第1回定例会一般質問(速報)―すがや議員



(映像は大田区議会ホームページより:26分)

子どもたちが幸せに生きるため大田区の責任「貧困対策」と果たすべき役割について

【すがや議員】
私は、まず子どもたちが幸せに生きられるための大田区の責任、貧困対策と果たすべき役割について質問します。
今年も新年から子どものいじめや虐待など悲しい事件が続き、胸が痛みます。大田区でも、ガンつけられたと母親の交際相手から執拗に暴力を受け、「ママ、苦しい」と訴えながら亡くなっていった3歳の男の子の事件は、どんなに怖く、痛く、苦しく、つらかったか。考えるだけでも想像を絶します。二度と取り戻せない大切な命。なぜこの男の子は死ななければならなかったのか、もっとできることがあったのではないかと悔いが残ります。ここに至った背景には、子育て支援策は多様化してきたものの、強い者が勝ち残る競争社会、若い世代の貧困、孤立の深刻化と社会への不信など深刻な社会問題があると考えます。
党区議団は、大田区にある児童養護施設聖フランシスコ子供寮の視察に行きました。説明によると、現在2歳から18歳までが入所する子どもたちの多くが虐待を理由とするものです。40年この施設に携わってきたシスターは、「とにかく虐待は早く措置をすること。遅くなればなるほど問題は深刻化し、人間への信頼を回復するのにも時間がかかる。最低3年はかかります」とも。さらに、「虐待問題は、行政、児童相談所、お医者さん、保健師さん、学校、保育園、とにかく横の連携をとって、できることを何でもやって子どもを救ってほしい」とも話されていました。
全国の調査では、児童虐待は年々増え、児童相談所での虐待相談対応は2015年約8万9000件、児童虐待による死亡事故は年間50件以上、1週間に1人の子どもが命を落としています。児童相談所への通告も最多を更新し、大田区では虐待件数は2009年224件が2014年528件、わずか5年間で倍以上に増加しています。
●国は児童虐待防止法をつくりました。しかし、改善の兆しが見えるどころか増えているではありませんか。71万区民を抱える大田区には、措置する権限を持つ児童相談所設置が必要であり、特別区長会の検討や都の福祉局と23区の関係課長会の話し合いが行われているとのことですが、検討をいつまでも待つのでなく、早急に児童相談所の移管または支所を設置させることを求めます。お答えください。

【こども家庭部長】
まず初めに、早急に児童相談所の移管または支所を設置するべきとのご質問でございますが、児童相談所は、児童福祉法に基づき都道府県は設置しなければならないとされ、指定都市及び中核市は政令で定めるところによりその事務を処理するものとなってございます。区における児童相談行政は、平成14年4月、子ども家庭支援センターを開設し、子どもと家庭の総合相談及び子育て支援施策に取り組んでまいりました。また、平成16年からは先駆型子ども家庭支援センターとして、虐待相談や要保護児童対策の取り組みを進めてまいりました。いずれにいたしましても、繰り返される虐待による悲惨な事件や事故から子どもたちを守るために、基礎自治体において地域の特性に応じた児童相談行政を一元的かつ総合的に担うことを目指し、引き続き取り組んでまいります。

【すがや議員】
さて、厚生労働省の調査で、子どもの貧困率は2012年16.3%、6人に1人、ひとり親家庭の貧困率は54%、2人に1人、過去最悪の数字となりました。生活保護世帯の子どもの高校進学率が全国で90.8%、大田区では85.4%、就学援助認定率は小学生19.2%、中学生29.0%です。
連日報道され、社会問題になっている子どもの貧困について、国では、生まれ育った環境で子どもの将来を左右させてはならないと、子どもの貧困対策の推進に関する法律が全会一致で成立しています。また、これに伴う大綱が閣議決定され、重点施策は教育の支援、生活の支援、就労の支援、経済的支援、実態把握のための調査研究が挙げられ、地方自治体は施策づくりが責務となり、実効性ある対策が大田区に求められています。大田区の新年度予算には、出産・育児支援事業かるがも、子どもの貧困対策に関する計画の策定、子どもの学習支援事業、スクールソーシャルワーカーの増員などが組まれました。
●私は、子どもの生活がどのような状況か把握するため、学識経験者、民生児童委員、関係機関職員を構成とする検討委員会を立ち上げ、実態調査やヒアリング等を実施することは重要と考えます。しかし、計画にまとめるのは2017年3月です。計画を冊子にまとめるのが終わりでなく、また、既存の事業で終わらせないために、区長が定例会の挨拶で、「全ての子どもが個性を育み、社会に出て活躍することができるよう、夢と希望が持てる子ども関連施策を部局横断的に取り組んでまいります」と述べたことを本気で実現するには、足立区のように子どもの幸せのために責任を持つ部署をつくるべきです。お答えください。

【計画財政部長】
私からは、子どもの貧困に関する所管についてお答え申し上げます。
子どもの貧困につきましては、教育、生活、保護者の就労状況、経済的な問題など多様な課題がございます。これらの課題についての実態把握や課題の抽出を行い、区として子どもの貧困対策を推進するために、子どもの貧困に関する実態や課題についての共通認識のもとに、福祉部をはじめとする関連施策を所管する部局が連携し、実効性の高い施策や切れ目のない支援を展開することとしております。今後も、各部局が横断的に施策を推進することにより、区に居住する子どもたちが夢と希望を持って成長できるよう努めてまいります。

【すがや議員】
特に、ひとり親家庭の54%が貧困世帯です。ひとり親家庭で最も所得が低いのが婚姻歴のない非婚ひとり親世帯です。死別世帯平均288万円、離別世帯200万円、非婚世帯171万円という調査結果があります。ところが、同じ収入であっても、所得税や保育料など負担が重いのは、結婚歴のある人に認められている寡婦控除が、法律上結婚していない未婚のひとり親世帯には認められず、大きな差があるのです。
●婚外子の相続差別を憲法違反とした2014年9月最高裁判決を受けて、非婚のひとり親に対する寡婦控除みなし適用する自治体も、23区で世田谷区、港区など9区に増えています。これまで区議会に陳情が出され、党区議団はみなし適用を求めてきました。大田区の2016年1月時点での児童扶養手当支給者数4113人、未婚家庭536人13%です。隣の川崎市は、保育料や区営住宅使用料、学童クラブ入園料など34種類にみなし適用を行っています。大田区でもみなし適用の実施を求めます。お答えください。

【こども家庭部長】
次に、非婚のひとり親に対する寡婦控除相当の扱いについてのご質問をいただきました。保育料のあり方に関しましては、現在、大田区保育園・学童保育保育料検討会で検討を進めているところでございます。その中で見直しの視点の一つとして子どもの貧困対策を掲げてございまして、保育料の階層区分認定の際の非婚のひとり親に対する寡婦控除相当の扱いにつきましても、現在ご議論をいただいているところでございます。今後、検討委員会での検討結果を踏まえ、保育料の見直しの中で適切に対応してまいりたいと考えてございます。

【すがや議員】
●また、党区議団は、ひとりぼっちをなくそうと取り組みを進める子ども食堂や、退職教員の方々のボランティアによる小中学生対象の寺子屋を視察しました。新年度予算に、貧困の連鎖防止のため、生活困窮世帯の中学生に学習支援をしますと4001万円の予算がつきましたが、これまで行われてきた地域の事業の状況をしっかりつかみ、それらにも区が行う今回の事業と同じように支援すべきです。また、大阪府堺市では、自治体で初めて子ども食堂を行うことが報道されたところです。大田区でも、先に行ってきた子ども食堂をはじめ、これから行う子ども食堂にも自治体として支援すべきです。お答えください。

【福祉部長】
まず、学習支援事業や子ども食堂への支援についてのご質問でございます。現在、区内では、生活困窮世帯の子どもに対する学習支援事業や子ども食堂の取り組みなど、子どもの貧困対策に資する区民の方々によるいくつかの活動が実施されている状況は把握してございます。来年度、学習支援事業を開始するに当たっては、従来から活動されている団体の皆様からのご意見を伺いながら検討を進めてきたところでございます。これまで区は、地域力応援基金助成等により区民活動団体を支援するなど、地域の課題を解決する力である地域力の向上のための取り組みを進めてきたところでございます。今後も、地域の様々な区民活動との連携・協働を一層進め、ともに支え合い、地域力で育む安心して暮らせるまちの実現を目指してまいります。

【すがや議員】
次に、教育の支援である奨学金制度についてです。家計の状況にかかわらず、希望する高校や大学に入学して教育を受けられることを保障することは最重要課題です。今回、通信高校生まで大田区の奨学金制度が改善されることは、区民の願いに応えることであり、大賛成です。また、大田区の奨学金制度は無利子、専門学校なども対象にするなど、学校関係者、行政や議会を含め、様々な立場の方々の努力の結果だと思います。
しかし、まだまだ改善ができます。学生は大学卒業とともに、少なくても奨学金返済という借金を背負います。中には大田区奨学金貸し付けとほかの制度を使っている学生がいます。2014年度では、大学生6月募集73名中17人、23%が日本学生支援機構も借りています。大田区奨学金の返済は卒業後1年間の猶予があり、20年間で返します。しかし、大田区の貸し付けで見ると、返済額の多い大学生で211万2000円を返済しなければなりません。今、大学を卒業しても正社員になれる保証も、年収200万円を超す保証もありません。大田区は、無理なくその学生が返せる金額にする相談もしているとしていますが、低所得や体を壊した、仕事を失うなどの理由で返したくても返せない場合には猶予すべきです。例えば、大田区に就職すれば返済猶予するなど考えられます。
また、滞納すると利息が10.95%と高利貸し並みです。見直しが必要です。養護施設聖フランシスコ子供寮では、大学に進学を希望する児童に対し、借金を背負わせられないので、企業で行っている給付型の奨学金や、シスターたちがこつこつためた貯蓄を使って応援していることを伺いました。個人の努力に頼っていていいでしょうか。
そこで質問です。大田区では、末吉氏が、若いころ学問ができるような経済的余裕がなく、進学して勉強したくても進学できずに苦労してきたなどの理由で遺産7000万円の寄附が寄せられ、給付型の奨学金制度、末吉育英基金が実現しました。支給人数は各年度40人程度、予算は各年度1200万円、2014年度から2019年度までの計画です。大学進学を目指す学生にとって励みになります。
●しかし、あと4年で終了ですから、大田区は、この末吉氏の遺志を引き継ぎ、給付型の奨学金制度を継続すべきと考えます。また、OECD諸国で給付型奨学金制度がないのは日本だけです。給付型の奨学金制度を国に求めるべきです。あわせてお答えください。

【福祉部長】
次に、給付型奨学金制度についてのご質問をいただきました。お話しのとおり、現在の区の給付型奨学金は、寄附者である末吉様のご遺志に基づき平成26年度に創設し、事業を開始しております。大学の入学準備金として1人当たり30万円をおおむね40人に給付し、今年度は2回目を実施いたしました。現在の残額は約5000万円でありまして、今年の同じ実績で運用すると、お話しのとおり、あと4年で終了する計算でございます。終了後に区として給付型の奨学金を継続するかどうかについては、今後判断してまいります。また、国は給付型奨学金の創設について検討している状況でございますので、現在のところ国に制度創設を求める考えはございません。

保育園の充実で、安心して子育てできる大田区政について

【すがや議員】
次に、保育園の充実で安心して子育てできる大田区政についてです。
保育園入園の結果が19日、各家庭に届きました。「24点でも入れませんでした。4月から勤めなければならないのに、どうすればいいんですか」「仕事をやめなければなりません」と悲鳴の声が届き、この日曜日、月曜日は大田区の窓口に入園できなかった保護者の方々が殺到いたしました。今年の認可保育園申し込み1次分で希望者数4535件、不承諾数1822件、希望者数は前年度より200人増え、不承諾数は144人増えています。
19日の定例会施政方針挨拶で、区長は「我が国で最も待機児童を減らした自治体となりました」と述べています。しかし、今年も認可保育園不承諾数1822人で、どうして入園できなかったのかと保護者の悲鳴が聞こえてくるのは、希望する数に見合った認可保育園を増設しなかったからです。認可保育園に入れず、一旦認証保育所や小規模保育所などに入園しても、翌年には認可保育園を希望するからです。このことをいつまで繰り返せば大田区は気がつくのでしょうか。
2014年から2015年にかけて定員を約1000人増やしましたが、認可保育園637人、認証保育所、家庭福祉員、定期利用で412人でしたが、認可保育園を増やさなければ待機児童解消はできません。予算案では、私立認可保育所の開設準備経費補助7施設、認可外含めてですが、保育サービス定員を500名拡充しています。しかし、不承諾数1822件と比べ、圧倒的に不足しています。大田区は、おおた未来プラン10年(後期)で、2018年度入園希望者100%、待機児童ゼロとしていますが、保護者の願いは今すぐ待機児童をゼロにすることです。
●また、小規模保育所卒園後の3歳児の受け入れ先が狭いという新たな問題が出ています。児童福祉法第24条第1項、自治体の責務、措置しなければならないを守り、0歳児から5歳児クラスまでを保育できる認可保育園を、保護者の希望する数に見合った増設を求めるものです。お答えください。

【こども家庭部長】
続きまして、待機児解消対策についてのご質問でございますが、増加する保育ニーズに対応していくためには、多様な手法を駆使しながら保育サービス基盤の拡充を図っていくことが不可欠であると認識をしてございます。このため、多様な保育ニーズに応えるべく、認可保育所に加え、小規模保育所、認証保育所、グループ保育室、定期利用保育などの整備を進めるとともに、新たに定員の一部を地域に開放する事業所内保育所の開設支援にも取り組んでまいります。また、保護者がニーズに合った保育サービスを適切に選択できるよう、保育サービスアドバイザーによる個別のニーズに寄り添った丁寧な相談対応など、利用者支援の充実にも努めてまいります。引き続き、待機児解消に向けた施策を総合的に展開することにより、地域の保育ニーズにきめ細かく対応し、保育を必要とする子どもが適切なサービスを利用できるよう迅速に取り組んでまいります。

【すがや議員】
子ども・子育て支援制度が始まり、4月で1年になります。大田区の乳幼児が保育される施設は認可保育園、小規模保育所、保育ママ、定期利用保育、認証保育所など多様な種類ができました。また、認可保育園でもビルやテナント型、園庭がなくてもよい、さらに営利企業の参入も加速されています。そのような中、昨年12月末で平和島にあった認証保育所保育ルームフェリーチェが、有資格の保育士を配置できずに廃止になりました。生活センターで行われた説明会で、保護者の方が「今始まったことではない。先生がころころかわっていた」と手を挙げて発言されていましたが、有資格者を配置できない状況で保育が行われていたことは許されることではありません。この背景には、命を預かる責任の重い仕事なのに保育士の低賃金という問題があります。
大田区は、深刻な保育士不足、安心・安全な保育の保障、質の確保のために、区立保育園の民間委託は延期、中止することを求めます。
次に、保育料の問題です。先日、保育園にお子さんを預けて働いているお父さんから手紙をもらいました。「私は2年間休職して、今年職場に戻ることができました。それも保育園があり、安心して預けることができたからです。今、私は正規職員として働くことができず、年収は300万円になるかどうか。妻もパートで年収120万円です。そんな我が家の家計は大変苦しく、何とか夫として父として一人の男として、もっと収入を上げて家族に楽をさせてあげたいと思いつつも、なかなか体がついていかず、苦しい思いをしています。せめて私の子どもが苦しまず、人並みの生活をしていけるように、今、必死にお金をためています。学歴で苦しまないように大学まで行かせてあげたいし、私のように奨学金に苦しまないように学費も出してあげたいのです。そのためには、今、保育園から中学校までにためるだけためておかないといけません。1000円でも2000円でも、少しでもためてあげたいんです。人様に迷惑をかけずに幸せに、お金を心配しないで生きられる子どもになってほしいという親の願いのためにも、どうか保育料値上げをしないでください」という内容でした。
貧困が深刻化する中にあって、保育を必要とする全ての子どもに保育を保障する観点を含め、児童福祉法の立場で保育料は考えるべきですが、今、大田区では保育園保育料、学童保育料の検討委員会の中で、突然受益者負担を理由に、0歳児は1人当たり60万円の経費がかかっているので、別枠で保育料を考えるという案が出されたことは問題です。
●どの年齢においても安心して保育園に預けることができるようにすることが大田区の責務です。国の基準では、1歳児の保育士配置は子ども5人に保育士1人、0歳児は子ども3人に保育士1人の配置、栄養士、看護師など手厚い配置がなされており、お金がかかるのは当然です。児童福祉法に基づく保育に受益者負担を持ち込むのは間違いです。大田区は保育料値上げをやめ、引き下げることです。

【こども家庭部長】
続きまして、保育料の見直しについてのご質問でございますが、保育料のあり方につきましては、学識経験者、区議会議員、子育て支援事業関係者、区民の代表などの委員から構成されました大田区保育園・学童保育保育料検討委員会を設け、現在検討を進めているところでございます。保育料の見直しに当たりましては、公平性、受益と負担の関係性、少子化対策、子どもの貧困対策、保育の質の確保の五つの視点を設け、様々な角度から見直しについてのご議論をいただいているところでございます。この間、少子化対策の視点からは2人目の保育料の減額のあり方を、子どもの貧困対策の視点からは低所得者への負担軽減についてもご議論を進めていただいているところでございます。今後は検討委員会での検討結果を踏まえ、区として保育料の見直しにつきましては適切に対応してまいります。

以  上

カテゴリー: 議会の動き・政策・発言集 パーマリンク

コメントは停止中です。