められております。
そして、区内企業に新たな外注ニーズを獲得できる可能性があるとして、2015年度新規事業としてファブレス型企業誘致制度を始めていますが、現在認定数はゼロ件です。今進めている産業振興施策は大田区の産業構造に合っていないのではないでしょうか。大田区の産業構造は、産学連携で例えれば、超高レベル研究の大学型よりロボット開発などの高専型が多いのではないでしょうか。
下町ボブスレーの開発は、多くの区内企業がそれぞれのものづくりの技術を生かして日本で初のボブスレーの開発につながりました。表面加工をはじめ、ボブスレー作成に生かされた高い技術は、大田区ものづくりの力を世界中に発信してくれました。また、工業フェアでも展示されていた小型風力発電機も、区内の町工場10社以上でグループをつくり、試作を繰り返し、3号機まで完成しています。風力発電機は太陽光発電機に比べて多くの部品が必要なため、仕事起こしにつながると言われています。グループの中には、高齢だし、仕事もないし、廃業を考えていたという企業が、何とか完成して区内に広めたいと元気になっているということです。区が製品化を支援し、完成した後には区内公共施設に設置すれば災害時の対策になります。区内小中学校に設置すれば防災、環境教育に生かせます。区内にはこのようなグループがいくつかあります。取り組みを支援し、区内外に発信し、仕事起こしにつながる施策を求めます。
姉妹都市である東御市に、先日、区議会議員が親善訪問に行った際、視察先のワイン工場でワインタンクを遠いクロアチアから輸入していると聞き、「大田区でできるじゃないか」の声が上がったと聞いています。大田区の高い技術、絞りや磨きなどの技術が姉妹都市に届いていなかったのかと残念でした。
●2016年度予算案に地元中小企業との共同で車椅子、立体防鳥ネット、区設掲示板の開発、設置の予算が組まれています。環境保全課、福祉部、地域振興課と産業経済部との連携、このように大田区内に区内のものづくりの技術を生かし広げる施策を大いに評価します。区内事業者の仕事確保のための体制の強化も求めます。現在、受発注相談員は、毎月の訪問目標はわずか10社です。行き先は中堅や大手が中心です。受発注相談員が区内小規模事業者を回り、仕事回しを強化する体制強化を求めます。
今、大田区の産業振興策に必要なことは、企業誘致のような呼び込み型だけでなく、内発型、地域の経済循環の創出への施策を強めることです。お答えください。

【産業経済部長】
次に、区内のものづくりの技術を生かしました地域内の経済循環の創出に関するご質問です。産業経済部及び産業振興協会は、福祉部と連携し、オーダーメイド型福祉用具製作事業に取り組んでおります。区内ものづくり企業の技術力をマッチングさせ、一人ひとりに適した福祉用具を製作するものでございます。区内ものづくり企業にとりましては、売り上げにつながることや社会的評価の向上が期待できるなどのメリットがあり、商品化への可能性もあることから、福祉という新分野へ進出する契機になると考えられます。また、地域力推進部と連携してコミュニティビジネスの発掘や創業支援に取り組み、環境清掃部とは省エネ等の環境技術の向上に向けた調査研究を行っているところでございます。このように、部局間連携によります区内中小ものづくり企業の技術を生かす産業連携施策につきましては、既に取り組んでいるところでございます。

【清水議員】
ものづくり実態調査と同時に行われた商店街の調査では、消費者がどこで何を買い物しているのかの消費調査が実施されていませんでした。これは商店街調査として大きな問題です。商店街の客は誰なのかを知ることは重要で、早急に商店街の消費調査の実施を求めます。
実質賃金マイナス、年金引き下げ、消費税増税などによる個人消費の落ち込み、物価高、大型店進出、ネット販売の増加等々の中で奮闘している商店街への支援は、商店街は子ども会活動、PTA、地域の防犯、消防団、お祭りなど社会的な役割を持つ準公共財という視点で施策を策定するべきです。商店街にも負担が重いイベントの予算だけでなく、各店舗がよりみずからの店をアピールすることを応援する施策を、産業振興のみならず、福祉、教育、地域振興などなどから、多様な角度で次々と支援策を提供することを求めます。
2016年度予算で繁盛店支援が商店街の空き店舗対策にも活用できるようになり、改装にも助成できるようになり、予算額も増額されていることは評価できますが、各商店街に一、二店の支援という従来どおりです。群馬県前橋市の店舗リニューアル助成は、対象業種は小売業、飲食業、サービス業、対象事業はおもてなしの向上に資すると認められる改修事業などを市内業者に発注することで、工事費の2分の1、限度額100万円を助成するものです。店を元気にする、おもてなしの向上でお客さんに喜ばれる、そして地域に仕事が回る、三方よしの制度です。
●ぜひ大田区でも、区内商店を対象とし、区内建設業者に仕事が回るリニューアル助成のような制度を提案します。お答えください。

【産業経済部長】
次に、店舗のリフォームを行う場合の助成制度についてお答えをいたします。公益財団法人大田区産業振興協会が平成21年度にスタートしました繁盛店創出事業は、店舗の売り上げが伸びるような店舗改修などに取り組む事業者のチャンレジを応援する制度として、年々予算規模の拡充、事業内容の充実を図っております。この事業は、専門家を派遣し、店舗改修や事務改善に取り組むための無料診断を行い、診断結果に基づき事業者みずからが計画し、審査を経て助成金の交付を行うものです。助成金を採択された事業者の皆様には、区内建設事業者等の活用をお願いする説明もしているところです。チャンレンジする経営者の皆様には、繁盛店創出事業の活用を促し、売り上げを伸ばして魅力的な店舗にしていくよう、この事業の着実な推進を図ってまいります。したがいまして、現状では、ご提案をいただきましたような新たな事業について実施の予定はございません。

以  上

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