(映像は大田区議会ホームページより:40分)
高齢者虐待対応について
【清水議員】
はじめに高齢者虐待防止についてです。
2011年度、「養護者による高齢者虐待についての対応状況等」の結果によりますと、大田区内での相談・通報85件のうち「虐待を受けた又は受けたと思われたと判断した事例」は80件でした。身体的虐待は50件、介護・世話の放棄・放任は25件、心理的虐待は32件、経済的虐待が10件でした。虐待による死亡例は0件でした。世帯別に見ますと、夫婦二人世帯いわゆる老老介護世帯14件、未婚の子と同一世帯47件でした。2010年度と比べますと虐待件数は増加しています。
高齢者の虐待の現状は、介護者は虐待をしている意識がない、や、経済的虐待や、ネグレクト介護放棄、など、核家族化、地域と交流が無い、養・介護者共に引きこもり状態など複雑化しています。
ことに「介護・世話の放棄、放任」は、その約7割が自覚がないという調査もあります。養護者は一生懸命やっているつもりでも、介護に関する知識や技術、能力、時間、経済力が足りないことによって、客観的に高齢者の尊厳が損なわれていることがあります。介護・世話が適切におこなわれていないことによって高齢者の心身、生活状況に悪影響が出てくるのです。
区は介護事業者、ケアマネ等の介護従事者の研修・学習会の際は「通報者は法の中で守れています。虐待の疑いの段階でもどんどん通報、報告を」と指導されているはずですが相談・通報者85件のうち、虐待と思われる件数が80件と言う結果は、虐待が表に現れるようになってやっと通報や、相談が出てくるという実態なのではないしょうか。
高齢者虐待防止は命に係る問題として大田区がどのような対応がなされているのか、実態について伺い、今後も区の対応が十分に図られることを強く期待していくつかの提案をします。
最も、厳しい対応となるのは、緊急時に虐待と判断し、対応策として虐待されているものと、虐待している者とを分離するばあいです。このような最悪な場合、介護支援員ケアマネジャーは「担当の高齢者がころされるかもしれない切迫感と恐怖心の中」、命を守るために施設探しをします。施設が見つからないなどの厳しい対応が続いていても、分離のための措置が行われない、検討の俎上にも乗らない現状がある。対応が進まないことが予測されている。という東京都の報告がありますが大田区は大丈夫でしょうか。
老人福祉法では措置の決定は自治体の責任となっています。自治体の対応、措置会議や措置決定の手順を明確にすると共に、措置決定機能が必要です。
高齢者虐待防止法第9条では通報を受けた場合の措置が明記されています。さらに第10条では、措置をとるための居室の確保が自治体の責務とされており、厚生労働者は分離のための一時的な措置として、特別養護老人ホームの定員超過を認めています。介護保険制度を使って虐待するものと、される者の分離が限界だと思われた事例の場合、やむをえない場合の措置は自治体である大田区がすることは、特別なことではないということが、広く普通に、介護支援員や地域包括支援員に周知させることは大きな安心感となるでしょう。
大田区の2011年度の虐待と判断されて分離を行った事例は44件でしたが、対応の内訳は介護保険サービスの利用29件、医療機関への一時入院10件、その他5件で、老人福祉法上のやむをえない措置は、虐待を受けている高齢者の生命、身体に重大な危険があるときに発揮されるものですが、0件でした。
全国の調査では分離した事例の12・4%がやむをえない措置であると、厚生労働省は報告しています。このことから大田区の0件は、やむをえない措置が無かったとはいえない不安が残ります。虐待による死亡例は0件と言う調査報告ですが、危険な状態が存在することも考えられます。
児童虐待では、虐待対応の上で生じる様々な問題に対応するため、死亡事例を検討するための専門委員会が国によって設置されていますが、高齢者虐待の場合はそのような取り組みは未だ行われていません。高齢者の死亡は「持病が悪化した」「老化によるもの」「抵抗力が落ちているから仕方の無い感染症」「ころんで打ち所が悪かった」等で処理されがちで、司法解剖も行うことができませんので、虐待によるものの死亡なのかを判断がしにくく、児童のように社会問題になりにくいといわれています。
●措置の決定は自治体の責任です。必要な措置は区が責任を持ってやっていますね。措置会議の実態についてお答えください。
【福祉部長】
措置会議についてのご質問ですが、措置は、高齢者虐待などにより介護保険サービスを利用することが著しく困難などのやむをえない理由がある場合、老人福祉法に基づき措置会議を開催し介護保険サービスに結びつけるしくみです。措置会議は、高齢者ご本人や関係機関から虐待などの相談や通報があった場合に、住所地の地域福祉課がさわやかサポートと連携し実態の把握に努めます。その結果、措置によるサービス利用が必要と判断される場合は、地域福祉課や高齢福祉課等の区職員で構成される措置会議を開き、高齢者の状況を把握したうえで措置によるサービスの必要性などについて、多角的に検討し措置を決定しています。
【清水議員】
また、分離を行った事例の中で医療機関への例が10件となっていますが、社会的入院も考えられます。現在大田区では虐待を受けた高齢者を守るために面会を制限することができていません。医師の認識の違いもあり、虐待する者のところへ退院させることも考えられます。江東区等では仕組みを作って、面会等の制限できるようになっています。
●病院に措置として入院できるしくみ・面会等の制限も含めた協定を大田区でも医療機関と検討するよう求めます。お答えください。
【福祉部長】
つぎに病院への措置についてのご質問ですが、医療サービスについては、老人福祉法に基づく「やむを得ない事由による措置」のようなサービス導入の権限を規定したものはありません。高齢者虐待により医療サービスが必要であるにもかかわらず、養護者が反対しているなどにより利用が難しい場合、医療機関や関係機関と連携しながら、医療サービスへ結びつけるなどの支援を行っております。今後も、個別にその方のおかれた状況に応じて必要な対応をしていきます。
【清水議員】
「高齢者虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」では、自治体の職員が介護支援専門員ケアマネジャーを支援する体制、地域包括支援センターとの連携協力で、自治体の独自の体制の確立をと明記されています。
地域包括支援センター(さわやかサポート)は高齢者虐待防止法上も介護保険法上も、重要な位置をしめています。通報・相談の対応、情報収集、訪問調査、個別ケース会議の招集、支援方針の決定、支援計画でも中心的な役割を果たすとなっています。実際に虐待の現場に近いということで、国が地域包括支援センターにこの整備を進めた経過があると思いますが、現状は見守り事業や、要支援・要介護1・2の介護計画作成等々の業務が増大しています。定員増が図られたとはいえ厳しい体制になっています。地域包括支援センター職員の9割は高齢者虐待の対応には困難を感じており、援助者の約7割の職員が、介入を拒否する虐待者の対応時に、自分の技術では対応できないと感じ、援助者の約4割が関わりたくないケースと認識しているという調査もあります。
一方、自治体は高齢者虐待に関する広報や啓発の活動が中心です。立ち入り調査や、警察署への援助要請や、やむをえない場合の措置、個人情報の取り扱いのルールの作成などが役割となっています。介護事業者、ケアマネジャー、地域包括支援センターの職員、通報や相談を持っていった地域の民生委員の方々は自治体の職員に期待していますが、実態が伝わっているのかという不安も同時に持っています。
しかし、大田区でも、人員削減計画が進められ配置転換もことに管理職では2年から3年ごとに行われています。高齢者虐待の担当職場も同様と思われます。専門の力を発揮するようになっていないのではないでしょうか。高齢者虐待防止法では自治体に専門に従事する職員の配置を努力義務としています。
●区は、高齢者虐待対応について十分な経験と実践を積み、区の担当職員や、介護事業者等へ指導できる専門の職員の、育成と配置をすべきです。お答えください。
【福祉部長】
高齢者虐待対応に長けた福祉部の職員の育成と配置についてのご質問ですが、高齢者虐待対応職員の対応力の向上は、重要な課題と捉えています。虐待対応の中心的役割を担う地域福祉課やさわやかサポートの職員、さらに高齢福祉課や介護保険課の職員に対しては、高齢者虐待についての基礎研修の他、弁護士等による専門研修を実施しており対応力の向上を図っています。現在、地域福祉課の高齢者地域支援担当係長は、老人福祉指導主事として配置していますが、担当職員においても虐待対応の経験を通じてレベルアップを図り組織としての強化に努めていきます。
【清水議員】
東京都高齢者虐待事例分析検討委員会の報告書によりますと、「すでに高齢者虐待と言う状態になっていたにも係らず、関係機関や周囲の人々がそれに気づかず、あるいは虐待であると認識できずに通報されない実態があることが把握されました。早期に虐待対応が出来ていれば、異なる選択ができたと思われるものもあったとされています。「高齢者虐待防止」の意識を共有できるよう、関係機関に繰り返し啓発していく必要があります。区市町村だけでは行うことが出来ない。関係機関がそれぞれが、高齢者虐待防止について特に支援を必要としている高齢者、介護者像を共有し、予防的に連携して働きかけていけるような体制構築が望まれます。」と報告しています。
高齢者虐待対応の区職員の研修は直接担当する高齢福祉課、地域福祉課の研修はより実践的なものであり、所属職員全員受けることは言うまでもありません。しかし、高齢者が区民の約4分の1となりつつある中、担当課のみでなくどこの職場で働いている職員でも高齢者虐待対応についての研修を受け、虐待対応の認識の共有が必要なのではないでしょうか。
たとえば、出張所の隣の公園にいつも座っている高齢者、寒くなったのに薄着だ、
たとえば、保育園に子どもを預けている母親、家族の介護で疲れているようだ、
たとえば、国保の保険料の納付相談に来た区民が家族の介護で悩んでいるようだ。等々の場合、地域包括支援センターを紹介する。もしやときづいた職員が相談・通報する。様々な面で区民と接する区職員が「虐待の芽」のうちから対応が出来ることを求めたいと思います。ことに生活福祉課、障害福祉課とは認識を共有し連携を強めてください。相談を受けた担当課は「忙しいのに。傷もないし。考えすぎではないか」などといわないことは言うまでもありません。
●区の全職員が高齢者虐待対応についての研修を受け、虐待対応の認識の共有を図ることを求めます。お答えください。
【総務部長】
高齢者虐待に関する職員研修の新設に関するご提案ですが、高齢者虐待に関する現状や、その対応に関して区職員が認識を共有することにつきましては、一定の意義があるものと考えています。しかし、すべての職員を対象に実施する研修については、区職員研修計画における位置づけや、実施するうえでの優先度等を勘案しつつ、研修プログラムを整理する必要があります。より実践的かつ効果的な研修とするためには、高齢福祉を担当する部局の意見なども踏まえ、なお十分な研究が必要であると認識しているところです。
【清水議員】
現在大田区では高齢者の虐待防止のための個別検討については、地域包括支援センターが中心的役割をはたすとなっており、高齢者と実際に接しているケアマネジャーが参加し、気になる点など十分にだされ、それぞれが専門性に基づいた対応が出来るような会議が行われていると思います。
しかしこのような個別会議では解決できない状況の際「コアメンバー会議」を実施されておるのでしょうか。
厚生労働省マニュアルでは担当課の管理職の参加を必須としている「コアメンバー会議」は、緊急に高齢者を保護分離する必要がある場合では、「やむを得ない事由による措置」をとることをきめたり、保護先に虐待している者が押しかけ、高齢者を連れ帰る恐れがある場合に面会制限の実施を決定したりします。
●「コアメンバー会議」の開催について区の実情についてお答えください。
【福祉部長】
高齢者虐待防止のための個別検討についてのご質問ですが、高齢者虐待の対応は、高齢者本人や関係者等から通報や相談があった場合、まず、さわやかサポートと区で連携して事実確認等を行っています。また直接に関わるケアマネジャーをはじめ事業者や関係機関へは、「虐待対応協力者」として事実確認等の際に事情を確認したりご意見を聞かせて頂いております。調査結果を踏まえて区の責務である「虐待の有無や緊急性の判断」は、さわやかサポートと区職員で構成する「コアメンバー会議」で判断します。個別の対応は、「コアメンバー会議」の他、ケアマネジャーなど事業者や関係者などの実務担当者が集まった「事例対応メンバー会議」により、必要な支援などについて協議を行っています。今後も引続き、高齢者虐待の対応と防止に向けて、さわやかサポートと共に、ケアマネジャーなど事業者や関係機関と充分な連携に努めていきます。
【清水議員】
認知症になっても、介護が必要となっても、尊厳ある生をまっとうでき、憲法25条が守られ、高齢者虐待の加害者にも被害者にもさせない社会保障制度の充実が求められています。また、大田区は虐待を受けている高齢者を守り、また介護支援員を守り、地域包括支援センター、区担当課職員を守る重大な責任があることをのべて、次の質問に移ります。
がん検診は無料のままで拡充を
【清水議員】
次にがん検診について伺います。
区はおおた未来プランで「生涯健やかに安心していきいきと暮らせるまち・誰もが自分らしく健康で生きがいをもって暮らせるまち・だれもが健康に暮らせるまちを作ります」としています。区は各種のがん検診を、区内医療機関の協力を得ながら実施してきました。またがん検診で要精密検査と判定された受診者のうち、精密検査を受診したかどうか不明の方については医師会に照会連絡し、精密受診状況を把握することもしてきました。
2011年度は胃がん検診受診者11475人でがん発見者35人、肺がん17970人で発見者15人、2012年度胃がん検診受診者11791人で発見者27人、肺がん17952人で発見者9人、となっています。
区内医療機関では、「毎年医療機関にあてがわれた枠が足りない。あっという間に予約が埋まってしまい、苦情が医療機関の受付に寄せられその対応に負われて日常診療に支障が出るほどである。予算を増やして、検診の予定数を増すべき」との要望が上がっています。
区民からは予約開始の日からすでに予約が取れなかったという苦情が寄せられています。ある方は予約しようと朝から病院に行き、並んで順番待ちをしたが、自分の前で予約枠が終了になった。またある方は朝から30分ごとに電話し続けたが、ズーと話し中で繋がらず、昼近くにやっと繋がったと思ったら、すでに予約が終了していた。「港区、西東京市の友人から『早い者勝ちでがん検診が受けられないなんてありえない』と笑われた、恥ずかしかった」といっている区民もいます。今年度は年度途中に胃がん検診300件分の追加措置をしましたが、それもあっという間に終わってしまったとのことです。区はがん検診に対して「検診を受けましょう」と啓蒙、啓発活動を強めていますが、現状はがん検診を望んでいても受けられない状況です。
そんな中、区は11月5日のおおた健康プラン推進会議で、「おおた健康プラン」平成26年度から30年度素案を提案しました。「がん検診の充実のために」の項で、「できるだけ多くの区民が受けられるように検診費用の一部に自己負担を導入し、それを受診予定件数の増加に振り向けます」と、提案し現在検討中ということです。
しかし、がん検診費用自己負担導入が多くの区民ががん検診を受けられることに繋がるでしょうか。たとえばアスベスト検診は、2008年916件でしたが、次の2009年は1000円の有料化となったことから91件となり、昨年度2012年度は36件となっています。39歳以下女性健康診査、39歳以下区民健康診査は年々受診者が減っています。対象者は減っていないのに受診者が増えないのは有料化だからではないでしょうか。受診料1320円は最低賃金の約1・5時間分です。就職試験などで必要な時は受けるが、毎年の健康管理のために受けるには人によっては負担が大きいのではないでしょうか。
これらから見てもがん検診の自己負担費用の導入は、受診者減に繋がることも考えられますので慎重にするべきです。がん検診を受け入れている区内医療機関とも十分な話し合いが必要です。
国が進める社会保障の負担増、消費税増税、国保、介護保険料の負担増の中で区民の暮らし、家計は大変厳しい状況です。そんな中でのがん検診の有料化は「命も金次第」と言われかねません。
●がん検診の予算を拡充し、希望者が受けられるように改善を求めます。無料化は存続することです。お答えください。
【保健所長】
がん検診の希望者は受けられるように改善を、とのお尋ねですが、まず、現状の問題点として①がん検診の受診者はリピーターが多いこと②規模の大きな病院に受診希望者が集中すること③がん検診で要精密検査となっても受診しない方がいること等、があります。受診希望者の多い胃がん検診では、25年度は当初予定数で昨年度当初より600人増やし実施しています。また、来年導入予定の保健所システムにより、データの経年管理が可能となることから、受診勧奨等に今後有効活用していく予定です。引き続き、より多くの区民の皆様が、がん検診を受診できるよう、受診期間や受診予定数を含めた検診体制について医師会と協議を重ねていきます。
【清水議員】
現在の期間を限定する、件数も限定する、というがん検診のやり方は、区民ががん検診を気軽に受けられる体制として問題があります。また、がん検診に対する不安・無関心の区民へ受診を促すことにも繋がりません。一方で障害者・障害団体から「がん検診を受けたくて受けられない。誰かに頼まないと予約が出来ない、ファックスで申し込めるようにしてもらえないか、障害者の健康について、もう少し区も考えてほしい」の要望にも真摯にこたえなくてはなりません。
これらの問題点を整理して、早期発見早期治療で区民の命・健康守るために、
現在のがん検診あり方を見直すことが急務です。たとえば誕生月受診などで動機付けをする、など、1年中区民の希望で予約が出来る通年受診の方法に変えることは、受け入れている医療機関にとっても良い方法であり、受診者を増やすもっとも簡便な方法です。命に係るがん検診が、早い者勝ちになっている現状は「恥ずかしいことであり」一刻も早く改善が求められます。また、土・日、休日・夜間受診にも強い要望があります。ことに区内の1人から3人程度の工場、商店等で働く区民や、介護、育児家事に追われている区民など、検診を受けにくい区民に、より受診の機会を増やすことが求められます。
●がん検診を受託している医師会等との連携を強め、通年受診、土、日・休日、夜間受診などを可能とすることを求めます。お答えください。
【保健所長】
医師会等との連携を強め委託費を増加し、通年、休日、夜間受診などを可能とすること、とのご質問ですが、区のがん検診は、医療機関の通常の診療時間内に行われていますので、休日受診・夜間受診は、医療機関の事情により難しいところではあります。その解決策のひとつとして25年度は、子宮頸がん検診・乳がん検診で検診車による検診を導入し、休日受診及び同日受診を可能としました。これにより子育てや仕事などで受診することが難しい女性の受診機会を増やし、好評を得ています。実施期間や受診予定数については、毎年、医師会との協議を行い充実に努めています。今後も引き続き、より多くの区民の皆様が、がん検診を受診できるよう、がん検診の検診体制について医師会と定期的に協議の場を設け、医師会との顔の見える信頼関係に努めていきます。
中小商工業の実態調査は全庁を挙げた取り組みとし、一刻も早く調査し、新年度予算に活かすこと
【清水議員】
次に、商・工業ささえ、地域活性化のために。実数、実態調査について伺います。
1988年度(昭和63年度)に行われた「大田区工業の構造変化と将来展望」は当時の西野区長が、「中小企業のたゆまぬ努力によってナショナルテクノポリスと評されている大田区工業だが、取り巻く環境は大変厳しい……本調査は環境の変化を踏まえて引き続き大田区工業がナショナルテクノポリスの地位を確保していくための施策を検討するために実施したものである」とし、委託された財団法人日本経済研究所は「出来うる限り生の情報に迫り本報告書をまとめることに留意した」と報告しています。調査方法は10~29人規模はアンケート配布・回収とし、1~9人規模の事業所は工業集積の構造把握のために「悉皆調査」でなければならないとし、典型地域を大森南、大森西、仲池上地区、矢口・下丸子地区として、全訪問調査をしました。この訪問調査の結果、「場所の確保」、「事業資金あるいは助成制度の充実」、「従業員の確保」、「事業者サービスの確保」、において、「地域工業集積」維持強化のための視点から取り組むべきと提案されています。区立工場アパートの建設、融資制度などの施策が実現したといってよいでしょう。
この実態調査の実施から25年がたちました。その後調査は行われておりません。区内の工業団体等の皆さんからは「大田区内の製造業は、もはや3000社程度しか残っていないのではないか」と言われています。今、大田区にどれだけの工場があるのか、従業員は何人なのか、出荷額はいくらなのか、現状を把握できていません。これでは「製造業の町、モノづくりの町大田として恥ずかしい」といわれています。現状を正しくつかむことが出来なければ、真の施策も生まれません。
第3回定例議会、決算特別委員会で日本共産党区議団が提案し、区が調査することを表明した小規模事業者も含んだ全数調査と実態調査を生かして、モノづくりの町大田区の崩壊を止める施策を一刻も早く実施すべきです。他自治体の例のように、産経部の職員だけでなく全庁の部課長が調査に参加し、たとえば保健所の職員が訪問し、中小企業の従業員の健康管理についての問題を、子育てサービス課の職員が、保育園に入れない自営業の要望をじかに聞く、介護・障害福祉の職員が仕事しながら家族を看ている実態を知る、などなど、中小企業の総合的な実態や生の声を聞くことが、「モノづくりの町大田区」の区あげての施策につながるのではないでしょうか。
先日、糀谷で40年以上溶接等の仕事をしていた方が仕事をやめることにし、工場を解体しました。親父さんは「としだし、仕事もないし、家主から壊すようにいわれて」とさびしそうでした。この周辺は町工場の多い地域ですが、「仕事が中国・ベトナム・インドまで行ってしまった。仕事が無い」、「後継者がいなければ、腕はあっても高齢では仕事をまわしてくれない。」等々で次々と廃業しています。町工場が立ち並んだ、工業の集積地は大きく姿を変え、あとにはマンション、アパート、建売住宅、駐車場等になっています。
残っている町工場でも、「今年いっぱい持つか、3月まで持つか、自殺者も出かねない」と深刻な声が上がっています。大田区内の実情は大変緊迫しています。大田区のモノづくりを維持していく時間的な猶予はありません。大幅に予算を増やし、大田区ブランドとして、下町ボブスレーに続けとがんばっている小型風力発電の開発などをはじめている区内中小企業を支援し、励まし、希望を与えることこそ大田区の仕事です。
●質問いたします。実態調査は悉皆調査とし、生の声を聞くこと。産経部の職員のみならず、全庁の部課長をはじめ訪問調査をすることを求めます。一刻も早く実施し、来年度予算に中小企業施策を組み込むことを求めます。お答えください。
【産業経済部長】
商・工業、実数・実態調査について、悉皆調査とし、生の声を聞き、産業経済部の職員のみならず、全庁の部課長で訪問調査とすること、とのご質問ですが、現在、従業員3人以下の事業所も含めた大田区内製造業の調査を検討しています。また、調査の内容・手法・時期等についても、あわせて検討しているところです。
商・工業、実数・実態調査を一刻も早く実施し、来年度予算に反映させることとのご質問ですが、現在、調査内容等の検討を進めていますが、効率的また効果的な調査結果を得るためには、各企業・事業所の繁忙期を避けるなど、調査計画等に十分な時間をかけ、検討していく必要があると考えています。
【清水議員】
また、日本共産党区議団は11月19日に松原区長に、区民の暮らしと営業を守るための越年対策に関する緊急要望を提出しました。安倍政権が成長戦略を掲げていますが、ものづくりのまち、中小商工業と勤労者、高齢者が多く暮らす大田区には景気の回復の兆しすらありません。また円安で物価上昇による区民への負担増、社会保障の切り下げが相次ぎ、年末年始を控えて、区民の生活不安の声が広がっています。区内の基幹産業である製造業・小売業は、危機的な状況で倒産・廃業の歯止めがかかりません。このような状況の中で年末・年始を迎えようとしています。
●区内中小・零細業者のために年末特別融資を創設し、年末融資の特別体制をとることを求めます。お答えください。
【産業経済部長】
区内中小・零細業者のための年末特別融資の創設、及び特別体制についてですが。区では、いわゆる「中小企業金融円滑化法」の本年3月終了による影響緩和策として、経営者の方々の資金繰りの相談に応じるための、「緊急金融特別相談窓口」を昨年11月から開設しております。併せて、中小企業融資のうち、特に低利となる「経営強化資金」について、当面の間、期間を延長して、あっせん要件を緩和して取り扱っています。年末に向けて資金需要が高まる時期でありますので、本資金を有効に活用いただくよう、金融機関への周知なども含め、積極的にご案内していきます。
【清水議員】
また、区内公共施設の利用者から、「いすがぼろぼろだった」「蒲田地域庁舎の窓のブラインドがぼろぼろで外から丸みえで恥ずかしい、早く直したらどうか」、保育園、小中学校、出張所、いろいろ直したいところはあるが、この時期に予算を使うと後で困る、このような声が上がっています。公共工事の契約については、社会状況は不調が続いており、大田区においても同様に不調が続いていることは承知していますが、「年を越せない」と苦悩している区内業者を支援することです。小さな公示や備品購入でも、なんとか仕事起こしにつながるよう検討できるのではないでしょうか。
●公共施設の改修・修繕工事の前倒し発注を行い、区内建設業者の仕事起こしを行うことです。お答えください。
【計画財政部長】
越年対策としての公共施設の改修・修繕工事の前倒し発注に関するご要望ですが、工事の設計期間の確保と建設業法で定められた契約上必要な見積積算期間等を考慮すると、これから年内工事発注を追加するのは難しい状況です。今後も工事の発注と施工管理が円滑に行われるよう、年間を通じて区内業者の業務量の平準化に配慮した計画的な工事発注に努めていきます。
住宅リフォーム助成の拡充、商店・工場も対象とすること
【清水議員】
次に住宅リフォーム制度についてうかがいます。
●住宅リフォーム助成は区内への経済波及効果からみても拡充することを提案し続けてきました。住宅リフォーム助成の率は30%とし、上限額は100万円とすることを求めます。お答えください。
【まちづくり推進部長】
住宅リフォーム助成についてお答えします。大田区では平成23年度から住宅リフォーム助成制度を始めており、平成24年度からは助成率を5%から10%に、上限額を10万円から20万円にそれぞれ引き上げています。今年度は予算額3千万円に対して、10月23日現在で申込みが238件で3千万円を超過し本定例会におきまして1千万円の増額補正をお願いしているところです。住宅リフォーム助成は23区中5区が実施しているが、大田区の予算は最高額で、助成条件も手厚いものとなっています。これまでの申し込み状況を踏まえ検討を進めるが、更なる助成率、上限額の引上げは考えていません。
【清水議員】
群馬県高崎市の「まちなか商店リニューアル助成事業補助金」として、商店街版のリフォーム助成制度を設けています。富岡市長が、「小さな業者を支援するのが自治体の役割」と業者の生の声に耳を傾けて、今年度から実施しております。予算は4億4千万円です。最終的には738件の申請となりました。宮崎県のリフォーム助成制度の経済波及効果は16・6倍となったという報告があります。この例でいけば、高崎市には約73億円の経済波及効果が予想されます。今、高崎市には全国の自治体から視察があいついでいるようです。
●店も地域も元気になり、経済波及効果も期待される商店、工場版リフォーム助成制度を提案します。お答えください。
【産業経済部長】
商店、工場へのリフォーム助成についてのご提案ですが、区では、区内の小売業、飲食業、サービス業を営む事業者に対して、公益財団法人大田区産業振興協会が繁盛店創出事業として、店舗デザインや経営指導に実績のある専門家が無料診断やアドバイスを行い、店舗改善費用の一部の助成を実施しております。また、工場につきましては、区内製造業が事業規模の拡張や事業の高度化のために行う、工場の新増設や移転にかかる経費に対して助成する「ものづくり工場立地助成を実施しています。これらの助成制度を活用して、商店や工場のそれぞれの事業の発展につなげていただきたいと考えています。
以 上